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28.何度も何度も

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「それじゃあ、移動しながら地下の訓練場についての説明をしとこうか」

 先頭をフィーナさんが歩き、そのあとをルーファさん達、その後ろをついていく僕達の隣にイサナミさんがつき、さらにその後ろには野次馬の冒険者達がついてくるという形で移動を始めた。

「怪我をすることはないってどういうことなの?」

 イサナミさんとルーファさんの会話の中で1番気になったのはそこだった。

「地下の訓練場は特殊な魔法空間になっていて、たとえ死ぬような怪我をしたとしても、訓練場の外の待合スペースで復活するのよ」

「待合スペースで復活ってwww」か。

 確かにそう聞くと、1度完全に死んでるのじゃない?、って思うけど、ちゃんと生きてるならいいじゃない。

「でも復活って、復活ってwww」

 そこまで笑うことかな?

 しかし、死ぬような怪我をしても死なないとなると、1つ危惧すべきことが出てくる。

「死ぬような怪我をしても復活するなら、怪我をすることに対してなんとも思わなくなる冒険者とかが出てきくるのじゃないの?」
「よくわかってるじゃないか」

 いつの間にか横に来ていたルーファさんが僕の頭を撫でた。

「確かに、なんの対策もせずに訓練場で訓練をし続けたら、そのうち外でも怪我をしても大丈夫なんて思うヤツも出てくるだろう」

 実際、前世の日本でもゲーム内で人を殺しても罪にならないのなら、現実で人を殺しても罪にならないだろう、なんて馬鹿げた考えを持つ人がいるとかテレビで言っていたから、当然対策は必要になるだろう。

「じゃあ、何か対策しているの?」

 わかっていて対策をしていないなんてことはないだろう。

「もちろん。
 訓練場内でうけた傷は外に出れば全て治るが、受けた痛みは消えないのさ」

 ルーファさんの説明になるほどなと思う。

 確かに、怪我の痛みを覚えているのなら外で怪我をしても大丈夫なんて思うことはないだろうが、しかし、と思う部分もあった。

「それだと、傷は治っても死ぬような痛みを受けたトラウマで冒険者を止める人も出てくるんじゃないの?」

 受けた痛みを忘れることはなかなか難しいと思っている。それが死ぬような痛みならなおさらだろう。

 僕の問いかけにルーファさんは苦笑した。

「確かにそんなヤツもいたさ。
 でも、冒険者っていうのは常に危険と隣り合わせの職業なんだ。魔物と戦うなんて日常茶飯事だし、時には盗賊なんかの相手をしないといけない時もある。そんな中で無傷でいられるヤツなんてそうそういないし、パーティーにヒーラーが居たとしても状況によってはすぐに傷を治してもらえるとも限らない。
 そうなった時、痛みに耐えながらも生き延びることが出来るのか、戦い続けることが出来るのか。その覚悟も問う意味合いも地下の訓練場にはあるのさ」

 ルーファさんは楽しそうに僕の肩を叩いてきた。

 つまり、僕達は今から実力の確認と冒険者としてやっていく覚悟まで確認される、ということなのだろう。

「ということは、手加減なしで死ぬまでやるってこともあるのか」か。

 あるかもね。まぁ、魔物と戦うと決めた時点でその覚悟は出来ているからね。とことんやるほうがいい経験にもなるだろうし。

 なんて思っていると、ルーファさんをイサナミさんが叩いた。

「ルーファ。あまり脅すようなことを言わない。それに、今回はダンジョンに潜れるだけの実力があるかどうかの確認だけだから、ちゃんと手加減しなさいよ」

 しかし、ルーファさんは気にした様子もなく笑っている。

「ハハハ。ダンジョン内で魔物が手加減するわけないだろ」

 その通りなので僕も手加減は必要ないと思っているけど、それを言うとルーファさんの怒りが僕の方へ向くだろうから言わない。

「このはダンジョンでもないし、ルーファ達は魔物でもないでしょ。それに、ルーファ達の実力はギルナキルのダンジョンに出てくる魔物よりかなり上なんだから、手加減してちょうどいいくらいでしょ」

 イサナミさんはさらに叩こうとしたが、ルーファさんは今度は避けた。

「それこそイレギュラーが起きたんだよ」

 やる気満々のルーファさんは手加減をする気はやっぱりないみたい。

「あんた達クラスの魔物が出るイレギュラーがギルナキルのダンジョンで起きてたまるかー!」

 とうとうイサナミさんがキレたが、ルーファさんはそれでも気にした様子もなく笑っていた。なので、今度は1度だけではなく何度も何度もルーファさんを叩こうとしたが、ルーファさんがあっさり避け続けたのでイサナミさんはさらにルーファさんを睨みつけた。

「おぉ、こわっ。ルイくん。ダンジョンにはあれくらい恐い魔物もいるから気をつけるんだよ」
「ルーファ!」
「アハハハハ」

 ルーファさんに完全にもてあそばれているイサナミさん。

 そんなイサナミさんには悪いけど、僕は気になった点があった。

「ルーファさんのランクってどれくらいなの?」
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