上 下
13 / 85

13.さらに油

しおりを挟む
「女子高校に僕が入学する件は母さんが悪ノリしたのが悪いけど、今日の件は全部チョウちゃんが悪いよね?」

 そう問いかけると、しっかりと自分が悪いと理解しているチョウちゃんはサッと横を向いて目線を反らした。

「なんで待ち合わせ場所を新幹線の駅にしたのかは知らないけど、そこで待ち合わせするのなら普通チョウちゃんが迎えに来るべきだよね?それなのになんでヒサコさんに迎えにこさせてるの?しかも、あんなデカデカとした派手なプラカードなんて持たせようとして。それに、写真を送ってくるのを渋ったかと思えば僕にはヒサコさんが恥ずかしがる写真を送ってきて、ヒサコさんには僕が男だと勘違いするような写真を送るってどういうこと?そして最後はバズーカ型クラッカーでの出迎え。しかも、この部屋の中の至るところにまで仕掛ける2段構えって。おかげでビニールテープまみれになっちゃって動けないし、後片付けだって本当ならスゴくめんどくさいことになっていたのだからね?
 ホントにどういうことかな~?」

 今日あったチョウちゃんが原因で僕の怒りにさらに油を注いだ出来事を全て言葉にしてチョウちゃんにぶつけると、僕の怒りを感じ取ったチョウちゃんは少しだけど体を震わせ始めた。

 そんな風に震えるなら止めておけばいいのに、その場の楽しさをとるあたりはやっぱりチョウちゃんらしさだと思う。

 しかし、このままでは話し合いにもならないし、話をする時には相手の目を見るべきなので、横を向いているチョウちゃんの顔を両手で挟むと、ムリヤリ僕の方に向けて笑顔で問いかける。

「どういうことかな~?」
「え~と、それは、あの」

 顔を背けれなくなったチョウちゃんは目をあっちこっちに泳がせ、しどろもどろになりながらも言い訳を考えていた。

「私が迎えに行けなかったのは片付けないといけない書類があったからで」

 まずは出迎えに来なかった言い訳を始めたチョウちゃん。

「そうなんですか?ヒサコさん」
「なんでヒサコに聞くの!?」

 チョウちゃんは驚いているが、それはもちろんチョウちゃんが信用出来ないからに決まっている。
 そして、ヒサコさんという裏付けを取れる相手がいるのだから聞くに決まっている。

「えぇ。片付けないといけない書類があったのは確かですが、それ以上に、プラカードを作ってたら徹夜しちゃって眠いからお願い~、と言われましたね」

 まぁ、そんなことだとは思ったけど。

「ヒサコ!」

 チョウちゃんにとっては予想外の暴露をされたので、ヒサコさんに怒っているが、それ以上に僕が怒っていることを忘れてもらっては困るね。

「チョウちゃん」

 両手に軽く力を込めてあげる。

「イタい!これはダメだよ!アイアンクロー以上にダメだよ!」

 ハハッ。罪人にかける情けなどないので聞く耳すら持つ気はない。

「そもそも、あんなプラカードを作る必要すらなかったのじゃないかな?」

 そしたら徹夜する必要もなくなるし、チョウちゃんが自分で迎えに来ることも出来るようになるのに。

「いや!ヒサコはコウくんの顔知らないし、コウくんはヒサコの顔を知らないんだから目印になるモノは必要でしょ!」

 昔ならチョウちゃんの言い分もわかるが、現代では簡単に連絡を取り合える手段がいくつもあるので、その言い訳は言い訳にすらならない。

「プラカードを作る暇があるのだったら僕達に写真を送るか互いの連絡先を送るかして互いに連絡しあえるようにすればプラカードなんて必要なかったでしょうが」

 ということで込める力を少しあげた。

「イタイタイタイタいから!ホントにこれは危ないから!」

 両腕をタップしてくるが、もちろん止めるつもりはない。それに、

「大丈夫。危なくない加減はわかっているから」

 トラブルメーカー達を散々お仕置きしてきたので、どれくらい力を入れれば本気でやばいのかはわかっている。

「私は全然大丈夫じゃない!」

 そうでなければお仕置きの意味がなくなるのでそれでいいのだ。

「はいはい。それでなんであんな写真を送ってきたのかな?僕はともかくヒサコさんの写真はもっと普通な写真があったのじゃないの?」

 チョウちゃんの手元にある僕の写真が母さんから送られてきたモノである時点でマトモであることはほぼほぼないだろう。そう言いきれてしまうくらい、あっても全然嬉しくない信頼が母さんにはあってしまう。
 しかし、ヒサコさんの写真はもっと普通な写真があるはずだ。

「それは、送り間違えたんだよ」
「だそうです」

 確実にウソだとわかる言い訳だが、これについてはヒサコさんが判決をくだすことなのでヒサコさんを見ると、大きくため息を吐いたヒサコさんはチョウちゃんに近づくと背中に1発ビンタを打ちこんだ。

「イタっ!強い!ヒサコ強いよ!それに行く前にもビンタしたよね!?」

 そういえばヒサコさんがビンタしてきたと言っていたね。

 顔は僕に抑えられていて正座しているので声だけで抗議をするチョウちゃんだが、ヒサコさん気に留めた様子はなく、ため息を吐くだけでまた離れた。

「でだ。最後の部屋中に仕掛けたバズーカ型クラッカーでの出迎えだけど、明らかにやり過ぎだし驚かす気満々だったよね?それに、理由をつけて僕を迎えに来なかったのってバズーカ型クラッカーを仕掛けるためでもあるのじゃない?」

 こうして話ているうちにそういう考えろに思い至ったので問いかけると、わかりやすいぐらいにチョウちゃんは目を泳がせはじめた。

「いや!あれはホントに久しぶり会うコウくんを歓迎するために用意しただけであって、驚かす意味なんてないよ!それに、バズーカ型クラッカーは昨日のうちに仕掛け終えてたし!」

 焦って自らカミングアウトしてくれたチョウちゃん。

 なるほど。徹夜の原因はプラカードとバズーカ型クラッカーの仕込みのせいだったのか。

「そもそも今日の件はホントにコウくんを出迎えるために用意したことだし!ちょっと間違えたりやりすぎたりはしたけど歓迎しているのも確かで!」
「はぁ~」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

ハーレムに憧れてたけど僕が欲しいのはヤンデレハーレムじゃない!

いーじーしっくす
青春
 赤坂拓真は漫画やアニメのハーレムという不健全なことに憧れる健全な普通の男子高校生。  しかし、ある日突然目の前に現れたクラスメイトから相談を受けた瞬間から、拓真の学園生活は予想もできない騒動に巻き込まれることになる。  その相談の理由は、【彼氏を女帝にNTRされたからその復讐を手伝って欲しい】とのこと。断ろうとしても断りきれない拓真は渋々手伝うことになったが、実はその女帝〘渡瀬彩音〙は拓真の想い人であった。そして拓真は「そんな訳が無い!」と手伝うふりをしながら彩音の潔白を証明しようとするが……。  証明しようとすればするほど増えていくNTR被害者の女の子達。  そしてなぜかその子達に付きまとわれる拓真の学園生活。 深まる彼女達の共通の【彼氏】の謎。  拓真の想いは届くのか? それとも……。 「ねぇ、拓真。好きって言って?」 「嫌だよ」 「お墓っていくらかしら?」 「なんで!?」  純粋で不純なほっこりラブコメ! ここに開幕!

処理中です...