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49.単純に下手
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小説町に帰ってきてから3日経ち、今日はついに女子高校の入学式なわけだけど、当然のことながら気乗りするわけもなく、朝から憂鬱でしかなかった。
「はぁ~」
起きてから何度目かになるため息を吐くぐらい学校には行きたくない。
行きたくないのだけど行かないという選択肢はない。
わけでもないだろうけど、行かないとか言い出すと確実にチョウちゃんが強硬手段を使ってでも無理矢理僕を学校に連れていくだろう。
そうなるとどうなるだろうか。
理事長に連れられてきた新入生。
という肩書きが入学早々からつくだろう。
そうなると当然悪目立ちするのは確実で、そうなるとその後が余計にややこしくなるしホントに学校に行きづらくなるので、イヤでも行くしかないだろう。
しかしだ。そうなると当然ベッドの上に置かれている男子の制服を着て男装し、男子として振る舞わないといけないわけで、それはもう最悪としかいいようがなかった。
普段の日常生活の中でパンツルックで男子に間違えられるのは、まだ相手の勘違いだし、そう見えるかもしれないという自覚もあるのでまだ仕方ないと割り切れる。
しかし、自ら男装して男子として振る舞うことは仕方ないという言葉では割り切れない。
それはやっぱり僕は自分が女だという自覚がしっかりとあるからで、自分から男装して男として振る舞うことがイヤだという気持ちが強くあるからなのだろう。
別に男に見られたとか、男だと間違えられたということにトラウマがあるわけではないのだけれど、やっぱりイヤだという気持ちは強くある。
なんて葛藤で制服を着ようとしていないわけだけど、そろそろチョウちゃんがやってきそうな気配もあるので、覚悟を決めて制服を着ることにしよう。
というわけで、補正下着をつけてから女子高校の制服を着てからおかしなところがないかを確認するために鏡の前に立った。
鏡に映ったのはどこからどう見ても男子学生の少年。
いくら補正下着をつけたからといってここまで違和感なく男子学生の少年に見えてしまうことにショックを受けてしまう。
そんなことをチョウちゃんなんかに言えば、
「昔っから男子と間違え続けられたのに今さらじゃん」
とか笑われそうだし、その通りだったのだけどやっぱりショックなものはショックなのだ。
「コウくんおはよー!」
ノックもなく入ってくるチョウちゃん。
「ノックしてって言ってるよね」
この3日間何度言っても直らないことなのだけど、それでも言わずにはいられないことなので、注意しながらしっかりとアイアンクローをかける。
「ぎにゃー」
「毎日毎日同じことを言わせないでくれるかな」
「ギブ!ギブ!」
ホントはもっとしっかりとおしおきしたいのだけど、今日は入学式なので軽めで許してあげよう。
手を離してあげると、僕の方を一瞬恨めしそうに見てきたチョウちゃんだが、すぐに「お~」と声をあげた。
「やっぱりスゴく似合ってるね~。昔っから男子と見間違えられてきただけのことはあるね。カッコいいよ」
想像していたような言葉をかけられたので、僕はため息を吐いた。
「嬉しくないの?」
そう聞いてくるチョウちゃんは少しニヤニヤしていた。
もうその顔が答えなのだから聞いてくる必要ないと思うけど、それを聞かずにはいられないのがチョウちゃんなので、またため息を吐きながら答えてあげる。
「そんなにニヤニヤしてるってことは、わかってて言ってるよね?」
僕が笑顔を向けてあげると、チョウちゃんはビクッとしながら顔を背けるという分かりやすい行動で答えてくれた。
「はぁ」
さっき以上に盛大にため息を吐きながらおしおきとしてチョウちゃんの背中に1発ビンタを打ち込む。
「ぐおっ」
一瞬のけ反ったチョウちゃんは膝から崩れ落ちたので、その横を通り抜けて部屋を出る。
「ま、待って」
痛みをこらえながら後を追ってきたチョウちゃんは無視してリビングダイニングキッチンにやって来ると、僕の姿を見たみんなが驚きの表情をうかべた。
「おはよう」
『………』
挨拶をして席に座るも、返事はない。
この反応も予想はしていたが、予想通りすぎるのもやっぱりイヤなところで、隣に座ったチョウちゃんがクスクス笑っているのがさらにイヤなところだった。
「いただきます」
返事がないならないでいいので、僕は用意されていた朝食を食べ始めた。
ちなみにこの家の家事は基本当番制なのだけど、料理に関してだけいえばユキさんかサクラちゃん、あとたまにイチョウさんが担当していたらしい。
チョウちゃんとヒマワリちゃんが料理を担当しない理由は単純に下手だからだ。
ちなみに僕の料理の腕は普通なので、僕も料理の担当に入っている。
そして、今日はサクラちゃんの当番の日で、朝食はご飯、みそ汁、焼き鯖、納豆、漬け物という和定食だ。
その中からみそ汁を手に取って一口飲み、その美味しさにホッと一息吐いていると、
「えっと、コウくんなのよね?」
「はぁ~」
起きてから何度目かになるため息を吐くぐらい学校には行きたくない。
行きたくないのだけど行かないという選択肢はない。
わけでもないだろうけど、行かないとか言い出すと確実にチョウちゃんが強硬手段を使ってでも無理矢理僕を学校に連れていくだろう。
そうなるとどうなるだろうか。
理事長に連れられてきた新入生。
という肩書きが入学早々からつくだろう。
そうなると当然悪目立ちするのは確実で、そうなるとその後が余計にややこしくなるしホントに学校に行きづらくなるので、イヤでも行くしかないだろう。
しかしだ。そうなると当然ベッドの上に置かれている男子の制服を着て男装し、男子として振る舞わないといけないわけで、それはもう最悪としかいいようがなかった。
普段の日常生活の中でパンツルックで男子に間違えられるのは、まだ相手の勘違いだし、そう見えるかもしれないという自覚もあるのでまだ仕方ないと割り切れる。
しかし、自ら男装して男子として振る舞うことは仕方ないという言葉では割り切れない。
それはやっぱり僕は自分が女だという自覚がしっかりとあるからで、自分から男装して男として振る舞うことがイヤだという気持ちが強くあるからなのだろう。
別に男に見られたとか、男だと間違えられたということにトラウマがあるわけではないのだけれど、やっぱりイヤだという気持ちは強くある。
なんて葛藤で制服を着ようとしていないわけだけど、そろそろチョウちゃんがやってきそうな気配もあるので、覚悟を決めて制服を着ることにしよう。
というわけで、補正下着をつけてから女子高校の制服を着てからおかしなところがないかを確認するために鏡の前に立った。
鏡に映ったのはどこからどう見ても男子学生の少年。
いくら補正下着をつけたからといってここまで違和感なく男子学生の少年に見えてしまうことにショックを受けてしまう。
そんなことをチョウちゃんなんかに言えば、
「昔っから男子と間違え続けられたのに今さらじゃん」
とか笑われそうだし、その通りだったのだけどやっぱりショックなものはショックなのだ。
「コウくんおはよー!」
ノックもなく入ってくるチョウちゃん。
「ノックしてって言ってるよね」
この3日間何度言っても直らないことなのだけど、それでも言わずにはいられないことなので、注意しながらしっかりとアイアンクローをかける。
「ぎにゃー」
「毎日毎日同じことを言わせないでくれるかな」
「ギブ!ギブ!」
ホントはもっとしっかりとおしおきしたいのだけど、今日は入学式なので軽めで許してあげよう。
手を離してあげると、僕の方を一瞬恨めしそうに見てきたチョウちゃんだが、すぐに「お~」と声をあげた。
「やっぱりスゴく似合ってるね~。昔っから男子と見間違えられてきただけのことはあるね。カッコいいよ」
想像していたような言葉をかけられたので、僕はため息を吐いた。
「嬉しくないの?」
そう聞いてくるチョウちゃんは少しニヤニヤしていた。
もうその顔が答えなのだから聞いてくる必要ないと思うけど、それを聞かずにはいられないのがチョウちゃんなので、またため息を吐きながら答えてあげる。
「そんなにニヤニヤしてるってことは、わかってて言ってるよね?」
僕が笑顔を向けてあげると、チョウちゃんはビクッとしながら顔を背けるという分かりやすい行動で答えてくれた。
「はぁ」
さっき以上に盛大にため息を吐きながらおしおきとしてチョウちゃんの背中に1発ビンタを打ち込む。
「ぐおっ」
一瞬のけ反ったチョウちゃんは膝から崩れ落ちたので、その横を通り抜けて部屋を出る。
「ま、待って」
痛みをこらえながら後を追ってきたチョウちゃんは無視してリビングダイニングキッチンにやって来ると、僕の姿を見たみんなが驚きの表情をうかべた。
「おはよう」
『………』
挨拶をして席に座るも、返事はない。
この反応も予想はしていたが、予想通りすぎるのもやっぱりイヤなところで、隣に座ったチョウちゃんがクスクス笑っているのがさらにイヤなところだった。
「いただきます」
返事がないならないでいいので、僕は用意されていた朝食を食べ始めた。
ちなみにこの家の家事は基本当番制なのだけど、料理に関してだけいえばユキさんかサクラちゃん、あとたまにイチョウさんが担当していたらしい。
チョウちゃんとヒマワリちゃんが料理を担当しない理由は単純に下手だからだ。
ちなみに僕の料理の腕は普通なので、僕も料理の担当に入っている。
そして、今日はサクラちゃんの当番の日で、朝食はご飯、みそ汁、焼き鯖、納豆、漬け物という和定食だ。
その中からみそ汁を手に取って一口飲み、その美味しさにホッと一息吐いていると、
「えっと、コウくんなのよね?」
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