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村亡編
453.死活問題の村
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ジュナイダー二代目は再び走り出した。
止まっていた時間もほんの一瞬で、ルカ達は若い男と共に、この先の村まで向かうことになった。
とは言え若い男はキョロキョロ視線を巡らせる。
何かおかしなところでもあるのか、若い男は挙動不審が酷かった。
荷車の中を見回すと、指先がやや震えている。
そんな状況下でもルカ達は平常心を保っていた。
ここまでたくさんの死を醸す戦いを繰り広げた。
そのおかげか、ちょっとくらいの出来事では動じない強い精神を手にしていたのだ。
「少し訊きたいことがあるだけど、いいかな?」
だけどルカは声を掛けてみた。訊きたいことがあったからだ。
すると若い男は目を見開いた。唐突な問いかけに、驚きが隠せないのだ。
「えっ。あっ、うん。構わないよ」
「それじゃあまず名前を教えて貰ってもいいかな?」
「名前? そう言えばまだ自己紹介をしていなかったね。俺はキヤチャ。この先にあるチャカチャ村で商人をやってるんだ」
若い男=キヤチャは名前を聞いただけなのに、職業まで教えてくれた。
しかし職業が聞けて納得できた。
おかげであれだけの荷物の正体が分かったからだ。
「へぇー、商人なんだね。それは大事だ」
「あの村で商人を営んでいるのは俺しかないから。というより、急に敬語じゃなくなったけど、それが素なのかい?」
ルカが相槌を打つと、キヤチャはルカの口振りが気になってしまった。
確かにルカは人によって口振りを変える。
シルヴィア達も思っていたのか、視線を少し上げた。何と返すのか期待している様子だ。
「はい。私は敬語を使う相手を選ぶので」
しかしルカは素直に返答をした。
その言い方がムカ付いたのか、キヤチャもシルヴィア達も眉根を寄せている。
神妙な面持ちで、ルカのことを睨んでいる様子だが、ルカは至って平然としていた。
「それはつまり俺のことを……」
「舐めては無いですよ。敬語は敬語です。言葉によって本性を隠し、誰の目からも分かる善人を偽る手段に過ぎないんですから。最も、敬意を表するためにも使いますけどね。こんな風に」
ルカは常語と敬語を瞬時に使いわけた。
まるでどちらも同じように聞こえてしまい、キヤチャは目を開いて驚く。
「君のような不思議な子は、うちの村にはいないよ」
「いやいや、普通目上の相手すら尊敬しない奴は奇人よ」
「私は奇人じゃないよ。私にとって敬語は相手の心を測る手段だからね。敬語じゃなくても良いと分かれば、私は常語に変えるだけ。それだけだよ」
ルカは自分の考えをなんの淀みも無く答える。
するとあまりにも清々しすぎる上に、この間のホーリーでの一件を見ていたシルヴィア達は尚納得する。
それがトキワ・ルカと言う人間の本質。
何処となく人間と言う枠組みで見ているような気がしたが、それすら受け入れるしか道が無くなっていた。
「あっ、でも敬語が良ければ私は敬語を使いますよ?」
「それは自分の意思が無い様に思えるけど?」
「そうですね。でも私は、誰に対しても敬語を使うだけじゃなくて、常語を使って立場の垣根が無い方が好きだけどね」
ルカは最後の最後で誰に対しても丸く収め込められる答えを出した。
それを聞いてシルヴィア達は何故か安心する。
やっぱりルカはルカだと、何処となく一つ次元が違うステージに納得ができた。
「っとまあそんなことは如何でも良くてね、本当に訊きたかったのは、あの荷物ですよ」
「荷物? ああ、あれは村の人達に頼まれた食料がほとんどだよ」
「やっぱりか……」
ルカはポツリと呟いた。
しかしながら如何してあれだけの食糧が必要になるのか。端的に言えば、商人だからとまとめてしまうのが早いだろう。
けれどそれだけではないのは何も口を交わさずとも理解できる。
「食料を頼まれたって、なにかあったってことよね?」
「そうだよ。今チャカチャ村は深刻な食糧難に脅かされているんだ。だから急がないといけないんだよ」
キヤチャは真剣な目をしていた。
そこに無駄な言葉は要らない。
必要なのは急ぐこと。村人のためだと思い、自分のためだとも思い、ルカは言葉を吐いた。
「それは急がないとね。ジュナ二、少し急げるかな?」
「うーん。それじゃあ行くね」
ジュナイダー二代目に声を掛けると、事情が筒抜けだったらしい。
おかげで面倒な説明を全て省くと、ジュナイダー二代目は速やかに地面を蹴り上げる。
土埃を巻き上げると、粉塵が飛び散り、急加速をしてジュナイダー二代目は走り出した。
「うわぁ、速っ!」
「ちょっとジュナ二! ちゃんと乗ってる人のことも考えてよね。うわぁ!」
「うんうん。走るの楽しいなー!」
荷車の中は大変なことになっていた。
とてつもないGに全身を壁や床に思いっきり叩き付けられる。
ここは下手に抗えば怪我をする。そう思って全身の力を抜くと、そのまま床に蹲った。
本当は速度を落として貰えればこんな真似はしなくてもいい。
けれどシルヴィアの必死の怒号はジュナイダー二代目に届かない。
楽しそうに走り出すと、ルカ達は吐きそうになりながら、必死にGに耐えるのだった。
止まっていた時間もほんの一瞬で、ルカ達は若い男と共に、この先の村まで向かうことになった。
とは言え若い男はキョロキョロ視線を巡らせる。
何かおかしなところでもあるのか、若い男は挙動不審が酷かった。
荷車の中を見回すと、指先がやや震えている。
そんな状況下でもルカ達は平常心を保っていた。
ここまでたくさんの死を醸す戦いを繰り広げた。
そのおかげか、ちょっとくらいの出来事では動じない強い精神を手にしていたのだ。
「少し訊きたいことがあるだけど、いいかな?」
だけどルカは声を掛けてみた。訊きたいことがあったからだ。
すると若い男は目を見開いた。唐突な問いかけに、驚きが隠せないのだ。
「えっ。あっ、うん。構わないよ」
「それじゃあまず名前を教えて貰ってもいいかな?」
「名前? そう言えばまだ自己紹介をしていなかったね。俺はキヤチャ。この先にあるチャカチャ村で商人をやってるんだ」
若い男=キヤチャは名前を聞いただけなのに、職業まで教えてくれた。
しかし職業が聞けて納得できた。
おかげであれだけの荷物の正体が分かったからだ。
「へぇー、商人なんだね。それは大事だ」
「あの村で商人を営んでいるのは俺しかないから。というより、急に敬語じゃなくなったけど、それが素なのかい?」
ルカが相槌を打つと、キヤチャはルカの口振りが気になってしまった。
確かにルカは人によって口振りを変える。
シルヴィア達も思っていたのか、視線を少し上げた。何と返すのか期待している様子だ。
「はい。私は敬語を使う相手を選ぶので」
しかしルカは素直に返答をした。
その言い方がムカ付いたのか、キヤチャもシルヴィア達も眉根を寄せている。
神妙な面持ちで、ルカのことを睨んでいる様子だが、ルカは至って平然としていた。
「それはつまり俺のことを……」
「舐めては無いですよ。敬語は敬語です。言葉によって本性を隠し、誰の目からも分かる善人を偽る手段に過ぎないんですから。最も、敬意を表するためにも使いますけどね。こんな風に」
ルカは常語と敬語を瞬時に使いわけた。
まるでどちらも同じように聞こえてしまい、キヤチャは目を開いて驚く。
「君のような不思議な子は、うちの村にはいないよ」
「いやいや、普通目上の相手すら尊敬しない奴は奇人よ」
「私は奇人じゃないよ。私にとって敬語は相手の心を測る手段だからね。敬語じゃなくても良いと分かれば、私は常語に変えるだけ。それだけだよ」
ルカは自分の考えをなんの淀みも無く答える。
するとあまりにも清々しすぎる上に、この間のホーリーでの一件を見ていたシルヴィア達は尚納得する。
それがトキワ・ルカと言う人間の本質。
何処となく人間と言う枠組みで見ているような気がしたが、それすら受け入れるしか道が無くなっていた。
「あっ、でも敬語が良ければ私は敬語を使いますよ?」
「それは自分の意思が無い様に思えるけど?」
「そうですね。でも私は、誰に対しても敬語を使うだけじゃなくて、常語を使って立場の垣根が無い方が好きだけどね」
ルカは最後の最後で誰に対しても丸く収め込められる答えを出した。
それを聞いてシルヴィア達は何故か安心する。
やっぱりルカはルカだと、何処となく一つ次元が違うステージに納得ができた。
「っとまあそんなことは如何でも良くてね、本当に訊きたかったのは、あの荷物ですよ」
「荷物? ああ、あれは村の人達に頼まれた食料がほとんどだよ」
「やっぱりか……」
ルカはポツリと呟いた。
しかしながら如何してあれだけの食糧が必要になるのか。端的に言えば、商人だからとまとめてしまうのが早いだろう。
けれどそれだけではないのは何も口を交わさずとも理解できる。
「食料を頼まれたって、なにかあったってことよね?」
「そうだよ。今チャカチャ村は深刻な食糧難に脅かされているんだ。だから急がないといけないんだよ」
キヤチャは真剣な目をしていた。
そこに無駄な言葉は要らない。
必要なのは急ぐこと。村人のためだと思い、自分のためだとも思い、ルカは言葉を吐いた。
「それは急がないとね。ジュナ二、少し急げるかな?」
「うーん。それじゃあ行くね」
ジュナイダー二代目に声を掛けると、事情が筒抜けだったらしい。
おかげで面倒な説明を全て省くと、ジュナイダー二代目は速やかに地面を蹴り上げる。
土埃を巻き上げると、粉塵が飛び散り、急加速をしてジュナイダー二代目は走り出した。
「うわぁ、速っ!」
「ちょっとジュナ二! ちゃんと乗ってる人のことも考えてよね。うわぁ!」
「うんうん。走るの楽しいなー!」
荷車の中は大変なことになっていた。
とてつもないGに全身を壁や床に思いっきり叩き付けられる。
ここは下手に抗えば怪我をする。そう思って全身の力を抜くと、そのまま床に蹲った。
本当は速度を落として貰えればこんな真似はしなくてもいい。
けれどシルヴィアの必死の怒号はジュナイダー二代目に届かない。
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