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第7章
ミカエル青学VS習志野2軍、開戦
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聖ミカエル青春学園 VS 習志野2軍 練習試合開始だ。
先攻はミカエル。1番、蛭田が打席に入る。習志野のピッチャーが振りかぶって第1球を投げる。ストライク。
「大した事ないっすね。」
相手の球筋を見て越前がそう言った。相手のピッチャーは右のオーバハンド。球は130キロ程の速さ。
「多分、1年生じゃないかな。」
咲良が呟くと、愛菜が越前の機嫌を取る。
「習志野なんて大した事ないよ。越前君の方が全然速いボール投げてるもん。」
愛菜の言ってることは事実だ。越前のボールに比べればかなり見劣りする。だが、習志野の2軍の投手が劣ってる訳ではない。1年生にしては制球の良い球を投げている。越前が特別なのだった。2球目もストライク。2球で2ストライクに追い込まれた蛭田。だが、動じる様子はない。彼が真骨頂を発揮するのはここからなのだ。ボール。ボール。ファウル。ファウル。ボール。球を慎重に見極め、2-3のフルカウント。これが蛭とも蝮とも謂われる蛭田の真骨頂。1番打者として選球眼でボールを見極め、ストライクはカット。球数を投げさせ、味方に球筋を見せる役割を徹底する。相手にとっては最も厄介な1番打者である。
「ボール。フォアボール。」
蛭田はボールを見極め、四球を選んだ。これでノーアウト一塁。続く打者は中沢である。
中沢が左バッターボックスに入った所で、習志野2軍の指揮を執っていた林が因縁を付ける。
「ちょっとタイム。なんで女が打席に入るんだ。」
あちゃー。やっぱり突っ込まれたか。咲良は慌ててベンチを飛び出すと、林の元へ駆け寄る。
「済みません。彼は男です。」
「嘘を付くな。どう見ても女だろうが。」
咲良は中沢に聞こえない様に小声で説明する。
「その、彼はLGBTで・・・・・・。」
「LGBTだと。オカマかよ。」
林は大きな声でこれ見よがしに敢えて中沢に聞こえるように言った。習志野2軍の嘲笑が咲良の耳に届く。この野郎。しばいてやろうか。咲良が林の頬を打とうとすると、その手を掴む者がいる。振り向くと手塚が居た。
「止めるんだ。俺が話す。」
手塚は咲良の前に出ると、林と相対した。
「彼女は生まれたのは女ですが、心は男です。戸籍変更も済んでおり、今はれっきとした男性です。高野連も、男性として試合に出る事も問題無いと。中沢に打席に入るのを認めないと仰るのは、あなた個人の考えですか?それとも、習志野高校としての総意なので?」
「い、いや、そんな・・・・。総意とか、そういうものじゃなくて・・・・。ただ、確認を取っただけです。事情が分からなかったもので・・・・・。そういう事なら、問題無いというか・・・・・。」
林はしどろもどろになって退散していく。成程、この様に言えば良いのか。咲良は手塚の対応に感心した。
「さすが、手塚君。中沢君の事、高野連に問い合わせていただなんて流石。」
咲良は手塚の用意周到さを褒めた。
「問い合わせてはいない。それはおいおいと考える。」
「えっ、でも今・・・・・。」
「嘘も方便さ。」
手塚は林にはったりをかましたらしかった。咲良は思わず笑ってしまった。
「大丈夫だ。気にするな。」
「分かっています。いつもの事ですから。」
手塚が一声掛けると、中沢は気丈に答える。咲良は発破を掛けた。
「涼君。私達は味方だからね。とやかく言う外野は実力で黙らせればいいんだよ。」
「ああ。」
中沢は2度、素振りをすると、左バッターボックスに入った。
先攻はミカエル。1番、蛭田が打席に入る。習志野のピッチャーが振りかぶって第1球を投げる。ストライク。
「大した事ないっすね。」
相手の球筋を見て越前がそう言った。相手のピッチャーは右のオーバハンド。球は130キロ程の速さ。
「多分、1年生じゃないかな。」
咲良が呟くと、愛菜が越前の機嫌を取る。
「習志野なんて大した事ないよ。越前君の方が全然速いボール投げてるもん。」
愛菜の言ってることは事実だ。越前のボールに比べればかなり見劣りする。だが、習志野の2軍の投手が劣ってる訳ではない。1年生にしては制球の良い球を投げている。越前が特別なのだった。2球目もストライク。2球で2ストライクに追い込まれた蛭田。だが、動じる様子はない。彼が真骨頂を発揮するのはここからなのだ。ボール。ボール。ファウル。ファウル。ボール。球を慎重に見極め、2-3のフルカウント。これが蛭とも蝮とも謂われる蛭田の真骨頂。1番打者として選球眼でボールを見極め、ストライクはカット。球数を投げさせ、味方に球筋を見せる役割を徹底する。相手にとっては最も厄介な1番打者である。
「ボール。フォアボール。」
蛭田はボールを見極め、四球を選んだ。これでノーアウト一塁。続く打者は中沢である。
中沢が左バッターボックスに入った所で、習志野2軍の指揮を執っていた林が因縁を付ける。
「ちょっとタイム。なんで女が打席に入るんだ。」
あちゃー。やっぱり突っ込まれたか。咲良は慌ててベンチを飛び出すと、林の元へ駆け寄る。
「済みません。彼は男です。」
「嘘を付くな。どう見ても女だろうが。」
咲良は中沢に聞こえない様に小声で説明する。
「その、彼はLGBTで・・・・・・。」
「LGBTだと。オカマかよ。」
林は大きな声でこれ見よがしに敢えて中沢に聞こえるように言った。習志野2軍の嘲笑が咲良の耳に届く。この野郎。しばいてやろうか。咲良が林の頬を打とうとすると、その手を掴む者がいる。振り向くと手塚が居た。
「止めるんだ。俺が話す。」
手塚は咲良の前に出ると、林と相対した。
「彼女は生まれたのは女ですが、心は男です。戸籍変更も済んでおり、今はれっきとした男性です。高野連も、男性として試合に出る事も問題無いと。中沢に打席に入るのを認めないと仰るのは、あなた個人の考えですか?それとも、習志野高校としての総意なので?」
「い、いや、そんな・・・・。総意とか、そういうものじゃなくて・・・・。ただ、確認を取っただけです。事情が分からなかったもので・・・・・。そういう事なら、問題無いというか・・・・・。」
林はしどろもどろになって退散していく。成程、この様に言えば良いのか。咲良は手塚の対応に感心した。
「さすが、手塚君。中沢君の事、高野連に問い合わせていただなんて流石。」
咲良は手塚の用意周到さを褒めた。
「問い合わせてはいない。それはおいおいと考える。」
「えっ、でも今・・・・・。」
「嘘も方便さ。」
手塚は林にはったりをかましたらしかった。咲良は思わず笑ってしまった。
「大丈夫だ。気にするな。」
「分かっています。いつもの事ですから。」
手塚が一声掛けると、中沢は気丈に答える。咲良は発破を掛けた。
「涼君。私達は味方だからね。とやかく言う外野は実力で黙らせればいいんだよ。」
「ああ。」
中沢は2度、素振りをすると、左バッターボックスに入った。
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