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15.最大限の

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「ちょっと待った!」

 母さんが話を終わらせようとしたので、スネていた父さんは慌てて待ったをかけた。

「なにかしら?」

 母さんはわかった上であえて不思議そうに父さんを見ていた。
 そんな母さんの視線になにか言いたげな父さんだったが、最終的には何も言うことなく僕のほうを見てきた。

「俺からも2つ条件がある」

 そうだよね。父さんからも条件があるよね。もしないのなら、最初にお願いした時にすぐに了承していただろう。

「どんな条件?」

 おちょくりも終わって真面目モードに入ったので僕も真面目に話をしよう。ということで姿勢をただす。

「1つ目の条件は冒険者登録をしても冒険者ギルドからの依頼は受けるな」
「冒険者ギルドからの依頼は受けるな?それはなんで?」

 意外な条件をつけられたのでちょっと驚いた。

「冒険者が冒険者ギルドから依頼を受ける理由を知っているか?」

 冒険者ギルドすら行ったことないので、依頼を受ける理由なんて知るはずなく、僕はわからないと首を横に振る。

「理由としては2つあって、ランクアップの目安になるのと依頼を受けたほうが収入がいいからだ」
「ランクアップの目安はわかるけど、依頼を受けたほうが収入がいいの?」

 冒険者にランクがあるのはなんとなくわかる。漫画やアニメでもよくある定番の設定だしね。そして、そのランクをあげるためには魔物を討伐して実力を証明しつつ、依頼を受けることで冒険者ギルドからの評価をあげる。これが必要なのも漫画やアニメではおなじみのことだ。
 しかし、依頼を受けたほうが収入がいいとはどういうことかわからなかった。

「依頼にもよるが、魔物の素材で収入をえようとするよりも安定して収入がえられるメリットのほうが大きいのだ」

 それを聞いて納得した。

 確かに魔物の素材の収入だけでやっていくのは難しいと言えるだろう。

 魔物の素材の値段なんてピンキリだろうし、本人の調子や魔物との遭遇率などによっては毎日同じ数の魔物を倒し続けられるわけでもない。それに、大量発生なんてすれば値崩れをおこして収入が減る場合もある。

「しかし、ルイ達は冒険者としてのランクアップしたいとか安定した収入がえたいわけではないだろ?」
「そうですね。別にランクアップに興味はないですし、魔物の素材については自分達の強化に使いたいと思っていますし」

 冒険者になりたい理由も魔物との戦闘とみんなとの連携の確認、そして武器や防具をつくるための素材集めのためだし、ランクアップや素材の売却などは考えていない。

「収入は親頼りだしな」か。

 そうだね。でも、7歳の子供が収入を親に頼るのは普通のことだろ?子供が収入をえるなんて、お小遣いかお年玉くらいだろ? 

「だから依頼は受けるな。
 依頼の内容によっては危険度がかなり高いモノもあるし、護衛などの依頼では数日かけて別の街まで行くなんてモノもある。そういった依頼を受けた場合、シルネスの条件を破ることになるからな」

 確かに、母さんの条件を破るのはダメだし、護衛だってめんどくさそうだし、依頼を受ける理由が1つもないので僕は頷いた。

「はい」

 僕の返事を聞いて頷いた父さん。

「2つ目の条件だが、冒険者になってからの半年間はギルナキルのダンジョンの中でしか魔物との戦闘はするな。たとえギルナキルのダンジョンの道中で魔物を見つけたとしても絶対に戦闘はするな」

 父さんが言ったギルナキルのダンジョンは、この街の近くにある初心者向けのダンジョンであり、僕も最初はそこで魔物と戦おうとしていたので異論はないのだけど、道中の魔物とは戦うなというのは理解出来ないので聞いてみる。

「ギルナキルのダンジョンの魔物とは戦っていいのに、道中の魔物とは戦ってはダメとはどういうことですか?」

 道中で出会った魔物とも戦えれば、より多くの経験がつめるはずなのに。

「どういう理由かは分からないが、ダンジョンの中では一定の強さの特定の魔物しか遭遇しないから、油断は出来ないとはいえ、そのダンジョンに出てくる魔物に見合ったの実力があれば安全に魔物と戦闘することが出来る。
 しかし、外の魔物は同じ魔物でも個体によって強さに差があるから、1度簡単に倒したからといって同じ魔物に挑み、返り討ちにあうなんてことが新人冒険者などの間でよくおきている。もちろんベテランの冒険者や騎士だったら遭遇した魔物の強さを気配などから察して戦うかどうかをきちんと見極められるが、ルイ達にそれは出来ないだろ?」

 当然のことだが、魔物と一切戦ったことのない僕達にそんなことが出来るはずもない。なので、すぐに頷いた。

「だから、道中での魔物との戦闘はよっぽどのことがない限りするな」

 父さんの説明に納得出来たし、安全第一で魔物と戦っていくつもりの僕としてもこの条件は絶対受け入れないといけない条件なので、間髪入れずに頷いた。

「うん。わかったよ、父さま」

 僕が素直に頷いたのを見て、父さんはホッとしていた。

「なら、冒険者登録することを許す」

 そう言いながら立ち上がった父さんは僕の頭を撫でてきた。

「私も許します。でも、ホントに危険なことだけはしてはいけませんよ」

 そう言いながら、僕を抱きしめてくれる母さん。

 そうだよね。魔物と戦うってことはちょっとしたことで死んでしまう可能性のあることだし、親としては絶対に止めてほしいことだ。
 それでも、僕たちの成長になるのならと条件をつけることで最大限の譲歩をしてくれた上で許してくれる。

「ホントに、お前には良すぎるいい親だな」か。

 ホントに僕もそう思うよ。

「うん。わかってる」

 感謝の気持ちを込めながら、僕は母さんを抱きしめ返した。
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