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第21章
収穫と課題
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「えっ、あのピッチャー。決め球を投げていなかったの?」
帰りの電車の中、ミカエルの選手たちは手塚の言葉に驚きの声を上げた。
「なんで分かるんだい?」
不破は手塚に説明を求める。
「帰りに小川というピッチャーと握手した時に、指先の固さで気付いた。あのピッチャーの決め球は恐らくスプリット。今日の試合では一球も投げなかった。」
「・・・・な、なぜ、投げなかったの?舐められてったって事?」
石井会長が憤慨して尋ねる。
「そうではないです。こちらが2軍相手に9点取ったので警戒したんでしょう。夏の大会の事も考えて敢えて使わなかった。見せたくなかったんだと思います。」
「ウイニングショットを投げなかったピッチャーにうちは1点しか取れなかったのかよ。なんだよ。落ち込むぜ。」
桃太郎が自虐的に言った。
「確かにうちは向こうの手の内を隠したエースから1点しか取れなかった。だが、向こうはこちらから1点も取れなかった。」
手塚は静かに言った。
「向こうのバッターも奥の手を隠していたんじゃないのか?」
「いや、それはない。向こうのバッターは本気で越前を攻略しに来ていたのは確かだ。」
蛭田の疑問に、習志野のバッターと間近で対決した黒田が断言する。
「その通りだ。向こうの攻撃陣はシリアスに越前を攻略出来なかった。本気の習志野に点をやらなかった事は誇っていい。特に二遊間の守備は見事だった。」
手塚に褒められ、丸と菊池は顔を綻ばせた。
「打撃陣も良かった。あの小川というピッチャーが奥の手を見せなかったとしても、なかなか点を取るのは難しい。あのピッチャーから点を取れれば、大部分のピッチャーから点が取れる。自信を持て。」
桃太郎は一人、渋い顔である。
「俺は良い所無かったよ。」
愚痴る桃に手塚は声を掛けた。
「桃は最後の打席が良かったぞ。」
「本当っすか!・・・・・ん、最後の打席って・・・・。セカンドゴロのダブルプレーっすよね。」
「君はあれで良いんだ。」
「・・・・・・。どういう事っすか?」
手塚はこの試合、攻撃で足を引っ張った桃太郎の最後の打席が良かったという。セカンドゴロのダブルプレーなのに?咲良も部員皆も手塚の謎かけの様な言葉に真意が分からず、困惑の表情を浮かべた。
「越前も外角低めのカットボールは良かった。習志野からダブルプレー3つは見事だ。」
「はい。」
「だが、今日の試合がもし、9イニング制だったら、間違いなく捕まっていただろう。」
「・・・・・・・。」
「君は最初から最後まで力投している。抜く事を覚えなければ甲子園は無理だ。もっと緩急を使うんだ。ペース配分も考えろ。」
「・・・・・・うっす。」
習志野を無失点に抑えたにも関わらず、手塚にダメ出しを食らい、越前は意気消沈である。
「そんな、厳しすぎますよ。去年の県内覇者を負かしたのに。」
堪らず愛菜が越前を擁護した。
「まあ、まだまだ課題はあるけど、今日は習志野に勝ったんだから、胸を張ろう。」
咲良は越前の隣に座って肩を抱いた。咲良の意見に石井会長も同調する。
「そうだよ。練習試合とは云え、習志野に勝つなんて皆、凄いよ。球技大会の汚名は挽回だよ。」
「任せて下さい。動画は編集してユーチューブにアップしますから。明日は学校中のヒーローです。」
愛菜が胸を張った。アップする気満々である。愛菜に任せて大丈夫だろうかと咲良は不安に思った。
「ちょっと愛菜ちゃん。又、変な動画をアップしないでね。」
「大丈夫ですよ。愛菜に任せて下さい。カッコよく作りますから。」
「・・・・・・・。」
咲良は動画編集などやらない。野球部でそれに長けているのは愛菜しかおらず、まあ、やってもらうしかない。デジタルタトゥーにならないといいが・・・・。
「腹減った。飯食いませんか?」
唐突に桃太郎が言った。それで皆、空腹なのに気付いた。試合前は緊張して食欲が無かったのだが、試合に勝利して安堵の食欲が湧き上がって来たのだ。
「それでは祝勝会といくか。」
「賛成!」
帰りの電車の中、ミカエルの選手たちは手塚の言葉に驚きの声を上げた。
「なんで分かるんだい?」
不破は手塚に説明を求める。
「帰りに小川というピッチャーと握手した時に、指先の固さで気付いた。あのピッチャーの決め球は恐らくスプリット。今日の試合では一球も投げなかった。」
「・・・・な、なぜ、投げなかったの?舐められてったって事?」
石井会長が憤慨して尋ねる。
「そうではないです。こちらが2軍相手に9点取ったので警戒したんでしょう。夏の大会の事も考えて敢えて使わなかった。見せたくなかったんだと思います。」
「ウイニングショットを投げなかったピッチャーにうちは1点しか取れなかったのかよ。なんだよ。落ち込むぜ。」
桃太郎が自虐的に言った。
「確かにうちは向こうの手の内を隠したエースから1点しか取れなかった。だが、向こうはこちらから1点も取れなかった。」
手塚は静かに言った。
「向こうのバッターも奥の手を隠していたんじゃないのか?」
「いや、それはない。向こうのバッターは本気で越前を攻略しに来ていたのは確かだ。」
蛭田の疑問に、習志野のバッターと間近で対決した黒田が断言する。
「その通りだ。向こうの攻撃陣はシリアスに越前を攻略出来なかった。本気の習志野に点をやらなかった事は誇っていい。特に二遊間の守備は見事だった。」
手塚に褒められ、丸と菊池は顔を綻ばせた。
「打撃陣も良かった。あの小川というピッチャーが奥の手を見せなかったとしても、なかなか点を取るのは難しい。あのピッチャーから点を取れれば、大部分のピッチャーから点が取れる。自信を持て。」
桃太郎は一人、渋い顔である。
「俺は良い所無かったよ。」
愚痴る桃に手塚は声を掛けた。
「桃は最後の打席が良かったぞ。」
「本当っすか!・・・・・ん、最後の打席って・・・・。セカンドゴロのダブルプレーっすよね。」
「君はあれで良いんだ。」
「・・・・・・。どういう事っすか?」
手塚はこの試合、攻撃で足を引っ張った桃太郎の最後の打席が良かったという。セカンドゴロのダブルプレーなのに?咲良も部員皆も手塚の謎かけの様な言葉に真意が分からず、困惑の表情を浮かべた。
「越前も外角低めのカットボールは良かった。習志野からダブルプレー3つは見事だ。」
「はい。」
「だが、今日の試合がもし、9イニング制だったら、間違いなく捕まっていただろう。」
「・・・・・・・。」
「君は最初から最後まで力投している。抜く事を覚えなければ甲子園は無理だ。もっと緩急を使うんだ。ペース配分も考えろ。」
「・・・・・・うっす。」
習志野を無失点に抑えたにも関わらず、手塚にダメ出しを食らい、越前は意気消沈である。
「そんな、厳しすぎますよ。去年の県内覇者を負かしたのに。」
堪らず愛菜が越前を擁護した。
「まあ、まだまだ課題はあるけど、今日は習志野に勝ったんだから、胸を張ろう。」
咲良は越前の隣に座って肩を抱いた。咲良の意見に石井会長も同調する。
「そうだよ。練習試合とは云え、習志野に勝つなんて皆、凄いよ。球技大会の汚名は挽回だよ。」
「任せて下さい。動画は編集してユーチューブにアップしますから。明日は学校中のヒーローです。」
愛菜が胸を張った。アップする気満々である。愛菜に任せて大丈夫だろうかと咲良は不安に思った。
「ちょっと愛菜ちゃん。又、変な動画をアップしないでね。」
「大丈夫ですよ。愛菜に任せて下さい。カッコよく作りますから。」
「・・・・・・・。」
咲良は動画編集などやらない。野球部でそれに長けているのは愛菜しかおらず、まあ、やってもらうしかない。デジタルタトゥーにならないといいが・・・・。
「腹減った。飯食いませんか?」
唐突に桃太郎が言った。それで皆、空腹なのに気付いた。試合前は緊張して食欲が無かったのだが、試合に勝利して安堵の食欲が湧き上がって来たのだ。
「それでは祝勝会といくか。」
「賛成!」
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