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聖夜編

369.ホーリーの観光(祭りでそれどころじゃない)

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 ルカ達は町中へと戻って来た。
 今日は昨日の倍賑わっていた。
 それもそのはず、クリスマスもイヴだからだ。

「うわぁ、人が凄いね」
「もしかして飲まれちゃった?」
「まさか」

 シルヴィアに茶化される。
 しかしルカは素早く否定すると、お祭りムードの町中を歩き始めた。

「そこの嬢ちゃん達、串焼きいかがだい!」
「こっちはホーリー名物の聖雪煎餅だよ!」
「ホーリーで昔使われていた民族衣装着ないかい?」
「スノードロップ・ディアの木彫り人形は如何ですか?」

 たくさんの屋台。大勢の人。
 波の様に押し寄せる人々のまにまを抜け、クリスマスツリーを目指す。

「クリスマスツリーが遠いね」
「そうですね。ですが、それだけこの町に活気が溢れている証拠ですよ」
「にしても、屋台多くない? クリスマスって、もっと繊細なものじゃないの?」
「時間の流れは無常だよ」
「なに、それ? 時空系魔術を使うから、それを例えに使ったってこと?」
「……そこまで言われるとは思わなかったよ」

 シルヴィアの返答に、ルカは少しだけ眉根を寄せた。
 確かに時空系魔術を使うけれども、こうして比喩的に出されるとは思わなかったのだ。
 実際、ルカにそんな意図は一切なかった。

「あっ、おーい!」

 するとライラックとブルースターの姿が見えてきた。
 当然ながらリネアは居ない。
 これだけ人が居るんだ。情報収集にも、商品長達にも打って付け。
 今を頑張らないと始まらないと見た。

「三人とも結構時間かかったねー」
「まあね。でも、まだ調査は足りなかったけど……」
「そうなのー?」
「ルカさんが珍しいですね」
「まあ、色々あったからね」

 そう言って、ルカはシルヴィアとダリアを覗き見る。
 肩をグッと掴まれてしまい、「それ以上は言わない」と念押しされる。
 ルカも下手に言葉を発することはなく、合流も済んだので、如何するか考えた。

「それで、みんなは如何する?」
「如何するって漠然ね」
「実際、予定何て決めてないでしょ? 朝食もしっかり摂ったから屋台で食べることもないでしょ?」
「確かにそうですね。私も同意見です」
「私もです、ルカさん!」

 ブルースターとダリアがルカに乗っかる。
 ライラックも昨日の分が残っているのかお腹を押さえている。
 シルヴィアも「まあ、納得だわ」と唇を尖らせる。

「それじゃあ如何するの? 町並みでも見てみる?」
「町並みを見る余裕が無いよ」
「確かにね。何処を見ても、人、人、人、人の群れ。波のように押し寄せて近づくことも出来ないわ」

 ルカ達はクリスマスツリーの目の前に居た。
 そのせいで、この町に押し寄せる人の群れをよく観察できた。
 ほとんどは観光客。そして観光客に対して熱気に燃えるホーリーの町の商店の数々。
 ルカは「流石にこれは……」と呟き、頬を掻いた。

「町の中を回るのはほぼ不可能だね」
「それじゃあ如何するのよ?」
「例えば町の外に出てみるとか?」
「それが一番いいよねー。でもさー、面白そうな場所ってあるのー?」

 ライラックは唱えた。
 するとダリアは近くを歩いている人に声を掛けに行く。

「あの、すみません!」
「ん? 何かな」
「あの、この町の近くに観光地ってありますか?」

 ダリアは通行人に話しかけ、何やら情報を集める。
 その姿を尊く思ったルカは、シルヴィアに話しかけられた。

「ダリアが話を聞いて来てくれるみたいだけど、ルカは心当たりはないの?」
「町中しか調べてないよ」
「そうなのね。ルカならもっと詳しく調べていると思ったわ」
「そっくりそのまま返すよ」

 ルカはシルヴィアなら知っていると思った。
 しかし今回は時間の都合上もありノーマーク。
 何処に行くのかすら未定のまま、ルカは町中の建物の配置を覚えることに注力した。

 そんなことをしていると時間は経っていた。
 大体五分と短かったが、その間にダリアが情報を集め終えた。

「皆さん、面白そうな観光地を聞いて来ました!」

 ダリアが楽しそうに戻ってくる。
 ルカ達は早速仕入れてきた情報を耳にする。

「ダリア、どんな観光地があったの?」
「色々あるみたいなんですけど、ホーリーの町からそう遠くない場所に、高原があるそうです。揺らぎの滝高原と言う場所のようで、綺麗な滝があるそうですよ」
「へぇー、そんなのがあるのね」
「はい。しかも高原の辺り一面は牧草になっていて、たまに大人しいモンスターが顔を出すそうです。是非観に行ってみませんか?」

 ダリアは目をキラキラさせたいた。
 確かに心休まるにはピッタリな場所なので、ルカ達も同意する。

「いいよ、そこに行こうか」
「ありがとうございます。えっと、それじゃあ……」
「まずはこの波を掻き分けないといけないわね」

 すぐさま現実に引き戻された。
 目の前には先程よりも多い人の群れ。
 この波を逆流するのは少々難儀なので、ルカは飛ぶことにする。
 後で事情を説明してから正面から入るのも面倒なので、そのまま城壁を越えるという荒業を敢行した。
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