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50.なった程度

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 牢屋を出て上に上がると、そこは倉庫のような建物の中で、色んな荷物などが置かれていたので、商会の倉庫として使っている場所なのかもしれない。

 流石に捕らえた子供達をそのまま運ぶわけにもいかないだろうし、こういった荷物の中に紛れ込ませて運ぶのが普通か。
 地球みたいにX線検査とかがあるわけでもないから、中身を確認されなければバレることなんてないからね。

 なんて思いつつ、そういえばとも思った。

「そういえば、ここってどこなの?」

 連れてこられている間は気絶していたので今どこにいるのかわかっていなかったりするわけで、僕はションゴンに聞いてみる。

「ここはイルザラの町の外れの建物の中ですね」

 何事もないようにションゴンは答えているが、僕は内心かなり驚いている。

 なぜなら、イルザラといえば僕達が住んでいるエルティバラから2つ隣の町だ。

 2つ隣と聞くと近くに思えるが、こちらの世界での移動手段は馬か馬車が基本で、馬車での移動となると朝にエルティバラを出ても昼を越えてようやく着くぐらい時間が掛かってしまう。

「つまり、昼にエルティバラで誘拐されたということは、もう夜中になっているってことだよな?」か。

 そうなるだろうね。

「これって無事に帰っても怒られるんじゃね?」か。

 怒られるだろうけど。

 元々後から報告してる時点で怒られるのは確定していたから、怒られるかどうかを心配する必要はないのだけど、まさかルーキーイーター達の拠点がイルザラだとは思ってもなかったね。

「エルティバラ内にあると思っていたのか?」か。

 そこまでは思ってなかったけど、もう少し近くに拠点を作ってると思ってたからね。

 だって誘拐した冒険者や子供達を運んでいるのだよ。そんな遠くまでいきなり運ぶとは思わないよね。

 だからこそ、ションゴン達の探索力を軸に作戦を考えていたわけだけど、2つ隣の町までは流石にションゴン達の探索力は届かないからね。
 もちろん捕まることが前提だからちゃんと追ってきてくれて見つけてくれるだろうし、実際見つけてくれたわけだけど、あとからそう聞くとかなり危ない橋を渡ったんだなって思ってしまうのだよね。

「自分から捕まりにいってる時点で十分危ない橋を渡っているってことを自覚しろ」か。

 確かにそれもそうか。

 僕は指示を出しているカリスナに近づいて小声で問いかける。

「カリスナ。うちの両親には連絡入れてる?」

 せめて、カリスナから連絡が入っていれば少しは父さん達の怒りもマシになると思う。

「もちろん。街の外に出た時点で連絡のための騎士を走らせたさ」

 苦笑するカリスナ。

 まぁ、それもそうか。

 今回のことではカリスナも確実に父さん達から怒られるだろうから、少しでも予防線は張っておくよね。

「それなら多少はマシなのかな」

 僕のホッとした表情にさらに苦笑したカリスナ。

「多分、100の怒りが98ぐらいになった程度だと思うぞ」
「例え小さな違いでも、時間にすれば大きな差になることもあるからね」

 そのたった2の違いで説教時間が何十分と短縮される可能性が出てくるのなら、それだけでも喜ばしいことだろう。

「それもそうか」

 僕の答えに納得したカリスナは少しニヤりとした。

 しかし、いくら途中気絶していたとはいえ、普段なら寝ているような時間なので、自然とあくびが出てきてしまう。

 それを見たカリスナは僕の頭を撫でてきた。

「ルイ。後のことは俺達に任せて馬車に乗って先に帰るといいぞ」
「そうしたいけど」

 僕はチラッとイヴィリアとオルスニードを見た。

「2人はどうするの?」

 こんな形でとはいえ、ここで会ったのも何かの縁なので、このままカリスナに任せてバイバイというのはなんか違う気がした。

「騎士団のほうで朝まで預かってから事情を聞いて、それから家に帰す感じだろうな」
「まぁ、そうなるか」

 僕はもう1度イヴィリアとオルスニードを見て考える。考えながらふと思い出す。

「2人が言っていたけど、彼らの前に冒険者がいてどこかに連れていかれたらしいよ」

 早めに教えておくと少しでもいい方向に向かうかもしれないので先に教えておく。

「そうか。それについてもこれから調べていくよ」
「あと、やっぱり2人は朝まで家で預かることにするよ」
「え?」

 カリスナは驚いた表情で僕を見てきたかと思えば、顔を近づけてきた。

「領主邸で預かるっていうのか?」

 他の騎士や冒険者に聞こえないように小声で聞いてくるカリスナに僕は頷き返した。

「いくら騎士団の駐屯所とはいえ、目覚めた時に周りに知らない大人ばかりより、ちょっとでも見知った僕達が居たほうが2人も安心するでしょ?」
「それはそうだけど、な………」

 渋るカリスナ。

「別に家じゃなくて駐屯所でもいいから、とりあえず僕達も2人と一緒にいるからね」

 僕がそう言い切ると、カリスナはため息を吐いた。

「わかったよ。騎士団の駐屯所に部屋を用意させるからそこで休め」
「それじゃあ、よろしくね」

 僕はカリスナの腕を叩くと、用意されていた馬車へと乗り込んだ。

 そして、カレンとキョウに挟まれるようにして座った瞬間に気づかなかった疲れが出てきたのだろう。キョウの肩に頭を預けてコテンと眠りに落ちたのだった。
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