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3.波乱の
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「コウ。朝よ。起きなさい」
「もう………朝………?」
母さんに起こされて時計を見るとまだ5時。
なんでこんな時間に起こすんだよ。
と、思いながら母さんを見上げる。
「早すぎない?」
中学時代でもこんなに朝早くに起きるなんてなかったのに、卒業してからは早くても8時にしか起きてこなかったのでまだ眠い。
眠い目をこすっていると、母さんが頭を撫でてきた。
「新幹線の時間があるからこれでもギリギリまで寝かしてあげていたほうよ」
新幹線。
そう言われて思い出した。
今日、新幹線にのって小学生時代に住んでいた小説町に行くのか。
色々急すぎて頭が混乱していたせいで忘れてた。
「だから起きてね」
そう言われると起きるしかないし、ここで駄々をこねると母さんからどんなお仕置きがされるかわからないので、眠い目をこすりながら起き上がり、大きくあくびをする。
「おはよう、母さん」
「おはよう。顔洗って着替えたらご飯食べなさい」
「うん」
笑顔で部屋を出ていく母さんの後ろ姿を見送ってから、ふぁ~、ともう1度あくびをしてからバンザイする形で背を伸ばしてから立ち上がる。洗面所で顔を洗ってから服を着替えてリビングに行くと父さんがお腹をさすりながら朝食とにらめっこしていた。
「おはよう、父さん」
「おはよう、コウ」
「どうしたの?食べないの?」
「昨日のミニカツ丼のせいで胃もたれしていてな」
う~、と言いながらまだ朝食とにらめっこしている父さんの後ろにいつの間にか笑顔の母さんが立っていた。
「あら。私のミニカツ丼が悪かった、と?」
「胃もたれの原因は確実にそれだろうな」
別にやましいことがあるわけでもなく、事実を言っているだけなので父さんはビクビクすることなく言い返していた。
母さんは困ったような顔で頬に手を当てた。
「そうね。だからあなたの朝食だけおかゆにしてあげたんじゃない」
確かに、僕や母さんの朝食はパンにサラダにベーコンエッグにスープといつもの朝食だったが、父さんの朝食だけおかゆだった。
「その気遣いを昨日のミニカツ丼の時にもみせてほしかったけど」
父さんの言い分もわからないことはないが、それを言うと母さんに睨まれるだろうから成り行きを見守る。
「だからカツ丼をミニにする気遣いをみせたじゃない」
「それだったらミニカツ丼自体を出さないという気遣いにしてほしいよ」
「ごめんなさいね」
母さんにバックハグされながら頭を撫でられた父さんは、ゆっくりながらもおかゆを食べ始めた。
これで決着がついたらしい。
そんな2人のやり取りを苦笑しながら見つつ、僕も朝食を食べ始める。
「そういえばコウ。スマホ貸してちょうだい」
父さんから離れた母さんがそう言いながら僕に手を差し出してきたので、僕はロックを解除したスマホを母さんの手に乗せた。
すると、母さんは自分のスマホを取り出して僕のスマホと何かやり取りをし始めた。
「ありがとう」
母さんから返ってきたスマホを見るが、特に変わったところはなかった。
「何をしたの?」
中を調べればわかるんだろうけど、朝食も食べないといけないのでシンプルに母さんに聞いた。
「電話帳とラァインにチョウちゃんの連絡先を入れただけよ」
確かにそれはこれからチョウちゃんの家に居候するにあたって必要になることだけど、今日会うのだから別に今入れる必要はないはずなので、パンを咥えながら首を傾げてみる。
そんな僕の姿に苦笑した母さん。
「行儀悪いわよ」
なので首を元に戻してパンを食べ始めるとまた母さんは苦笑した。
「一応チョウちゃんには新幹線の着く時間は教えてるけど、着いたら連絡欲しいって言っていたからね」
「なるほど」
それなら納得だった。
「だから忘れずに連絡してあげてね」
「わかったよ」
朝食を食べ終わり、新幹線の時間もあるということで家を出て駅のホームにやって来た。
「コウ。チョウちゃんにあんまり迷惑かけすぎずに高校生活頑張れよ」
「父さんこそ母さんに迷惑かけすぎないようにね」
「なに言ってるんだよ」
父さんに頭を小突かれた。
「父さんはどうかはわからないけど、私は年に1回は戻ってくるつもりだから、体調だけは気をつけてね」
「うん。母さんも慣れない海外で体調崩さないようにね」
「えぇ」
母さんに抱きしめられたので抱きしめ返す。
別に今生の別れとかではないので泣くことはない。というより何もかもいきなりすぎて泣きたくても泣けないとも言えた。
そんなことを思っていると新幹線がやって来たので乗り込む。
「コウ。高校生活楽しんでこい」
「チョウちゃんによろしくね」
「うん。じゃあね」
新幹線の扉が閉まり、動き出した。
✳
「行きましたね」
「行ったな」
コウを見送った私達は空港行きの電車に乗り込んだ。
「しかし、聞かなかったコウも悪いと思うが、言わなかった母さんもなかなか悪い母親だ」
私がそう言うと、母さんはニンマリと微笑んだ。
「あら。いくらでも聞く機会はあったのだから、聞かなかったコウが全部悪いのですよ、あなた」
それを言うなら言う機会もいくらでもあった、ということにもなるのだが、それを言ったところで母さんはコウが悪いと言うだけだろうから、これ以上は言わないでおこう。
「コウの高校生活はしんどいモノになりそうだな」
「波乱の高校生活。それもまたいいんじゃないですか?」
「いいのかな?」
「いいんですよ」
母さんがそう言うならそうしておこう。
「もう………朝………?」
母さんに起こされて時計を見るとまだ5時。
なんでこんな時間に起こすんだよ。
と、思いながら母さんを見上げる。
「早すぎない?」
中学時代でもこんなに朝早くに起きるなんてなかったのに、卒業してからは早くても8時にしか起きてこなかったのでまだ眠い。
眠い目をこすっていると、母さんが頭を撫でてきた。
「新幹線の時間があるからこれでもギリギリまで寝かしてあげていたほうよ」
新幹線。
そう言われて思い出した。
今日、新幹線にのって小学生時代に住んでいた小説町に行くのか。
色々急すぎて頭が混乱していたせいで忘れてた。
「だから起きてね」
そう言われると起きるしかないし、ここで駄々をこねると母さんからどんなお仕置きがされるかわからないので、眠い目をこすりながら起き上がり、大きくあくびをする。
「おはよう、母さん」
「おはよう。顔洗って着替えたらご飯食べなさい」
「うん」
笑顔で部屋を出ていく母さんの後ろ姿を見送ってから、ふぁ~、ともう1度あくびをしてからバンザイする形で背を伸ばしてから立ち上がる。洗面所で顔を洗ってから服を着替えてリビングに行くと父さんがお腹をさすりながら朝食とにらめっこしていた。
「おはよう、父さん」
「おはよう、コウ」
「どうしたの?食べないの?」
「昨日のミニカツ丼のせいで胃もたれしていてな」
う~、と言いながらまだ朝食とにらめっこしている父さんの後ろにいつの間にか笑顔の母さんが立っていた。
「あら。私のミニカツ丼が悪かった、と?」
「胃もたれの原因は確実にそれだろうな」
別にやましいことがあるわけでもなく、事実を言っているだけなので父さんはビクビクすることなく言い返していた。
母さんは困ったような顔で頬に手を当てた。
「そうね。だからあなたの朝食だけおかゆにしてあげたんじゃない」
確かに、僕や母さんの朝食はパンにサラダにベーコンエッグにスープといつもの朝食だったが、父さんの朝食だけおかゆだった。
「その気遣いを昨日のミニカツ丼の時にもみせてほしかったけど」
父さんの言い分もわからないことはないが、それを言うと母さんに睨まれるだろうから成り行きを見守る。
「だからカツ丼をミニにする気遣いをみせたじゃない」
「それだったらミニカツ丼自体を出さないという気遣いにしてほしいよ」
「ごめんなさいね」
母さんにバックハグされながら頭を撫でられた父さんは、ゆっくりながらもおかゆを食べ始めた。
これで決着がついたらしい。
そんな2人のやり取りを苦笑しながら見つつ、僕も朝食を食べ始める。
「そういえばコウ。スマホ貸してちょうだい」
父さんから離れた母さんがそう言いながら僕に手を差し出してきたので、僕はロックを解除したスマホを母さんの手に乗せた。
すると、母さんは自分のスマホを取り出して僕のスマホと何かやり取りをし始めた。
「ありがとう」
母さんから返ってきたスマホを見るが、特に変わったところはなかった。
「何をしたの?」
中を調べればわかるんだろうけど、朝食も食べないといけないのでシンプルに母さんに聞いた。
「電話帳とラァインにチョウちゃんの連絡先を入れただけよ」
確かにそれはこれからチョウちゃんの家に居候するにあたって必要になることだけど、今日会うのだから別に今入れる必要はないはずなので、パンを咥えながら首を傾げてみる。
そんな僕の姿に苦笑した母さん。
「行儀悪いわよ」
なので首を元に戻してパンを食べ始めるとまた母さんは苦笑した。
「一応チョウちゃんには新幹線の着く時間は教えてるけど、着いたら連絡欲しいって言っていたからね」
「なるほど」
それなら納得だった。
「だから忘れずに連絡してあげてね」
「わかったよ」
朝食を食べ終わり、新幹線の時間もあるということで家を出て駅のホームにやって来た。
「コウ。チョウちゃんにあんまり迷惑かけすぎずに高校生活頑張れよ」
「父さんこそ母さんに迷惑かけすぎないようにね」
「なに言ってるんだよ」
父さんに頭を小突かれた。
「父さんはどうかはわからないけど、私は年に1回は戻ってくるつもりだから、体調だけは気をつけてね」
「うん。母さんも慣れない海外で体調崩さないようにね」
「えぇ」
母さんに抱きしめられたので抱きしめ返す。
別に今生の別れとかではないので泣くことはない。というより何もかもいきなりすぎて泣きたくても泣けないとも言えた。
そんなことを思っていると新幹線がやって来たので乗り込む。
「コウ。高校生活楽しんでこい」
「チョウちゃんによろしくね」
「うん。じゃあね」
新幹線の扉が閉まり、動き出した。
✳
「行きましたね」
「行ったな」
コウを見送った私達は空港行きの電車に乗り込んだ。
「しかし、聞かなかったコウも悪いと思うが、言わなかった母さんもなかなか悪い母親だ」
私がそう言うと、母さんはニンマリと微笑んだ。
「あら。いくらでも聞く機会はあったのだから、聞かなかったコウが全部悪いのですよ、あなた」
それを言うなら言う機会もいくらでもあった、ということにもなるのだが、それを言ったところで母さんはコウが悪いと言うだけだろうから、これ以上は言わないでおこう。
「コウの高校生活はしんどいモノになりそうだな」
「波乱の高校生活。それもまたいいんじゃないですか?」
「いいのかな?」
「いいんですよ」
母さんがそう言うならそうしておこう。
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