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ぬこぬこ麻呂ロン@劉竜

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第2章メルン編

第二部・マックス 7話

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 その後、罰としてリオに尋ねられたことを丸々口にしたマックスは、魂を吸い取られたかのような顔をしながらリオに縋りついていた。

「いや、怒ってないから・・・ていうか、さっきも言ったけど、そろそろやめてよ・・・」

「駄目です!リオさんにこんなことを言っていたなんて知られたオレは・・・!オレはぁ・・・!」

 リオはマックスの口にしたことが気になっただけで、一切責めるつもりは無かった。
 そのためリオは、先ほどから迷惑そうな表情を浮かべながらも、マックスに対して責めている訳では無いことを伝えていたのだが、マックスの方はこの世の終わりが訪れたかのような悲壮な表情を浮かべながらリオに許しを願っていたのである。

「ちゃんと話を聞いてよ・・・」

「すみません、すみません・・・!」

 そんなマックスに対して溜息を吐きながら天を仰ぐリオ。だがマックスの方は、リオのその行動を呆れたから取った行動だと思ったのか、地面へとひれ伏してしまう。

「怒ってないし、呆れてもないから!・・・いつまでもそんな態度を続けるんだったら、今すぐにでも・・・」

「すみません、リオ様!」

「リオ様はやめて。一番思い出したくない記憶が蘇るから」

「えっと、なら・・・」

「だから、呼び捨てでいいって・・・」

「いえ、そんな恐れ多い・・・」

「呼び捨てで呼んで!」

「で、ですが・・・」

「いいから!呼ばなきゃパーティ解消する!」

「わ、分かりました!」

 マックスとやり取りをしていたリオ。だが疲れ果てたのだろう、半ば脅しのような文句を口にしマックスに自身のことを呼び捨てで呼ぶように強制する。
 すると、その様子を見ていた酒飲みの男性が口を開く。

「うぉいうぉい、てめえりゃ。ぱぁちぃのきほんもわかってねえろかぁ?」

 リオ達が話している間も男性は吞み続けていたようで、呂律の回っていない口でそう口にする。

「・・・なんて言ったの?」

 だが周囲の人間には解読不可能だったらしく、それを代表するようにリオが口を開いた。

「んあぁ?ぷぁあちぃの・・・きふぉ・・・ん・・・」

 リオに問い返された男性が再度同じことを口にしようとするが、男性は大分酒が回っていたらしく、台詞の途中で眠気に襲われ始めたかと思うと、中途半端なままにいびきを立てながら酔いつぶれてしまう。

「・・・結局、何が言いたかったの・・・?」

 豪快ないびきを立てながら眠ってしまった男性をジト目で見ながら呟くリオ。すると、酔いつぶれた男性の仲間の男性が彼の言いたかったであろう内容を代弁する為に口を開く。

「多分、主従関係みたいなものがあるパーティは長続きしないみたいなことを言いたかったんだと思うよ。・・・正直、君らはそんな感じがしたからね」

 男性の口にした台詞を聞いて思い当たる節を考えるリオ。だがリオとマックスの場合、マックスが一方的に下に出ているだけであり、むしろリオはそれを改善するべくパーティを組むための条件として「砕けた口調で話すように」という条件を提示しているほどである。――だが、マックスの暴走(?)を止める為にそれを悪用していることも事実ではあるのだが。
 だが、そうとは思っていないリオは男性の言葉に不思議そうに首を傾げていた。

「そもそも、僕たち正式にはパーティを組んでないし、組む条件として敬語を使わない、砕けた感じで話そうって決めてるんだけど・・・」

「そうなんだ。・・・でも、彼の嫌なことを無理矢理やらせて、それで円満と言えるのかな?」

「円満・・・?」

「ちょっと難しかったかな?――簡単に言えば、問題ない、仲が良いって言えるのかな?」

 男性に現在の自分たちの状況を指摘されたリオが考え込む。

「・・・しかも、彼と君は今後背中を預ける仲になるかもしれないんだろう?決まりを作るのは良いけど、それを強制させすぎては大惨事に発展することになるよ」

 考え込んだリオに対してさらにそう口にする男性。
 ちなみに男性の口にしたことはパーティ内で普通に起きていることであり、吊り橋効果による恋愛関係や、本人同士の小さな衝突などからルールを作ってしまったが故によく起きている事案でもあった。そしてその惨事の内容は、最悪の場合パーティの全滅を意味している。

「それを避けるなら、決め事があってもいくらかの妥協は必要だと思うよ。・・・それに、さっき言ってた条件じゃ相手の性格を丸ごと変えようってことだよね?」

「え・・・そうなるの?」

 すると、思考の海の中にいたリオが、男性の台詞に対して困惑した表情を浮かべる。

「さっきの君の言葉通りならそうなるね。・・・君はまだ若い。だから、まだまだいろんなことを知って、いろんな人と出会うと思う。・・・それこそ、今一緒にいる彼のような相手を立てようとする人間から、うちのアニキみたいな自分勝手な人間までね。――でも、その人の性格を変えるのは大変なことなんだ。性格って言うのは、その人が生まれ持ってきた「個性」なんだよ。だからその本質を変えるにはよほどの影響がないと変えることは出来ないんだ」

 困惑した表情を浮かべるリオに対してそう口にする男性。するとリオは男性の口にした内容に興味を惹かれたようで、食い入るような視線を向ける。

「君が聞いたことがあるかは分からないけど、十人十色って言葉を聞いたことがあるかい?人それぞれ、性格や見た目、考え方が違って当たり前っていう意味の言葉なんだけど、おれは「自分と違う他人を敬おう」って意味だと思っている。・・・だって、そうじゃないか?君が今まで出会った人だって、見た目や考え方まで瓜二つの人はいなかっただろう?」

「うん。僕の知ってる人たちは姉妹でも全然見た目は違ったし、何年も一緒に過ごしている人でも考え方は違ってた」

 男性の台詞に対し「大鷲の翼」の面々を思い浮かべながらそう答えるリオ。
 実際、姉妹であるミサト、エレナ、ティアナはエレナだけ目に見えて分かるほどに髪色が異なっており、同じ冒険者集団として何年も過ごしていたジン達でさえも、やはり個人の考え方は全く異なることが多かった。
 その事実を目の当たりにしてきたリオは、男性の口にした台詞に大きく頷くと同時に、男性が最初に口にしたことについて考え始める。

(そうなると、マックスさんの癖は直さない方が良いのかな・・・?)

 男性の言葉を踏まえたリオが導き出した答え。だがそれは、リオが口にするまでもなく周囲の人々に知れ渡っていたようで――

「下手に縛ってやるなよー」「いや、いくら何でも年上が年下に媚び売るのはおかしくね?」「いやいや、2人の思うようにするべきだろ」「どっちでもいいから、暗い雰囲気を変えてくれー」

 一部場にそぐわない台詞が上がりながらも、大多数の人々から賛成と反対の両方の意見が上がり始める。

「・・・そういうことだ。君たちの事情は詳しくは知らないが、お互いに遺恨が残らない選択をするべきだよ」

 一部を除く、周囲から上がった声に同調するように男性がそう口にする。そしてそれを聞いていたリオとマックスはというと――

「・・・どうする?」

「・・・もう少し話して決めましょう?」

 2人で顔を見合わせながらそう口にしたのだった。
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