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第57章
それぞれの道
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「さくの言いたい事は分かった。元親の正室は上方から獲ろう。そなたは側室としてあ奴の傍に居てやってくれぬか?」
さくは即答した。
「お断り致します。」
「なに、それも駄目か。」
「さくが存在する事で正室の方と元親様の関係が壊れます。さくは居ない方が良いのです。」
「・・・・・・。元親はそなたの事を諦めないぞ。」
「でしょうね。ですからさくは出奔致す所存。」
「な、何。出奔するだと・・・・。一体、何処へ出奔するというのだ?」
さくは居ずまいを正して自分の決意を述べる。
「さくは元親様と出会い、見識の狭さを痛感させられました。外の世界を見てみたいのです。先ずは上方に出て、諸国を巡り、ゆくゆくは海の外へ出てみたいと思います。」
「う、海の外?」
「はい。さくは世界の果ての先に行くと、地獄に落ちると思っておりました。ですが、元親様に教えて頂きました。この世は丸く、果てが無いと・・・・。それをこの目で確かめて見たいのです。」
国親も部屋の外に控えていた左月も、さくの途方もない夢に度肝を抜かれた。
「本気で言っておるのか?海の外に行くなどと・・・・・。」
「人と云うのは10の志を持って、ようやく1か2叶うのです。初めから小さい事を言っていては何も志は果たせぬ。」
「・・・・・・。」
「これは元親様の受け売りですが・・・・。」
さくはニコリと笑う。その笑顔に国親は強い決意を感じ取った。
「分かった。もう何も言わぬ。そちの好きにせい。」
残念だがやむを得ない。国親は腕を組んで苦虫を噛み潰したような顔をした。
「それでは、お暇申し上げます。もうお会いする事はないでしょう。どうかお元気で。」
「・・・・・・。もう、戻って来ぬのか?」
「そのつもりに御座います。」
「・・・・・・。」
さくは国親に頭を下げると、その場を辞した。さくの後ろ姿に国親は声を掛けた。
「さく、済まぬな。」
その言葉は国親なりの、さくの働きに対する労わりと、選択に対する感謝を表したものであった。一瞬、足を止めたさくであったが、何も言わず、振り返らずその場を後にした。
さくは即答した。
「お断り致します。」
「なに、それも駄目か。」
「さくが存在する事で正室の方と元親様の関係が壊れます。さくは居ない方が良いのです。」
「・・・・・・。元親はそなたの事を諦めないぞ。」
「でしょうね。ですからさくは出奔致す所存。」
「な、何。出奔するだと・・・・。一体、何処へ出奔するというのだ?」
さくは居ずまいを正して自分の決意を述べる。
「さくは元親様と出会い、見識の狭さを痛感させられました。外の世界を見てみたいのです。先ずは上方に出て、諸国を巡り、ゆくゆくは海の外へ出てみたいと思います。」
「う、海の外?」
「はい。さくは世界の果ての先に行くと、地獄に落ちると思っておりました。ですが、元親様に教えて頂きました。この世は丸く、果てが無いと・・・・。それをこの目で確かめて見たいのです。」
国親も部屋の外に控えていた左月も、さくの途方もない夢に度肝を抜かれた。
「本気で言っておるのか?海の外に行くなどと・・・・・。」
「人と云うのは10の志を持って、ようやく1か2叶うのです。初めから小さい事を言っていては何も志は果たせぬ。」
「・・・・・・。」
「これは元親様の受け売りですが・・・・。」
さくはニコリと笑う。その笑顔に国親は強い決意を感じ取った。
「分かった。もう何も言わぬ。そちの好きにせい。」
残念だがやむを得ない。国親は腕を組んで苦虫を噛み潰したような顔をした。
「それでは、お暇申し上げます。もうお会いする事はないでしょう。どうかお元気で。」
「・・・・・・。もう、戻って来ぬのか?」
「そのつもりに御座います。」
「・・・・・・。」
さくは国親に頭を下げると、その場を辞した。さくの後ろ姿に国親は声を掛けた。
「さく、済まぬな。」
その言葉は国親なりの、さくの働きに対する労わりと、選択に対する感謝を表したものであった。一瞬、足を止めたさくであったが、何も言わず、振り返らずその場を後にした。
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