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聖夜編
412.よく頑張った子供達
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肝臓ドリンクを最後まで飲み干し、ジルアは気持ち悪そうに顔色を悪くする。
けれど失った血液は急速に補充され、体調は良くなったらしい。
これで負った怪我は全て治った。
ルカはホッと一安心したが、それよりも子供達の方がジルアの無事を喜んだ。
「「「ジルアお姉ちゃん!」」」
「うわぁ!」
ジルアは早速子供達に飛び掛かられた。
まだ治ったばかりだから、ギュッとされると筋肉が引き絞られる。
かなり痛いはずだ。けれどジルアは笑みを浮かべたまま、子供達を抱き寄せる。
「ジルアお姉ちゃん、もう大丈夫なの?」
「大丈夫?」
「怪我してないよね。大丈夫だよね」
「はい、お陰様で」
ジルアは抱きつく子供達を必死の思いで宥める。
するとルカのことを見つめ、笑みを零した。
「ルカさん、本当にありがとうございました!」
「どういたしまして」
「私、生きているんですよね。生きて、生きて……ううっ」
ジルアは押し黙っていた感情を込み上げさせた。
涙袋に涙を浮かべ、今にも泣き出しそうな感情を抑え込む。
子供達の前だからだ。だけどその感情が生を実感したことで心のダムが崩壊しそうになっていた。
「泣きたい時は泣いたらいいんですよ」
「で、ですが……子供達の前で涙なんて……」
「ジルアさん。子供達の手本になるなら、むしろ嬉しい時は泣いた方が良いんです。その方が感情が伝わりますよ」
ルカはジルアにそう助言した。
するとジルアは溜め込んでいた涙を溢れ出させ、子供のように泣いた。
「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」
盛大な泣きだった。子供達もそれに合わせて泣き出した。
まるで輪唱しているようで、壁伝いに声が反響する。
ルカはその光景をジッと見つめていた。ジルアも子供達もルカのことなど一切気にせず泣き続けるも次第に止み、目の下が真っ赤になっていた。
「ぐすん。お見苦しい姿をお見せしてしまいました」
「そんなことないですよ。涙を浮かべることは悪いことじゃないんです」
正直ルカが失った感情だ。
だからだろうか。自分の感情はなく、当たり前のことを当たり前で言うしかなかった。
しかしジルアには伝わったのか、顔を真っ赤にして嬉しそうでいた。
「ルカさん、本当にありがとうございました」
「だからそう言うのはいいですよ。それにジルアさんを助けたのは私じゃなくて、ここにいる子供達じゃないですか」
ルカは腰を屈めて少年少女達を見つめた。
ミューイもカザリもグレイもそれから少し離れたところにいるゲイルも、全員ジルアを助けるために頑張っていた。
特に魔力の乱れが激しいゲイルは頑張ったようで、ルカは全員を労わった。
「みんな頑張ったね。ジルアさんを守ってくれてありがとう」
笑みを浮かべたまま投げかけると、グレイが代表して真っ先に口を開いた。
目の下が真っ赤になり、震える口調だった。
「ぼ、僕達が、守った?」
「そうだよ。ここまでジルアを連れて来てくれたのは、君達でしょ?」
「そ、そんなこと、ない」
「うん。私達は、ジルアお姉ちゃんに……迷惑ばっかり」
「あはは、人は誰かに迷惑を掛けて生きている生き物だよ。そんなこと気にしないの」
ルカは不安そうに目を伏せるカザリの額に軽いデコピンをした。
ちょっと痛そうに涙を浮かべるが、嫌そうではない。
むしろ光栄な様子で、ルカのことをジッと見つめていた。
「グレイだっけ? 君は冷静に努めていて良かったよ」
「冷静? でもそれだけ守り切れなかった。結局ゲイルが居なかったら、今頃……」
「それは結果論だ。使えるものはなんでも使う。それを使うには直情的な思考回路だと上手く回り切らないものも、冷静な思考回路だと上手く回ることもある。そういうことだよ」
「上から目線だけど、うん、そう言うことにするよ」
グレイは何となくで納得してくれた。
それだけで満足な様子で、今度はゲイルに声を掛ける。
「ゲイル。魔術を使ったんだよね?」
「な、なんだよ。悪いのかよ」
「そんなことないよ。だけど疲れているね」
「当たり前だろ! 俺は魔術なんて使ったこと……」
「無かったんだ。凄いね、土壇場で発動させるなんて」
ゲイルはかなり凄いことをしていた。
これぞ火事場の馬鹿力。切羽詰まった状況で、渾身のエネルギーを飛ばしたことで、魔力がイメージと直結して魔術を呼んできた。
慣れないうちの魔術師にはよくあることで、才能の一つだった。
「ゲイル。君は良い魔術師になれるよ」
「良い魔術師ってなんだよ!」
「それは自分で考えればいいよ。その力を正しく使えば……そうだな。いつか君のお父さんのようになれるかもしれないね」
「えっ!?」
ゲイルの適正魔力は風属性。シルヴィアやライザーと同じだ。
どんな魔術師だったのか。恐らくほとんど資料はない。
けれど帰ったらナタリーにでも相談してみよう。そうすれば何か分かるかもしれない。
漠然としたことしか分からなかったが、ルカは自分のやったことを悪く無いと感じ、勝手に満足していた。これで月が出ていたらさぞかし素敵。そう思ってしまった。
けれど失った血液は急速に補充され、体調は良くなったらしい。
これで負った怪我は全て治った。
ルカはホッと一安心したが、それよりも子供達の方がジルアの無事を喜んだ。
「「「ジルアお姉ちゃん!」」」
「うわぁ!」
ジルアは早速子供達に飛び掛かられた。
まだ治ったばかりだから、ギュッとされると筋肉が引き絞られる。
かなり痛いはずだ。けれどジルアは笑みを浮かべたまま、子供達を抱き寄せる。
「ジルアお姉ちゃん、もう大丈夫なの?」
「大丈夫?」
「怪我してないよね。大丈夫だよね」
「はい、お陰様で」
ジルアは抱きつく子供達を必死の思いで宥める。
するとルカのことを見つめ、笑みを零した。
「ルカさん、本当にありがとうございました!」
「どういたしまして」
「私、生きているんですよね。生きて、生きて……ううっ」
ジルアは押し黙っていた感情を込み上げさせた。
涙袋に涙を浮かべ、今にも泣き出しそうな感情を抑え込む。
子供達の前だからだ。だけどその感情が生を実感したことで心のダムが崩壊しそうになっていた。
「泣きたい時は泣いたらいいんですよ」
「で、ですが……子供達の前で涙なんて……」
「ジルアさん。子供達の手本になるなら、むしろ嬉しい時は泣いた方が良いんです。その方が感情が伝わりますよ」
ルカはジルアにそう助言した。
するとジルアは溜め込んでいた涙を溢れ出させ、子供のように泣いた。
「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」
盛大な泣きだった。子供達もそれに合わせて泣き出した。
まるで輪唱しているようで、壁伝いに声が反響する。
ルカはその光景をジッと見つめていた。ジルアも子供達もルカのことなど一切気にせず泣き続けるも次第に止み、目の下が真っ赤になっていた。
「ぐすん。お見苦しい姿をお見せしてしまいました」
「そんなことないですよ。涙を浮かべることは悪いことじゃないんです」
正直ルカが失った感情だ。
だからだろうか。自分の感情はなく、当たり前のことを当たり前で言うしかなかった。
しかしジルアには伝わったのか、顔を真っ赤にして嬉しそうでいた。
「ルカさん、本当にありがとうございました」
「だからそう言うのはいいですよ。それにジルアさんを助けたのは私じゃなくて、ここにいる子供達じゃないですか」
ルカは腰を屈めて少年少女達を見つめた。
ミューイもカザリもグレイもそれから少し離れたところにいるゲイルも、全員ジルアを助けるために頑張っていた。
特に魔力の乱れが激しいゲイルは頑張ったようで、ルカは全員を労わった。
「みんな頑張ったね。ジルアさんを守ってくれてありがとう」
笑みを浮かべたまま投げかけると、グレイが代表して真っ先に口を開いた。
目の下が真っ赤になり、震える口調だった。
「ぼ、僕達が、守った?」
「そうだよ。ここまでジルアを連れて来てくれたのは、君達でしょ?」
「そ、そんなこと、ない」
「うん。私達は、ジルアお姉ちゃんに……迷惑ばっかり」
「あはは、人は誰かに迷惑を掛けて生きている生き物だよ。そんなこと気にしないの」
ルカは不安そうに目を伏せるカザリの額に軽いデコピンをした。
ちょっと痛そうに涙を浮かべるが、嫌そうではない。
むしろ光栄な様子で、ルカのことをジッと見つめていた。
「グレイだっけ? 君は冷静に努めていて良かったよ」
「冷静? でもそれだけ守り切れなかった。結局ゲイルが居なかったら、今頃……」
「それは結果論だ。使えるものはなんでも使う。それを使うには直情的な思考回路だと上手く回り切らないものも、冷静な思考回路だと上手く回ることもある。そういうことだよ」
「上から目線だけど、うん、そう言うことにするよ」
グレイは何となくで納得してくれた。
それだけで満足な様子で、今度はゲイルに声を掛ける。
「ゲイル。魔術を使ったんだよね?」
「な、なんだよ。悪いのかよ」
「そんなことないよ。だけど疲れているね」
「当たり前だろ! 俺は魔術なんて使ったこと……」
「無かったんだ。凄いね、土壇場で発動させるなんて」
ゲイルはかなり凄いことをしていた。
これぞ火事場の馬鹿力。切羽詰まった状況で、渾身のエネルギーを飛ばしたことで、魔力がイメージと直結して魔術を呼んできた。
慣れないうちの魔術師にはよくあることで、才能の一つだった。
「ゲイル。君は良い魔術師になれるよ」
「良い魔術師ってなんだよ!」
「それは自分で考えればいいよ。その力を正しく使えば……そうだな。いつか君のお父さんのようになれるかもしれないね」
「えっ!?」
ゲイルの適正魔力は風属性。シルヴィアやライザーと同じだ。
どんな魔術師だったのか。恐らくほとんど資料はない。
けれど帰ったらナタリーにでも相談してみよう。そうすれば何か分かるかもしれない。
漠然としたことしか分からなかったが、ルカは自分のやったことを悪く無いと感じ、勝手に満足していた。これで月が出ていたらさぞかし素敵。そう思ってしまった。
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