WORLD CREATE

ぬこぬこ麻呂ロン@劉竜

文字の大きさ
上 下
78 / 231
第1章ガレイ編

第二部・攻防戦 18話

しおりを挟む
「何!?」

 防戦一方となっていた魔人の背後を襲ったジンの最速の攻撃は、魔人に当たるどころか虚しく空を切る。それと同時に魔人の姿を見失うジン。

「ジンさん、後ろ!」

 直後上がるリオの声を聞いて前方へ飛び退くジン。その直後、彼が立っていた場所を魔人の得物が横断する。そして次の瞬間、攻撃が避けられたことに対し驚愕の表情を浮かべる魔人。

「あっぶね・・・」

 とっさに魔人の攻撃を回避したジンが零す。もしもリオが気づいていなければ、今頃ジンの体は上下で2つに分かれていただろう。

「ジンさん、大丈夫?」

 魔人の攻撃を何とか回避したジンの元へ駆け寄るリオ。それに対し、ジンが立ち上がることで無事をアピールする。

「ジン、大丈夫か?」

 そんな2人に合流するアッガス達。そしてすぐに2人を囲むように魔人に相対すると、臨戦態勢に入る。

「フジミ、アッガス、レーベの3人で前衛。残りは全員アタッカーだ。さっきの例もある、防御は基本的に他人に頼るな」

 得物を構えながら全員へ指示を出すジン。それと同時に、リオの手に収まっていたフジミが魔人の姿へと変化する。

「自衛て・・・さすがにエレナじゃ――」

「エレナのために誰かを割いていたらあいつは倒せない」

 アッガスの台詞にジンが冷静に告げる。その非情な台詞に対しアッガスが口を開く。

「だけどよ・・・」

「アッガス、そこまでよ。ジンの言う通り、私のために誰か割いている余裕はないわ。むしろ、あなた達があいつの注意を惹き続けなさいよ」

 その台詞に反論しようとしたアッガスだったが、エレナに止められ口をつぐむ。
 たしかに魔人の瞬間移動から繰り出される攻撃を、本来肉弾戦をしないエレナが自衛するというのはいささか無理がある話ではある。だが実際問題、移動した先へ誰かが防御に向かう方がよほど無理のある話だろう。そうなれば、それぞれが自衛した方が無理は少ない。

「・・・分かった。とりあえずあいつを抜かせなければいいって話だな」

「そうだ。・・・皆いいな?準備ができた奴から各自の判断で魔人に攻撃をかけろ」

 ジンの指示に頷いたリオ達は、各自の判断で魔人に向かっていく。

「フジミ様の、お通りだぜぇ!」

 一番早く魔人に接近したフジミが、魔力で精製した片手剣を手に魔人へと攻撃を加えていく。対する魔人は、大剣の腹を上手く使い、一歩も動くことなくフジミの攻撃を捌いていく。
 そこへ次に加わったミリーが短剣による乱撃を叩き込んでいくが、それすらも捌いていく魔人。

「これでも駄目なんだね・・・」

「俺様も短剣で攻める。タイミングは合わせてやる」

 そう口にするや否や、手にしていた片手剣を短剣へと変えるフジミ。そんな2人の元へとレーベが到着する。

「オッケー。ついでにレーベっちも来たみたいだし、3人でやっちゃおうよ」

 レーベの姿を確認したミリーがそう口にした後、魔人へ向かっていく。それに続くレーベとフジミ。
 対する魔人は3人も相手にするのに大剣では不利だと感じたようで、大剣を長剣へと精製し直しミリーたちを迎え撃つ。
 直後、レーベの大剣が魔人へ迫り、その両脇から回り込んでいくミリーとフジミ。対する魔人はレーベの得物を長剣で明後日の方向へ受け流し数歩後退、直後ミリーの方へ得物を振るった。
 魔人が得物を振るった瞬間、すぐにバックステップを踏むミリー。だが次の瞬間、その動作がフェイントだということを思い知らされるミリー。なぜなら、彼女に向けて振るわれたはずの長剣は、反対側から迫るフジミに向けて振るわれていたこあらである。

「・・・!フジミっち、下がって!」

 刹那、魔人の攻撃がフジミへと向かっていく光景を見たミリーが叫ぶ。
 その直後にフジミを襲う、横薙ぎに振るわれた長剣。だがその攻撃を予め予想していた様子のフジミが姿勢を低くして回避、そのまま魔人に攻撃を加えようと短剣を振るうが――

「ちっ、この障壁は厄介だな」

 魔人が生成した障壁によって阻まれる。

「フジミ、どけ!」

 その直後レーベが大剣を力任せに振るう。だがその攻撃すらも魔人の障壁に阻まれ、逆に長剣に狙われてしまう。
 即座に後退するレーベとフジミ。そんな2人の背後からアッガスが魔人に向かい肉薄、得物であるメイスを障壁に叩きつけた。

「――これでも駄目なのかよ・・・」

 だがアッガスの攻撃も魔人の障壁の前には無意味だったようで簡単に防がれてしまう。――そもそも、ジンの攻撃すら防いでしまえるほどに硬い障壁である。個人での攻撃では破壊することは不可能に近い。

「アッガス、どきなさい!」

 その直後、アッガスの背後からエレナの声を共に何十発もの魔力弾が魔人に向かっていた。
 エレナの声に反応したアッガスが地面を転がりながら射線から退避していき、標的である魔人は、手にした長剣で直撃するであろう魔力弾のみを的確に切り裂いていく。

「今のも防げるのかよ・・・」

 弾幕の中から的確に直撃する攻撃のみを捌くという、常人では不可能な動きで防御する魔人に対し、絶望に満ちた声を上げるアッガス。
 だがその光景を見たジンの方は、その魔人の行動に違和感を覚えていた。

「エレナ、ふぐお!もう一度やってみてくれ。もしかしたらあいつを倒せるかもしれない」

 その違和感を確信に変えるべく、ジンがエレナとふぐおへ再度魔法による攻撃を指示する。
 その指示に対し、一瞬怪訝そうな表情を浮かべたエレナだったが、再度大量の魔力弾を精製すると魔人に向けて発射する。
 対する魔人は、先ほどと同じように直撃するであろう魔力弾のみを打ち落としていく。

「やっぱりか」

 エレナの放った魔力弾に対する防御方法を見たジンがぼそりと零すと、すぐに魔人に肉薄していく。

「リオ、いつでも魔法を扱えるようにしておけ。エレナ、ふぐおは援護頼む」

 魔人へ近づきながら2人と1頭へ指示を呼ばすジン。そんな彼に対し、2度も攻撃を防がれたエレナが声を上げる。

「ちょ、ジン!――あーもう、分かったわよ!」

 だが彼女の声を聞くことなく前進していったジンに対し、自棄やけになったように魔力弾を精製していくエレナ。

「ふぐお、任せたよ」

「フグ」

 ジンの後を追う前にふぐおへ声をかけるリオ。それに対してふぐおが鳴きながら頷いたのを確認すると、リオはジンを追って駆け出していった。



「リオ、お前はあいつが障壁を張った瞬間に障壁に向けて魔法を叩き込め。俺の予想が正しければ障壁は無効化できる」

 アッガス達の元へ着いたジンが、後から来たリオへそう声をかけるとリオが頷いて返す。

「アッガス、レーベ、フジミ、ミリー。今度は5人で攻める。出来る限り魔人に肉薄してあの障壁を張らせろ」

「障壁を張らせろって・・・簡単に言ってくれるぜ」

 ジンの台詞に対して呆れたような声を上げるアッガス。だがその瞳はしっかりと魔人を見据えていた。

「あの魔人が障壁を張ったのは攻撃が直撃しそうな時だけだったよね。・・・なら」

 その台詞の直後に駆け出すミリー。彼女に続くように駆け出したジン達は、魔人を前後左右から取り囲むと攻撃を開始する。
 ミリーとフジミが踊るように乱撃を加え、ジンとアッガスとレーベの3人がその隙間を埋めるように立ち回りながら魔人を攻め立てる。
 対する魔人は得物である長剣を二振りの片手剣に変えると、あらゆる方向から飛来するジン達の攻撃を巧みに防いでいく。
 魔人を中心として無数に煌めく剣閃と共に散る火花は、それだけで幻想的な光景に見えていた。

「もらった!」

 だが5対1の戦闘ではさすがに防ぎ続ける事は出来なかったようで、魔人の懐へ深く飛び込んだジンが大剣を振るう。対する魔人は防御用の障壁を展開し、ジンの攻撃を防ごうとするが――

「リオ、今だ!」

 ジンが叫んだ直後、ほぼ1刹那の時間差も無く魔人の障壁へと亀裂が走る。実はジンが魔人の懐に入り込んだと同時に、リオが米粒ほどの魔力弾を精製し発射していたのだ。
 リオの手により超高密度の魔力の固まりとなっていたその魔力弾は、ジンの頭部の真横を通り過ぎ障壁へと亀裂を加えたのだった。
 そして魔人の展開していた障壁は、リオの魔法によってできた亀裂へ触れたジンの得物により、粉々に砕け散っていく。

「終わりだ!!」

 次の瞬間、ジンの大剣が魔人の脇腹へと深く食い込んでいく。それと同時に魔人の体から流れ出していく、彼を形成する魔力たち。そうして少しすると、オーガスの姿をした魔人の姿は完全に消滅したのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

処理中です...