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第1章ガレイ編
第二部・攻防戦 4話
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その日、再びガレイが張り詰めた空気となったのは、リオ達が昼食を終えて約1時間が経過した頃であった。
「また来たぞー!!」
辺りに響く兵士たちの声。それに呼応するように急ぎガレイ西門へと向かう休憩中の兵士たち。中には食事中の兵士もいたが、彼らも洩れなく西門へと急いでいく。
「ふぐお、行くよ。・・・メイン、町の人たちのところに戻って」
リオがまだブラッシングされていたふぐおへ声をかけ、すぐにメインに視線をやる。
対するメインは不満そうな表情を浮かべながらも、リオの言葉に従い安全な東門の方へ向かおうとする。だが彼女は、くるりとリオの方を振り返ると、リオへ声をかける。
「お兄ちゃん、頑張って」
だがリオの方は既に西門へ駆け出しており、彼の元へ彼女の声が届くことは無かった。
再度魔物たちの来襲した西門では、すでに視界に入る魔物たちの大軍を望みながら部隊が展開されていた。
右翼へ第三小隊44名。左翼へ第一小隊50名。中央へ第四小隊50名。3小隊の背後へ第六小隊、第二小隊計90名と冒険者・傭兵たちが配備されていた。
対する魔物たちは、100体ずつに分かれた集団が各前線へ進み、その背後に計500体ほどの集団が控えていた。先ほどの戦闘の際よりも多い、合計900体。さらに、それらの背後には無傷の600体の魔物たちが控えていた。
両者が配置についてから程なくして本日2度目の戦端が開く。
「再度返り討ちにしてやれ!ガレイを守るのだ!」
最前線を駆ける兵士の1人が、魔物たちの戦闘へと突撃しながら叫ぶ。その直後、周囲から上がる鬨の声。対する魔物たちも彼らに負けじと咆哮を上げ、猪型の魔物を先頭に突撃していく。
直後、ぶつかる両者。けたたましい咆哮と鬨の声は、すぐにお互いの悲鳴と怒りへ変わっていく。
「傭兵たちを先に出せ。それに続くように冒険者たちを。各戦線を支えさせろ」
後方からその様子を見ていたジェラードが冷静に指示を飛ばす。
冒険者と傭兵。どちらも命知らずな一面を持つ彼らだが、なぜジェラードが先に傭兵を先に出したのか。それにはちゃんとした理由がある。
冒険者は基本的に集団で動く。それに対し傭兵という存在はソロで依頼をこなすことも多く、楔として打ち込むには最適な存在だからである。
楔として打ち込まれた傭兵の元へ、その楔を深く打ち込むためのハンマーである冒険者や他の兵士がくればどうなるかは想像に易い。
戦争とはどんな状況においても、要は陣取りゲームと変わらない。いつの時代でも結局の所、あらゆる手を使い、最終的により多くの陣地を奪い取ったほうが勝者なのだ。そこには引き分けと言える引き分けは存在しない。
「それから第六小隊も出せ。右翼からそれぞれ2、1、2分隊だ」
ジェラードの指示を伝えるために伝令たちが駆け、各戦場へ散っていく。
(これで魔物たちを返り討ちにできるな)
彼のこの言葉が実証されたのは、これから2時間後であった。
場所は変わり、ジン達が配備されたガレイ駐屯隊第四小隊の後方。そこでは「大鷲の翼」のほかに、先ほどの戦闘に参加していた冒険者や、各門に配備されていた冒険者たちの姿があった。
「お、始まったぞ」「かー、早く魔物どもをぶっ倒してーぜ」「その前に戦闘が終わらないといいな」
冒険者たちの一部が声を上げる。
「くそ、あいつら好き勝手言いやがって。痛い目見ろっての」「おいおい、気持ちは分かるが、同業にそんなこと言うなよ」
テンションの高い冒険者たちとは裏腹に、そんな彼らを睨む冒険者。そんな彼らは、先ほどの戦いで兵士たちと共に戦いながらも苦戦していた冒険者たちであった。
「知らぬが仏」という言葉があるが、その言葉が当てはまるのが現在騒いでいる冒険者たちだろう。実は現在確認されている魔物たちは総じて耐久力が高く、中々倒れない為、一部では「G」などというあだ名で呼ばれていたりする。――なお、どこからその名前が出てきたのかは定かではない。
そんな彼らを見ながら呟く人物が1人。
「阿保らしい話してんな」
スキンヘッドの上に鶏の鶏冠のような銀髪のモヒカンが乗る男性・アッガスが冒険者たちへ軽蔑するような視線を向けながら呟いたのだ。
そんなアッガスをなだめるように口を開く、翡翠色の髪の女性・ミリー。
「まあまあ。ほら、なんとかかんとかって言葉もあるし、大目に見ようよ」
一番大事な部分があやふやなミリーの台詞は、どうやらアッガスにスルーされたらしく、先ほどと同じセリフをジンに投げかけていた。
「・・・こればかりは体験しないと分からないだろう。何かあったら守ってやるくらいしかできないさ」
アッガスに声をかけられたジンは溜息を吐きながら答える。
「・・・あんな現実を知らない阿保共のために死にたくはないな」
そんなジンに対しアッガスが呟く。
「そうだな。どうせ死ぬならオーガスくらい華々しい方がいいな」
「だな」
互いに同意するジンとアッガス。彼らにとって、3年前、オーガスのとった行動はそれほど衝撃的だったのだろう。――いや、衝撃的ではないのかもしれない。ただ散る時は、どうせなら大事な人のために。そう思ったのだろう。
そんな彼らの元にジェラードからの伝令が来たのは、ジンとアッガスの会話からわずか1分後の事だった。
伝令からの指示を聞いて湧き上がる冒険者たち。
「行くぞ、てめえら!」
勇んで出撃していく冒険者たち。その先頭を進むのは、初戦において西門以外に配備されていた冒険者たち。その後方に続くのは、初戦で西門へ配備されていた冒険者たちだった。
それからほどなくして、先頭を進んでいた冒険者たちは現実を目の当たりにする。
「ひ、ひ、ひ、うわあ!」「ま、待ってく――」「こいつ、よくも!」「帰れ!てめえらの居場所はここじゃない!」
戦場。相手を殺し、味方が殺される場所。人間の最も醜い部分であり、最も生物らしい部分。それを目の当たりにしてしまった彼らは、恐怖にすくむ足を前に踏み出せないでいた。
「味方を助けろ!誰も死なせるな!」
むしろ彼らより先に駆けだしたのは、初戦で西門に配備されていた冒険者たちだった。先頭を進んでいた彼らを追い越し、即座に戦線へ参入した彼らは、初戦と全く異なる動きで魔物たちを消し去っていく。
おそらく初戦においては、彼らも現在足がすくんでいる冒険者たちと同じ状況だったのだろう。――危険だから、生きるためだからというものではなく、明確な「こいつを殺す」という殺意を持って相手を殺すというのは、それほどまでに生命として抵抗があることなのだ。
実際、軍人と呼ばれる人々はそういった感情を感情以外の物・・・例えば、条件付けなどで誤魔化していたりする。それゆえに、冷静になった瞬間にPTSD(心的外傷後ストレス)を発症するリスクがあるのだが。
「おい、お前ら。さっきの威勢はどうした?魔物どもをぶっ倒すんだろ?今のままじゃお前たちがあざけ笑ってたあいつらと同じだぜ?」
そんな彼らを挑発するようにジンが声をかける。――戦場に置いて、兵士たちを恐怖などの感情から引っ張り上げるには、挑発するように貶すことが一番効果的である。
自尊心が皆無な人間ならともかく、普通であれば自尊心が刺激され一種の興奮状態になるからである。だが所詮は応急処置程度なので、慢性化すると効果は無くなっていくのだが。
「ふ、ふざけんな!だれが怖気づいてるって!?」「そうだ、俺たちのどこが!」「適当なこと言ってんじゃねーぞ!」
ジンがかけた言葉はどうやら、足を止めていた彼らを奮い立たせたらしく、彼らは感情に任せて魔物たちへと突撃していく。
そんな彼らに続き進んでいく「大鷲の翼」。だがその直後、前線で戦う兵士の1人から絶望に満ちた声が上がった。
「き、北門に出た化け物だ!」
彼の視線の先。そこには昨日北門に現れた、ケンタウロスのような馬の体に三面六臂の人の体が乗るという化け物そのものと言える魔物だった。
「変異種・・・!?」
その兵士の声を聞き駆けつけるリオ達。そうして視界に収めた魔物は、動物型を象る普通の魔物とは大きく異なる、グレイで目にしていた変異種とそう大差のない化け物だった。
ちなみに変異種とは、複数の生物を無理矢理くっつけたような存在である。見た目があまりにもこの世の物とは思えない為、通常の魔物と区別してそう呼ばれている。
「おお、昨日やった奴じゃねえか」
変異種の姿を見たフジミが嬉しそうに呟く。そんなフジミに対して「戦闘馬鹿」という言葉と共に冷めた視線を向けるエレナとレーベ。そして残る面々はただただ溜息を吐いていた。
少しし、ジンがフジミへ声をかける。
「フジミ、あれ任せられるか?」
「俺様を誰だと?・・・と言いたいが、ありゃ俺様がやった個体よりずいぶん強化されてるな」
意気込んだフジミだが、すぐに本音を零す。
「・・・みたいね。変異種クラスでも最高レベルだと思うわ」
フジミの台詞を肯定するようにエレナが口を開く。エレナは天性の才能として周囲の魔力をある程度探ることができる。そのお陰でグレンでは「変異種だけ」であれば周囲にいるかどうかは感知できたのである。ちなみに、普通の魔物は多少普通の動物より魔力が多い程度なのでエレナでも感知できない。あくまでも彼女の才能は「一定範囲内の一定以上の魔力を感知できる」程度であり、万能とは程遠い。
「そうか。なら、リオ、レーベ、エレナを付けたらどうだ?」
それを聞いたジンがフジミに対し戦力案を伝える。
「それなら1人犠牲にすれば倒せるぜ。・・・犠牲を出したくないなら追加であんたと短剣使いの雌ガキだな。それ以下は誰か死ぬか再起不能と考えな」
「わかった。ふぐお、お前は周囲の警戒をしてくれ」
「フグ」
フジミの台詞を聞いてすぐにその案に乗るジン。実際に彼の変異種と戦ったフジミの言う事である。ジンとしては信じる以外の選択肢は無かった。
「行くぞ、あいつを倒せば勝ちだ」
そのジンの言葉と共に、ふぐお以外の面々は変異種の元へと駆けだした。
「また来たぞー!!」
辺りに響く兵士たちの声。それに呼応するように急ぎガレイ西門へと向かう休憩中の兵士たち。中には食事中の兵士もいたが、彼らも洩れなく西門へと急いでいく。
「ふぐお、行くよ。・・・メイン、町の人たちのところに戻って」
リオがまだブラッシングされていたふぐおへ声をかけ、すぐにメインに視線をやる。
対するメインは不満そうな表情を浮かべながらも、リオの言葉に従い安全な東門の方へ向かおうとする。だが彼女は、くるりとリオの方を振り返ると、リオへ声をかける。
「お兄ちゃん、頑張って」
だがリオの方は既に西門へ駆け出しており、彼の元へ彼女の声が届くことは無かった。
再度魔物たちの来襲した西門では、すでに視界に入る魔物たちの大軍を望みながら部隊が展開されていた。
右翼へ第三小隊44名。左翼へ第一小隊50名。中央へ第四小隊50名。3小隊の背後へ第六小隊、第二小隊計90名と冒険者・傭兵たちが配備されていた。
対する魔物たちは、100体ずつに分かれた集団が各前線へ進み、その背後に計500体ほどの集団が控えていた。先ほどの戦闘の際よりも多い、合計900体。さらに、それらの背後には無傷の600体の魔物たちが控えていた。
両者が配置についてから程なくして本日2度目の戦端が開く。
「再度返り討ちにしてやれ!ガレイを守るのだ!」
最前線を駆ける兵士の1人が、魔物たちの戦闘へと突撃しながら叫ぶ。その直後、周囲から上がる鬨の声。対する魔物たちも彼らに負けじと咆哮を上げ、猪型の魔物を先頭に突撃していく。
直後、ぶつかる両者。けたたましい咆哮と鬨の声は、すぐにお互いの悲鳴と怒りへ変わっていく。
「傭兵たちを先に出せ。それに続くように冒険者たちを。各戦線を支えさせろ」
後方からその様子を見ていたジェラードが冷静に指示を飛ばす。
冒険者と傭兵。どちらも命知らずな一面を持つ彼らだが、なぜジェラードが先に傭兵を先に出したのか。それにはちゃんとした理由がある。
冒険者は基本的に集団で動く。それに対し傭兵という存在はソロで依頼をこなすことも多く、楔として打ち込むには最適な存在だからである。
楔として打ち込まれた傭兵の元へ、その楔を深く打ち込むためのハンマーである冒険者や他の兵士がくればどうなるかは想像に易い。
戦争とはどんな状況においても、要は陣取りゲームと変わらない。いつの時代でも結局の所、あらゆる手を使い、最終的により多くの陣地を奪い取ったほうが勝者なのだ。そこには引き分けと言える引き分けは存在しない。
「それから第六小隊も出せ。右翼からそれぞれ2、1、2分隊だ」
ジェラードの指示を伝えるために伝令たちが駆け、各戦場へ散っていく。
(これで魔物たちを返り討ちにできるな)
彼のこの言葉が実証されたのは、これから2時間後であった。
場所は変わり、ジン達が配備されたガレイ駐屯隊第四小隊の後方。そこでは「大鷲の翼」のほかに、先ほどの戦闘に参加していた冒険者や、各門に配備されていた冒険者たちの姿があった。
「お、始まったぞ」「かー、早く魔物どもをぶっ倒してーぜ」「その前に戦闘が終わらないといいな」
冒険者たちの一部が声を上げる。
「くそ、あいつら好き勝手言いやがって。痛い目見ろっての」「おいおい、気持ちは分かるが、同業にそんなこと言うなよ」
テンションの高い冒険者たちとは裏腹に、そんな彼らを睨む冒険者。そんな彼らは、先ほどの戦いで兵士たちと共に戦いながらも苦戦していた冒険者たちであった。
「知らぬが仏」という言葉があるが、その言葉が当てはまるのが現在騒いでいる冒険者たちだろう。実は現在確認されている魔物たちは総じて耐久力が高く、中々倒れない為、一部では「G」などというあだ名で呼ばれていたりする。――なお、どこからその名前が出てきたのかは定かではない。
そんな彼らを見ながら呟く人物が1人。
「阿保らしい話してんな」
スキンヘッドの上に鶏の鶏冠のような銀髪のモヒカンが乗る男性・アッガスが冒険者たちへ軽蔑するような視線を向けながら呟いたのだ。
そんなアッガスをなだめるように口を開く、翡翠色の髪の女性・ミリー。
「まあまあ。ほら、なんとかかんとかって言葉もあるし、大目に見ようよ」
一番大事な部分があやふやなミリーの台詞は、どうやらアッガスにスルーされたらしく、先ほどと同じセリフをジンに投げかけていた。
「・・・こればかりは体験しないと分からないだろう。何かあったら守ってやるくらいしかできないさ」
アッガスに声をかけられたジンは溜息を吐きながら答える。
「・・・あんな現実を知らない阿保共のために死にたくはないな」
そんなジンに対しアッガスが呟く。
「そうだな。どうせ死ぬならオーガスくらい華々しい方がいいな」
「だな」
互いに同意するジンとアッガス。彼らにとって、3年前、オーガスのとった行動はそれほど衝撃的だったのだろう。――いや、衝撃的ではないのかもしれない。ただ散る時は、どうせなら大事な人のために。そう思ったのだろう。
そんな彼らの元にジェラードからの伝令が来たのは、ジンとアッガスの会話からわずか1分後の事だった。
伝令からの指示を聞いて湧き上がる冒険者たち。
「行くぞ、てめえら!」
勇んで出撃していく冒険者たち。その先頭を進むのは、初戦において西門以外に配備されていた冒険者たち。その後方に続くのは、初戦で西門へ配備されていた冒険者たちだった。
それからほどなくして、先頭を進んでいた冒険者たちは現実を目の当たりにする。
「ひ、ひ、ひ、うわあ!」「ま、待ってく――」「こいつ、よくも!」「帰れ!てめえらの居場所はここじゃない!」
戦場。相手を殺し、味方が殺される場所。人間の最も醜い部分であり、最も生物らしい部分。それを目の当たりにしてしまった彼らは、恐怖にすくむ足を前に踏み出せないでいた。
「味方を助けろ!誰も死なせるな!」
むしろ彼らより先に駆けだしたのは、初戦で西門に配備されていた冒険者たちだった。先頭を進んでいた彼らを追い越し、即座に戦線へ参入した彼らは、初戦と全く異なる動きで魔物たちを消し去っていく。
おそらく初戦においては、彼らも現在足がすくんでいる冒険者たちと同じ状況だったのだろう。――危険だから、生きるためだからというものではなく、明確な「こいつを殺す」という殺意を持って相手を殺すというのは、それほどまでに生命として抵抗があることなのだ。
実際、軍人と呼ばれる人々はそういった感情を感情以外の物・・・例えば、条件付けなどで誤魔化していたりする。それゆえに、冷静になった瞬間にPTSD(心的外傷後ストレス)を発症するリスクがあるのだが。
「おい、お前ら。さっきの威勢はどうした?魔物どもをぶっ倒すんだろ?今のままじゃお前たちがあざけ笑ってたあいつらと同じだぜ?」
そんな彼らを挑発するようにジンが声をかける。――戦場に置いて、兵士たちを恐怖などの感情から引っ張り上げるには、挑発するように貶すことが一番効果的である。
自尊心が皆無な人間ならともかく、普通であれば自尊心が刺激され一種の興奮状態になるからである。だが所詮は応急処置程度なので、慢性化すると効果は無くなっていくのだが。
「ふ、ふざけんな!だれが怖気づいてるって!?」「そうだ、俺たちのどこが!」「適当なこと言ってんじゃねーぞ!」
ジンがかけた言葉はどうやら、足を止めていた彼らを奮い立たせたらしく、彼らは感情に任せて魔物たちへと突撃していく。
そんな彼らに続き進んでいく「大鷲の翼」。だがその直後、前線で戦う兵士の1人から絶望に満ちた声が上がった。
「き、北門に出た化け物だ!」
彼の視線の先。そこには昨日北門に現れた、ケンタウロスのような馬の体に三面六臂の人の体が乗るという化け物そのものと言える魔物だった。
「変異種・・・!?」
その兵士の声を聞き駆けつけるリオ達。そうして視界に収めた魔物は、動物型を象る普通の魔物とは大きく異なる、グレイで目にしていた変異種とそう大差のない化け物だった。
ちなみに変異種とは、複数の生物を無理矢理くっつけたような存在である。見た目があまりにもこの世の物とは思えない為、通常の魔物と区別してそう呼ばれている。
「おお、昨日やった奴じゃねえか」
変異種の姿を見たフジミが嬉しそうに呟く。そんなフジミに対して「戦闘馬鹿」という言葉と共に冷めた視線を向けるエレナとレーベ。そして残る面々はただただ溜息を吐いていた。
少しし、ジンがフジミへ声をかける。
「フジミ、あれ任せられるか?」
「俺様を誰だと?・・・と言いたいが、ありゃ俺様がやった個体よりずいぶん強化されてるな」
意気込んだフジミだが、すぐに本音を零す。
「・・・みたいね。変異種クラスでも最高レベルだと思うわ」
フジミの台詞を肯定するようにエレナが口を開く。エレナは天性の才能として周囲の魔力をある程度探ることができる。そのお陰でグレンでは「変異種だけ」であれば周囲にいるかどうかは感知できたのである。ちなみに、普通の魔物は多少普通の動物より魔力が多い程度なのでエレナでも感知できない。あくまでも彼女の才能は「一定範囲内の一定以上の魔力を感知できる」程度であり、万能とは程遠い。
「そうか。なら、リオ、レーベ、エレナを付けたらどうだ?」
それを聞いたジンがフジミに対し戦力案を伝える。
「それなら1人犠牲にすれば倒せるぜ。・・・犠牲を出したくないなら追加であんたと短剣使いの雌ガキだな。それ以下は誰か死ぬか再起不能と考えな」
「わかった。ふぐお、お前は周囲の警戒をしてくれ」
「フグ」
フジミの台詞を聞いてすぐにその案に乗るジン。実際に彼の変異種と戦ったフジミの言う事である。ジンとしては信じる以外の選択肢は無かった。
「行くぞ、あいつを倒せば勝ちだ」
そのジンの言葉と共に、ふぐお以外の面々は変異種の元へと駆けだした。
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