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72.着物を着た
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バスと電車を乗り継いでやって来た春町の旅館、龍春館。
その旅館に着いた時には「やっぱりか~」と思った。春町に泊まるならここかな?って思ったからね。
となると、このあとの夏町、秋町、冬町の旅館がどこなのかもなんとなく想像が出来た。
しおりに泊まる旅館の名前が書いていなかったからその時点からもしかしてという考えはあった。
というか、そもそもしおりに泊まる旅館の名前が書いてないことがおかしいのだ。
だって部屋割りが決まっているということは、泊まる旅館は決まっているということなので、しおりに泊まる旅館の名前が書けないってことはありえない。
つまり、誰かの指示で意図的に旅館の名前を書かなかったというわけで、そんな指示をする人間なんて1人しか思いつかないわけで、今頃理事長室ではチョウちゃんが笑っているのだろうな、というところまで想像出来た。
僕がそんな考えにふけっていると、旅館から着物を着た女性達が出てきた。
「ようこそ、女子高校のみなさん」
「こんにちは、女将さん。今年もよろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
にこやかに学年主任と話をしている女将さんの鋭い視線が一瞬だけどこちらに向いた。
あ~。うん。そんな視線を向けられても仕方ないかもしれないけど、原因の大半は僕にないし、仕方ないことでもあったのでそんな視線を向けないで欲しいね。それに、みんなの前で下手に反応して注目を集めたくもないわけだし。
なので、隣で女将さんからあからさまに視線を反らして口笛を吹いているリンの腰に肘を打ち込み、
「口笛吹かない」
もっともらしく注意する。
「ぐふ」
そんな声をあげたリンは口笛を吹くことは止めたが、女将さんから目線を反らすことはやめてないので、おかしく思われるような行動をするなとさらに指摘したい。したいが、それをすると周りからおかしく思われそうなのでぐっとこらえる。
「それじゃあ、それぞれ自分の部屋に荷物を置いて、十分後に再度ここに集合するように」
学年主任のその言葉にみんな自分の部屋へ向かい出す。
「俺達も行こうぜ」
同部屋のリンがそう言って女将さんから逃げるように旅館に入っていく。
その姿に内心大きくため息を吐きながらリンの後を追って旅館に入る。
「なぁ、さっき一瞬女将さんがコウとリンのこと見てなかったか?」
僕達の後についてきているトシの言葉にリンが軽くビクッとしたので本当に殴りたくなったね。
そんな反応をすればトシの言葉を肯定しているようなものじゃないか。
「気のせいじゃないかな」
リンに返事を任せると面倒なことになりそうなので、僕が答えた。
「そうか。なんか結構キツい視線向けてきてたような気がしたんだけどな」
よく見ているな、と関心したけど、それを認めるわけにはいかないので、
「気のせいだよ」
何事もないように振る舞う。
「そうか。気のせいか」
とりあえずは納得してくれたようなので、内心ホッとした。
「僕達の部屋はこっちだから、また後でね」
「おう」
「また後でね」
タイミングよく分かれ道が来たことにさらにホッとしつつトシ達と分かれるて部屋まで行くと、僕は思いっきりリンを殴った。
その旅館に着いた時には「やっぱりか~」と思った。春町に泊まるならここかな?って思ったからね。
となると、このあとの夏町、秋町、冬町の旅館がどこなのかもなんとなく想像が出来た。
しおりに泊まる旅館の名前が書いていなかったからその時点からもしかしてという考えはあった。
というか、そもそもしおりに泊まる旅館の名前が書いてないことがおかしいのだ。
だって部屋割りが決まっているということは、泊まる旅館は決まっているということなので、しおりに泊まる旅館の名前が書けないってことはありえない。
つまり、誰かの指示で意図的に旅館の名前を書かなかったというわけで、そんな指示をする人間なんて1人しか思いつかないわけで、今頃理事長室ではチョウちゃんが笑っているのだろうな、というところまで想像出来た。
僕がそんな考えにふけっていると、旅館から着物を着た女性達が出てきた。
「ようこそ、女子高校のみなさん」
「こんにちは、女将さん。今年もよろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
にこやかに学年主任と話をしている女将さんの鋭い視線が一瞬だけどこちらに向いた。
あ~。うん。そんな視線を向けられても仕方ないかもしれないけど、原因の大半は僕にないし、仕方ないことでもあったのでそんな視線を向けないで欲しいね。それに、みんなの前で下手に反応して注目を集めたくもないわけだし。
なので、隣で女将さんからあからさまに視線を反らして口笛を吹いているリンの腰に肘を打ち込み、
「口笛吹かない」
もっともらしく注意する。
「ぐふ」
そんな声をあげたリンは口笛を吹くことは止めたが、女将さんから目線を反らすことはやめてないので、おかしく思われるような行動をするなとさらに指摘したい。したいが、それをすると周りからおかしく思われそうなのでぐっとこらえる。
「それじゃあ、それぞれ自分の部屋に荷物を置いて、十分後に再度ここに集合するように」
学年主任のその言葉にみんな自分の部屋へ向かい出す。
「俺達も行こうぜ」
同部屋のリンがそう言って女将さんから逃げるように旅館に入っていく。
その姿に内心大きくため息を吐きながらリンの後を追って旅館に入る。
「なぁ、さっき一瞬女将さんがコウとリンのこと見てなかったか?」
僕達の後についてきているトシの言葉にリンが軽くビクッとしたので本当に殴りたくなったね。
そんな反応をすればトシの言葉を肯定しているようなものじゃないか。
「気のせいじゃないかな」
リンに返事を任せると面倒なことになりそうなので、僕が答えた。
「そうか。なんか結構キツい視線向けてきてたような気がしたんだけどな」
よく見ているな、と関心したけど、それを認めるわけにはいかないので、
「気のせいだよ」
何事もないように振る舞う。
「そうか。気のせいか」
とりあえずは納得してくれたようなので、内心ホッとした。
「僕達の部屋はこっちだから、また後でね」
「おう」
「また後でね」
タイミングよく分かれ道が来たことにさらにホッとしつつトシ達と分かれるて部屋まで行くと、僕は思いっきりリンを殴った。
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