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第2章王都・エルドラド編
第二部・メルン遺跡 2話
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グリムが家に帰ってくるわずか数分前。リオの言いつけで家の外で待っていたふぐおは、あまりの暇さ加減に辺りを散策してこようかと悩んでいた。
「フグウ・・・」
何度も周囲に広がる草木を眺めるふぐお。森出身のふぐおにとって、草木のある場所というのは故郷に最も近い環境であり、その中でも平原は、ふぐおの巨体でも問題なく走り回ることのできる場所であった。
だが、もしも無断でこの場所を離れればリオに叱られることは明白だった為、こうしてふぐおは家の前で待機していたのである。
その姿はまるで、好物を目の前に長時間の「待て」を強いられている犬のようでもあった。
「・・・フグ?」
不意に、ふぐおの視界に何かが映りこんでくる。ふぐおの視界に入ってきたのは、
「・・・あ。・・・・・・よし」
するとふぐおの視線を感じたのか、ふぐおの視界に入ってきた人物が、すぐに近くの隠れられそうな場所へと身を潜める。
「・・・・・・フグ」
隠れた人物の隠れた場所を見定めたふぐおが背後にある家を一瞥する。そうして立ち上がったふぐおは、何者かが隠れた場所へと向かって行く。
すると、ふぐおが向かっている場所からふぐおのことを窺うように何者かが顔を出す。
「な・・・すぐに移動します!」
直後、何者かが隠れた場所から別の人物の声が上がる。と同時に、彼らが隠れていた場所から続々と人々が動いていく気配がする。
「フグオ!」
慌てて移動していく彼らに対し、ふぐおは彼らを「不審者」と判定したらしく、彼らを捕まえてリオに褒めてもらうために彼らの追跡を開始したのだった。
それから10分後。不審者と判定した人物たちを追いかけていたふぐおは、王都の北東部にある森林地帯がうっすらと見える位置までやってきていた。
「・・・?」
そこで不思議そうに辺りを見回すふぐおの姿。どうやら、ここまで来て追いかけていた不審者たちを見失った様子であった。
そうしてふぐおに不審者判定された人物たちはというと――
「・・・なんとか撒いたみたいです」
「ですが、これでは・・・」
「ええ、姿が見えません」
ふぐおの近くにある茂みに身を伏せ、ふぐおのことを窺っていた。
どうやら彼らも彼らでふぐおに見つかることを恐れて動けないようで、お互いを視認していない状態での睨み合いが続いていた。
「ですが、このままここで身を隠しているわけにも・・・」
「大丈夫です、リオ様のことは別動隊がマークしていますので」
小声で不穏な会話を繰り広げる不審者たち。するとその声が聞こえたのか、不意にふぐおが茂みの方を向く。
「フグ?」
ゆっくりと茂みに近づいていくふぐお。その足音が聞こえたのか、茂みに隠れる不審者たちが息を潜める。
一歩、一歩と地面を小さく揺らしながら茂みへ近づいていくふぐお。そして茂みの上から裏を覗き込むと――
「キュッ!?」
そこにいたのは小さなリスであった。ふぐおと目のあったリスは驚いた鳴き声を上げると同時に、森の方へと慌てた様子で駆けて行った。
「フグゥ・・・・・・」
一瞬の内に逃げられたことに対し、少しだけ肩を落とすふぐお。
そうして、そのまま周囲を確認し誰もいないことを確認したふぐおは、茂みのそばから離れていった。
「・・・行ったようです」
「何故かはわかりませんが、助かりましたわ」
不意に去っていったふぐおに対して、安堵した様子を浮かべた不審者たちは、少ししてからその場を離れたのだった。
ふぐおが不審者たちの追跡を諦めた頃。リオは勝手にいなくなったふぐおに対して、怒り心頭といった様子でメイカの家の前で仁王立ちしていた。
時刻としてはすでに昼時が近づいてきているということもあり、リオの背後にある建物からは美味しそうな食事の匂いが漂ってきていた。
「おーい、昼飯は食わねーのかー?」
だが、その誘惑をものともしていない様子のリオへとグリムが声をかける。
「ふぐおが帰ってきたら一番に叱らないといけないから。・・・それに、ふぐおもきっとお腹を空かせてるだろうし」
「あっそ。・・・厳しんだか優しんだか」
リオの台詞に対してやれやれといった風にグリムが返す。
そうして家の中へと戻っていったグリムはメイカ、メインと共に少しばかり早めの昼食をとり始めたようで、家の中からメインとグリムで何やら口論になっているような声が聞こえ始める。
(・・・グリム君って、好き嫌いが多いんだね・・・)
2人の口論の内容を聞きながら、内心でそう思うリオ。ちなみに、リオも好き嫌いは多かった方であった。――ちなみに「多かった」というのは、数年間に及ぶジン達との生活の果てに、今では好き嫌いが無くなった――もとい、体に害のないものであればなんでも食べられるようになっていたからである。
(・・・そういえば、メインは好き嫌いってあるのかな?ガレイからこっち、なんでも食べてたけど・・・)
好物について考えていると、リオの脳裏にそんな疑問が浮かぶ。実はメインは、冒険者がよく携帯食とする干し肉や味気のない野菜たちを口にしても文句の1つも言わなかったのである。
ちなみに、冒険者たちが携帯食にする食事たちは保存性を優先しており、味に関しては壊滅的といっても過言ではない。無理に例えるなら、モザイクがかかるようなゲテモノ料理レベルである。
だが、それを文句なく食べていたメインは、よほどの味覚音痴かリオに対して気を配っていたか、はたまた食に対してあまりこだわりが無いかのどれかであった。
(・・・多分、僕に気を遣ってたのかな)
だがメインはスィバが好きだということをリオは知っていた。
そのため味音痴という可能性は除外されており、よほどの貧困家庭――文字通り生きることにすら苦労する家庭では無かっただろう、というリオの予想から「食にこだわりが無い」という可能性も除外され、最終的に残った「リオに対して気を配っていた」という選択肢が残ったのである。――要は、ただの消去法で導いた答えだった。
(あとで聞いてみようかな?)
まだ続いていたメインとグリムの口論を聞きながら内心で呟くリオ。そうこうしていると、リオの視界に黒い物体が映る。
(ふぐおかな?)
そう思ったリオが視界の端に移った黒い物体へと視線を移す。するとそこには、とてもではないが、ふぐおの隠れられそうにない大きさの荷馬車が置いてあった。なお、ふぐおの現在の体長は5メートルあり、現代でいえばオスのホッキョクグマの大体2倍のサイズである。
そんな巨体が自身の体よりも一回り程小さい荷馬車に隠れられる訳は無く、咄嗟にリオは腰に差していた短剣を抜く。
「誰?そこにいるのは」
右手に短剣を構えたまま誰何するリオ。だが荷馬車の裏に隠れているであろう存在は、戦闘態勢に入ったリオを警戒したのか一向に姿を現そうとはしなかった。
するとその時。家の中から只ならぬ気配を感じたのか、メイカが姿を現す。
「リオ君、どうかした?」
ピリピリとした様子のリオに対して声をかけるメイカ。そんな彼女に対して、空いている左手を広げリオが止まるように伝える。
それを見たメイカはすぐさま家の中へ隠れると、メインとグリムに対して静かにするように伝える。
(・・・気配が消えた?)
やがて、荷馬車から人の気配が無くなったことを感じるリオ。短剣を手にしたまま荷馬車の元へ歩いていき跳躍、そのまま荷馬車を飛び越え裏側に回ると、短剣を思いっきり振り抜いた。
「・・・逃げられたみたいだね」
振り抜いた短剣が空を切った感覚と共に呟くリオ。だが人がいたことは確かだったようで、リオの足元には彼の足のサイズよりも大きな――成人男性、成人女性合わせて5名前後の足跡。さらにはリオと同じくらいの足跡が数個残っていた。
「・・・まさかとは思うけど、王女様じゃないよね・・・?」
比較的新しい足跡を見て呟くリオだったが、さすがに昨日の今日でここまで追っては来れないだろうと考えるリオ。――なぜなら、リオが出発したのはエストラーダ皇国第7王女、アリシア・フォン・エストラーダと出会った翌日。しかもまだ町の活動が始まって間もない早朝であった。
そのため、簡単には追ってこれないとリオは思っていたのである。だが今リオの足元にある足跡は、その可能性が一番高いということをリオに対して突き付けていたのである。
(杞憂ならいいんだけど、もし追って来ていたら面倒だな・・・)
最悪の可能性を想定し、小さく身震いするリオ。なぜなら、ここまでアリシアが追って来ていたら迷惑以外の何物でもないからであった。
嫌な予感を感じながら再度家の前で仁王立ちを始めるリオ。そんな彼のもとへふぐおがしょんぼりとした様子で戻ってきたのは、それから10分も経たない頃だった。
無事戻ってきた様子のふぐおに対し、半眼で睨むリオ。
「・・・フグゥ」
そんなリオと目が合った途端、困ったような表情を浮かべるふぐお。
もしもここで、先ほど追いかけていった不審者の姿があればリオに睨まれることは無かったのだろうが、残念ながらふぐおはその不審者を捕まえることが出来なかった。
そうして戻ってきたふぐおに対して口を開くリオ。
「ふぐお、お帰り。・・・何か言うことはある?」
「・・・フグ」
リオの口から出てきた冷たい口調の問いかけに対して首を振るふぐお。――もしもリオがふぐおがいなくなった理由を知っていれば、もう少しは労わるような声色になっていたことだろう。――それでも冷たい口調であることに変わりはないだろうが。
「・・・怪しい人でもいたの?」
だがリオは冷たい口調のままそう尋ねる。するとふぐおは勢いよく頷き、リオの傍にあった荷馬車を指し示す。
「・・・これに隠れてたの?」
「フグ」
リオの台詞に対して頷くふぐお。すると、その言動に偽りがないことを確信したリオが、ふぐおを労うように頭を撫で始める。
普段なら絶対にしないであろうリオの行動に驚くふぐおだったが、リオに褒められているという現状に対する幸福感が勝ったらしく、すぐに気持ちよさそうな表情となる。
(・・・この後寄るのはフリエト村だったよね)
ふぐおの頭を撫でながら次の目的地を思い浮かべたリオは、そこでリオを追って来ている存在と決着をつけようと考えるのだった。
「フグウ・・・」
何度も周囲に広がる草木を眺めるふぐお。森出身のふぐおにとって、草木のある場所というのは故郷に最も近い環境であり、その中でも平原は、ふぐおの巨体でも問題なく走り回ることのできる場所であった。
だが、もしも無断でこの場所を離れればリオに叱られることは明白だった為、こうしてふぐおは家の前で待機していたのである。
その姿はまるで、好物を目の前に長時間の「待て」を強いられている犬のようでもあった。
「・・・フグ?」
不意に、ふぐおの視界に何かが映りこんでくる。ふぐおの視界に入ってきたのは、
「・・・あ。・・・・・・よし」
するとふぐおの視線を感じたのか、ふぐおの視界に入ってきた人物が、すぐに近くの隠れられそうな場所へと身を潜める。
「・・・・・・フグ」
隠れた人物の隠れた場所を見定めたふぐおが背後にある家を一瞥する。そうして立ち上がったふぐおは、何者かが隠れた場所へと向かって行く。
すると、ふぐおが向かっている場所からふぐおのことを窺うように何者かが顔を出す。
「な・・・すぐに移動します!」
直後、何者かが隠れた場所から別の人物の声が上がる。と同時に、彼らが隠れていた場所から続々と人々が動いていく気配がする。
「フグオ!」
慌てて移動していく彼らに対し、ふぐおは彼らを「不審者」と判定したらしく、彼らを捕まえてリオに褒めてもらうために彼らの追跡を開始したのだった。
それから10分後。不審者と判定した人物たちを追いかけていたふぐおは、王都の北東部にある森林地帯がうっすらと見える位置までやってきていた。
「・・・?」
そこで不思議そうに辺りを見回すふぐおの姿。どうやら、ここまで来て追いかけていた不審者たちを見失った様子であった。
そうしてふぐおに不審者判定された人物たちはというと――
「・・・なんとか撒いたみたいです」
「ですが、これでは・・・」
「ええ、姿が見えません」
ふぐおの近くにある茂みに身を伏せ、ふぐおのことを窺っていた。
どうやら彼らも彼らでふぐおに見つかることを恐れて動けないようで、お互いを視認していない状態での睨み合いが続いていた。
「ですが、このままここで身を隠しているわけにも・・・」
「大丈夫です、リオ様のことは別動隊がマークしていますので」
小声で不穏な会話を繰り広げる不審者たち。するとその声が聞こえたのか、不意にふぐおが茂みの方を向く。
「フグ?」
ゆっくりと茂みに近づいていくふぐお。その足音が聞こえたのか、茂みに隠れる不審者たちが息を潜める。
一歩、一歩と地面を小さく揺らしながら茂みへ近づいていくふぐお。そして茂みの上から裏を覗き込むと――
「キュッ!?」
そこにいたのは小さなリスであった。ふぐおと目のあったリスは驚いた鳴き声を上げると同時に、森の方へと慌てた様子で駆けて行った。
「フグゥ・・・・・・」
一瞬の内に逃げられたことに対し、少しだけ肩を落とすふぐお。
そうして、そのまま周囲を確認し誰もいないことを確認したふぐおは、茂みのそばから離れていった。
「・・・行ったようです」
「何故かはわかりませんが、助かりましたわ」
不意に去っていったふぐおに対して、安堵した様子を浮かべた不審者たちは、少ししてからその場を離れたのだった。
ふぐおが不審者たちの追跡を諦めた頃。リオは勝手にいなくなったふぐおに対して、怒り心頭といった様子でメイカの家の前で仁王立ちしていた。
時刻としてはすでに昼時が近づいてきているということもあり、リオの背後にある建物からは美味しそうな食事の匂いが漂ってきていた。
「おーい、昼飯は食わねーのかー?」
だが、その誘惑をものともしていない様子のリオへとグリムが声をかける。
「ふぐおが帰ってきたら一番に叱らないといけないから。・・・それに、ふぐおもきっとお腹を空かせてるだろうし」
「あっそ。・・・厳しんだか優しんだか」
リオの台詞に対してやれやれといった風にグリムが返す。
そうして家の中へと戻っていったグリムはメイカ、メインと共に少しばかり早めの昼食をとり始めたようで、家の中からメインとグリムで何やら口論になっているような声が聞こえ始める。
(・・・グリム君って、好き嫌いが多いんだね・・・)
2人の口論の内容を聞きながら、内心でそう思うリオ。ちなみに、リオも好き嫌いは多かった方であった。――ちなみに「多かった」というのは、数年間に及ぶジン達との生活の果てに、今では好き嫌いが無くなった――もとい、体に害のないものであればなんでも食べられるようになっていたからである。
(・・・そういえば、メインは好き嫌いってあるのかな?ガレイからこっち、なんでも食べてたけど・・・)
好物について考えていると、リオの脳裏にそんな疑問が浮かぶ。実はメインは、冒険者がよく携帯食とする干し肉や味気のない野菜たちを口にしても文句の1つも言わなかったのである。
ちなみに、冒険者たちが携帯食にする食事たちは保存性を優先しており、味に関しては壊滅的といっても過言ではない。無理に例えるなら、モザイクがかかるようなゲテモノ料理レベルである。
だが、それを文句なく食べていたメインは、よほどの味覚音痴かリオに対して気を配っていたか、はたまた食に対してあまりこだわりが無いかのどれかであった。
(・・・多分、僕に気を遣ってたのかな)
だがメインはスィバが好きだということをリオは知っていた。
そのため味音痴という可能性は除外されており、よほどの貧困家庭――文字通り生きることにすら苦労する家庭では無かっただろう、というリオの予想から「食にこだわりが無い」という可能性も除外され、最終的に残った「リオに対して気を配っていた」という選択肢が残ったのである。――要は、ただの消去法で導いた答えだった。
(あとで聞いてみようかな?)
まだ続いていたメインとグリムの口論を聞きながら内心で呟くリオ。そうこうしていると、リオの視界に黒い物体が映る。
(ふぐおかな?)
そう思ったリオが視界の端に移った黒い物体へと視線を移す。するとそこには、とてもではないが、ふぐおの隠れられそうにない大きさの荷馬車が置いてあった。なお、ふぐおの現在の体長は5メートルあり、現代でいえばオスのホッキョクグマの大体2倍のサイズである。
そんな巨体が自身の体よりも一回り程小さい荷馬車に隠れられる訳は無く、咄嗟にリオは腰に差していた短剣を抜く。
「誰?そこにいるのは」
右手に短剣を構えたまま誰何するリオ。だが荷馬車の裏に隠れているであろう存在は、戦闘態勢に入ったリオを警戒したのか一向に姿を現そうとはしなかった。
するとその時。家の中から只ならぬ気配を感じたのか、メイカが姿を現す。
「リオ君、どうかした?」
ピリピリとした様子のリオに対して声をかけるメイカ。そんな彼女に対して、空いている左手を広げリオが止まるように伝える。
それを見たメイカはすぐさま家の中へ隠れると、メインとグリムに対して静かにするように伝える。
(・・・気配が消えた?)
やがて、荷馬車から人の気配が無くなったことを感じるリオ。短剣を手にしたまま荷馬車の元へ歩いていき跳躍、そのまま荷馬車を飛び越え裏側に回ると、短剣を思いっきり振り抜いた。
「・・・逃げられたみたいだね」
振り抜いた短剣が空を切った感覚と共に呟くリオ。だが人がいたことは確かだったようで、リオの足元には彼の足のサイズよりも大きな――成人男性、成人女性合わせて5名前後の足跡。さらにはリオと同じくらいの足跡が数個残っていた。
「・・・まさかとは思うけど、王女様じゃないよね・・・?」
比較的新しい足跡を見て呟くリオだったが、さすがに昨日の今日でここまで追っては来れないだろうと考えるリオ。――なぜなら、リオが出発したのはエストラーダ皇国第7王女、アリシア・フォン・エストラーダと出会った翌日。しかもまだ町の活動が始まって間もない早朝であった。
そのため、簡単には追ってこれないとリオは思っていたのである。だが今リオの足元にある足跡は、その可能性が一番高いということをリオに対して突き付けていたのである。
(杞憂ならいいんだけど、もし追って来ていたら面倒だな・・・)
最悪の可能性を想定し、小さく身震いするリオ。なぜなら、ここまでアリシアが追って来ていたら迷惑以外の何物でもないからであった。
嫌な予感を感じながら再度家の前で仁王立ちを始めるリオ。そんな彼のもとへふぐおがしょんぼりとした様子で戻ってきたのは、それから10分も経たない頃だった。
無事戻ってきた様子のふぐおに対し、半眼で睨むリオ。
「・・・フグゥ」
そんなリオと目が合った途端、困ったような表情を浮かべるふぐお。
もしもここで、先ほど追いかけていった不審者の姿があればリオに睨まれることは無かったのだろうが、残念ながらふぐおはその不審者を捕まえることが出来なかった。
そうして戻ってきたふぐおに対して口を開くリオ。
「ふぐお、お帰り。・・・何か言うことはある?」
「・・・フグ」
リオの口から出てきた冷たい口調の問いかけに対して首を振るふぐお。――もしもリオがふぐおがいなくなった理由を知っていれば、もう少しは労わるような声色になっていたことだろう。――それでも冷たい口調であることに変わりはないだろうが。
「・・・怪しい人でもいたの?」
だがリオは冷たい口調のままそう尋ねる。するとふぐおは勢いよく頷き、リオの傍にあった荷馬車を指し示す。
「・・・これに隠れてたの?」
「フグ」
リオの台詞に対して頷くふぐお。すると、その言動に偽りがないことを確信したリオが、ふぐおを労うように頭を撫で始める。
普段なら絶対にしないであろうリオの行動に驚くふぐおだったが、リオに褒められているという現状に対する幸福感が勝ったらしく、すぐに気持ちよさそうな表情となる。
(・・・この後寄るのはフリエト村だったよね)
ふぐおの頭を撫でながら次の目的地を思い浮かべたリオは、そこでリオを追って来ている存在と決着をつけようと考えるのだった。
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