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12月31日・後編
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それから数時間後。帰宅し昼食をとった後、俺は気温によってある程度温かくなっている居間でぼんやりとしていた。
そんな俺の隣では、まるで人肌にくっついて暖をとる猫のように光がべったりと張り付いていた。そして俺の向かいに座る祖父はというと。
「新、寒いなら無理しないで部屋に戻りなさい」
半袖長ズボンというスタイルで寒さなど感じさせないような表情のままそう口にする。
「・・・あ、うん。大丈夫だから気にしないで」
対する俺は、上の空のままそう口にする。なぜ俺は極寒の居間でぼんやりとしているのだろうか?その理由はおそらく、バス停で浮かんだ疑問からだろう。
(俺はみやこのことをどう思っているんだろう)
祖父を介護している少女。初めはなんとなくとっつきにくい感じのあった彼女だったが、1週間で彼女のいろんな面が見えた。
俺が当初思っていたよりも打たれ弱くて、誰かの悲しみに共感できる存在。
それでありながら、弱音を他人に見せないようにする態度。なんとなく「強い女性」という言葉が似合いそうな少女は、何か目的のために行動している――
(そしてその目的の対象はおそらく俺、か・・・)
午前中にしたみやことの会話を思い出しながらそう結論づける。
(ただ、時折それっぽくない発言もあるんだよな・・・)
それと同時に浮かんできたのは、たまに見せるみやこの視線。昨日の食堂でもそうだったが、時折見せる彼女の感情任せのような行動や視線は、正直言って理解しがたいものばかりだった。
(まさか、みやこが俺を好きになってきているなんてことはあり得ないだろうし、ますます訳が分からないな)
内心で首を傾げる。それからいろいろと考えたりもしたが、やがてどうでもよくなった俺は未だに俺に引っ付いている光に声をかける。
「部屋に戻りたいから離れてくれるか?」
「なら、ひかりも一緒に行く」
どうやら光は無理して居間にいたらしく、俺が声をかけるとすぐに俺が寝室にしている部屋へと向かう。
「部屋に来ていいとは言ってないんだけどな・・・」
あっという間に部屋へと入っていった光を見て苦笑いを零した俺は、光に続いて部屋へと入っていった。
そのあと部屋に入った俺はまず今夜の準備を終え光と話をして時間を潰していると、居間の方からみやこの声が聞こえてきた。
「みやこが来たみたいだから、そろそろ行くか」
「うん。・・・はい、荷物」
みやこの声が聞こえたため俺が立ち上がると、光は俺が準備したバックを俺に渡してくる。それを受け取った俺は光の頭を撫でると、2人で居間へと姿を現す。
「それじゃ行こうぜ」
そうして俺たち3人は集合場所である食堂へと向かった。
日が暮れ空に星が瞬き始めた頃、俺たちは集合場所である食堂へと到着した。
すでに食堂自体は営業を終えており、軒先には「閉業中」の立て札が立っていた。
「こんばんはー」
俺はその立て札を気にすることなく食堂の入り口を開く。すると店内には、今回の提案者である恭介兄をはじめとした地元の友人達5人が揃っていた。
「新、ようやく来たか。待ちくたびれたぞ」
俺たちの姿を見た恭介兄が声をかけてくる。
「よし、皆行くか」
恭介兄が店内にいた友人たちに声をかけ俺たちと共に神社へと向かう。その道中でみやこと金太郎の自己紹介が済んでいないことに気づいた俺は口を開く。
「そういえばみやこと金太郎って自己紹介まだだよな?」
「ん?宮川先輩とは知り合いだぜ?うちの学校、料理部と手芸部の部室が隣でな、何度か話もしたことがある」
金太郎からの告白に少しだけ驚いた俺は、意外そうな視線をみやこに向ける。
「・・・失礼なことを思われている気がするけど、本当よ。ていうか、一之宮さんがこの面子と知り合いだったことの方が驚きなのだけれど」
みやこはそう口にしながら接点の少なそうな俺の友人たちを見る。
「オレは新に誘われて来たんだぜ?・・・まあ、他の先輩たちとも知り合いだけどよ」
「え・・・ということは、新君の趣味を知っているの?」
「?そうだが・・・なんだ、宮川先輩も「同士」なのか?」
みやこと会話していた金太郎が期待したような瞳を俺に向けてくる。だが残念ながらみやこは「同士」ではない。
そのことを伝えるために俺が首を振ると、金太郎は残念そうな表情を浮かべながらみやこに声をかける。
「そっか・・・宮川先輩、今の話は忘れてくれ」
金太郎がそう口にするが、みやこの方はいつだったか言った「戦友」の存在に感づいたらしく、なぜかふくれっ面になりながら俺の方を見てくる。・・・だが残念だったな、みやこ。金太郎が恋している存在を俺は――みやこと相手の男子以外は全員知っている。
「そうだ、海。金太郎と会うのも久しぶりだろ?少しは話をしたらどうだ?」
「え!?あ、ちょ、新先輩!?」
「そうですね。――金子先輩、新さんに変なことされてませんか?」
「おい、海?どういう意味だそれは?」
「言葉通りです」
普通に会話の流れに持っていく――と思いきや、急に意味の分からないことを口に出す海。
「へ、へんなこ、こここ、ことはされてない、ぜ・・・よ」
先ほどまで俺と会話していた男勝りな言動はどこへやら。一瞬にして人が変わったように話す金太郎を見て、思わず吹き出す俺たち。
そんな中、唯一笑っていないのはみやこと海だけだった。
「お、おい!笑うんじゃねえよ!」
吹き出した俺たちを見て顔を真っ赤にしながら声を上げる金太郎。そんな彼女に同調するみやこと海。
対する吹いた側の人間を代表するかのように恭介兄が口を開く。
「いや、こここって・・・笑うなって、言う方が、むりだろう・・・」
そう口にしながらも笑いが堪えきれないようで、再度吹き出す恭介兄。そんな恭介兄に釣られるように俺たちも再度吹き出す。恭介兄の言う通り、あんな鶏みたいな喋り方をされては腹筋が持たない。
「こここ・・・コココ・・・鶏?・・・ップ」
恭介兄の言葉から俺たちと同じような想像をしたらしきみやこが一瞬吹き出す。だが、俺たちのように盛大に笑い転げるのは失礼だと思っているのか、吹き出しながらもなんとか耐えていた。ただし、その表情はもう一押しで大爆笑する寸前だったが。
「だーれが鶏だってー!?」
そんな俺たちに対し、大声を上げる金太郎。だがその大声に驚いた海と視線が合うと、秒速で挙動不審になっていく。
「・・・朴念仁を相手にすると大変だな」
その光景を見た俺は感想を口にする。すると、なぜかみやこ、光、幸子さんの3人から「お前が言うな」と言わんばかりの視線を向けられる。・・・え、何?まさかのハーレム状態なのか?・・・いや、勘違いか。俺にそんな魅力なんてないだろうし。というか、現実でそんなことになっても正直困る。
そんな調子で神社へと向かっていった俺たちは、次第に増えていく人の流れに乗りながら神社に到着したのだった。
神社へと到着した俺たちは、8人で固まったまま屋台を巡っていた。
さすがに夏祭りのように大量の屋台が立ち並んでいるわけではないが、それでも10軒くらいの飲食系の屋台と3件ほどの遊戯系の屋台が立ち並び、各屋台にはお参りを待っているらしき参拝客の姿があった。
そんな中を俺たちが歩いていると、不意に背後から声が上がった。
「あれ、芸能人の光みゆじゃね?」
その台詞に俺が振り向くと、そこには男性3人、女性1人の4人グループが俺たちの方を指さしながら話をしていた。
「ばっか、こんなとこに芸能人がいるわけないだろ?つか、いるにしてもあんなガキどもとつるまねーだろ」
「それもそうだよな。こんな田舎の年末年始に来るならテレビの関係以外ありえないよな」
笑い声を上げながら談笑する4人。そんな4人に怒りを覚えた俺は、思わず声をかけようとするが――
「お兄ちゃん、駄目だよ」
光がそう口にしながら俺の服の袖を引っ張る。
「でも、光を馬鹿にされて黙ってられるかよ」
「いいんだよ、あんなのはいつものことだもん。それよりも、今は楽しむことの方が先だよ!」
そのまま俺の服の袖を強く引っ張る光。その勢いに身を任せる形となった俺は、最後に4人組の方を見てから友人たちと屋台を回り始めた。
「よし、ここからは分かれて行動しよう。それぞれ好きな屋台を巡って、22時前に境内に集合な」
恭介兄がそう口にしたのは、全員で屋台を見て回った後だった。実質の自由行動時間。だが、恭介兄の次の言葉でそれは個人で行動する物ではなく複数人で行動するものとなる。
「で、金太郎と海は一緒のグループな。新は・・・光と宮川と佐藤の誰がいい?」
「はぁっ!?」
突然の恭介兄の発言に声を上げる。そして恭介兄に名前を呼ばれた3人はというと、幸子さんは笑顔を浮かべたまま「あらちん、気にしないでいいよ~」と口にし、光は問答無用で俺の片腕にしがみつき、みやこは俺を刺し殺して来そうな視線を向けていた。
「あ、林太はオレと一緒な。・・・で、新は3人から2人を選べ」
恭介兄、俺は恭介兄のことが今この瞬間から理解できない存在になったよ。ていうか、3人とも反応が異なるが、選ばなかったら選ばなかったで物凄い根に持たれそうで困るんだが。
「・・・本当に選ばないと駄目?」
俺は最後の希望をもって恭介兄に尋ねる。だが恭介兄は悪だくみを思いついた少年のような瞳を浮かべると、口を開く。
「悪いな、新。こればっかりは逃れられないぜ?」
「ごめん、普通に意味が分からないよ、恭介兄」
恭介兄は頼りにならないと理解した俺は、ある策を思いつく。
「じゃあ、じゃんけんで勝った2人とってことで」
古典的だが、現状では一番禍根を残さないであろう選択肢。それを思いついた俺が早速口にすると、3人は即じゃんけんを始めた。
少しの間響くじゃんけんの際の決まり文句。そうして勝った2人は――
「やったー!お兄ちゃんと一緒に回れる!」
「・・・勝ったわ」
光とみやこの2人だった。光は俺に抱き着き、みやこはなぜか誇らしげな表情を浮かべていた。
そして負けた幸子さんはというと、しばらく自分の右手を眺めてから恭介兄の元へ移動していった。
「それじゃ、22時前に境内に集合な」
その恭介の言葉と共に、3グループに別れた俺たちはそれぞれ屋台巡りを始めたのだった。
3グループに別れて屋台巡りを始めてから数分後。光が行きたいという屋台へ向かった俺たちは、そこで光の姿を見守っていた。
「当たったー!」
光が行きたがっていた屋台。それは夏祭りでもよく目にする射的屋だった。
仕事の関係上、世間的には休みでも関係なく仕事の入る可能性のある光は、小学生以来ほとんど祭りには参加できていない。そのため、久しぶりのこういった雰囲気を満喫しているようで、先ほどからずっと笑顔を浮かべていた。
「そろそろ次に行くぞ」
しばらくして俺が声をかけるが、光は射的がよほど気に入ったのか、そこから動こうとはしなかった。
「あともう一回!」
「駄目だ。そろそろ夜ご飯を食べとかないと、年越すまでご飯なしだぞ?」
もう一回と駄々をこねる光に対して、俺はそう口にする。
すると年を越すまで何も食べられないという言葉に反応したらしき光が、それは嫌だと泣きついてくる。――実は彼女も俺やみやこと同じように「祖父からの洗礼」を受けた人間である。・・・今思えば、小さな子供にすら「あれ」をしていた祖父は容赦ないと思う。まあ、そのお陰で毎日3食きちんと食べているわけだが。
泣きついてきた光に対し、俺は声をかける。
「それじゃあ、さっさとご飯を食べてまた来るか」
「うん!」
「え、また来るの・・・?」
俺の台詞に頷く光とは対照的に、嫌そうな表情を浮かべるみやこ。実は、彼女は驚くほどに射的が下手だったのだ。どのくらいかというと、真っ直ぐ狙っているはずなのに、まるで重力がねじ曲がったように明後日の方向へ飛んでいくのだ。仕舞いには、景品の前で物理法則が書き換わったかの如く急カーブや失速をしていた。その光景はもはや「下手」という言葉を通り越して「才能」と言っても差し支えないレベルだった。
「・・・光のを見守るだけだぞ?」
「な、分かってるわよ!頼まれたとしても私は絶対にやらないから」
「・・・多分、みやこに頼む日は間違っても来ないと思うぞ・・・」
俺がそう口にした直後、まるで威嚇する猫のような形相になるみやこ。そんな彼女を放っておいて、俺は光と食べ物を売っている屋台へと移動する。
すると急に光が口を開く。
「・・・あ、かき氷屋さんだ」
そう口にした光の視線を辿ると、こんな真冬にも関わらずかき氷を売っている酔狂な屋台を発見した。
「光、いくら何でもあれはご飯にならないからな?」
今にも飛びつきそうな光を制しながら、俺は諭すように声をかける。氷といっても所詮は水分が固まったものであり、食事には程遠い。というか、なんでこんな時期にかき氷なんて売っているんだろうか・・・?そしてこんな時期にかき氷を食べようなんていう酔狂な輩がいるのだろうか?
「ご飯にはならなくても、デザートにはなるよね?」
・・・いたよ、ここに。
光は俺の台詞に答えると、すぐに食事になりそうな屋台を探し始める。そうして彼女が向かったのは近くにあった焼きそば屋。
「あ、光。どうせなら俺の分も買ってきてくれ」
「分かったー。紅ショウガ抜き?」
「バカ、もう食えらい」
「えへへー」
軽口を2人で叩き合うと、いつからいたのかみやこが口を挟んでくる。
「新君、紅ショウガ食べられなかったの?」
「急に話しかけるなよ、ビビるだろ・・・。今でもあんまり変わってないが子供舌だったんでな」
急に現れたみやこに驚きながら言葉を返す。するとみやこは意外そうな表情を浮かべると、光が向かった屋台の隣にある屋台へと向かっていった。
それから光とみやこがそれぞれ晩御飯となる食べ物を購入し、俺たちは境内につながる石段の上で購入した食事を口に運んでいた。
23時ごろになると人で溢れる場所だが、流石に20時から並ぶ人間は居ないらしく、石段では俺たちと同じように食べ物を口に運ぶ人々や待ち合わせをしているらしき人々で溢れていた。
「よし、それじゃあ残り2時間、光の射的を眺めながら時間を潰すか」
やがて晩御飯となる食事を食べ終えた俺たちは、さきほど訪れていた射的屋に顔を出し、時間になるまで光の射的を見守ったのだった。
それから2時間後。光の射的を見守っていた俺とみやこは時間になったことを確認すると、光を連れて境内へと向かった。
未だに境内には参拝客らしき人の姿は見当たらず、俺たちのみが神社の境内にいた。
「よし、全員集まったな。それじゃあ、お参りだけして一旦帰るぞ」
全員が集まったことを確認した恭介兄が先頭を切ってお参りし、それに続くように俺たちもお参りしていく。
一般的に2年参りと呼ばれるものとは大きくかけ離れているが、ここに居るメンバーが恭介兄を除いて高校生以下なことを考えればなんらおかしいことはないだろう。
そうして全員の参拝が終わると、恭介兄が口を開いた。
「そしたら、明日は9時に食堂集合な。――今度はちゃんと新年の挨拶も交えてな」
恭介兄の台詞と共に、光と金太郎が明後日の方向へ目を泳がせる。その様子を見ていた恭介兄から「冗談だよ」と言われ、胸をなでおろす2人。
その冗談交じりの恭介兄の台詞と共に、俺たちはそれぞれの家路についていった。
恭介兄たちと別れてから1時間半後。家に帰り着いた俺と光、みやこの3人は、俺が買ってきたうどんを使って作った、みやこ特製の年越しうどんを口にしていた。
かまぼこやほうれん草のお浸しに加え、わかめに沢庵、油揚げ、かき揚と、豪勢な見た目をしたうどんをすすりながら、少し早い新年を祝う言葉を口にしていた。
「・・・なんだか不思議な気分だな」
「確かにそうね。ほんの1週間前に顔を合わせた男の子とこうして新年を祝ってるっていうのは」
「ひかりも!お兄ちゃんとこうしてるのは3年ぶりだし、友達とこうやって新年を祝えるのは初めてだよ」
俺たち3人は、それぞれ思ったことを口にしていく。――思えば、この1週間の間に色々とあったな。
初めてみやこと会ったときに「変態セクハラ魔」とか「獣」とか意味の分からない呼称で呼ばれたり、いきなり過去に関する話をされたり。それから光が祖父の家に来て、3人でなんだかんだ言って騒いだりもしたか。
とか思ってたら幸子さんに告白まがいなこともされたっけ。で、その時俺の黒歴史をばらされた上に、恭介兄の黒歴史も暴露されていたな。――あの時林太に向けられた視線は忘れられないな。
その数日後には紆余曲折あってみやことデートすることになって、俺の趣味がみやこにバレたんだったな。・・・それとは関係ないが、そのあと荷物持ちにされてから乗ったバスでお互いに書店で買った本を紹介したり。
その翌日にはみんなで親睦を深めて・・・あれ?深めていた、よな?俺がなんかやたら悲惨な目に遭ったような記憶があるんだが。そして今日、皆と二年参りもどきをした。
思えば、かなり濃密な1週間だったような気がする。間違いなく今まで過ごしてきた冬休みの中で1番のレベルだ。
「みやこ、光。来年もよろしくな」
1週間を振り返った俺は、自然とその言葉を口にする。それに対し2人は――
「こちらこそよろしく、新君」
「お兄ちゃん、ひかりも同じ気持ちだよ」
それぞれそう口にした。それを聞いた俺は、なんだか今この瞬間が宝石のように見えてしまう。――おそらくそれは、あの2つの夢を見たからだろう。いつ壊れるか分からない日常。それを夢の中とはいえ実感してしまったんだと俺は改めて認識する。
それから約20分後。ちょうど新年になったタイミングで新年の挨拶を交わした俺たちはそれぞれ部屋に戻り、床に就いたのだった。
そんな俺の隣では、まるで人肌にくっついて暖をとる猫のように光がべったりと張り付いていた。そして俺の向かいに座る祖父はというと。
「新、寒いなら無理しないで部屋に戻りなさい」
半袖長ズボンというスタイルで寒さなど感じさせないような表情のままそう口にする。
「・・・あ、うん。大丈夫だから気にしないで」
対する俺は、上の空のままそう口にする。なぜ俺は極寒の居間でぼんやりとしているのだろうか?その理由はおそらく、バス停で浮かんだ疑問からだろう。
(俺はみやこのことをどう思っているんだろう)
祖父を介護している少女。初めはなんとなくとっつきにくい感じのあった彼女だったが、1週間で彼女のいろんな面が見えた。
俺が当初思っていたよりも打たれ弱くて、誰かの悲しみに共感できる存在。
それでありながら、弱音を他人に見せないようにする態度。なんとなく「強い女性」という言葉が似合いそうな少女は、何か目的のために行動している――
(そしてその目的の対象はおそらく俺、か・・・)
午前中にしたみやことの会話を思い出しながらそう結論づける。
(ただ、時折それっぽくない発言もあるんだよな・・・)
それと同時に浮かんできたのは、たまに見せるみやこの視線。昨日の食堂でもそうだったが、時折見せる彼女の感情任せのような行動や視線は、正直言って理解しがたいものばかりだった。
(まさか、みやこが俺を好きになってきているなんてことはあり得ないだろうし、ますます訳が分からないな)
内心で首を傾げる。それからいろいろと考えたりもしたが、やがてどうでもよくなった俺は未だに俺に引っ付いている光に声をかける。
「部屋に戻りたいから離れてくれるか?」
「なら、ひかりも一緒に行く」
どうやら光は無理して居間にいたらしく、俺が声をかけるとすぐに俺が寝室にしている部屋へと向かう。
「部屋に来ていいとは言ってないんだけどな・・・」
あっという間に部屋へと入っていった光を見て苦笑いを零した俺は、光に続いて部屋へと入っていった。
そのあと部屋に入った俺はまず今夜の準備を終え光と話をして時間を潰していると、居間の方からみやこの声が聞こえてきた。
「みやこが来たみたいだから、そろそろ行くか」
「うん。・・・はい、荷物」
みやこの声が聞こえたため俺が立ち上がると、光は俺が準備したバックを俺に渡してくる。それを受け取った俺は光の頭を撫でると、2人で居間へと姿を現す。
「それじゃ行こうぜ」
そうして俺たち3人は集合場所である食堂へと向かった。
日が暮れ空に星が瞬き始めた頃、俺たちは集合場所である食堂へと到着した。
すでに食堂自体は営業を終えており、軒先には「閉業中」の立て札が立っていた。
「こんばんはー」
俺はその立て札を気にすることなく食堂の入り口を開く。すると店内には、今回の提案者である恭介兄をはじめとした地元の友人達5人が揃っていた。
「新、ようやく来たか。待ちくたびれたぞ」
俺たちの姿を見た恭介兄が声をかけてくる。
「よし、皆行くか」
恭介兄が店内にいた友人たちに声をかけ俺たちと共に神社へと向かう。その道中でみやこと金太郎の自己紹介が済んでいないことに気づいた俺は口を開く。
「そういえばみやこと金太郎って自己紹介まだだよな?」
「ん?宮川先輩とは知り合いだぜ?うちの学校、料理部と手芸部の部室が隣でな、何度か話もしたことがある」
金太郎からの告白に少しだけ驚いた俺は、意外そうな視線をみやこに向ける。
「・・・失礼なことを思われている気がするけど、本当よ。ていうか、一之宮さんがこの面子と知り合いだったことの方が驚きなのだけれど」
みやこはそう口にしながら接点の少なそうな俺の友人たちを見る。
「オレは新に誘われて来たんだぜ?・・・まあ、他の先輩たちとも知り合いだけどよ」
「え・・・ということは、新君の趣味を知っているの?」
「?そうだが・・・なんだ、宮川先輩も「同士」なのか?」
みやこと会話していた金太郎が期待したような瞳を俺に向けてくる。だが残念ながらみやこは「同士」ではない。
そのことを伝えるために俺が首を振ると、金太郎は残念そうな表情を浮かべながらみやこに声をかける。
「そっか・・・宮川先輩、今の話は忘れてくれ」
金太郎がそう口にするが、みやこの方はいつだったか言った「戦友」の存在に感づいたらしく、なぜかふくれっ面になりながら俺の方を見てくる。・・・だが残念だったな、みやこ。金太郎が恋している存在を俺は――みやこと相手の男子以外は全員知っている。
「そうだ、海。金太郎と会うのも久しぶりだろ?少しは話をしたらどうだ?」
「え!?あ、ちょ、新先輩!?」
「そうですね。――金子先輩、新さんに変なことされてませんか?」
「おい、海?どういう意味だそれは?」
「言葉通りです」
普通に会話の流れに持っていく――と思いきや、急に意味の分からないことを口に出す海。
「へ、へんなこ、こここ、ことはされてない、ぜ・・・よ」
先ほどまで俺と会話していた男勝りな言動はどこへやら。一瞬にして人が変わったように話す金太郎を見て、思わず吹き出す俺たち。
そんな中、唯一笑っていないのはみやこと海だけだった。
「お、おい!笑うんじゃねえよ!」
吹き出した俺たちを見て顔を真っ赤にしながら声を上げる金太郎。そんな彼女に同調するみやこと海。
対する吹いた側の人間を代表するかのように恭介兄が口を開く。
「いや、こここって・・・笑うなって、言う方が、むりだろう・・・」
そう口にしながらも笑いが堪えきれないようで、再度吹き出す恭介兄。そんな恭介兄に釣られるように俺たちも再度吹き出す。恭介兄の言う通り、あんな鶏みたいな喋り方をされては腹筋が持たない。
「こここ・・・コココ・・・鶏?・・・ップ」
恭介兄の言葉から俺たちと同じような想像をしたらしきみやこが一瞬吹き出す。だが、俺たちのように盛大に笑い転げるのは失礼だと思っているのか、吹き出しながらもなんとか耐えていた。ただし、その表情はもう一押しで大爆笑する寸前だったが。
「だーれが鶏だってー!?」
そんな俺たちに対し、大声を上げる金太郎。だがその大声に驚いた海と視線が合うと、秒速で挙動不審になっていく。
「・・・朴念仁を相手にすると大変だな」
その光景を見た俺は感想を口にする。すると、なぜかみやこ、光、幸子さんの3人から「お前が言うな」と言わんばかりの視線を向けられる。・・・え、何?まさかのハーレム状態なのか?・・・いや、勘違いか。俺にそんな魅力なんてないだろうし。というか、現実でそんなことになっても正直困る。
そんな調子で神社へと向かっていった俺たちは、次第に増えていく人の流れに乗りながら神社に到着したのだった。
神社へと到着した俺たちは、8人で固まったまま屋台を巡っていた。
さすがに夏祭りのように大量の屋台が立ち並んでいるわけではないが、それでも10軒くらいの飲食系の屋台と3件ほどの遊戯系の屋台が立ち並び、各屋台にはお参りを待っているらしき参拝客の姿があった。
そんな中を俺たちが歩いていると、不意に背後から声が上がった。
「あれ、芸能人の光みゆじゃね?」
その台詞に俺が振り向くと、そこには男性3人、女性1人の4人グループが俺たちの方を指さしながら話をしていた。
「ばっか、こんなとこに芸能人がいるわけないだろ?つか、いるにしてもあんなガキどもとつるまねーだろ」
「それもそうだよな。こんな田舎の年末年始に来るならテレビの関係以外ありえないよな」
笑い声を上げながら談笑する4人。そんな4人に怒りを覚えた俺は、思わず声をかけようとするが――
「お兄ちゃん、駄目だよ」
光がそう口にしながら俺の服の袖を引っ張る。
「でも、光を馬鹿にされて黙ってられるかよ」
「いいんだよ、あんなのはいつものことだもん。それよりも、今は楽しむことの方が先だよ!」
そのまま俺の服の袖を強く引っ張る光。その勢いに身を任せる形となった俺は、最後に4人組の方を見てから友人たちと屋台を回り始めた。
「よし、ここからは分かれて行動しよう。それぞれ好きな屋台を巡って、22時前に境内に集合な」
恭介兄がそう口にしたのは、全員で屋台を見て回った後だった。実質の自由行動時間。だが、恭介兄の次の言葉でそれは個人で行動する物ではなく複数人で行動するものとなる。
「で、金太郎と海は一緒のグループな。新は・・・光と宮川と佐藤の誰がいい?」
「はぁっ!?」
突然の恭介兄の発言に声を上げる。そして恭介兄に名前を呼ばれた3人はというと、幸子さんは笑顔を浮かべたまま「あらちん、気にしないでいいよ~」と口にし、光は問答無用で俺の片腕にしがみつき、みやこは俺を刺し殺して来そうな視線を向けていた。
「あ、林太はオレと一緒な。・・・で、新は3人から2人を選べ」
恭介兄、俺は恭介兄のことが今この瞬間から理解できない存在になったよ。ていうか、3人とも反応が異なるが、選ばなかったら選ばなかったで物凄い根に持たれそうで困るんだが。
「・・・本当に選ばないと駄目?」
俺は最後の希望をもって恭介兄に尋ねる。だが恭介兄は悪だくみを思いついた少年のような瞳を浮かべると、口を開く。
「悪いな、新。こればっかりは逃れられないぜ?」
「ごめん、普通に意味が分からないよ、恭介兄」
恭介兄は頼りにならないと理解した俺は、ある策を思いつく。
「じゃあ、じゃんけんで勝った2人とってことで」
古典的だが、現状では一番禍根を残さないであろう選択肢。それを思いついた俺が早速口にすると、3人は即じゃんけんを始めた。
少しの間響くじゃんけんの際の決まり文句。そうして勝った2人は――
「やったー!お兄ちゃんと一緒に回れる!」
「・・・勝ったわ」
光とみやこの2人だった。光は俺に抱き着き、みやこはなぜか誇らしげな表情を浮かべていた。
そして負けた幸子さんはというと、しばらく自分の右手を眺めてから恭介兄の元へ移動していった。
「それじゃ、22時前に境内に集合な」
その恭介の言葉と共に、3グループに別れた俺たちはそれぞれ屋台巡りを始めたのだった。
3グループに別れて屋台巡りを始めてから数分後。光が行きたいという屋台へ向かった俺たちは、そこで光の姿を見守っていた。
「当たったー!」
光が行きたがっていた屋台。それは夏祭りでもよく目にする射的屋だった。
仕事の関係上、世間的には休みでも関係なく仕事の入る可能性のある光は、小学生以来ほとんど祭りには参加できていない。そのため、久しぶりのこういった雰囲気を満喫しているようで、先ほどからずっと笑顔を浮かべていた。
「そろそろ次に行くぞ」
しばらくして俺が声をかけるが、光は射的がよほど気に入ったのか、そこから動こうとはしなかった。
「あともう一回!」
「駄目だ。そろそろ夜ご飯を食べとかないと、年越すまでご飯なしだぞ?」
もう一回と駄々をこねる光に対して、俺はそう口にする。
すると年を越すまで何も食べられないという言葉に反応したらしき光が、それは嫌だと泣きついてくる。――実は彼女も俺やみやこと同じように「祖父からの洗礼」を受けた人間である。・・・今思えば、小さな子供にすら「あれ」をしていた祖父は容赦ないと思う。まあ、そのお陰で毎日3食きちんと食べているわけだが。
泣きついてきた光に対し、俺は声をかける。
「それじゃあ、さっさとご飯を食べてまた来るか」
「うん!」
「え、また来るの・・・?」
俺の台詞に頷く光とは対照的に、嫌そうな表情を浮かべるみやこ。実は、彼女は驚くほどに射的が下手だったのだ。どのくらいかというと、真っ直ぐ狙っているはずなのに、まるで重力がねじ曲がったように明後日の方向へ飛んでいくのだ。仕舞いには、景品の前で物理法則が書き換わったかの如く急カーブや失速をしていた。その光景はもはや「下手」という言葉を通り越して「才能」と言っても差し支えないレベルだった。
「・・・光のを見守るだけだぞ?」
「な、分かってるわよ!頼まれたとしても私は絶対にやらないから」
「・・・多分、みやこに頼む日は間違っても来ないと思うぞ・・・」
俺がそう口にした直後、まるで威嚇する猫のような形相になるみやこ。そんな彼女を放っておいて、俺は光と食べ物を売っている屋台へと移動する。
すると急に光が口を開く。
「・・・あ、かき氷屋さんだ」
そう口にした光の視線を辿ると、こんな真冬にも関わらずかき氷を売っている酔狂な屋台を発見した。
「光、いくら何でもあれはご飯にならないからな?」
今にも飛びつきそうな光を制しながら、俺は諭すように声をかける。氷といっても所詮は水分が固まったものであり、食事には程遠い。というか、なんでこんな時期にかき氷なんて売っているんだろうか・・・?そしてこんな時期にかき氷を食べようなんていう酔狂な輩がいるのだろうか?
「ご飯にはならなくても、デザートにはなるよね?」
・・・いたよ、ここに。
光は俺の台詞に答えると、すぐに食事になりそうな屋台を探し始める。そうして彼女が向かったのは近くにあった焼きそば屋。
「あ、光。どうせなら俺の分も買ってきてくれ」
「分かったー。紅ショウガ抜き?」
「バカ、もう食えらい」
「えへへー」
軽口を2人で叩き合うと、いつからいたのかみやこが口を挟んでくる。
「新君、紅ショウガ食べられなかったの?」
「急に話しかけるなよ、ビビるだろ・・・。今でもあんまり変わってないが子供舌だったんでな」
急に現れたみやこに驚きながら言葉を返す。するとみやこは意外そうな表情を浮かべると、光が向かった屋台の隣にある屋台へと向かっていった。
それから光とみやこがそれぞれ晩御飯となる食べ物を購入し、俺たちは境内につながる石段の上で購入した食事を口に運んでいた。
23時ごろになると人で溢れる場所だが、流石に20時から並ぶ人間は居ないらしく、石段では俺たちと同じように食べ物を口に運ぶ人々や待ち合わせをしているらしき人々で溢れていた。
「よし、それじゃあ残り2時間、光の射的を眺めながら時間を潰すか」
やがて晩御飯となる食事を食べ終えた俺たちは、さきほど訪れていた射的屋に顔を出し、時間になるまで光の射的を見守ったのだった。
それから2時間後。光の射的を見守っていた俺とみやこは時間になったことを確認すると、光を連れて境内へと向かった。
未だに境内には参拝客らしき人の姿は見当たらず、俺たちのみが神社の境内にいた。
「よし、全員集まったな。それじゃあ、お参りだけして一旦帰るぞ」
全員が集まったことを確認した恭介兄が先頭を切ってお参りし、それに続くように俺たちもお参りしていく。
一般的に2年参りと呼ばれるものとは大きくかけ離れているが、ここに居るメンバーが恭介兄を除いて高校生以下なことを考えればなんらおかしいことはないだろう。
そうして全員の参拝が終わると、恭介兄が口を開いた。
「そしたら、明日は9時に食堂集合な。――今度はちゃんと新年の挨拶も交えてな」
恭介兄の台詞と共に、光と金太郎が明後日の方向へ目を泳がせる。その様子を見ていた恭介兄から「冗談だよ」と言われ、胸をなでおろす2人。
その冗談交じりの恭介兄の台詞と共に、俺たちはそれぞれの家路についていった。
恭介兄たちと別れてから1時間半後。家に帰り着いた俺と光、みやこの3人は、俺が買ってきたうどんを使って作った、みやこ特製の年越しうどんを口にしていた。
かまぼこやほうれん草のお浸しに加え、わかめに沢庵、油揚げ、かき揚と、豪勢な見た目をしたうどんをすすりながら、少し早い新年を祝う言葉を口にしていた。
「・・・なんだか不思議な気分だな」
「確かにそうね。ほんの1週間前に顔を合わせた男の子とこうして新年を祝ってるっていうのは」
「ひかりも!お兄ちゃんとこうしてるのは3年ぶりだし、友達とこうやって新年を祝えるのは初めてだよ」
俺たち3人は、それぞれ思ったことを口にしていく。――思えば、この1週間の間に色々とあったな。
初めてみやこと会ったときに「変態セクハラ魔」とか「獣」とか意味の分からない呼称で呼ばれたり、いきなり過去に関する話をされたり。それから光が祖父の家に来て、3人でなんだかんだ言って騒いだりもしたか。
とか思ってたら幸子さんに告白まがいなこともされたっけ。で、その時俺の黒歴史をばらされた上に、恭介兄の黒歴史も暴露されていたな。――あの時林太に向けられた視線は忘れられないな。
その数日後には紆余曲折あってみやことデートすることになって、俺の趣味がみやこにバレたんだったな。・・・それとは関係ないが、そのあと荷物持ちにされてから乗ったバスでお互いに書店で買った本を紹介したり。
その翌日にはみんなで親睦を深めて・・・あれ?深めていた、よな?俺がなんかやたら悲惨な目に遭ったような記憶があるんだが。そして今日、皆と二年参りもどきをした。
思えば、かなり濃密な1週間だったような気がする。間違いなく今まで過ごしてきた冬休みの中で1番のレベルだ。
「みやこ、光。来年もよろしくな」
1週間を振り返った俺は、自然とその言葉を口にする。それに対し2人は――
「こちらこそよろしく、新君」
「お兄ちゃん、ひかりも同じ気持ちだよ」
それぞれそう口にした。それを聞いた俺は、なんだか今この瞬間が宝石のように見えてしまう。――おそらくそれは、あの2つの夢を見たからだろう。いつ壊れるか分からない日常。それを夢の中とはいえ実感してしまったんだと俺は改めて認識する。
それから約20分後。ちょうど新年になったタイミングで新年の挨拶を交わした俺たちはそれぞれ部屋に戻り、床に就いたのだった。
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