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第2章メルン編
第三部・「扶桑鴉」 8話
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試験終了後、リオ達はそれぞれ戦闘中の感想を口にしていた。それは次第にアッガスとアイゼンによるリオ達への指導へと変化していき、気づけば4人でギルドへと向かう流れとなっていた。
そしてリオ達が闘技場を後にしようとすると――
「リオ様?まさか、私との約束をお忘れですか?」
観客席にいた面々と共に降りてきたアリシアが口を開いた。
「約束?」
アリシアの台詞を聞いたリオが首を傾げながらそう口にする。するとアリシアの表情が一瞬だけ真っ黒なものに変わると、小さく溜息を吐きながら――
「はい。試験が終わり次第、リオ様と一緒にデートするお約束をいたしました。・・・まさか、お忘れになったのですか・・・?」
まるで泣き崩れるような仕草と共にそう口にするち、次の瞬間、リオの周囲に居た全員から責められるような視線を浴びせられるリオ。
「そんな約束してないよ!?ただ今の王女様を見て欲しいって・・・」
そんな面々に対して弁明するようにそう口にするリオ。だがリオの微妙に言葉足らずな物言いが災いしたらしく、直後アリシアの傍に居たアルベラが抜剣するとほぼ同時にリオの眼前に剣を突き付ける。
「お前、王女様に何をする気だ・・・?」
「何もしない・・・ことはないけど――って、話を聞いてー!」
殺意を剝き出しにしたままリオに尋ねるアルベラ。そんな彼女に対してリオが理由を説明しようとするが、再度余計な言葉を口走ったリオに対してアルベラが得物を振り上げる。
「遺言くらいは聞いてやる。さあ、早くしろ」
凍てつくような殺気を隠そうともしないアルベラにわずかにたじろぐリオ。だがここで理由を話さなければ、今にも彼女の得物が振り下ろされそうだったため、すぐに今朝あったことを説明し始める。
「今朝、以前決めたことでちょっと王女様と口論になって。その時に――」
「私とデ――」
「王女様、ふざけないで」
「は、はい・・・」
真面目な話の途中に割って入ってきたアリシアに対し、キレそうになりながらリオが注意する。
「アリシア様と口論したというのは見過ごせないが――」
すると、アルベラがリオの口にした台詞に対して今にも振り上げた剣を振り下ろしそうな雰囲気となるが――
「その時に何があったのか、それを聞くまでは待ってやる」
リオの話の続きが気になったのか、それとも事実確認を済ませるためか。どちらにしろリオの話をまだ聞く姿勢を示していた。
その姿に心中で安堵したリオは、慎重に言葉を選びながら説明を続ける。
「三年前のあの日に約束したことを果たしてほしい、って言われて。――早く僕と一緒に旅をしたいからって」
3年半前、フリエト村の郊外でアリシアとした約束を思い出しながらそう口にするリオ。すると、アルベラが合点がいったような表情を浮かべ――
「・・・そういうことか、すまなかったな少年」
そのまま流れるような手つきで抜剣していた得物を鞘へと納める。
だがリオの方はその姿に戸惑いを隠しきれないようで、1人「え?え?」と声を上げていた。
そんなリオにクスリ、と笑い声をあげるアルベラ。
「そういえばあの時は仮面をしていたんだったな。・・・少年、キミとアリシア様が約束した所は私も見ていたんだよ」
「・・・あの時の取り巻きの1人だったの?」
リオだけに聞こえる声で告白したアルベラに対し、リオも同様の声量で聞き返す。
「そうだ。・・・だが、取り巻きか。どうやらキミは肝も座っているらしいな?プライドの高い近衛兵だと今頃切り捨てられているぞ?」
「・・・気を付けるよ」
アルベラの台詞に頷くリオ。すると、そんな2人を見ていて面白くなかったのだろう、アリシアがリオの左腕へとしがみつく。
突然アリシアに左腕に伝わった感触と同時に、周囲にマックス達がいるという気まずさから顔を赤くするリオ。
だがアリシアの方はそれらを一切気にしている様子はなく――
「アルベラ、リオ様は私の殿方ですわ。あなたに譲るつもりはありません」
従者にも当たるアルベラに対し、毛を逆立てた猫のような剣幕となる。そんなアリシアを見たアルベラが小さく噴き出すと――
「アリシア様、ご心配いただかなくとも少年を取ることはありませんよ。むしろ、少年のことは息子くらいに思っていますから」
リオを「恋愛対象」としては見ていない旨を口にする。――あくまで「恋愛対象」としてだが。
「・・・それも駄目ですわ」
対するアリシアは頬を膨らませながら不満気な台詞を口にする。
「それはそうとですね、そろそろリオ様を開放してあげませんか?」
そんなアリシアに対して苦笑しながらリオの方へと視線を移すアルベラ。その視線を追うようにリオの方を向くアリシア。そして――
「あ・・・」
まるで像のように無心でいるリオの横顔が目に入った上に、リオの左腕に密着していたという事実に思わず赤面してしまうアリシア。
「あ、アルベラ!?黙っていましたの!?」
「黙っていたも何も・・・アリシア様から為されたことですので」
にやにやと表情を変えながら事実を口にするアルベラ。そしてその様子を離れた位置から見ていたマックス、アッガス、アイゼンの3人は――
「リオさん、もう嫁がいるんですね」
「青春だな」
「情熱的な恋だね」
順番にそう口にしていた。
そして別の方向からリオ達の様子を見ていた職員とふぐおはというと――
「どーでもいんで、はやくギルドに行きません?」
「フグ?」
イラついたような表情を浮かべる職員に対し、ふぐおが「どうしたの?」といった表情を向けていた。
そして未だにアリシアにしがみつかれ、目の前にいるアルベラから微笑まし気な(にやにやしている)視線を向けられ、マックス達3人からは見守るような視線を向けられ、職員からは「爆発しろ」というような敵意の含まれた視線を向けられたリオは、ある意味混沌とした状況に――
(もう、どうでもいいや・・・)
1人、自暴自棄になっていたのだった。
それからアリシアに「先にパーティを組んでおきたいから」という旨を伝え、ふぐおを置いていくことで了解を得られたリオは、マックス、アッガス、アイゼン、職員の4人と共にギルドへと来ていた。
「――はい、あとはここにパーティの名前を書き込んでいただければ手続きは終了です」
ギルドで手続きをすること40分。
各種手続きを終え、いよいよリオ達がこれから実績を積み重ねるもう一つの「名前」ともいうべきパーティ名を決める時が来ていた。
ちなみに、ギルドに所属するパーティにはすべて名前がある。
これはギルド側での管理を楽にするためと、大きな功績を上げた人物たちを民衆が覚えやすくするためなのだが、有名な冒険者やパーティを求人広告代わりに使おうという算段もあるのだ。実際ジン達「大鷲の翼」が有名になってから、若干ではあるが冒険者の人口は増加傾向にある。
そんなパーティにとっては「屋号」ともいうべきパーティ名なのだが――
「・・・リオさん?どうしたんです?」
用紙を目の前にして固まるリオに対しマックスが不思議そうに声をかける。するとリオがゆっくりと口を開き――
「考えてなかった・・・」
そう口にした。
「かん・・・?」
リオの口から発せられた台詞に理解が追い付かなかった様子のマックスが口をあんぐりと開けながら思わず周囲を見渡す。
「・・・残念だが、俺にも考えてなかったって聞こえてるから安心しろ。それとな、これからリオとやっていくんなら、この程度で驚いてたらいくら胃があっても持たないぜ」
慌てた様子で周囲を見回したマックスに対してそう口にするアッガス。
「そうだね、彼と居れば飽きることはないよ」
「いや、あんたはそうかもしれねえけどよ・・・」
直後、場違いな発言をしたアイゼンに対して嘆息するアッガス。だがアイゼンの方はまったく気にしていないらしく、マックスに対して声をかけた。
「せっかく君とパーティを組むことにしてくれたんだ、年長者として何か助言してあげるのはどうだい?」
「助言・・・」
アイゼンの台詞を聞いて考え込むマックス。すると不意にあることを思いついたようで――
「リオさん、今まで見た中で印象に残ってるものとかどうでしょう?例えば・・・ほら、この鞘とか」
リオが腰に差している短剣を鞘ごと抜き取り装飾の部分を指さす。するとリオの脳裏へと、今朝見たばかりの、一番印象に残っているものが浮かんでくる。と同時に、この世界の標準語ではない言語で言葉を発する。
「扶桑・・・鴉」
「ふそう?からす?なんですか、それ。聞いたことのない言葉ですけど・・・」
リオが脳裏へと浮かんだ光景を口にすると、隣にいたマックスが聞いたことのない言語に不思議そうに聞き返す。
すると、はっとした様子のリオが首を傾げる。
「・・・え?」
「だから、ふそうからすってなんですか?」
「いや・・・ふそうからすって?」
「それはオレが聞きたいんですけど」
「あ、そっか」
マックスにそう指摘され先ほど自分で何を口にしたのかを思い出すリオ。そんなリオに対して心配そうな表情を浮かべるマックス。
だがリオはそんな彼の表情に気づくことなく今朝アリシアの自室で見た装飾を口にする。
「あー、たしかその10羽の鴉が大きな木を住処にしていて、毎朝太陽を生み出していたってやつですよ。・・・といっても、何千年も前の話らしいんで、本当かはわかりませんけどね」
「そうなんだ。・・・でも、なんとなく縁起がよさそうだよね」
「まあ、話によるとその木は世界そのものだったって話で、鴉たちも神の使者っていう話ですし、悪くはないんじゃないですか」
話を聞いて素直な感想を口にしたリオに対し賛同するような姿勢を見せるマックス。するとリオがこの世界の言葉でパーティ名を口にする。
「それじゃあ、扶桑鴉。扶桑鴉にするね」
「・・・扶桑っていうのは木の名前ですか?けど、縁起は良い気がするんで、オレも賛成です」
リオの口にしたパーティ名を聞いたマックスが苦笑するが、なぜか居心地の良い気分がしたため賛成する。
そうしてリオとマックス、そしてふぐおの2人と1頭のパーティ名は決定されたのだった。
そしてリオ達が闘技場を後にしようとすると――
「リオ様?まさか、私との約束をお忘れですか?」
観客席にいた面々と共に降りてきたアリシアが口を開いた。
「約束?」
アリシアの台詞を聞いたリオが首を傾げながらそう口にする。するとアリシアの表情が一瞬だけ真っ黒なものに変わると、小さく溜息を吐きながら――
「はい。試験が終わり次第、リオ様と一緒にデートするお約束をいたしました。・・・まさか、お忘れになったのですか・・・?」
まるで泣き崩れるような仕草と共にそう口にするち、次の瞬間、リオの周囲に居た全員から責められるような視線を浴びせられるリオ。
「そんな約束してないよ!?ただ今の王女様を見て欲しいって・・・」
そんな面々に対して弁明するようにそう口にするリオ。だがリオの微妙に言葉足らずな物言いが災いしたらしく、直後アリシアの傍に居たアルベラが抜剣するとほぼ同時にリオの眼前に剣を突き付ける。
「お前、王女様に何をする気だ・・・?」
「何もしない・・・ことはないけど――って、話を聞いてー!」
殺意を剝き出しにしたままリオに尋ねるアルベラ。そんな彼女に対してリオが理由を説明しようとするが、再度余計な言葉を口走ったリオに対してアルベラが得物を振り上げる。
「遺言くらいは聞いてやる。さあ、早くしろ」
凍てつくような殺気を隠そうともしないアルベラにわずかにたじろぐリオ。だがここで理由を話さなければ、今にも彼女の得物が振り下ろされそうだったため、すぐに今朝あったことを説明し始める。
「今朝、以前決めたことでちょっと王女様と口論になって。その時に――」
「私とデ――」
「王女様、ふざけないで」
「は、はい・・・」
真面目な話の途中に割って入ってきたアリシアに対し、キレそうになりながらリオが注意する。
「アリシア様と口論したというのは見過ごせないが――」
すると、アルベラがリオの口にした台詞に対して今にも振り上げた剣を振り下ろしそうな雰囲気となるが――
「その時に何があったのか、それを聞くまでは待ってやる」
リオの話の続きが気になったのか、それとも事実確認を済ませるためか。どちらにしろリオの話をまだ聞く姿勢を示していた。
その姿に心中で安堵したリオは、慎重に言葉を選びながら説明を続ける。
「三年前のあの日に約束したことを果たしてほしい、って言われて。――早く僕と一緒に旅をしたいからって」
3年半前、フリエト村の郊外でアリシアとした約束を思い出しながらそう口にするリオ。すると、アルベラが合点がいったような表情を浮かべ――
「・・・そういうことか、すまなかったな少年」
そのまま流れるような手つきで抜剣していた得物を鞘へと納める。
だがリオの方はその姿に戸惑いを隠しきれないようで、1人「え?え?」と声を上げていた。
そんなリオにクスリ、と笑い声をあげるアルベラ。
「そういえばあの時は仮面をしていたんだったな。・・・少年、キミとアリシア様が約束した所は私も見ていたんだよ」
「・・・あの時の取り巻きの1人だったの?」
リオだけに聞こえる声で告白したアルベラに対し、リオも同様の声量で聞き返す。
「そうだ。・・・だが、取り巻きか。どうやらキミは肝も座っているらしいな?プライドの高い近衛兵だと今頃切り捨てられているぞ?」
「・・・気を付けるよ」
アルベラの台詞に頷くリオ。すると、そんな2人を見ていて面白くなかったのだろう、アリシアがリオの左腕へとしがみつく。
突然アリシアに左腕に伝わった感触と同時に、周囲にマックス達がいるという気まずさから顔を赤くするリオ。
だがアリシアの方はそれらを一切気にしている様子はなく――
「アルベラ、リオ様は私の殿方ですわ。あなたに譲るつもりはありません」
従者にも当たるアルベラに対し、毛を逆立てた猫のような剣幕となる。そんなアリシアを見たアルベラが小さく噴き出すと――
「アリシア様、ご心配いただかなくとも少年を取ることはありませんよ。むしろ、少年のことは息子くらいに思っていますから」
リオを「恋愛対象」としては見ていない旨を口にする。――あくまで「恋愛対象」としてだが。
「・・・それも駄目ですわ」
対するアリシアは頬を膨らませながら不満気な台詞を口にする。
「それはそうとですね、そろそろリオ様を開放してあげませんか?」
そんなアリシアに対して苦笑しながらリオの方へと視線を移すアルベラ。その視線を追うようにリオの方を向くアリシア。そして――
「あ・・・」
まるで像のように無心でいるリオの横顔が目に入った上に、リオの左腕に密着していたという事実に思わず赤面してしまうアリシア。
「あ、アルベラ!?黙っていましたの!?」
「黙っていたも何も・・・アリシア様から為されたことですので」
にやにやと表情を変えながら事実を口にするアルベラ。そしてその様子を離れた位置から見ていたマックス、アッガス、アイゼンの3人は――
「リオさん、もう嫁がいるんですね」
「青春だな」
「情熱的な恋だね」
順番にそう口にしていた。
そして別の方向からリオ達の様子を見ていた職員とふぐおはというと――
「どーでもいんで、はやくギルドに行きません?」
「フグ?」
イラついたような表情を浮かべる職員に対し、ふぐおが「どうしたの?」といった表情を向けていた。
そして未だにアリシアにしがみつかれ、目の前にいるアルベラから微笑まし気な(にやにやしている)視線を向けられ、マックス達3人からは見守るような視線を向けられ、職員からは「爆発しろ」というような敵意の含まれた視線を向けられたリオは、ある意味混沌とした状況に――
(もう、どうでもいいや・・・)
1人、自暴自棄になっていたのだった。
それからアリシアに「先にパーティを組んでおきたいから」という旨を伝え、ふぐおを置いていくことで了解を得られたリオは、マックス、アッガス、アイゼン、職員の4人と共にギルドへと来ていた。
「――はい、あとはここにパーティの名前を書き込んでいただければ手続きは終了です」
ギルドで手続きをすること40分。
各種手続きを終え、いよいよリオ達がこれから実績を積み重ねるもう一つの「名前」ともいうべきパーティ名を決める時が来ていた。
ちなみに、ギルドに所属するパーティにはすべて名前がある。
これはギルド側での管理を楽にするためと、大きな功績を上げた人物たちを民衆が覚えやすくするためなのだが、有名な冒険者やパーティを求人広告代わりに使おうという算段もあるのだ。実際ジン達「大鷲の翼」が有名になってから、若干ではあるが冒険者の人口は増加傾向にある。
そんなパーティにとっては「屋号」ともいうべきパーティ名なのだが――
「・・・リオさん?どうしたんです?」
用紙を目の前にして固まるリオに対しマックスが不思議そうに声をかける。するとリオがゆっくりと口を開き――
「考えてなかった・・・」
そう口にした。
「かん・・・?」
リオの口から発せられた台詞に理解が追い付かなかった様子のマックスが口をあんぐりと開けながら思わず周囲を見渡す。
「・・・残念だが、俺にも考えてなかったって聞こえてるから安心しろ。それとな、これからリオとやっていくんなら、この程度で驚いてたらいくら胃があっても持たないぜ」
慌てた様子で周囲を見回したマックスに対してそう口にするアッガス。
「そうだね、彼と居れば飽きることはないよ」
「いや、あんたはそうかもしれねえけどよ・・・」
直後、場違いな発言をしたアイゼンに対して嘆息するアッガス。だがアイゼンの方はまったく気にしていないらしく、マックスに対して声をかけた。
「せっかく君とパーティを組むことにしてくれたんだ、年長者として何か助言してあげるのはどうだい?」
「助言・・・」
アイゼンの台詞を聞いて考え込むマックス。すると不意にあることを思いついたようで――
「リオさん、今まで見た中で印象に残ってるものとかどうでしょう?例えば・・・ほら、この鞘とか」
リオが腰に差している短剣を鞘ごと抜き取り装飾の部分を指さす。するとリオの脳裏へと、今朝見たばかりの、一番印象に残っているものが浮かんでくる。と同時に、この世界の標準語ではない言語で言葉を発する。
「扶桑・・・鴉」
「ふそう?からす?なんですか、それ。聞いたことのない言葉ですけど・・・」
リオが脳裏へと浮かんだ光景を口にすると、隣にいたマックスが聞いたことのない言語に不思議そうに聞き返す。
すると、はっとした様子のリオが首を傾げる。
「・・・え?」
「だから、ふそうからすってなんですか?」
「いや・・・ふそうからすって?」
「それはオレが聞きたいんですけど」
「あ、そっか」
マックスにそう指摘され先ほど自分で何を口にしたのかを思い出すリオ。そんなリオに対して心配そうな表情を浮かべるマックス。
だがリオはそんな彼の表情に気づくことなく今朝アリシアの自室で見た装飾を口にする。
「あー、たしかその10羽の鴉が大きな木を住処にしていて、毎朝太陽を生み出していたってやつですよ。・・・といっても、何千年も前の話らしいんで、本当かはわかりませんけどね」
「そうなんだ。・・・でも、なんとなく縁起がよさそうだよね」
「まあ、話によるとその木は世界そのものだったって話で、鴉たちも神の使者っていう話ですし、悪くはないんじゃないですか」
話を聞いて素直な感想を口にしたリオに対し賛同するような姿勢を見せるマックス。するとリオがこの世界の言葉でパーティ名を口にする。
「それじゃあ、扶桑鴉。扶桑鴉にするね」
「・・・扶桑っていうのは木の名前ですか?けど、縁起は良い気がするんで、オレも賛成です」
リオの口にしたパーティ名を聞いたマックスが苦笑するが、なぜか居心地の良い気分がしたため賛成する。
そうしてリオとマックス、そしてふぐおの2人と1頭のパーティ名は決定されたのだった。
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