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9.嬉しくなんて
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「ホントに大丈夫ですか?コウくん」
僕のことを心配しながらも、安全運転で無事に女子高校まで送ってくれたヒサコさんに笑顔を向けた。
「えぇ。大丈夫ですよ」
実際そんなに強く打ちつけたわけじゃなかったのでホントに大丈夫なのだが、ヒサコさんは心配性なのか、僕の方に近づいてきた。
「盛大に頭を打ちつけていましたけど、ホントに大丈夫ですか?」
ヒサコさんは僕の前髪をかきあげながらおでこを確認してきた。
経験則から言って、多分赤くすらなっていないだろう。
って、普通の女子は経験則なんて言えるほど頭を打った経験はないか。つまり、そんな経験則が言えるほど頭を打っている僕はおかしいのか?
じゃなくて、今はヒサコさんを安心させるほうが先だよな。
「見ての通り大丈夫ですよ。これでも結構な石頭なんで」
女の子としては全く自慢出来るわけがないんだけど、僕はかなりの石頭なのでちょっとやそっと頭を打ちつけたくらいだはたんこぶすら出来ないのだ。
って、ホントに女の子の石頭なんてなんの自慢にもならないよね。男子でも石頭を自慢するなんて小学生くらいまでじゃないかな。
なんて思いながら苦笑していると、ヒサコさんが急に後ずさって離れた。
そんな予想外のヒサコさんの行動に、どうしたのだろう?、と思いながらヒサコさんの方を向くと、軽く頬を赤らめたヒサコさんと目があってすぐに目を反らされた。
「ヒサコさん?」
えっと………この展開は………。
「な、なんでもないです」
恥ずかしそうにそう言ったヒサコさんは、僕に背中を見せるまで顔を背けながら顔を手で覆った。
えぇ~。まさかそんな反応されるなんて………。僕達女同士なはずなのに………。
これは完璧に照れている。僕の苦笑を間近で見たヒサコさんは照れている。
いや、昔から何度も女友達からは「コウの不意に見せる笑顔ってホント女殺しよね」とか言われるけど。けど、そんなことを言われて喜ぶのは男子か同性愛者の女子だけだから。
もちろん同性愛がダメだとか、同性愛者に偏見を持っているわけではないけど、僕は普通に男子が好きなノーマルな女子だから!女殺しとか言われても嬉しくなんてないから!そこのところをわかってほしい!
そして、そう何度も言われているということは、そういった経験が何度もあるということで、見慣れた光景でもある。
しかし、この場合どうするべきか悩むところでもある。
というのも、恥ずかしがっているヒサコさんに恥ずかしがらせた原因の僕が話しかけると、さらにヒサコさんが恥ずかしがる可能性があるからだ。その恥ずかしがる度合いによっては、さっきの駅のロータリーの時みたいにヒサコさんは使いものにならなくなってしまう可能性もある。しかしだ。ヒサコさんに話しかけないことにはチョウちゃんの元へは行けないわけで、結局のところは話しかけるしかないわけで、あとはなるようになるだろう。
というわけでヒサコさんに話しかけてみる。
「ヒサコさん。大丈夫ですか?」
しかし、さっきまで心配される側だったのが少し苦笑しただけで心配する側にまわるなんてなんとも言えず、また苦笑したくなったが今回は我慢した。
また苦笑した姿を見られて恥ずかしがられたら本当にどうにもならない状況になってしまうかもしれないしね。
「えぇ。大丈夫です」
そう言いつつ顔を覆っていた手をどけて、背筋を伸ばすヒサコさん。
しかし、やっぱりこっちは見てくれない。
かといってそこをツッコんでムリに僕を見て恥ずかしがられたり、僕から顔を見に行ったりしたらダメなんだろうな。
「では、行きましょうか」
早口でそうまくしたてると、ヒサコさんは早足で歩き出したので、その後をついていきながら僕はやっぱり苦笑した。
「ここは職員用の玄関なので、入学式の日は向こうの生徒用の玄関から入ってください」
ヒサコさんが指さしたほうを見ると、生徒用というだけあって大きな玄関があった。
あれなら間違えたりすることはないね。
「分かりました」
「では行きましょう」
まだ恥ずかしがっているヒサコさんは手早くスリッパを出してくれると、すぐに先を歩き出したので遅れないように後についていく。
「この後の予定はどこまで聞いていますか?」
こっちは見てくれないが、話をしないとという気持ちはあるみたいなので話題を振ってくれた。
「母さんからはチョウちゃんから学校の説明を聞くとしか聞いてないですね」
「そうですか。多分、説明の間にお昼になると思うので、お昼は出前を頼んでいますので、チョ、理事長と一緒に理事長室でお昼をとることになります」
学校の中だからだろう。ヒサコさんはチョウちゃんを理事長と呼んだ。
そこら辺をしっかりと切り替えるあたりはさすが社会人。しっかりとしている。チョウちゃんにはぜひ見習ってほしいものだけど、母さんに僕の女子高校への入学を勧めたり、あんなプラカードをヒサコさんに持たせたり、あんな写真を送ってきたことを考えると、チョウちゃんがしっかりすることなんて万が一にもありえないだろうね。
「そうだ。理事長はお昼を豪勢にお寿司でも取ろうとおっしゃってましたが、もっと豪勢にうなぎでも取りましょう。
コウくんはうなぎは好きですか?嫌いでしたらお肉のいいお店も知ってるので、そちらでもいいですよ?」
やっぱりこっちを向いてはくれないが、そう勧めてくれるヒサコさん。
「うなぎは大好きなのでうなぎでいいですよ」
母さんが「今ではうなぎは高級品になってしまったから困るのよね」というぐらい高いので、家ではあまり食べられないとあって、お肉よりうなぎのほうがいいくらいだ。
「ならうなぎにしましょう」
そう言うとうなぎ屋さんに電話をかけたヒサコさん。そのうなぎ屋さんとのやり取りの中で「特上」や「如月」というわかったり分からなかったりする単語が聞こえてきたが、結局支払いはチョウちゃんがするので気にすることではないだろう。うん。
僕のことを心配しながらも、安全運転で無事に女子高校まで送ってくれたヒサコさんに笑顔を向けた。
「えぇ。大丈夫ですよ」
実際そんなに強く打ちつけたわけじゃなかったのでホントに大丈夫なのだが、ヒサコさんは心配性なのか、僕の方に近づいてきた。
「盛大に頭を打ちつけていましたけど、ホントに大丈夫ですか?」
ヒサコさんは僕の前髪をかきあげながらおでこを確認してきた。
経験則から言って、多分赤くすらなっていないだろう。
って、普通の女子は経験則なんて言えるほど頭を打った経験はないか。つまり、そんな経験則が言えるほど頭を打っている僕はおかしいのか?
じゃなくて、今はヒサコさんを安心させるほうが先だよな。
「見ての通り大丈夫ですよ。これでも結構な石頭なんで」
女の子としては全く自慢出来るわけがないんだけど、僕はかなりの石頭なのでちょっとやそっと頭を打ちつけたくらいだはたんこぶすら出来ないのだ。
って、ホントに女の子の石頭なんてなんの自慢にもならないよね。男子でも石頭を自慢するなんて小学生くらいまでじゃないかな。
なんて思いながら苦笑していると、ヒサコさんが急に後ずさって離れた。
そんな予想外のヒサコさんの行動に、どうしたのだろう?、と思いながらヒサコさんの方を向くと、軽く頬を赤らめたヒサコさんと目があってすぐに目を反らされた。
「ヒサコさん?」
えっと………この展開は………。
「な、なんでもないです」
恥ずかしそうにそう言ったヒサコさんは、僕に背中を見せるまで顔を背けながら顔を手で覆った。
えぇ~。まさかそんな反応されるなんて………。僕達女同士なはずなのに………。
これは完璧に照れている。僕の苦笑を間近で見たヒサコさんは照れている。
いや、昔から何度も女友達からは「コウの不意に見せる笑顔ってホント女殺しよね」とか言われるけど。けど、そんなことを言われて喜ぶのは男子か同性愛者の女子だけだから。
もちろん同性愛がダメだとか、同性愛者に偏見を持っているわけではないけど、僕は普通に男子が好きなノーマルな女子だから!女殺しとか言われても嬉しくなんてないから!そこのところをわかってほしい!
そして、そう何度も言われているということは、そういった経験が何度もあるということで、見慣れた光景でもある。
しかし、この場合どうするべきか悩むところでもある。
というのも、恥ずかしがっているヒサコさんに恥ずかしがらせた原因の僕が話しかけると、さらにヒサコさんが恥ずかしがる可能性があるからだ。その恥ずかしがる度合いによっては、さっきの駅のロータリーの時みたいにヒサコさんは使いものにならなくなってしまう可能性もある。しかしだ。ヒサコさんに話しかけないことにはチョウちゃんの元へは行けないわけで、結局のところは話しかけるしかないわけで、あとはなるようになるだろう。
というわけでヒサコさんに話しかけてみる。
「ヒサコさん。大丈夫ですか?」
しかし、さっきまで心配される側だったのが少し苦笑しただけで心配する側にまわるなんてなんとも言えず、また苦笑したくなったが今回は我慢した。
また苦笑した姿を見られて恥ずかしがられたら本当にどうにもならない状況になってしまうかもしれないしね。
「えぇ。大丈夫です」
そう言いつつ顔を覆っていた手をどけて、背筋を伸ばすヒサコさん。
しかし、やっぱりこっちは見てくれない。
かといってそこをツッコんでムリに僕を見て恥ずかしがられたり、僕から顔を見に行ったりしたらダメなんだろうな。
「では、行きましょうか」
早口でそうまくしたてると、ヒサコさんは早足で歩き出したので、その後をついていきながら僕はやっぱり苦笑した。
「ここは職員用の玄関なので、入学式の日は向こうの生徒用の玄関から入ってください」
ヒサコさんが指さしたほうを見ると、生徒用というだけあって大きな玄関があった。
あれなら間違えたりすることはないね。
「分かりました」
「では行きましょう」
まだ恥ずかしがっているヒサコさんは手早くスリッパを出してくれると、すぐに先を歩き出したので遅れないように後についていく。
「この後の予定はどこまで聞いていますか?」
こっちは見てくれないが、話をしないとという気持ちはあるみたいなので話題を振ってくれた。
「母さんからはチョウちゃんから学校の説明を聞くとしか聞いてないですね」
「そうですか。多分、説明の間にお昼になると思うので、お昼は出前を頼んでいますので、チョ、理事長と一緒に理事長室でお昼をとることになります」
学校の中だからだろう。ヒサコさんはチョウちゃんを理事長と呼んだ。
そこら辺をしっかりと切り替えるあたりはさすが社会人。しっかりとしている。チョウちゃんにはぜひ見習ってほしいものだけど、母さんに僕の女子高校への入学を勧めたり、あんなプラカードをヒサコさんに持たせたり、あんな写真を送ってきたことを考えると、チョウちゃんがしっかりすることなんて万が一にもありえないだろうね。
「そうだ。理事長はお昼を豪勢にお寿司でも取ろうとおっしゃってましたが、もっと豪勢にうなぎでも取りましょう。
コウくんはうなぎは好きですか?嫌いでしたらお肉のいいお店も知ってるので、そちらでもいいですよ?」
やっぱりこっちを向いてはくれないが、そう勧めてくれるヒサコさん。
「うなぎは大好きなのでうなぎでいいですよ」
母さんが「今ではうなぎは高級品になってしまったから困るのよね」というぐらい高いので、家ではあまり食べられないとあって、お肉よりうなぎのほうがいいくらいだ。
「ならうなぎにしましょう」
そう言うとうなぎ屋さんに電話をかけたヒサコさん。そのうなぎ屋さんとのやり取りの中で「特上」や「如月」というわかったり分からなかったりする単語が聞こえてきたが、結局支払いはチョウちゃんがするので気にすることではないだろう。うん。
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