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炎の悪魔編
531.この面子で朝食はキツい
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ルカ達が集落に戻って来ると、何やら違和感を覚えた。
と言うのも、ルカ達が借りた木の中に複数人の気配を感じる。
もちろん感じたのはルカだけじゃない。
訓練に加えてエルフの森の濃い魔力に当てられたのか、下手に勘繰らなくても伝わってきてしまう。
「誰かいるね」
「は、はい。この気配、凄く重たいです」
「一つだけですが、その原因に当たるものがありますね。どちら様でしょうか?」
「う~ん、考えなくても分かる気が……」
もはやこの魔力はお馴染みだった。
隠す気が一切無いことを悟ると、ルカはダリアとブルースターだけでも連れて逃げようかと考える。
しかしその判断を下す前に、簾が上がってしまった。
木の幹にポッカリと開いた穴。その奥から顔を覗かせたのは、ゾーラだった。
「あっ、やーっと戻って来たね!」
「ゾーラ?」
「先に朝食を頂いていますよ、ルカさん達」
「セレビュまで……」
顔を出したのはセレビュも同じだった。
まさかとは思っていたが、朝食まで共にするとは思っていなかった。
それに何より、もう一つ大きな魔力反応がある。これは間違いなく……
「そこでなにをしている。とっとと来い」
「「「ディンネル」さん」」
ルカ達は声を上げてしまった。同時に顔を強張らせ、喉が絞まる。
朝から威圧感全快で気圧され、ルカ達は固まってしまう。
しかしそれが気に食わなかったのか、ディンネルの表情が訝しむ。
「なんだ、その顔は。私がいたらマズいのか?」
そんなことを言われて、「はい」とはとても言い出せない。
流石のルカにもそこまでの倫理観は残っている。
色々と試行錯誤するも、ここは笑顔で誤魔化す。
「二人とも分かってるね」
「「はい」」
「なにをコソコソ話している。とっとと来い、食事が冷める」
「「「はい、すぐに行きます」」」
ルカ達は全員心を一つにした。
ディンネルにはバレていないし、勘繰られていない。
多分これはセーフって奴だ。ホッと胸を撫で下ろすと、ルカ達は部屋の中へ戻る。
「「「あっ」」」
部屋の中では畏まった態度で、黙って朝食を食べるシルヴィアとライラックの姿があった。
否、畏まって様子を窺っているのはシルヴィアだけで、ライラックは我が道を行く。
完全に対照的な二人の食べっぷりは、シルヴィアは今にも喉を詰まらせそうな程余裕が無く、ライラックは今にも食事にケチを付けそうなくらい自由だった。
「あ! 三人共何処に行ってたのよ!」
「三人共お帰りー」
そんな二人はルカ達の顔を見るや否や溜め込んでいた感情を吐き出す。
怒った素振りで木のスプーンを叩き付けるシルヴィア。
飄々とした態度で、いつもの姿勢を崩さないライラック。
ここでも心情の違いを見せつけられると、ルカ達は何というか一つの結論に至る。
(((この状況の食事はちょっと……)))
あまりにも食事が楽しくなさそうだった。
それもその筈で、ディンネル一人が放つ、「ちゃんと食べろ」オーラ。
それに当てられると、今にも吐き出してしまいそうで、残念だが居ない方がマシだった。
とは言え、そんなこと言いだせる訳も無い。
用意されている食事の数は残り三つ。
並んでいるのでルカ達はそれぞれ席へと着く。
ここは黙って食べよう。それが喧嘩にならない。
最善策を見いだすと、ルカ達は手を合わせた。
遅れて食事を始めようとすると、ディンネルは早速口を開く。まるでルカ達を待っていたみたいで、ピリピリとした空気を放った。
「昨日は助かった。ありがとう」
「「「うっ!?」」」
ルカ達は食べていたものを吐き出しかけた。
それもその筈、ディンネルがまさか感謝するとは思わなかったのだ。
「で、ディンネルさん!?」
シルヴィアは押し黙っていた筈なのに、流石に口を開いてしまった。
するとディンネルの視線がシルヴィアに移る。
流石に失礼だったと、今更なことを思ってしまった。
「なんだ、シルヴィア」
「あっ、なんでも無いです……えっ、名前!?」
ここに来てまともに名前を呼ばれた気がした。
シルヴィアは再び声を上げると、ディンネルは埒が明かないので話を進める。
「とは言え、私はこれで終わったとは思っていない」
「どういうことです?」
「そのままの意味だ、ブルースター。炎獣如きで止まるようなら鼻から苦労することは無い」
確かにディンネル達は苦労していなかった。
しかしエルフの兵達は苦戦を強いられていた。
にもかかわらず、あれで終わり。確かにディンネルも思えなかった。
「ってことはさー、まだ終わってないってこと?」
「そう言うことになるわね。でも、炎獣を操ってたのって、誰なのかしら?」
「それが分かれば苦労はしない。とにかく、まだ事件は解決していないというわけだ。だから、お前達も勝手な行動はするな。分かったな」
「「「はい」」」
如何やらディンネルはそれが言いたかったらしい。
わざわざそのためにここに来たなんて。
少し迷惑に感じながらも、ルカはディンネルが森長として一生懸命なことを改めて理解する。
「ゾーラ、セレビュ、これから会議だ。お前達も来い」
「「はい」」
ディンネルは素早く食べ終わると、ゾーラとセレビュを連れる。
エルフの幹部達を集めて緊急対策会議と言うわけだ。
「あ、あの……」
「なんだ?」
立ち上がったディンネル達。そこにっダリアは手を挙げて言葉を挟む。
ディンネル達の視線がダリアに向くも、ルカは余計なことは言わせない。
肘を軽く脇腹に入れて突くと、ダリアは「ふえっ?」と驚く。
ルカの目と目が合い、緊張のあまり顔が真っ赤になると、言葉を忘れてしまった。
「ダリア、なにか用か?」
「あっ、なんでも、無いです……」
「……そうか。私達は行く。食事が済んだら、片付けは他の者に任せて置け」
そう言い残すと、ディンネルは先に部屋を出る。
その後を続くようにゾーラとセレビュも出て行くが、振り返り様に手を振った。
ルカ達も手を振り返すと、部屋の中がようやく落ち着く。
「ようやく解放されたね」
「そうね。あー、辛かったわ」
シルヴィアでさえ吐露してしまった。それだけ圧迫感があったのだろう。
ここまでよく耐えてくれた。
ルカは緊張感が解けてダランとなるシルヴィアと、気にせず食べ続けるライラックを讃えた。
と言うのも、ルカ達が借りた木の中に複数人の気配を感じる。
もちろん感じたのはルカだけじゃない。
訓練に加えてエルフの森の濃い魔力に当てられたのか、下手に勘繰らなくても伝わってきてしまう。
「誰かいるね」
「は、はい。この気配、凄く重たいです」
「一つだけですが、その原因に当たるものがありますね。どちら様でしょうか?」
「う~ん、考えなくても分かる気が……」
もはやこの魔力はお馴染みだった。
隠す気が一切無いことを悟ると、ルカはダリアとブルースターだけでも連れて逃げようかと考える。
しかしその判断を下す前に、簾が上がってしまった。
木の幹にポッカリと開いた穴。その奥から顔を覗かせたのは、ゾーラだった。
「あっ、やーっと戻って来たね!」
「ゾーラ?」
「先に朝食を頂いていますよ、ルカさん達」
「セレビュまで……」
顔を出したのはセレビュも同じだった。
まさかとは思っていたが、朝食まで共にするとは思っていなかった。
それに何より、もう一つ大きな魔力反応がある。これは間違いなく……
「そこでなにをしている。とっとと来い」
「「「ディンネル」さん」」
ルカ達は声を上げてしまった。同時に顔を強張らせ、喉が絞まる。
朝から威圧感全快で気圧され、ルカ達は固まってしまう。
しかしそれが気に食わなかったのか、ディンネルの表情が訝しむ。
「なんだ、その顔は。私がいたらマズいのか?」
そんなことを言われて、「はい」とはとても言い出せない。
流石のルカにもそこまでの倫理観は残っている。
色々と試行錯誤するも、ここは笑顔で誤魔化す。
「二人とも分かってるね」
「「はい」」
「なにをコソコソ話している。とっとと来い、食事が冷める」
「「「はい、すぐに行きます」」」
ルカ達は全員心を一つにした。
ディンネルにはバレていないし、勘繰られていない。
多分これはセーフって奴だ。ホッと胸を撫で下ろすと、ルカ達は部屋の中へ戻る。
「「「あっ」」」
部屋の中では畏まった態度で、黙って朝食を食べるシルヴィアとライラックの姿があった。
否、畏まって様子を窺っているのはシルヴィアだけで、ライラックは我が道を行く。
完全に対照的な二人の食べっぷりは、シルヴィアは今にも喉を詰まらせそうな程余裕が無く、ライラックは今にも食事にケチを付けそうなくらい自由だった。
「あ! 三人共何処に行ってたのよ!」
「三人共お帰りー」
そんな二人はルカ達の顔を見るや否や溜め込んでいた感情を吐き出す。
怒った素振りで木のスプーンを叩き付けるシルヴィア。
飄々とした態度で、いつもの姿勢を崩さないライラック。
ここでも心情の違いを見せつけられると、ルカ達は何というか一つの結論に至る。
(((この状況の食事はちょっと……)))
あまりにも食事が楽しくなさそうだった。
それもその筈で、ディンネル一人が放つ、「ちゃんと食べろ」オーラ。
それに当てられると、今にも吐き出してしまいそうで、残念だが居ない方がマシだった。
とは言え、そんなこと言いだせる訳も無い。
用意されている食事の数は残り三つ。
並んでいるのでルカ達はそれぞれ席へと着く。
ここは黙って食べよう。それが喧嘩にならない。
最善策を見いだすと、ルカ達は手を合わせた。
遅れて食事を始めようとすると、ディンネルは早速口を開く。まるでルカ達を待っていたみたいで、ピリピリとした空気を放った。
「昨日は助かった。ありがとう」
「「「うっ!?」」」
ルカ達は食べていたものを吐き出しかけた。
それもその筈、ディンネルがまさか感謝するとは思わなかったのだ。
「で、ディンネルさん!?」
シルヴィアは押し黙っていた筈なのに、流石に口を開いてしまった。
するとディンネルの視線がシルヴィアに移る。
流石に失礼だったと、今更なことを思ってしまった。
「なんだ、シルヴィア」
「あっ、なんでも無いです……えっ、名前!?」
ここに来てまともに名前を呼ばれた気がした。
シルヴィアは再び声を上げると、ディンネルは埒が明かないので話を進める。
「とは言え、私はこれで終わったとは思っていない」
「どういうことです?」
「そのままの意味だ、ブルースター。炎獣如きで止まるようなら鼻から苦労することは無い」
確かにディンネル達は苦労していなかった。
しかしエルフの兵達は苦戦を強いられていた。
にもかかわらず、あれで終わり。確かにディンネルも思えなかった。
「ってことはさー、まだ終わってないってこと?」
「そう言うことになるわね。でも、炎獣を操ってたのって、誰なのかしら?」
「それが分かれば苦労はしない。とにかく、まだ事件は解決していないというわけだ。だから、お前達も勝手な行動はするな。分かったな」
「「「はい」」」
如何やらディンネルはそれが言いたかったらしい。
わざわざそのためにここに来たなんて。
少し迷惑に感じながらも、ルカはディンネルが森長として一生懸命なことを改めて理解する。
「ゾーラ、セレビュ、これから会議だ。お前達も来い」
「「はい」」
ディンネルは素早く食べ終わると、ゾーラとセレビュを連れる。
エルフの幹部達を集めて緊急対策会議と言うわけだ。
「あ、あの……」
「なんだ?」
立ち上がったディンネル達。そこにっダリアは手を挙げて言葉を挟む。
ディンネル達の視線がダリアに向くも、ルカは余計なことは言わせない。
肘を軽く脇腹に入れて突くと、ダリアは「ふえっ?」と驚く。
ルカの目と目が合い、緊張のあまり顔が真っ赤になると、言葉を忘れてしまった。
「ダリア、なにか用か?」
「あっ、なんでも、無いです……」
「……そうか。私達は行く。食事が済んだら、片付けは他の者に任せて置け」
そう言い残すと、ディンネルは先に部屋を出る。
その後を続くようにゾーラとセレビュも出て行くが、振り返り様に手を振った。
ルカ達も手を振り返すと、部屋の中がようやく落ち着く。
「ようやく解放されたね」
「そうね。あー、辛かったわ」
シルヴィアでさえ吐露してしまった。それだけ圧迫感があったのだろう。
ここまでよく耐えてくれた。
ルカは緊張感が解けてダランとなるシルヴィアと、気にせず食べ続けるライラックを讃えた。
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