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エルフの森編

525.エルフの兵士に絡まれて

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 ルカ達は集落に戻って来た。
 それからディンネルを中心に、エルフの受薬たちが集まる。
 危機を回避したことによる浮かれたのか、互いに喜びを分かち合いたいからか、宴をする運びになり、速やかに用意が進んでいた。

「なんだろう、これ。最初っから宴をする気だったんじゃ……無いよね?」
「そう思いたいわよ」
「だよね。ねぇ、ゾーラ、セレビュ?」

 ルカは視線をゾーラとセレビュに預けた。
 しかし肝心のゾーラとセレビュも宴の準備で大忙しだ。

「ん? なーに、ルカ」
「どうしましたか、ルカさん?」
「いや、なんでもないよ。それより宴に参加はした方がいい?」
「「是非!」」

 もはや宴に参加するのは確定らしい。
 しかしエルフの宴なんて、早々参加した覚えがない。
 ルカは唖然とする中、シルヴィア達は戸惑っている。

「本当に宴をするんだー。変なの飲まされないよねー?」
「蜜酒とかはあるかもね」
「見てください、あの大きな木の幹が爛々と輝いていますよ」
「近くにツリーハウスがあるね。併設かな?」
「どんな食べ物が出るんでしょうか?」
「そうだね。エルフはあまり肉を食べないから……多分、植物性の食べ物だと思うよ?」
「そう言えば前に本で読んだことがあるわ。エルフって、シノロメの実を洗って乾燥させたものをお団子にして食べるのよね?」
「そんなもの、今の時代食べない」

 ルカ達はエルフ達がせっせと準備をする姿を目で追った。
 そんな中、突然背後から声を掛けられる。
 ビックリしてしまい目を見開くも、ルカは振り返って淡々と交わした。

「ディンネル、もういいの?」
「なにがだ」
「なにがもなにも、宴の準備とか……」
「無論するに決まっているだろ。それより、お前達も宴に参加するんだな」
「そうらしいね」

 ルカは高圧的な態度を取るディンネルと再びいがみ合う。
 無論、ルカにそんな気は一切無い。
 けれどディンネルはと言うと、ルカのことを敵視した様子をまだ崩し切れず、フッと澄ました態度を取る。

「精々楽しんでくれ」
「あれ? 楽しんでいいんだ」
「一応は炎獣を倒し、この森と集落を掬ってくれたからな。それだけで充分だ」

 そう言うと、ディンネルは他のエルフ達に混ざった。
 すると全員の視線が注がれ、ディンネルを中心に、宴の準備を急ピッチで進めている。
 代わりに役目を早めに終えたエルフの兵達が、ルカ達の下へ集まる。

「君達、さっきは助かったよ」
「あっ、エルフの兵士さん」
「おいおい、俺も忘れるなよ」
「魔法使いさんよね? さっき使ってたの、やっぱり魔法だったの?」
「当り前だろ。俺達はエルフだ。まあ、千年前のことまでは知らないけどさ」

 エルフの兵士の一人と魔法使いがやって来た。
 兵士は全身ボロボロだけど、筋力がかなり付いている。
 上腕二頭筋が眩しく光る。

 一方の魔法使いの一人も今回大活躍だった。
 今の時代、魔術に置き換わっていはいるが、エルフならではの隔離された森のおかげか、かつての魔法をほぼそのまま使える。
 そのおかげか、魔術のようなムラはあるものの、魔法の様に高い効果を得られていた。

「ああ、さっきの?」
「「お疲れさまでした」」
「「ああ、お疲れ。それより、君達は優秀な剣士」魔術師なんだね」

 二人のエルフはそう言った。
 ルカ達は首を捻ると、早速話し始める。

「君の魔術、《星の銃》だったか。あれはなかなかの質と精度だ」
「ありがとうございます。《星の銃》はうちの家系の魔法を改良したものなんですよ」
「ん!? そうなのか」
「はい。ですがエルフの方に認めて貰えてありがとうございます」

 ブルースターは頭を下げた。
 エルフの魔法使いから認められるということが、どれだけ凄いことなのか、ブルースターは理解していたのだ。

「二人の剣技、見事だった」
「えっ、私は剣士じゃなくて……」
「お褒めいたたきありがとうございます」
「ちなみに何処でその剣技を?」
「世界一の剣の先生からです!」

 ダリアは、目を煌めかせる。
 剣を褒められただけじゃない。
 剣技を開発した先生のことを間接的に褒められたので、軽い興奮状態になっていた。

「それに君の糸、アレが無ければこうも上手くは行かなかった」
「そうかなー?」
「ライってなにかしてたの?」
「うーん? 私はいつも通りやっただけだけどー?」

 ライラックは自分が何をしたのか、シルヴィア達もライラックが何をしたのか、あまり分かっていなかった。
 しかし見る者が見ればその凄みは伝わる。
 ルカもライラックが巧みに糸を張り、炎獣達の動きを制限していたことに気が付いていた。

(まあ、ライは影ながら実力を証明しているから……いっか)

 ルカはライのことを流し目すると、「それになにより」と声が聞こえる。
 ふと顔を上げると、エルフの兵士達がルカに視線を預けていた。

「君の魔術、あれはなんだ!」
「空から滝のような雨を降らせるなんて、一体どうやって?」

 ルカが放った《ウォーターフォール・レイン》のことを言っている。
 あれだけの規模勝、高威力の魔術はもはや魔法の域だろう。
 ルカは上級魔術を魔法と見間違わせてしまい、エルフの兵士達を好奇心の渦に呑み込んでいた。
 そのせいだろうか。ルカは詰め寄られ、面倒に思った。

「ああ、あれは……」
「「是非、教えて欲しい!」」
「教えてって、貴方達はエルフの兵士でしょ? 私みたいな、魔術師の卵になにを求めて……」

 ルカはボヤいてしまった。
 するとエルフの兵士は目を伏せる。
 如何やら気にしてしまったらしく、ルカはマズいと思った。嫌悪感を露わにされたと思ってビビるが、エルフの兵士は真面目だった。

「俺の剣は全く届かなかった」
「そんなことは……」
「俺の魔法もほとんど意味が無かった。情けない」
「クヨクヨしても仕方ない気が……」
「「だからこそ、君達、外の世界の剣技(魔術)を学びたいんだ。だから頼む、教えてくれ!」」

(面倒臭い)

 ルカ達は引いてしまった。
 詰め寄って来るエルフの兵士達。
 その圧に押されると、ルカ達は表情を歪めてしまい、咄嗟にその場を離れたくなってしまった。

「なんとかしてよ、ルカ」
「なんとかって言われても……」
「あの、後で宴の際にでも」
「「「ブルースター!」」」

 ブルースターが助け舟を出した。
 するとエルフの兵士から向けられていた圧を解かれ、呼吸が楽になる。
 ホッと胸を撫で下ろしたものの、宴に参加することが確定となり、肩の疲れがより一層強まった、気がした。
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