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第25章
ひきつけ
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勝手に入る事を禁じられている弥三郎の部屋に、さくはずかずかと押し入った。弥三郎はどこかに行って留守である。遠慮なく書物に手を伸ばし、中身を確認する。春画、春画、これもかれも春画である。
「あの、ど変態が。」
さくは小さく毒づくと、片っ端から春画を庭先に放り出す。左京と左月はそれを呆然と見ていた。そこへ何事かと異変を察知した弥三郎が慌てて戻って来た。
「な、な、な、何をやっておるのだ。さく、一体どういうつもりだ!」
弥三郎は大事な書物を庭先に放り投げられて怒り心頭であったが、さくは全く動じず、死んだ目をして言った。
「知れた事です。全て燃やします。」
「な、何。何故だ。」
「弥三郎様に害があるものだからです。」
「害?害が有るとは何だ?どんな害があるというのだ!」
「妄想に囚われ、自分の世界に籠り、誤った価値観に左右される様になります。以前からおかしいお人だと思っておりましたが、原因がこんなにも身近にあった事に気付かなんだとは、さくも迂闊で御座いました。」
さくは春画をヒラヒラと捲り、毒々しく弥三郎に吐き捨てた。弥三郎はそれで全て悟った様だった。
「左京、左月。お前ら、さくに喋りおったな。国家の一大事を人に簡単にベラベラと。春画をやった恩を仇で返しおって。其処に直れ。潔く腹を切れ。」
弥三郎はさくに追及され窮した感情を怒りに転換して二人にぶつける。左京・左月の兄弟は両膝を付いて頭を垂れた。
「申し訳ありません。」
「誤って済むと思っているのか。この不忠者め。潔く腹を切って、腸を私に見せよ。」
なんと弥三郎はたかが春画の事を暴露された事ぐらいで二人に切腹を迫った。これにはさすがにさくも呆れた。
「いい加減にしなされ。たかが春画ごときの事で忠臣に切腹を迫るとは。恥を知りなされ。一体、春画と家臣と、どっちが大事なのです。」
「勿論、春画じゃ。」
即答であった。ここまで行くとある意味、清々しさを覚える。この男の春画に対する執着心は一体、何処から来るものなのかと呆れながら、さくは冷徹に言い放った。
「左京。春画を全て焼き払うのです。」
その瞬間、弥三郎は奇声を発しながら、左京に飛び掛かろうとした。それを察知したさくは、弥三郎の足を払い転倒させると、馬乗りになって腕の関節を極める。関節を極めない事には抑え込めない程、弥三郎の体は大きくなっていた。
「本気か。本気で燃やすつもりか。止めてくれ。春画を燃やされたらもう、生きてはいけない。」
「何を馬鹿な事を。このようなもの、無い方がすっきり致します。いい加減、目を覚まされませ。」
泣き言を言う弥三郎を、さくは一喝し、再度、左京に火を持ってくる様に指示した。左京は戸惑いながらも、何処からか火を持ってきた。それを見た弥三郎は動きを封じられながらも、足をバタバタと動かし、抵抗の意を示した。
「左京、頼む。お願いじゃ。それだけは止めてくれ。私がどれだけの労力を払って、春画を収集してきたと思っておるのだ。どれも貴重なものじゃぞ。日の本の宝だぞ。」
火を点けるのを躊躇する左京に、弥三郎は恥も外聞も無く哀願した。
「その中の春画には先祖代々から伝わる、貴重な春画も混ざっているのだぞ。それに火を点けたら、お主は主家に弓引く事になるのが分からんのか。」
それを聞いた左京は、さくの表情を盗み見て言った。
「本当に火を点けるので御座いますか。その様な貴重なものに火を点ければ、大殿からお叱りを受けるのでは・・・・・。」
「騙されるでない。どこの家が春画を先祖代々伝えるのです。その様な家があるものか。」
「本当だ。先祖代々のものだ。」
「本当に春画を先祖代々伝える家があったなら、そんな家は潰れた方が良い。」
さくは弥三郎の妄言を切って捨てる。
「さあ、左京。早う燃やしなさい。」
「はっ。」
左京は庭に放られた春画を一冊、手に取るとそれに火を点けた。その瞬間、
「うわあぁぁああ~~。」
弥三郎が自分に火が点けられた様な、悲鳴を出すので皆、びっくりした。
「何て声をお出しになさりますのか。たかだか春画を燃やされたぐらいで。」
弥三郎を叱責したさくは、極めていた弥三郎の関節に手ごたえが無いのに気付いた。様子がおかしい。
「弥三郎様。」
返事が無い。それどころかビクビクとひきつけを起こしていた。
「弥三郎様。」
さくは異常に気付いて、極めていた関節を解放した。仰向けにして頬を叩く。そこで左京と左月も痙攣している弥三郎の異常に気付く。
「どうされました!」
「分からぬ。ひきつけを起こされている。」
三人が心配そうに弥三郎の顔を覗き込む中、左月がボソリと言った。
「春画を燃やされた、心労ではないのですか?」
まさか。そんな馬鹿な事が有る訳が無い。と、さくは思ったが、弥三郎が春画を燃やす事に必死に抵抗していた様を思い起こして、もしかすると。と、考えを改めた。燃やされたら生きてはいけない。とまで言うのだから、春画は弥三郎の分身なのやも知れぬ。それに火を点けられて、己が燃やされる様な感覚を覚えてひきつけを起こしたと考えられなくもない。馬鹿げた推論ではあったが、弥三郎自身が常人には測りがたい程の男なので、もしかすると、そういう事もありえるかも知れなかった。
「どうしましょうか?」
「・・・・・・。部屋に運んで、寝かすのです。」
左京と左月は弥三郎を担ぎ上げると、部屋に運び込む。さくは床の準備をしてやる。三人掛かりで寝かし付けてやっても、未だ痙攣は収まらなかった。左月が口を開いた。
「して、庭に放り投げてある春画はどうなされますか?」
「そうですね・・・・・。」
どうしたものか。さくとしてみれば焼き捨ててやりたいが、弥三郎の症状を目の当たりにすると、躊躇させられる。
「もし、全て焼き捨てたら死んでしまうのではありませんか。」
「・・・・・・。」
左京の呟きにさくは沈黙した。春画を全て焼き捨てた事で、大事にしていた持ち主が心労で死ぬなどという事がありえるのか?ありえない。ないが、もしかしたらと思わせる程、弥三郎の反応は怖かった。
「仕方ありません。燃やすのは一冊だけにしておきましょう。」
三人共、弥三郎の症状に何とも言えぬ薄気味悪さを覚えていたので、さくの判断は妥当なものであった。
日が暮れてから弥三郎はようやく目を覚ました。二刻半(5時間)近くも気を失っていた事になる。弥三郎が目を覚まし、さくはホッとした。このまま目を覚まさなかったなら自決ものである。
「弥三郎様。目を覚まされましたか?」
さくの呼びかけに覚醒した弥三郎は、直ぐにガバッと体を起こし、訊ねた。
「春画。春画は?私の春画はどうした?」
「起きて早々、それですか?そんなに春画が大事なので?」
さくは呆れながら語りかけるも、弥三郎はうわ言の様に春画、春画である。さくは溜息を付きながら言った。
「春画は無事で御座います。弥三郎様が心労死するやもしれませんので、焼き捨てるのは止めにしました。」
「本当か?本当だな。」
さくは部屋の棚を指差した。弥三郎が目を向けると、春画が元通りに積み上げてある。弥三郎はがばっと起き上がると、棚に近寄り一冊一冊ちゃんとあるかどうか確認する。
「おお。皆、無事であったか。良かった。良かった。」
弥三郎が春画に対し、人の様に語りかけるのを呆れたように、さくは見守った。阿呆だなと思っていると、
「いない。いないぞ。玉がおらぬ。」
弥三郎は血相変えて玉がおらぬと言う。玉とは誰の事だろうか?
「玉とはいったい、誰の事なので?」
「春画じゃ。春画の玉がおらぬ。」
春画一冊一冊に名前を付けているとは、阿呆も阿呆、ど阿呆だな。と思いながらも、さくは襖を開き、庭先の燃えかすを指し示した。
「玉はあそこに。」
弥三郎は庭に飛び降りると、慟哭した。
「玉。何と無残な姿に。私の元に来たばかりにこの様な事に・・・・・。」
春画を燃やされ涙にくれる弥三郎の姿に、さくは主家の今後に大いなる不安を覚えるのだった。
「あの、ど変態が。」
さくは小さく毒づくと、片っ端から春画を庭先に放り出す。左京と左月はそれを呆然と見ていた。そこへ何事かと異変を察知した弥三郎が慌てて戻って来た。
「な、な、な、何をやっておるのだ。さく、一体どういうつもりだ!」
弥三郎は大事な書物を庭先に放り投げられて怒り心頭であったが、さくは全く動じず、死んだ目をして言った。
「知れた事です。全て燃やします。」
「な、何。何故だ。」
「弥三郎様に害があるものだからです。」
「害?害が有るとは何だ?どんな害があるというのだ!」
「妄想に囚われ、自分の世界に籠り、誤った価値観に左右される様になります。以前からおかしいお人だと思っておりましたが、原因がこんなにも身近にあった事に気付かなんだとは、さくも迂闊で御座いました。」
さくは春画をヒラヒラと捲り、毒々しく弥三郎に吐き捨てた。弥三郎はそれで全て悟った様だった。
「左京、左月。お前ら、さくに喋りおったな。国家の一大事を人に簡単にベラベラと。春画をやった恩を仇で返しおって。其処に直れ。潔く腹を切れ。」
弥三郎はさくに追及され窮した感情を怒りに転換して二人にぶつける。左京・左月の兄弟は両膝を付いて頭を垂れた。
「申し訳ありません。」
「誤って済むと思っているのか。この不忠者め。潔く腹を切って、腸を私に見せよ。」
なんと弥三郎はたかが春画の事を暴露された事ぐらいで二人に切腹を迫った。これにはさすがにさくも呆れた。
「いい加減にしなされ。たかが春画ごときの事で忠臣に切腹を迫るとは。恥を知りなされ。一体、春画と家臣と、どっちが大事なのです。」
「勿論、春画じゃ。」
即答であった。ここまで行くとある意味、清々しさを覚える。この男の春画に対する執着心は一体、何処から来るものなのかと呆れながら、さくは冷徹に言い放った。
「左京。春画を全て焼き払うのです。」
その瞬間、弥三郎は奇声を発しながら、左京に飛び掛かろうとした。それを察知したさくは、弥三郎の足を払い転倒させると、馬乗りになって腕の関節を極める。関節を極めない事には抑え込めない程、弥三郎の体は大きくなっていた。
「本気か。本気で燃やすつもりか。止めてくれ。春画を燃やされたらもう、生きてはいけない。」
「何を馬鹿な事を。このようなもの、無い方がすっきり致します。いい加減、目を覚まされませ。」
泣き言を言う弥三郎を、さくは一喝し、再度、左京に火を持ってくる様に指示した。左京は戸惑いながらも、何処からか火を持ってきた。それを見た弥三郎は動きを封じられながらも、足をバタバタと動かし、抵抗の意を示した。
「左京、頼む。お願いじゃ。それだけは止めてくれ。私がどれだけの労力を払って、春画を収集してきたと思っておるのだ。どれも貴重なものじゃぞ。日の本の宝だぞ。」
火を点けるのを躊躇する左京に、弥三郎は恥も外聞も無く哀願した。
「その中の春画には先祖代々から伝わる、貴重な春画も混ざっているのだぞ。それに火を点けたら、お主は主家に弓引く事になるのが分からんのか。」
それを聞いた左京は、さくの表情を盗み見て言った。
「本当に火を点けるので御座いますか。その様な貴重なものに火を点ければ、大殿からお叱りを受けるのでは・・・・・。」
「騙されるでない。どこの家が春画を先祖代々伝えるのです。その様な家があるものか。」
「本当だ。先祖代々のものだ。」
「本当に春画を先祖代々伝える家があったなら、そんな家は潰れた方が良い。」
さくは弥三郎の妄言を切って捨てる。
「さあ、左京。早う燃やしなさい。」
「はっ。」
左京は庭に放られた春画を一冊、手に取るとそれに火を点けた。その瞬間、
「うわあぁぁああ~~。」
弥三郎が自分に火が点けられた様な、悲鳴を出すので皆、びっくりした。
「何て声をお出しになさりますのか。たかだか春画を燃やされたぐらいで。」
弥三郎を叱責したさくは、極めていた弥三郎の関節に手ごたえが無いのに気付いた。様子がおかしい。
「弥三郎様。」
返事が無い。それどころかビクビクとひきつけを起こしていた。
「弥三郎様。」
さくは異常に気付いて、極めていた関節を解放した。仰向けにして頬を叩く。そこで左京と左月も痙攣している弥三郎の異常に気付く。
「どうされました!」
「分からぬ。ひきつけを起こされている。」
三人が心配そうに弥三郎の顔を覗き込む中、左月がボソリと言った。
「春画を燃やされた、心労ではないのですか?」
まさか。そんな馬鹿な事が有る訳が無い。と、さくは思ったが、弥三郎が春画を燃やす事に必死に抵抗していた様を思い起こして、もしかすると。と、考えを改めた。燃やされたら生きてはいけない。とまで言うのだから、春画は弥三郎の分身なのやも知れぬ。それに火を点けられて、己が燃やされる様な感覚を覚えてひきつけを起こしたと考えられなくもない。馬鹿げた推論ではあったが、弥三郎自身が常人には測りがたい程の男なので、もしかすると、そういう事もありえるかも知れなかった。
「どうしましょうか?」
「・・・・・・。部屋に運んで、寝かすのです。」
左京と左月は弥三郎を担ぎ上げると、部屋に運び込む。さくは床の準備をしてやる。三人掛かりで寝かし付けてやっても、未だ痙攣は収まらなかった。左月が口を開いた。
「して、庭に放り投げてある春画はどうなされますか?」
「そうですね・・・・・。」
どうしたものか。さくとしてみれば焼き捨ててやりたいが、弥三郎の症状を目の当たりにすると、躊躇させられる。
「もし、全て焼き捨てたら死んでしまうのではありませんか。」
「・・・・・・。」
左京の呟きにさくは沈黙した。春画を全て焼き捨てた事で、大事にしていた持ち主が心労で死ぬなどという事がありえるのか?ありえない。ないが、もしかしたらと思わせる程、弥三郎の反応は怖かった。
「仕方ありません。燃やすのは一冊だけにしておきましょう。」
三人共、弥三郎の症状に何とも言えぬ薄気味悪さを覚えていたので、さくの判断は妥当なものであった。
日が暮れてから弥三郎はようやく目を覚ました。二刻半(5時間)近くも気を失っていた事になる。弥三郎が目を覚まし、さくはホッとした。このまま目を覚まさなかったなら自決ものである。
「弥三郎様。目を覚まされましたか?」
さくの呼びかけに覚醒した弥三郎は、直ぐにガバッと体を起こし、訊ねた。
「春画。春画は?私の春画はどうした?」
「起きて早々、それですか?そんなに春画が大事なので?」
さくは呆れながら語りかけるも、弥三郎はうわ言の様に春画、春画である。さくは溜息を付きながら言った。
「春画は無事で御座います。弥三郎様が心労死するやもしれませんので、焼き捨てるのは止めにしました。」
「本当か?本当だな。」
さくは部屋の棚を指差した。弥三郎が目を向けると、春画が元通りに積み上げてある。弥三郎はがばっと起き上がると、棚に近寄り一冊一冊ちゃんとあるかどうか確認する。
「おお。皆、無事であったか。良かった。良かった。」
弥三郎が春画に対し、人の様に語りかけるのを呆れたように、さくは見守った。阿呆だなと思っていると、
「いない。いないぞ。玉がおらぬ。」
弥三郎は血相変えて玉がおらぬと言う。玉とは誰の事だろうか?
「玉とはいったい、誰の事なので?」
「春画じゃ。春画の玉がおらぬ。」
春画一冊一冊に名前を付けているとは、阿呆も阿呆、ど阿呆だな。と思いながらも、さくは襖を開き、庭先の燃えかすを指し示した。
「玉はあそこに。」
弥三郎は庭に飛び降りると、慟哭した。
「玉。何と無残な姿に。私の元に来たばかりにこの様な事に・・・・・。」
春画を燃やされ涙にくれる弥三郎の姿に、さくは主家の今後に大いなる不安を覚えるのだった。
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