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第1章ガレイ編
第四部・約束 2話
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ガレイにある唯一の病院でジンのお見舞いに来ていたリオは、これからの事をジンに尋ねられ、父・ハヤトを探すことと、攻防戦の際に悪魔が口にしていた存在を探すことを口にした。
「そういえばそんなことを言っていたな」
リオの台詞を聞いて顎に手を当てるジン。やがて口を開いたジンは、ある可能性を口にする。
「・・・リオ、もしも俺たちを生かした存在が敵だったらどうする?」
「かみさまが敵だったら、って言う事?」
「ああ。・・・俺たちを生かした理由が何かは分からないが、その可能性はあると思う。現に悪魔は神のことを「あの御方」とも言っていたしな」
攻防戦6日目で悪魔と対峙した際に交わした会話を口にするジン。それを聞いたリオはジンに自身も同じ会話をしたことを口にする。
「リオもか。・・・こういう時にフジミでも居れば何か聞けたのかもしれないな」
「フジミが?」
ジンの口から意外な人物の名前が出たことに驚いた声を上げるリオ。
「ああ。何かあいつは知っているみたいだった。・・・そういえば短剣になったフジミは何か言ってくるのか?」
ジンの台詞に困惑したリオだったが、ジンの問いに対して首を横に振る。
「何か言われるどころか、パスすら繋がってないよ。そもそも、なんで消えずに短剣として残ったのかすら分からないし」
「・・・リオでも分からないのか。おまけにパスも切れてる、と」
ジンの台詞に頷くリオ。
「そう、か。・・・死人に口なしとは上手いことを言ったもんだな、クソ」
八方塞がりの状況に憤るジン。そしてその言葉を残した先人たちを呪ってしまいそうな表情になる。
そんなジンを見ながらうなり声を上げるリオ。彼なりに色々と考えているらしく、頭を抱えている様子だった。
「・・・あれ?でも、それだったらなんであの時短剣が光ったんだろう」
そうしていると対悪魔戦の際に短剣が光を放ち悪魔にダメージを与えた瞬間を思い出すリオ。すると、ジンが意外そうな声を上げる。
「そうなのか?てっきりリオが何かしたんだと思っていたんだが」
「うん。魔力を吸い取られる感じがした後、急に光って。気づいたら悪魔が逃げていってたんだ」
その時のことを説明するリオ。それを聞いたジンは再度思考を巡らせるが結局答えは出なかったようで、ただ知恵熱を出すだけの結果となったのだった。
それから10分後。まるで出口のない迷路のような思考を放棄した2人は別れを告げ、ジンの病室を後にしたリオはエレナの病室へと向かっていた。
「ここがエレナさんのお部屋です。まだ眠っているのでお静かにお願いしますね」
ジンの病室を後にしたリオは、エレナの病室に案内してくれた看護師に礼を言い部屋に入る。そこでリオが目にしたのは、文字通り死んだように眠っているエレナの姿だった。
「エレナさん、来たよ」
備え付けの椅子に座りながらエレナに声をかけるリオ。
「・・・さっきジンさんと話してきたんだけど、エレナさんも聞く?」
眠ったまま反応を返さないエレナに対し、1人で先ほどジンと話したことを口にするリオ。
これから自分がしたいことやジンと2人で悩み続けた事、ミリーの形見である短剣を譲り受けた事。それらを5分ほどをかけて全て話し終えたリオは、静かに椅子から立ち上がる。
「それじゃあ、またね」
最後にそう言い残すと、リオは静かに病室を後にしたのだった。
病院を後にしたリオは、復興作業の手伝いをするためにガレイの北側にあるギルドにいた。なぜ西門側ではなくギルドにいるのか――。その理由はギルドに復興作業に参加する旨を伝えておく必要がある為であった。
何故、わざわざそんなことをするのかというと、復興作業に従事する人数と進捗具合を見てどの辺りで復興完了とするかの目星と、それまでにかかる費用――資材や従事者に対する食費・食材などを計算する為である。
町や都市の復興の為に必要な物は、まずそれぞれの町や都市の貯蓄庫から出され、万が一足りない場合は周辺の町や都市に不足分の要請を行う必要がある。そして、それらの移動には短くとも1週間はかかる為、早めに費用や資材の見積もりを出しておかなければ復興作業自体が滞ることとなってしまうからであった。
「復興作業に参加されるのですね?畏まりました、こちらに名前だけお願いします」
「はい。ええっと・・・」
職員に紙を渡され戸惑うリオ。なぜならギルドのカウンターは成人している大人を前提に設計されている為、リオほどの身長では微妙に高い。
そのことに気づいた職員がリオに声をかける。
「お名前は?」
「あ、リオです」
「リオ君ね。――はい、これで登録は終わりました」
リオに名前を聞き一度リオに渡した紙へと記入していく職員。そうして必要な部分を尋ねては用紙に記入していった職員は、リオに龍の模様が描かれたバッジを渡し説明する。
「お昼になったら食事が配られます。その際にこれを見せてください」
職員の説明を聞いたリオは頷きながらバッジを受け取る。
「・・・そういえば君は「大鷲の翼」のジンさんと一緒に居た子よね?」
リオのその動きを見ていた職員は、不意に周囲に聞こえないよう小声でリオに尋ねる。それに対して頷くリオ。
「やっぱり。・・・私、ジンさんに昔助けてもらったことがあるの。その時のお礼をちゃんと言えなかったから、改めてお礼をしたいんだけど・・・」
「・・・そういう事なら、明日ジンさんの所に行くから一緒に」
職員の話を聞いたリオはしばし考えるとそう口にする。だが職員の方はなぜか渋い顔になると――
「ごめんね、明後日でもいい?」
そう口にした。対するリオは理由を尋ねようとすると、職員が「明日は両親の命日なの。それで故郷の村に戻るから」と口にする。
それを聞いたリオは思うところがあったらしく、静かに頷いた。
「それじゃあ、明後日のお昼にギルドの外で待ってるからね」
リオが同意したことを確認した職員はそう口にしたのだった。
職員と約束をしたリオは、ギルドを出たところで偶然一緒に歩いていたレーベとアッガスの姿を見かけ声をかける。2人はどうやら北門側にあるとある飲食店で食事をとってきたようで、お互いに自身が食べた料理の感想を言い合っていた。
そんな2人に対して声をかけるリオ。
「レーベ、アッガスさん」
「おう、リオ。レーベの言ってた通り目を覚ましたんだな」
リオに声をかけられ、左手を上げながらリオへと声をかける。
「うん。これから西門に行こうと思うんだけど」
2人に対して目的地を伝えるリオ。するとアッガスがレーベの方を向きながら口を開く。
「リオにふぐおの事は伝えたのか?」
アッガスの質問に対して首を振るレーベ。その2人の行動をリオが不思議に思っていると、アッガスが今度はリオに対して口を開く。
「リオ、ふぐおが今どこにいるのか知ってるか?」
「うん、中央部に居たよ。さっき偶然見つけたんだ」
アッガスの質問に対して首を縦に振ったリオは、そのままふぐおのいる場所を口にする。実はふぐおは怪我をした面子の中で唯一、野外で寝泊まりしていたのである。その理由は、単純にふぐおが大きすぎて横になれるスペースが大通りか町の中央部しかなかった為であった。
「そうか。・・・思ったよりも元気にしてただろ?」
「うん。怪我もほとんど治ってたみたいだし、エレナさんが目を覚ましたらお礼を言わないと」
アッガスの台詞に対してリオがふぐおの怪我の具合を見た感想を口にする。
「・・・そうだな。早く目を覚ましてくれないとな」
リオの台詞に対して複雑そうな表情を浮かべながらそう口にするアッガス。そんなアッガスに対して短く「うん」と答えたリオは、話題を変えるように2人の行き先を尋ねる。
「それよりも、アッガスさん達はどこに行くの?」
「ん?ああ、俺たちもリオと同じ西門だ。――ギルドから出てきたところを見ると、リオも復興作業に参加するのか?」
アッガスの台詞に対して頷くリオ。その姿を見たアッガスは嬉しそうに口を開く。
「そうか、俺たちもだ」
「そうなんだ。それじゃあ一緒に行きたいな」
「おう、一緒に行こうぜ」
そう口にしながらリオと共に歩き出すアッガス。そんなアッガスに対してレーベが愚痴を零す。
「アッガスさん、なんで俺の時と違ってそんなに嬉しそうなんですか?」
「そうなのか?」
レーベの愚痴に対して尋ねるようにそう口にするアッガス。そんな彼に対してレーベが頷くと「・・・気づかなかったな」と口にした。
そんな2人に痺れを切らしたのか、それとも立ち止まっていることを不思議に思ったのか、1人だけ先に進んでいたリオが声を上げる。
「どうしたのー?」
「いや、何でもない。すぐに行く」
その言葉の直後、リオの元へ駆け寄っていく2人。そうしてガレイ西門跡地へ向かったリオ達は日が暮れるまで復興作業に従事したのだった。
「そういえばそんなことを言っていたな」
リオの台詞を聞いて顎に手を当てるジン。やがて口を開いたジンは、ある可能性を口にする。
「・・・リオ、もしも俺たちを生かした存在が敵だったらどうする?」
「かみさまが敵だったら、って言う事?」
「ああ。・・・俺たちを生かした理由が何かは分からないが、その可能性はあると思う。現に悪魔は神のことを「あの御方」とも言っていたしな」
攻防戦6日目で悪魔と対峙した際に交わした会話を口にするジン。それを聞いたリオはジンに自身も同じ会話をしたことを口にする。
「リオもか。・・・こういう時にフジミでも居れば何か聞けたのかもしれないな」
「フジミが?」
ジンの口から意外な人物の名前が出たことに驚いた声を上げるリオ。
「ああ。何かあいつは知っているみたいだった。・・・そういえば短剣になったフジミは何か言ってくるのか?」
ジンの台詞に困惑したリオだったが、ジンの問いに対して首を横に振る。
「何か言われるどころか、パスすら繋がってないよ。そもそも、なんで消えずに短剣として残ったのかすら分からないし」
「・・・リオでも分からないのか。おまけにパスも切れてる、と」
ジンの台詞に頷くリオ。
「そう、か。・・・死人に口なしとは上手いことを言ったもんだな、クソ」
八方塞がりの状況に憤るジン。そしてその言葉を残した先人たちを呪ってしまいそうな表情になる。
そんなジンを見ながらうなり声を上げるリオ。彼なりに色々と考えているらしく、頭を抱えている様子だった。
「・・・あれ?でも、それだったらなんであの時短剣が光ったんだろう」
そうしていると対悪魔戦の際に短剣が光を放ち悪魔にダメージを与えた瞬間を思い出すリオ。すると、ジンが意外そうな声を上げる。
「そうなのか?てっきりリオが何かしたんだと思っていたんだが」
「うん。魔力を吸い取られる感じがした後、急に光って。気づいたら悪魔が逃げていってたんだ」
その時のことを説明するリオ。それを聞いたジンは再度思考を巡らせるが結局答えは出なかったようで、ただ知恵熱を出すだけの結果となったのだった。
それから10分後。まるで出口のない迷路のような思考を放棄した2人は別れを告げ、ジンの病室を後にしたリオはエレナの病室へと向かっていた。
「ここがエレナさんのお部屋です。まだ眠っているのでお静かにお願いしますね」
ジンの病室を後にしたリオは、エレナの病室に案内してくれた看護師に礼を言い部屋に入る。そこでリオが目にしたのは、文字通り死んだように眠っているエレナの姿だった。
「エレナさん、来たよ」
備え付けの椅子に座りながらエレナに声をかけるリオ。
「・・・さっきジンさんと話してきたんだけど、エレナさんも聞く?」
眠ったまま反応を返さないエレナに対し、1人で先ほどジンと話したことを口にするリオ。
これから自分がしたいことやジンと2人で悩み続けた事、ミリーの形見である短剣を譲り受けた事。それらを5分ほどをかけて全て話し終えたリオは、静かに椅子から立ち上がる。
「それじゃあ、またね」
最後にそう言い残すと、リオは静かに病室を後にしたのだった。
病院を後にしたリオは、復興作業の手伝いをするためにガレイの北側にあるギルドにいた。なぜ西門側ではなくギルドにいるのか――。その理由はギルドに復興作業に参加する旨を伝えておく必要がある為であった。
何故、わざわざそんなことをするのかというと、復興作業に従事する人数と進捗具合を見てどの辺りで復興完了とするかの目星と、それまでにかかる費用――資材や従事者に対する食費・食材などを計算する為である。
町や都市の復興の為に必要な物は、まずそれぞれの町や都市の貯蓄庫から出され、万が一足りない場合は周辺の町や都市に不足分の要請を行う必要がある。そして、それらの移動には短くとも1週間はかかる為、早めに費用や資材の見積もりを出しておかなければ復興作業自体が滞ることとなってしまうからであった。
「復興作業に参加されるのですね?畏まりました、こちらに名前だけお願いします」
「はい。ええっと・・・」
職員に紙を渡され戸惑うリオ。なぜならギルドのカウンターは成人している大人を前提に設計されている為、リオほどの身長では微妙に高い。
そのことに気づいた職員がリオに声をかける。
「お名前は?」
「あ、リオです」
「リオ君ね。――はい、これで登録は終わりました」
リオに名前を聞き一度リオに渡した紙へと記入していく職員。そうして必要な部分を尋ねては用紙に記入していった職員は、リオに龍の模様が描かれたバッジを渡し説明する。
「お昼になったら食事が配られます。その際にこれを見せてください」
職員の説明を聞いたリオは頷きながらバッジを受け取る。
「・・・そういえば君は「大鷲の翼」のジンさんと一緒に居た子よね?」
リオのその動きを見ていた職員は、不意に周囲に聞こえないよう小声でリオに尋ねる。それに対して頷くリオ。
「やっぱり。・・・私、ジンさんに昔助けてもらったことがあるの。その時のお礼をちゃんと言えなかったから、改めてお礼をしたいんだけど・・・」
「・・・そういう事なら、明日ジンさんの所に行くから一緒に」
職員の話を聞いたリオはしばし考えるとそう口にする。だが職員の方はなぜか渋い顔になると――
「ごめんね、明後日でもいい?」
そう口にした。対するリオは理由を尋ねようとすると、職員が「明日は両親の命日なの。それで故郷の村に戻るから」と口にする。
それを聞いたリオは思うところがあったらしく、静かに頷いた。
「それじゃあ、明後日のお昼にギルドの外で待ってるからね」
リオが同意したことを確認した職員はそう口にしたのだった。
職員と約束をしたリオは、ギルドを出たところで偶然一緒に歩いていたレーベとアッガスの姿を見かけ声をかける。2人はどうやら北門側にあるとある飲食店で食事をとってきたようで、お互いに自身が食べた料理の感想を言い合っていた。
そんな2人に対して声をかけるリオ。
「レーベ、アッガスさん」
「おう、リオ。レーベの言ってた通り目を覚ましたんだな」
リオに声をかけられ、左手を上げながらリオへと声をかける。
「うん。これから西門に行こうと思うんだけど」
2人に対して目的地を伝えるリオ。するとアッガスがレーベの方を向きながら口を開く。
「リオにふぐおの事は伝えたのか?」
アッガスの質問に対して首を振るレーベ。その2人の行動をリオが不思議に思っていると、アッガスが今度はリオに対して口を開く。
「リオ、ふぐおが今どこにいるのか知ってるか?」
「うん、中央部に居たよ。さっき偶然見つけたんだ」
アッガスの質問に対して首を縦に振ったリオは、そのままふぐおのいる場所を口にする。実はふぐおは怪我をした面子の中で唯一、野外で寝泊まりしていたのである。その理由は、単純にふぐおが大きすぎて横になれるスペースが大通りか町の中央部しかなかった為であった。
「そうか。・・・思ったよりも元気にしてただろ?」
「うん。怪我もほとんど治ってたみたいだし、エレナさんが目を覚ましたらお礼を言わないと」
アッガスの台詞に対してリオがふぐおの怪我の具合を見た感想を口にする。
「・・・そうだな。早く目を覚ましてくれないとな」
リオの台詞に対して複雑そうな表情を浮かべながらそう口にするアッガス。そんなアッガスに対して短く「うん」と答えたリオは、話題を変えるように2人の行き先を尋ねる。
「それよりも、アッガスさん達はどこに行くの?」
「ん?ああ、俺たちもリオと同じ西門だ。――ギルドから出てきたところを見ると、リオも復興作業に参加するのか?」
アッガスの台詞に対して頷くリオ。その姿を見たアッガスは嬉しそうに口を開く。
「そうか、俺たちもだ」
「そうなんだ。それじゃあ一緒に行きたいな」
「おう、一緒に行こうぜ」
そう口にしながらリオと共に歩き出すアッガス。そんなアッガスに対してレーベが愚痴を零す。
「アッガスさん、なんで俺の時と違ってそんなに嬉しそうなんですか?」
「そうなのか?」
レーベの愚痴に対して尋ねるようにそう口にするアッガス。そんな彼に対してレーベが頷くと「・・・気づかなかったな」と口にした。
そんな2人に痺れを切らしたのか、それとも立ち止まっていることを不思議に思ったのか、1人だけ先に進んでいたリオが声を上げる。
「どうしたのー?」
「いや、何でもない。すぐに行く」
その言葉の直後、リオの元へ駆け寄っていく2人。そうしてガレイ西門跡地へ向かったリオ達は日が暮れるまで復興作業に従事したのだった。
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