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村亡編
435.ナタリーがやって来た?
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その日もルカは家に居た。
外は寒い。この間雪を作ったせいもあってか、寒気が少し強まった。
ナタリーの頼みが逆に効果になってしまったと、ルカは肌で感じた。
「ううっ、寒い」
ルカは両の手のひらに息を掛ける。
案の定白くなる。それもそのはず、ここは家とは言っても家の外。
寒空のせいで雲も広がり曇天になっていた。
また雪が降られたら敵わないとなと思いつつ、何処からともなく声がした。
「ルカさん、何をされているんですか?」
そこに居たのはナタリーだった。
今日は前もってもなく、ふらっと家にやって来るので、ルカは少し警戒した。
「ナタリー?」
「はい、私です」
ナタリーは何か持っている。
鍋のように見えるが、何が入っているのだろうか?
「私は魔術の練習だよ。家の周りを温めて、冬の寒さも平気にしようとしていたんだ」
「そうだったんですか。ですがルカさんに魔術の練習など必要は無いはずでは?」
「そう思っているなら、ナタリーもそれまでだよ」
ルカは厳しく突き放した。
ナタリーは心からショックを受けて顔がヒリつく。
表情が固まり、瞳孔が一点を見ていた。
「そ、そうですか……」
「そうだよ。ナタリーも私に任せなくても自分から……それで、それはなに?」
ルカは話を切り替えた。
ナタリーを怒らせたりするのも面倒だから、これ以上心労に来ることは止めておく。
ナイス判断だと思った。ナタリーはパッと表情が明るくなり、持って来た鍋を見せる。
「クリームシチューを作ってみたんです。同胞から珍しい食材が送られてきたので、ルカさんにもお裾分けしようと思い」
「同胞? ってことはエルフの食材ってことかな? 珍しいね」
エルフは少し変わったものを食べたりする。
植物に関する知識に長けており、その中で色んなものを知った。
とは言え、エルフ族の間でしか食べてはいけないとされる伝統的なものもある。
けれどルカはそれを千年前に全力で破ってしまったため、それ以来電灯と呼ばれるものに綻びが生じたのは言うまでもない。
「入ってもよろしいでしょうか?」
「別に良いよ。それより、それだけのためにやって来たの?」
「はい?」
ナタリーは変にとぼけて見せた。
愛くるしい表情を浮かべ、「はて?」と頬に人差し指を当てる。
とても可愛らしく映るのだが、ルカにはそれが本心から来るものではないと悟る。
もちろん全部が全部嘘ではない。
ナタリーらしさも含まれていたのだが、何処となく裏があるように感じた。
一体何を隠しているのか。見透かしても良いのだが、流石にナタリーなら口で答えて貰えれば助かる。
「なにか隠しているんだよね。私に相談したいことかな?」
ちょっと鎌をかけてみる。
するとナタリーは魔力をバシュン! と飛ばした。
如何やら悪気は無く、精神的に来るものから、ルカへと訴えかける。
「なるほどね。如何やら当たりらしいね」
「はい。そのために来ました」
と言うことはエルフ族に関係がある訳だ。
何故そこまで読めるのか。そんなの簡単。このタイミングで、わざわざ鍋を持って来たこと。
もちろんお裾分けの意図は本心らしい。現にナタリーが「あっ、一緒に食べませんか?」とにこやかに尋ねるのだ。こればかりは嘘ではない。
「それじゃあ食べながら話そうか。相談くらいなら、私で良ければ聞くからさ」
「ありがとうございます。それではルカさん、先にキッチンをお借りしますね」
「どうぞ。それと、その目の警戒も解いてくれると助かるかな。ピリピリしているのは分かるけどね」
「はっ!? すみません、ルカさん」
ナタリーは謝る。別に謝ることでもない。
何故なら相手がエルフ族、つまりは同胞関係ならピリピリしていてもおかしくななかった。
それからナタリーはルカの家へと入って行く。
きっとキッチンで鍋を温めながら、軽く付け合わせを作るのだろう。
おそらくバケットを用意していることだ。
それがいつものナタリーの鉄板で、蕩けたチーズも用意してあった。
「さてと。それじゃあ私も作業を終わらせちゃおうかな」
ルカは家の外で魔術を使う。
寒気が家の敷地内に入らないように、魔術をある程度固定化するのだ。
本来なら石板か何かに刻み土の中に埋める。
しかし今回はソレをしない。何故ならやるのがルカなので、簡潔かつ簡単にアレンジした。
わざわざ石板など使わなくても、時空系魔術を併用する。
「《スペース》+《ホットマップ》!」
ルカが叫びと、突然暖かな波動が放たれた。
如何やら無事に魔術が機能してくれたらしく、だんだん家の周りが暖かくなる。
この辺りには他に目立った民家なども無いので、ルカの一軒家だけが暖かさに包まれ、冬の寒さから守られた。
「さてと、やることも終わったし、家の中に入ろうかな」
ルカは満足したようで、軽く伸びをした。
家の中に入るととても良い匂いがしている。
案の定、チーズの香りがしていた。
外は寒い。この間雪を作ったせいもあってか、寒気が少し強まった。
ナタリーの頼みが逆に効果になってしまったと、ルカは肌で感じた。
「ううっ、寒い」
ルカは両の手のひらに息を掛ける。
案の定白くなる。それもそのはず、ここは家とは言っても家の外。
寒空のせいで雲も広がり曇天になっていた。
また雪が降られたら敵わないとなと思いつつ、何処からともなく声がした。
「ルカさん、何をされているんですか?」
そこに居たのはナタリーだった。
今日は前もってもなく、ふらっと家にやって来るので、ルカは少し警戒した。
「ナタリー?」
「はい、私です」
ナタリーは何か持っている。
鍋のように見えるが、何が入っているのだろうか?
「私は魔術の練習だよ。家の周りを温めて、冬の寒さも平気にしようとしていたんだ」
「そうだったんですか。ですがルカさんに魔術の練習など必要は無いはずでは?」
「そう思っているなら、ナタリーもそれまでだよ」
ルカは厳しく突き放した。
ナタリーは心からショックを受けて顔がヒリつく。
表情が固まり、瞳孔が一点を見ていた。
「そ、そうですか……」
「そうだよ。ナタリーも私に任せなくても自分から……それで、それはなに?」
ルカは話を切り替えた。
ナタリーを怒らせたりするのも面倒だから、これ以上心労に来ることは止めておく。
ナイス判断だと思った。ナタリーはパッと表情が明るくなり、持って来た鍋を見せる。
「クリームシチューを作ってみたんです。同胞から珍しい食材が送られてきたので、ルカさんにもお裾分けしようと思い」
「同胞? ってことはエルフの食材ってことかな? 珍しいね」
エルフは少し変わったものを食べたりする。
植物に関する知識に長けており、その中で色んなものを知った。
とは言え、エルフ族の間でしか食べてはいけないとされる伝統的なものもある。
けれどルカはそれを千年前に全力で破ってしまったため、それ以来電灯と呼ばれるものに綻びが生じたのは言うまでもない。
「入ってもよろしいでしょうか?」
「別に良いよ。それより、それだけのためにやって来たの?」
「はい?」
ナタリーは変にとぼけて見せた。
愛くるしい表情を浮かべ、「はて?」と頬に人差し指を当てる。
とても可愛らしく映るのだが、ルカにはそれが本心から来るものではないと悟る。
もちろん全部が全部嘘ではない。
ナタリーらしさも含まれていたのだが、何処となく裏があるように感じた。
一体何を隠しているのか。見透かしても良いのだが、流石にナタリーなら口で答えて貰えれば助かる。
「なにか隠しているんだよね。私に相談したいことかな?」
ちょっと鎌をかけてみる。
するとナタリーは魔力をバシュン! と飛ばした。
如何やら悪気は無く、精神的に来るものから、ルカへと訴えかける。
「なるほどね。如何やら当たりらしいね」
「はい。そのために来ました」
と言うことはエルフ族に関係がある訳だ。
何故そこまで読めるのか。そんなの簡単。このタイミングで、わざわざ鍋を持って来たこと。
もちろんお裾分けの意図は本心らしい。現にナタリーが「あっ、一緒に食べませんか?」とにこやかに尋ねるのだ。こればかりは嘘ではない。
「それじゃあ食べながら話そうか。相談くらいなら、私で良ければ聞くからさ」
「ありがとうございます。それではルカさん、先にキッチンをお借りしますね」
「どうぞ。それと、その目の警戒も解いてくれると助かるかな。ピリピリしているのは分かるけどね」
「はっ!? すみません、ルカさん」
ナタリーは謝る。別に謝ることでもない。
何故なら相手がエルフ族、つまりは同胞関係ならピリピリしていてもおかしくななかった。
それからナタリーはルカの家へと入って行く。
きっとキッチンで鍋を温めながら、軽く付け合わせを作るのだろう。
おそらくバケットを用意していることだ。
それがいつものナタリーの鉄板で、蕩けたチーズも用意してあった。
「さてと。それじゃあ私も作業を終わらせちゃおうかな」
ルカは家の外で魔術を使う。
寒気が家の敷地内に入らないように、魔術をある程度固定化するのだ。
本来なら石板か何かに刻み土の中に埋める。
しかし今回はソレをしない。何故ならやるのがルカなので、簡潔かつ簡単にアレンジした。
わざわざ石板など使わなくても、時空系魔術を併用する。
「《スペース》+《ホットマップ》!」
ルカが叫びと、突然暖かな波動が放たれた。
如何やら無事に魔術が機能してくれたらしく、だんだん家の周りが暖かくなる。
この辺りには他に目立った民家なども無いので、ルカの一軒家だけが暖かさに包まれ、冬の寒さから守られた。
「さてと、やることも終わったし、家の中に入ろうかな」
ルカは満足したようで、軽く伸びをした。
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案の定、チーズの香りがしていた。
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