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エルフの森編
515.リングを破壊する方法
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炎獣を止めるには体内に埋め込まれたリングの魔力を失わせるしかない。
ルカは結論を出すも、それはあまりにも何度が高い行為だった。
「それでルカ、どうやって魔力を失わせるのよ?」
「一番は暴れさせるだけ暴れさせる方法かな」
「まあ、妥当よね」
一番初めに思い付くのは、単純に炎獣の魔力が切れるまで手を出さないこと。
どんな作戦よりも最も楽で怪我も少なく、周囲の被害に見ないふりすれば、これ以上に最良の提案は無かった。
とは言え、完璧な作戦とは言えない。当然の穴を突かれてしまった。
「そんな行為が許されると思うな」
「だよね」
「まあ、分かってたけどねー」
ディンネルに咎められ、考えを一蹴させられる。
確かに炎獣に好き勝手暴れさせて入れば話は簡単に収まる。
しかしそれが事態の収拾には繋がらず、ましてや森が完全に消失してしまうのだ。
そんなことになればここまで頑張った意味が無く、無意味に帰してしまう。それだけは断固として避けなければいけない絶対条件だった。
「それじゃあどうするんですか?」
「そうですね、例えば何処か安全な場所にでも誘導して隔離させ、そこまで魔力が底を尽くまで暴れて貰うには……無理ですね」
「誰がどうやって誘導するのかな? しかも炎獣を拘束できる場所、今から用意できると思う?」
こうしている間にもエルフの森は焼けている。
炎の勢いが更に増し、無駄口を叩く暇すらない。
もはや決断は迫られている。ディンネルは苦汁の表情を浮かべると、ルカに提案する。
「魔力が切れるまで戦い抜くしかないんだな」
「それも一つだけど……もっと効率のいい方法があるよ」
「効率だと?」
「危険だけど、できれば早く終わる。できなければ、……最悪死かな」
ルカの恐ろしい提案が何処からともなく死神を招き寄せる。
暗闇から鎌を引っ提げ首元にあてがうには充分で、恐怖のイメージを叩き込む。
シルヴィア達を悪寒が襲い、ディンネルやゾーラ、セレビュも神妙な顔付きになった。
「なんでもいい。覚悟はできている」
「そうだね、やるしかないもんね」
「そうだよ、お姉ちゃん。ルカさん、どんな方法?」
「やる気満々だね。私、そういうの嫌いだな」
自分の命を軽く見ている発言。もちろん森のため、集落住むエルフ達のため。
同胞想いの優しい一面が露出するも、ルカにはそれが如何しても許せない。
自己犠牲の末にある平和なんて一時でしかない。そんな大義が後世に伝えられ、讃えられるなんて間違いでしかないのだ。
「私は自分でするけど、みんなはこれを使って」
インベントリの中から取り出したのは細長い棒。
透明な棒のようで、中には蒼い液体が入っている。
しかし凍らされているのか、薄っすらと白くなっており、棒の両端にも突起物が露出している。
明らかに何かと組み合わせる用途で使うらしく、渡されてもパッとは思いつかなかった。
「これはなんだ?」
「瞬間冷却剤。魔道具の一種で、ナタリーから幾つか貰って来たんだよ」
「ナタリー……族長から?」
「「それじゃあ安心だね。どう使うの?」」
ディンネルは不快な表情を浮かべ、ゾーラとセレビュは好奇な目を浮かべる。
信頼の違いを見せ付けられると、ルカは魔道具の使い方を説明した。
「この魔道具、瞬間冷却剤の名称はコールド・ストッパー」
「コールド・ストッパー? 普通ね、冷やして止めるってこと?」
「正解。これを直接刺し込んで、核にあたる部分の魔力供給を鈍化させる。そうすれば動きは劇的に変化して、動きものろく直に停止する……はず」
「「「はず!?」」」
「うん、はずだよ。説明書によれば」
ルカも正直使ったことも無い魔道具だった。
ナタリーに近いものを頼んだは良いものの、実際に使うのは今回が初めて。
効果が信じられないのでルカは使わないものの、もはや背に腹は代えられない。
試してみることにし、ルカは最後の作戦を伝えた。
「作戦はこう。それぞれが炎獣を相手にする。頃合いを見て射し込む。動きが遅くなれば成功、変わらなければ失敗。後は爆破でもなんでも炎獣を叩き潰す。以上」
「「「それ、作戦じゃない!」」」
シルヴィアとゾーラ、セレビュの声が三重奏になってハモった。
あまりにも単純、しかも行き当たりばったり。作戦と呼ぶにはあまりにもチープだ。
しかしこの状況、既に戦意喪失気味のエルフ達は役に立たない。
この場に居る少数精鋭でできることは限られているので、首を縦に振るしか選択の余地も無かった。
「覚悟は決まったね。それじゃあやろうか」
ルカは真っ先に先陣を切る。
とりあえずゴーレム型を仕留めること、それが今のベストだ。
そう感じたルカは少しだけ本気を出すと、溢れ出る魔法の才能を引き出した。
「速い!?」
「一瞬にして消えて……ちょ、ちょっと待って、ルカの殺気、ヤバくない?」
離れているシルヴィア達にも伝わっていた。
並以下の出力じゃ炎獣には効き目がない。
殺気を飛ばし、魔力を解放し、ルカは嬉々とした目を向ける。
「《自然魔力の自発変換》!」
ちゃんとした魔法名を唱えていた。
無意識のうち、ルカは千年前に編み出した“不可能を可能にする”魔法を駆使していた。
それは今ある“魔術”を形作り、“魔法”の常識さえも書き換えてしまった後世に残る魔法だった。
ルカは結論を出すも、それはあまりにも何度が高い行為だった。
「それでルカ、どうやって魔力を失わせるのよ?」
「一番は暴れさせるだけ暴れさせる方法かな」
「まあ、妥当よね」
一番初めに思い付くのは、単純に炎獣の魔力が切れるまで手を出さないこと。
どんな作戦よりも最も楽で怪我も少なく、周囲の被害に見ないふりすれば、これ以上に最良の提案は無かった。
とは言え、完璧な作戦とは言えない。当然の穴を突かれてしまった。
「そんな行為が許されると思うな」
「だよね」
「まあ、分かってたけどねー」
ディンネルに咎められ、考えを一蹴させられる。
確かに炎獣に好き勝手暴れさせて入れば話は簡単に収まる。
しかしそれが事態の収拾には繋がらず、ましてや森が完全に消失してしまうのだ。
そんなことになればここまで頑張った意味が無く、無意味に帰してしまう。それだけは断固として避けなければいけない絶対条件だった。
「それじゃあどうするんですか?」
「そうですね、例えば何処か安全な場所にでも誘導して隔離させ、そこまで魔力が底を尽くまで暴れて貰うには……無理ですね」
「誰がどうやって誘導するのかな? しかも炎獣を拘束できる場所、今から用意できると思う?」
こうしている間にもエルフの森は焼けている。
炎の勢いが更に増し、無駄口を叩く暇すらない。
もはや決断は迫られている。ディンネルは苦汁の表情を浮かべると、ルカに提案する。
「魔力が切れるまで戦い抜くしかないんだな」
「それも一つだけど……もっと効率のいい方法があるよ」
「効率だと?」
「危険だけど、できれば早く終わる。できなければ、……最悪死かな」
ルカの恐ろしい提案が何処からともなく死神を招き寄せる。
暗闇から鎌を引っ提げ首元にあてがうには充分で、恐怖のイメージを叩き込む。
シルヴィア達を悪寒が襲い、ディンネルやゾーラ、セレビュも神妙な顔付きになった。
「なんでもいい。覚悟はできている」
「そうだね、やるしかないもんね」
「そうだよ、お姉ちゃん。ルカさん、どんな方法?」
「やる気満々だね。私、そういうの嫌いだな」
自分の命を軽く見ている発言。もちろん森のため、集落住むエルフ達のため。
同胞想いの優しい一面が露出するも、ルカにはそれが如何しても許せない。
自己犠牲の末にある平和なんて一時でしかない。そんな大義が後世に伝えられ、讃えられるなんて間違いでしかないのだ。
「私は自分でするけど、みんなはこれを使って」
インベントリの中から取り出したのは細長い棒。
透明な棒のようで、中には蒼い液体が入っている。
しかし凍らされているのか、薄っすらと白くなっており、棒の両端にも突起物が露出している。
明らかに何かと組み合わせる用途で使うらしく、渡されてもパッとは思いつかなかった。
「これはなんだ?」
「瞬間冷却剤。魔道具の一種で、ナタリーから幾つか貰って来たんだよ」
「ナタリー……族長から?」
「「それじゃあ安心だね。どう使うの?」」
ディンネルは不快な表情を浮かべ、ゾーラとセレビュは好奇な目を浮かべる。
信頼の違いを見せ付けられると、ルカは魔道具の使い方を説明した。
「この魔道具、瞬間冷却剤の名称はコールド・ストッパー」
「コールド・ストッパー? 普通ね、冷やして止めるってこと?」
「正解。これを直接刺し込んで、核にあたる部分の魔力供給を鈍化させる。そうすれば動きは劇的に変化して、動きものろく直に停止する……はず」
「「「はず!?」」」
「うん、はずだよ。説明書によれば」
ルカも正直使ったことも無い魔道具だった。
ナタリーに近いものを頼んだは良いものの、実際に使うのは今回が初めて。
効果が信じられないのでルカは使わないものの、もはや背に腹は代えられない。
試してみることにし、ルカは最後の作戦を伝えた。
「作戦はこう。それぞれが炎獣を相手にする。頃合いを見て射し込む。動きが遅くなれば成功、変わらなければ失敗。後は爆破でもなんでも炎獣を叩き潰す。以上」
「「「それ、作戦じゃない!」」」
シルヴィアとゾーラ、セレビュの声が三重奏になってハモった。
あまりにも単純、しかも行き当たりばったり。作戦と呼ぶにはあまりにもチープだ。
しかしこの状況、既に戦意喪失気味のエルフ達は役に立たない。
この場に居る少数精鋭でできることは限られているので、首を縦に振るしか選択の余地も無かった。
「覚悟は決まったね。それじゃあやろうか」
ルカは真っ先に先陣を切る。
とりあえずゴーレム型を仕留めること、それが今のベストだ。
そう感じたルカは少しだけ本気を出すと、溢れ出る魔法の才能を引き出した。
「速い!?」
「一瞬にして消えて……ちょ、ちょっと待って、ルカの殺気、ヤバくない?」
離れているシルヴィア達にも伝わっていた。
並以下の出力じゃ炎獣には効き目がない。
殺気を飛ばし、魔力を解放し、ルカは嬉々とした目を向ける。
「《自然魔力の自発変換》!」
ちゃんとした魔法名を唱えていた。
無意識のうち、ルカは千年前に編み出した“不可能を可能にする”魔法を駆使していた。
それは今ある“魔術”を形作り、“魔法”の常識さえも書き換えてしまった後世に残る魔法だった。
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