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32.フルスイング
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質問大会が終わり、僕はチョウちゃんの家にやって来た。
と、なればよかったのだけど、今、僕がいるのは警察署の1室。
昨日、お遊びとはいえ父さん相手に刑事ドラマのまねをして尋問した僕が、まさかホントの警察署にいるなんて。
なんでこうなった?
いや、わかってる。わかってるよ。僕が暴れたからだ。質問大会で暴れたからだ。
それでも許せなかった。許せるはずがなかった。
だけど、殴ったのはジンだけで、他の人達はしっかりと逃げ切ったわけだけど、それでもジンは殴ったわけだから駆けつけた警察官に警察署に連れてこられた。
とはいえ僕は怒られてはいない。
その代わりといってはなんだけど、椅子に座って床に正座しているリンと僕に殴られてボロボロになっているジン、そして気絶から目覚めたチョウちゃんとその前に立っている顔なじみ婦警、堀巣ケイさんを見ていた。
「つまり、チョウが女子高校に入れることを提案して、悪ノリしたコウ母が受け入れ、帰ってきたコウからそれを聞いたリンが質問大会でのくす玉による大々的な発表を段取りして、それを驚くこともせずに受け入れたジンがコウのことを兄貴とか言い出したからコウが暴れた、と」
僕達から聞いた状況を整理してチョウちゃん達に聞いたケイさん。
「はい」
申し訳なさそうに頷くチョウちゃん。
「そうだね」
ニコニコ笑顔のリン。
「その通りやな」
反省した様子のないジン。
「なるほどな」
頷いたケイさんはジンから奪っていたハリセンでジンの頭を叩いた。
「イタッ!」
「それはお前達が悪いな」
しっかりと状況を理解してくれて、僕としてはありがたい。
「それはわかるけどなんで俺だけ殴るねん!」
抗議するジンの頭を再度叩くケイさん。
「チョウは反省してるしリンは避けるからな」
「理不尽や!」
「なら反省しろ。そしたら殴らないでやるよ」
と言いながらまたジンを殴るケイさん。
すると、ジンは立ち上がると僕の肩に手をのせて軽く頭を下げた。
「反省」
こんなところでさらにネタに走るジンの精神力はスゴいと思うけど、やっぱり大バカであることには変わりない。
「それは日光のサルの軍団の反省の仕方だし、つまらない」
ケイさんはジンのおしりへハリセンをフルスイングした。
こうなることになると思わなかったのかな。
「グハッ!」
軽く飛んだジンはおしりをおさえながら床をゴロゴロし始めたが、ケイさんはタイミングよくその背中を踏みつけて動きを止めた。
「それに誰が立っていいといった?」
「ぐふっ」
返事の変わりに苦痛の声をあげるジン。
「しかし、また厄介事に巻き込まれてるみたいだね」
厄介事。厄介事ね。けど、今回は僕も楽しめたしマシな方かな。
なんて思ってしまうのは危ない考え方なのだろうか。
しかし、厄介事であったのも確かなので、
「そうだね」
ケイさんの言葉に僕は苦笑を返した。
そこでふと思う。そして最後の希望と思い、ケイさんに聞いてみる。
「こういうのって警察に相談したらなんとかしてくれるモノなの?」
そう聞いた瞬間、チョウちゃんがビクッとした。
まぁ、もしこの相談が受け入れられた場合、責任を問われるのはチョウちゃんになるわけだから、ビクッとなるのは当然ともいえよう。
「あいにくと色々管轄外だからムリだね」
ケイさんは困ったようにそう言いながら頭を掻いた。
「管轄外なの?」
「あぁ。元々女子高校は中央警察の管轄だし、事件でもない限りは学校については教育委員会の管轄だからね。
その教育委員会だって上の文部科学省が女子高校に女子が入学することを認めてるから問題になることはないだろうから手の施しようがないな」
なるほど。確かにそういうことならケイさんに言ってもどうにもならないよね。
「そういうことなら諦めるよ」
ケイさんの説明と僕の「諦めるよ」という言葉を聞いてホッとしているチョウちゃんの頭をケイさんはハリセンで叩いた。
「ビクッとしたりホッとしたりするくらいならもう少し考えていたずらとかはしな」
「はい」
再度反省し直したチョウちゃんはシュンとうつむいた。
「ケイさん。そこはいたずらはするな、じゃないの?」
僕としてはケイさんにはこう言ってもらいたかったな。
「子供相手ならそう言ったかもしれないけど、チョウは大人だからね。自分のしたいたずらの責任は取れるんだからするなとは言わないよ。ただし、したいたずらに対する責任にはしっかりととってもらうけどね」
ケイさんの視線にビクッとしたチョウちゃんはうつむいて縮こまっていた。
「とりあえず3人は1時間正座だな」
ケイさんが3人に罰を言い渡しながらジンの背中を踏みつけると、ジンは素直に正座をし直した。
「さて」
3人が正座している姿を見ながら椅子に座ったケイさんは僕に微笑みかけてきた。
「おかえり、コウ」
「ただいま」
色々あったせいで順序が逆になりまわっている気もするけど、やっぱりこう言ってもらえるのは嬉しいね。
と、なればよかったのだけど、今、僕がいるのは警察署の1室。
昨日、お遊びとはいえ父さん相手に刑事ドラマのまねをして尋問した僕が、まさかホントの警察署にいるなんて。
なんでこうなった?
いや、わかってる。わかってるよ。僕が暴れたからだ。質問大会で暴れたからだ。
それでも許せなかった。許せるはずがなかった。
だけど、殴ったのはジンだけで、他の人達はしっかりと逃げ切ったわけだけど、それでもジンは殴ったわけだから駆けつけた警察官に警察署に連れてこられた。
とはいえ僕は怒られてはいない。
その代わりといってはなんだけど、椅子に座って床に正座しているリンと僕に殴られてボロボロになっているジン、そして気絶から目覚めたチョウちゃんとその前に立っている顔なじみ婦警、堀巣ケイさんを見ていた。
「つまり、チョウが女子高校に入れることを提案して、悪ノリしたコウ母が受け入れ、帰ってきたコウからそれを聞いたリンが質問大会でのくす玉による大々的な発表を段取りして、それを驚くこともせずに受け入れたジンがコウのことを兄貴とか言い出したからコウが暴れた、と」
僕達から聞いた状況を整理してチョウちゃん達に聞いたケイさん。
「はい」
申し訳なさそうに頷くチョウちゃん。
「そうだね」
ニコニコ笑顔のリン。
「その通りやな」
反省した様子のないジン。
「なるほどな」
頷いたケイさんはジンから奪っていたハリセンでジンの頭を叩いた。
「イタッ!」
「それはお前達が悪いな」
しっかりと状況を理解してくれて、僕としてはありがたい。
「それはわかるけどなんで俺だけ殴るねん!」
抗議するジンの頭を再度叩くケイさん。
「チョウは反省してるしリンは避けるからな」
「理不尽や!」
「なら反省しろ。そしたら殴らないでやるよ」
と言いながらまたジンを殴るケイさん。
すると、ジンは立ち上がると僕の肩に手をのせて軽く頭を下げた。
「反省」
こんなところでさらにネタに走るジンの精神力はスゴいと思うけど、やっぱり大バカであることには変わりない。
「それは日光のサルの軍団の反省の仕方だし、つまらない」
ケイさんはジンのおしりへハリセンをフルスイングした。
こうなることになると思わなかったのかな。
「グハッ!」
軽く飛んだジンはおしりをおさえながら床をゴロゴロし始めたが、ケイさんはタイミングよくその背中を踏みつけて動きを止めた。
「それに誰が立っていいといった?」
「ぐふっ」
返事の変わりに苦痛の声をあげるジン。
「しかし、また厄介事に巻き込まれてるみたいだね」
厄介事。厄介事ね。けど、今回は僕も楽しめたしマシな方かな。
なんて思ってしまうのは危ない考え方なのだろうか。
しかし、厄介事であったのも確かなので、
「そうだね」
ケイさんの言葉に僕は苦笑を返した。
そこでふと思う。そして最後の希望と思い、ケイさんに聞いてみる。
「こういうのって警察に相談したらなんとかしてくれるモノなの?」
そう聞いた瞬間、チョウちゃんがビクッとした。
まぁ、もしこの相談が受け入れられた場合、責任を問われるのはチョウちゃんになるわけだから、ビクッとなるのは当然ともいえよう。
「あいにくと色々管轄外だからムリだね」
ケイさんは困ったようにそう言いながら頭を掻いた。
「管轄外なの?」
「あぁ。元々女子高校は中央警察の管轄だし、事件でもない限りは学校については教育委員会の管轄だからね。
その教育委員会だって上の文部科学省が女子高校に女子が入学することを認めてるから問題になることはないだろうから手の施しようがないな」
なるほど。確かにそういうことならケイさんに言ってもどうにもならないよね。
「そういうことなら諦めるよ」
ケイさんの説明と僕の「諦めるよ」という言葉を聞いてホッとしているチョウちゃんの頭をケイさんはハリセンで叩いた。
「ビクッとしたりホッとしたりするくらいならもう少し考えていたずらとかはしな」
「はい」
再度反省し直したチョウちゃんはシュンとうつむいた。
「ケイさん。そこはいたずらはするな、じゃないの?」
僕としてはケイさんにはこう言ってもらいたかったな。
「子供相手ならそう言ったかもしれないけど、チョウは大人だからね。自分のしたいたずらの責任は取れるんだからするなとは言わないよ。ただし、したいたずらに対する責任にはしっかりととってもらうけどね」
ケイさんの視線にビクッとしたチョウちゃんはうつむいて縮こまっていた。
「とりあえず3人は1時間正座だな」
ケイさんが3人に罰を言い渡しながらジンの背中を踏みつけると、ジンは素直に正座をし直した。
「さて」
3人が正座している姿を見ながら椅子に座ったケイさんは僕に微笑みかけてきた。
「おかえり、コウ」
「ただいま」
色々あったせいで順序が逆になりまわっている気もするけど、やっぱりこう言ってもらえるのは嬉しいね。
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