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村亡編
466.もう宴会気分は許せない
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ルカ達は急いで村長の家に戻って来た。
あまりにも村人の様子がおかしかったので、気持ちが悪くなったのだ。
これ何やら良くない。変な空気が伝染している。
きっと土地の魔素を吸収していた悪魔の手が消えたからだとルカは容易に想像が付くのだが、流石にそれだけだとは思えない。
どのみち土地の魔素は減っている。
如何にルカが干渉したとはいえ、ここまで空気に影響が出るとは考え難い。
ましてや村人のほとんどに影響が及ぶなんて、何か病気を疑うしかない。
この事態を何処まで把握しているのか。重度に考えている筈。
ルカ達は一刻も早くと忙しない中、玄関の引き戸を力任せに引いた。
「村長!」
ルカは敬称も付ける暇は無かった。もう忘れ、自分の方が歳上であることを前面に押し出してしまった。
けれど誰も咎める人は居なかった。息を上げながら、村長宅に全員足を運ぶと、視線の先の光景に絶句する。
広がる光景。そこには村長とキヤチャの姿がある。
だがしかし、その手には酒瓶。和室の中は古酒の臭いで充満していた。
「ううっ、この臭い……」
「お酒の匂いだねー。うーん、これって古酒かなー?」
「そんなのどうでもいいわよ。うえっ、気持ち悪い」
ライラックが大きく息を吸う隣で、シルヴィアは苦しんでいる。
如何やらライラックは古酒の匂いを当てる程酒に強い体質。
かと言えばシルヴィアは苦手な様子。
ダリアが背中を擦ってあげる中、ルカもこの臭いに良い印象は抱かないが、とりあえず村長に声を届けた。
「村長、昼間からなにしているんです!」
ルカは眉根を寄せ、神妙な表情を浮かべていた。
今にも怒り出しそう、と言うよりも半分以上機嫌が悪い。
「ん? ああ、お嬢ちゃん達。ひっく、どうしたんじゃ?」
「どうしたもこうしたもないです。というより……なにしてるの?」
そんな中、村長は古酒を飲んで酔っ払っていた。
頼りない姿にルカは頭を抱えるが、面倒なことに巻き込まれた挙句、悪びれもしていない村長の様子に絶句を通り越し、強烈な殺気をぶちまけた。
「ひいっ!? そ、そう怒るもんでもないぞ。若いのに、今から皺が増えるぞ」
「私の方が長く生きてますよ。って、そんな言葉冗談としか……あの、村の人達の様子が変ですよ? 酒なんて飲む暇があるなら、威厳を見せて欲しいな」
ルカは挑発的な態度を取った。
シルヴィアとブルースターは今度こそ咎めるかと思った。
けれどしない。腑抜けた態度を見せる村長に落胆してしまった。
「まあまあ、ルカさん。少しは落ち着いて」
「キヤチャ、あまり私を怒らせないでくれるかな?」
「えっ、お、怒って……うぶっ!?」
キヤチャは急に口元を抑え始めた。
今にも吐きそうで、古酒が上がって来たらしい。
さっきまで赤らめていた顔が一気に青ざめる。いや、ほとんど血の気が引いている。
真白とは言わないが、体調不良にはなってしまったようで、それほどルカの殺気を真に受けてしまった。
その影響は少なからず関係の無いシルヴィア達にも出ている。
全員空気が重く感じ、ルカ以外は全滅だった。
けれどそれも致し方が無く、殺気を瞬時に解くと、この状況を説明して貰う。
「で、なんです、この状況?」
ルカは殺気は止め、威圧で委縮させる。
すると村長はジットリとした汗を流しながら、唇を噛む。
乾いた唇が切れ、次第に血を出すと、我に返って説明する。
「お、お嬢ちゃんや。これにはな、深い、深ーい訳が有るんじゃよ。そう、深すぎるな」
「深い理由?」
「そ、そうじゃ。決して面倒事を押し付けた訳じゃないぞ。これはの、祝賀会じゃ」
「祝賀会? はっ!?」
ルカは心底呆れてしまった。
もう如何怒ったら良いのか分からない。
けれど一つだけ、ルカは面倒事が嫌い。そして面倒事は未然に防ぐ。
だからこそ、こうして心血を注いだ。一泊分は十分な働きをした。
とは言え、こうして踏み躙られるとなると、ルカも黙ってはいられない。少し脅し文句を使って、村長達をわからせることにした。
「村長、私は強いですよ」
「ほ、ほえっ?」
「力にはそれ相応の糧を必要とするんです。私の場合、魔力を非常に多く使います。技術や経験で補っていてもね。それをほぼ無償で借りようとしたこと、いくら私が温厚? に見えると言っても、限度があります。いや、あるんだよね」
ルカはギラついた殺意を眼に宿す。
剥き出しにされた狂気の牙に村長達は震える。
その手前、ルカは適当に取り出した石ころを見せつける。
一体何をするのか。もちろん実演だ。
ルカは握り拳を作らない。ただ手のひらに置くだけ。
にもかかわらず、急激な圧力が降りかかると、石ころは容赦なく粉々にされた。
一体何が起きたのか。何をしたのか。この場に居る誰にも分からない。
ルカの時空系魔術によって容易に無き物にされ、その残骸の断片も残さない。
その様子を今の状況と重ね合わされると、村長は口から泡を吹きそうになる。
「ひい……」
今にも倒れてしまいそう。
目を回し、黒い瞳孔が真っ白になって行く。
これはもう、恐怖で何も見えていない。酔いも完全に冷めてしまったようで、呼吸もまともにできていない。
「これくらい簡単なことなんですよ。私にとっては、生き物の命を扱うこと。もう分かりますよね? 私は恐怖で支配する気は無いですよ。だから……私を怒らせないでくれますよね?」
ルカはその瞬間、威圧も解いてあげた。
少々やり過ぎてしまっただろうか? ルカは反省の意を込め、にこりと怒ってないよアピールをする。
けれどそれが逆効果になっていた。
突然の笑顔を向けられ、村長達は蛙のようにひっくり返ってしまう。
そのまま気を失ってしまったのか、村長達はピクリともしない。
心臓は動いているようだが、完全に話ができる状況じゃない。
「あれ? 殺気を一パーセントも出してないのに……変なの」
ルカはケロッとしていた。
本心から怒っていた……訳ではないと誰もが思いたい。
そんなルカの見せた見せかけの狂気に苛まれ、村長宅は異様な静寂に包まれるのだった。
あまりにも村人の様子がおかしかったので、気持ちが悪くなったのだ。
これ何やら良くない。変な空気が伝染している。
きっと土地の魔素を吸収していた悪魔の手が消えたからだとルカは容易に想像が付くのだが、流石にそれだけだとは思えない。
どのみち土地の魔素は減っている。
如何にルカが干渉したとはいえ、ここまで空気に影響が出るとは考え難い。
ましてや村人のほとんどに影響が及ぶなんて、何か病気を疑うしかない。
この事態を何処まで把握しているのか。重度に考えている筈。
ルカ達は一刻も早くと忙しない中、玄関の引き戸を力任せに引いた。
「村長!」
ルカは敬称も付ける暇は無かった。もう忘れ、自分の方が歳上であることを前面に押し出してしまった。
けれど誰も咎める人は居なかった。息を上げながら、村長宅に全員足を運ぶと、視線の先の光景に絶句する。
広がる光景。そこには村長とキヤチャの姿がある。
だがしかし、その手には酒瓶。和室の中は古酒の臭いで充満していた。
「ううっ、この臭い……」
「お酒の匂いだねー。うーん、これって古酒かなー?」
「そんなのどうでもいいわよ。うえっ、気持ち悪い」
ライラックが大きく息を吸う隣で、シルヴィアは苦しんでいる。
如何やらライラックは古酒の匂いを当てる程酒に強い体質。
かと言えばシルヴィアは苦手な様子。
ダリアが背中を擦ってあげる中、ルカもこの臭いに良い印象は抱かないが、とりあえず村長に声を届けた。
「村長、昼間からなにしているんです!」
ルカは眉根を寄せ、神妙な表情を浮かべていた。
今にも怒り出しそう、と言うよりも半分以上機嫌が悪い。
「ん? ああ、お嬢ちゃん達。ひっく、どうしたんじゃ?」
「どうしたもこうしたもないです。というより……なにしてるの?」
そんな中、村長は古酒を飲んで酔っ払っていた。
頼りない姿にルカは頭を抱えるが、面倒なことに巻き込まれた挙句、悪びれもしていない村長の様子に絶句を通り越し、強烈な殺気をぶちまけた。
「ひいっ!? そ、そう怒るもんでもないぞ。若いのに、今から皺が増えるぞ」
「私の方が長く生きてますよ。って、そんな言葉冗談としか……あの、村の人達の様子が変ですよ? 酒なんて飲む暇があるなら、威厳を見せて欲しいな」
ルカは挑発的な態度を取った。
シルヴィアとブルースターは今度こそ咎めるかと思った。
けれどしない。腑抜けた態度を見せる村長に落胆してしまった。
「まあまあ、ルカさん。少しは落ち着いて」
「キヤチャ、あまり私を怒らせないでくれるかな?」
「えっ、お、怒って……うぶっ!?」
キヤチャは急に口元を抑え始めた。
今にも吐きそうで、古酒が上がって来たらしい。
さっきまで赤らめていた顔が一気に青ざめる。いや、ほとんど血の気が引いている。
真白とは言わないが、体調不良にはなってしまったようで、それほどルカの殺気を真に受けてしまった。
その影響は少なからず関係の無いシルヴィア達にも出ている。
全員空気が重く感じ、ルカ以外は全滅だった。
けれどそれも致し方が無く、殺気を瞬時に解くと、この状況を説明して貰う。
「で、なんです、この状況?」
ルカは殺気は止め、威圧で委縮させる。
すると村長はジットリとした汗を流しながら、唇を噛む。
乾いた唇が切れ、次第に血を出すと、我に返って説明する。
「お、お嬢ちゃんや。これにはな、深い、深ーい訳が有るんじゃよ。そう、深すぎるな」
「深い理由?」
「そ、そうじゃ。決して面倒事を押し付けた訳じゃないぞ。これはの、祝賀会じゃ」
「祝賀会? はっ!?」
ルカは心底呆れてしまった。
もう如何怒ったら良いのか分からない。
けれど一つだけ、ルカは面倒事が嫌い。そして面倒事は未然に防ぐ。
だからこそ、こうして心血を注いだ。一泊分は十分な働きをした。
とは言え、こうして踏み躙られるとなると、ルカも黙ってはいられない。少し脅し文句を使って、村長達をわからせることにした。
「村長、私は強いですよ」
「ほ、ほえっ?」
「力にはそれ相応の糧を必要とするんです。私の場合、魔力を非常に多く使います。技術や経験で補っていてもね。それをほぼ無償で借りようとしたこと、いくら私が温厚? に見えると言っても、限度があります。いや、あるんだよね」
ルカはギラついた殺意を眼に宿す。
剥き出しにされた狂気の牙に村長達は震える。
その手前、ルカは適当に取り出した石ころを見せつける。
一体何をするのか。もちろん実演だ。
ルカは握り拳を作らない。ただ手のひらに置くだけ。
にもかかわらず、急激な圧力が降りかかると、石ころは容赦なく粉々にされた。
一体何が起きたのか。何をしたのか。この場に居る誰にも分からない。
ルカの時空系魔術によって容易に無き物にされ、その残骸の断片も残さない。
その様子を今の状況と重ね合わされると、村長は口から泡を吹きそうになる。
「ひい……」
今にも倒れてしまいそう。
目を回し、黒い瞳孔が真っ白になって行く。
これはもう、恐怖で何も見えていない。酔いも完全に冷めてしまったようで、呼吸もまともにできていない。
「これくらい簡単なことなんですよ。私にとっては、生き物の命を扱うこと。もう分かりますよね? 私は恐怖で支配する気は無いですよ。だから……私を怒らせないでくれますよね?」
ルカはその瞬間、威圧も解いてあげた。
少々やり過ぎてしまっただろうか? ルカは反省の意を込め、にこりと怒ってないよアピールをする。
けれどそれが逆効果になっていた。
突然の笑顔を向けられ、村長達は蛙のようにひっくり返ってしまう。
そのまま気を失ってしまったのか、村長達はピクリともしない。
心臓は動いているようだが、完全に話ができる状況じゃない。
「あれ? 殺気を一パーセントも出してないのに……変なの」
ルカはケロッとしていた。
本心から怒っていた……訳ではないと誰もが思いたい。
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