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54.カッコつけたポーズ

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「お嬢さん。今から俺とお茶でもどうですか?」

 女の子らしい生徒に声をかけながらユウは一瞬こちらへアイコンタクトを送ってきた。なので、リンの方を見ると、リンは僕と目を合わせてからユウ達の方へと歩き出した。

 はいはい。そういう流れに持っていくわけね。

 流れを理解した僕とは違い、急にそんな風に声をかけられた女の子らしい生徒は固まってしまっていた。

 それが普通の反応だよね。しかし、あいにくとこれで終わりではないのだ。

「いや、今から俺と映画でもどう?」

 そこへ追い打ちをかけるようにリンまで声をかけた。

 リンが流れにノッていく方向でいくのなら、僕もその流れにノッていこうと思うので、リンとユウの背後から近づいた。

「アホか」

 そう言いながら2人の頭を叩いてやる。

「いてっ」
「何しやがる」

 本気で痛がってるわけでも怒ってるわけでもないけど、2人は僕を睨みつけてきた。

 そんな2人を左右に押しやると、その間に入り込んで2人を見た。

「逆に聞きたいんだけど、何してるの?」
「見てわかるだろ?」
「ナンパさ!」

 リンが自信満々に言い切ると、2人はムダにカッコつけたポーズを決めた。

 まぁ、誰がどう見てもナンパなのは一目瞭然だよね。 

 それがわかっていながらも聞いたのは、みんなと認識を共有するためである。

 認識がズレていたらこのあとの展開についてこれないかもしれないしね。

 しかし、「そのムダにカッコつけたポーズはする必要ないよね?」と言いたいけど、そっちに話の流れがいくとめんどくさいのでグッと聞きたい気持ちを抑える。

「ナンパする言葉が古臭い気もしなくはないけど、2人共ナンパしてる場所がどこだかわかってる?」
「もちろんわかってるさ」

 わかっているなら本来ナンパなんてする場所ではないはずなんだけどね。

 そういった雰囲気が漂い始めた。

「じゃあどこだっけ?」
「女子高校だぞ」
「今日はその入学式で俺達は新入生なんだからな」
「そんなことも忘れたのか?」

 リンとユウに肩を組まれ、両サイドからそんなことを言われた。

 もちろんこの会話はワザとなので、リンもユウも本気で僕をバカにしているわけでも、うざ絡みしてきているわけでもないと頭では理解してるのだけど、その理解を超えるウザさについ殴りたくなった。
 しかし、その殴りたくなった気持ちを落ち着かせて話を続けよう。

「今から入学式なのにお茶とか映画とかありえないでしょ」

 僕のツッコミにハッとした2人はさらにカッコつけて女の子らしい生徒の方を見た。

「入学式終わりに俺と一緒にお茶でもどう?」
「いや、俺と入学式終わりに映画見に行こうよ」
「バカか」

 2人の頭を小突いてやる。

「いってーな」
「俺達のナンパの邪魔をするなよ」

 2人が両サイドから体当たりをしてこようとしたので1歩下がってよけると、2人はぶつかり合ってコケた。

 それを見てクスクス笑い出すみんな。

 すぐに起き上がった2人が近づいて来ようとしたので両手を突き出して止める。

「2人に聞きたいのだけど、女子高校はどんな高校だったのかな?」

 これもみんなわかっていることだろうが、それでも再度確認のために2人に問いかける。

 僕の問いに怒りの表情からポカンとした表情になる2人。

「どんな高校って?」
「女子高校という名前をしているけど」
「その中身は男子校というややこしい学校って」
『あれ?』

 自分達の答えに疑問を持った2人は同時に首を傾げた。

 2人と同じように不思議そうに首を傾げている生徒がチラホラいるのでみんな混乱し始めているのだろうね。

 そんな2人に再度問いかけてみる。

「そんな男子校の女子高校で2人は何してたの?」
「ナンパ、だな」
「誰を?」
「このカワイイ、新入生を?」
『あれ?』

 再度首を傾げた2人はカワイイ新入生を見つめた。
 2人だけではなく、僕やクラス中、さらには廊下にいる生徒からの視線を受けたカワイイ新入生は困ったように苦笑した。

 そんな苦笑した姿もかわいくて、多分キュンとした生徒が多数いただろう。

 そう思いつつも、結論と最後の確認に入るとしよう。

「女子高校というややこしいな名前の男子校の新入生ってことはどういうことかわかるかな?」
『カワイイ新入生は男』
「でいいんだよね?」

 もう結論が出ている、というか、最初から結論は出ていたのだけど、やっぱり最後は本人の口から聞くのが1番なので、カワイイ新入生の答えをみんなして待った。

「そうだよ」
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