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聖夜編
366.早起きしたのでやることをやる
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天井が遠く見えた。
白と言うには少し乳白色。そんな四角い天井を目の当たりにしたルカは、薄っすらと目を開けて今の状況を思い起こす。
「そう言えば昨日はリネアさんに色んな話を頼まれて、そのまま切っちゃったんだっけ?」
ルカはベッドから起き上がった。
魔力もすっかり回復していて、手を握って開いたり閉じたりして見る。
かなり好調な様子で、完璧にフル回復していた。
「まあ、私の場合、死なない限りは一日で魔力も体力も回復するけどね」
ルカはベッドから降りて、リネアの方を見た。
まだ寝ているようで布団を抱き寄せている。
起こさないように音と気配を殺してカーテンの方に向かうと、まだ日が昇っていなかった。
「うわぁ、まだ暗い」
ルカはここが北の方に位置していることを思い出す。
すると暗いこともあってか、ルカは言ったん外に出てみることにした。
きっとまだ誰も起きていない。そう思ってろくに着替えることもせず、静かに扉を開けて外へと出た。
「さてと、これから如何しようかな?」
正直やることはない。
今晩に備えてじっくり休んでおくのが一番だろうが、一つ気掛かりを思い起こす。
「そう言えば約束しちゃったね」
ルカは孤児院でゲインと約束を交わしたことを思い出した。
森の中に何か居る。そのあまりにも漠然とした問いかけに、この町の警備兵達は子供の言うことをろくに聞いてあげていなかった。そんなの当然だ。ルカだって片付ける。
けれどそれでも何もしない訳ではない。
昼頃に調査に向かおうと思っていたが、時間があるのでとりあえず調べてみてもいいかもしれない。
「それじゃあ調べに行こうかな」
「どちらに向かうつもりですか、ルカさん?」
ルカは空を飛ぼうとした。しかし背後から掛けられた声によって立ち止まる。
振り返ってみると、そこにはブルースターが居た。
もちろん気が付いてはいたが、こんな早くから起きているなんて、自分以外にもいたんだと思い出させられた。
「おはようブルースター」
「おはようございます、ルカさん。今朝も早いですね」
「時空系魔術の影響で、時間的な感覚には優れちゃっているからね」
「それは優れているというのでしょうか?」
ブルースターから的確なツッコミを受けてしまった。
ルカは引き攣った表情を浮かべそうになるが、胸の中でグッと押し殺してポーカーフェイスを決め込む。
「確かに優れすぎちゃっているかもね」
「はい。ところで、ルカさんはこれからどちらに向かわれようとしていたのでしょうか? 是非、教えていただけませんか?」
「えっ? まあ、朝の散歩?」
「わざわざ空中散歩ですか?」
「あはは、そうだね」
ブルースターはいちいち反論してくる。
ルカもウザったらしく思うことはなく、そのままの流れ流れで上手く躱してしまう。
「まあそれは良いとして、そうだね。昨日行った森、覚えている? サンタ・ク・ロースじゃない方ね」
「はい、名前の無い森でしたよね」
「そうだよ。ゲイン、彼がねあの森の中で黒い怪しい影を見たって話をしてたんだよ」
「そうだったんですか? そう言えば城壁で、警備兵に何か話していたそうですね。一蹴されてしまったらしいですけど」
「うん」
だけどルカには何か引っかかった。
ルカの魔術で探知できなかった。否、三次元的なやり方を使っていたからだと、ルカは感じ取った。
「でもね、私は何かあると思っているんだ」
「何かとは?」
「それは分からない。でも私の単純な探知を無視する何かかもしれないからね」
「そんな相手が居るんですか!?」
ブルースターは驚いていた。
まるで信じられないようで、ルカは軽く一蹴する。
「当たり前だよ。人じゃなくて、モンスターや魔獣はそんな特殊技能を持っている相手も居るからね」
「そんな……ですが、有り得ますね」
「だからね。信じてみる価値はあると思うんだよ。その証拠に、今から時空系魔術を併用して探知してみるね」
ルカはそこから少し黙る。意識を集中して魔力の波動を飛ばす。
魔力を頭の中で形作り、イメージを湧かせた。
それからゆっくりと発生する。
「《スペース》+《サーチ》!」
二つの単純な魔術を混ぜ込む。するとルカの魔力に反応して、巨大な力に変換された。 気が付けばあっという間に例の森のイメージが湧く。
「さあ、何処に何が……おっ!」
「何か見つかったんですか!?」
ブルースターがルカに声を掛けた。
ルカも意味深な表情を浮かべてから少し様子がおかしい。
(この魔力、人間が四つ。一つはちょっと強めで、もう一つはかなりヤバいかも……それに探知が困難なモンスターの影……なるほど、これは面倒だ)
ルカの予想は概ね当たってしまった。
とは言え今は残留的な魔力しか残っていないらしい。
不審に感じたルカだったが、とりあえず魔術を切り、一旦休憩する。
「ここまでかな」
「終わりですか?」
「うん。実際に目で見た方が早そうだからね」
ルカはそう言うと宿の中へと戻って行く。
面倒なことが増えたと思ってしまったが、平穏のためにはそれも致し方ない。
白と言うには少し乳白色。そんな四角い天井を目の当たりにしたルカは、薄っすらと目を開けて今の状況を思い起こす。
「そう言えば昨日はリネアさんに色んな話を頼まれて、そのまま切っちゃったんだっけ?」
ルカはベッドから起き上がった。
魔力もすっかり回復していて、手を握って開いたり閉じたりして見る。
かなり好調な様子で、完璧にフル回復していた。
「まあ、私の場合、死なない限りは一日で魔力も体力も回復するけどね」
ルカはベッドから降りて、リネアの方を見た。
まだ寝ているようで布団を抱き寄せている。
起こさないように音と気配を殺してカーテンの方に向かうと、まだ日が昇っていなかった。
「うわぁ、まだ暗い」
ルカはここが北の方に位置していることを思い出す。
すると暗いこともあってか、ルカは言ったん外に出てみることにした。
きっとまだ誰も起きていない。そう思ってろくに着替えることもせず、静かに扉を開けて外へと出た。
「さてと、これから如何しようかな?」
正直やることはない。
今晩に備えてじっくり休んでおくのが一番だろうが、一つ気掛かりを思い起こす。
「そう言えば約束しちゃったね」
ルカは孤児院でゲインと約束を交わしたことを思い出した。
森の中に何か居る。そのあまりにも漠然とした問いかけに、この町の警備兵達は子供の言うことをろくに聞いてあげていなかった。そんなの当然だ。ルカだって片付ける。
けれどそれでも何もしない訳ではない。
昼頃に調査に向かおうと思っていたが、時間があるのでとりあえず調べてみてもいいかもしれない。
「それじゃあ調べに行こうかな」
「どちらに向かうつもりですか、ルカさん?」
ルカは空を飛ぼうとした。しかし背後から掛けられた声によって立ち止まる。
振り返ってみると、そこにはブルースターが居た。
もちろん気が付いてはいたが、こんな早くから起きているなんて、自分以外にもいたんだと思い出させられた。
「おはようブルースター」
「おはようございます、ルカさん。今朝も早いですね」
「時空系魔術の影響で、時間的な感覚には優れちゃっているからね」
「それは優れているというのでしょうか?」
ブルースターから的確なツッコミを受けてしまった。
ルカは引き攣った表情を浮かべそうになるが、胸の中でグッと押し殺してポーカーフェイスを決め込む。
「確かに優れすぎちゃっているかもね」
「はい。ところで、ルカさんはこれからどちらに向かわれようとしていたのでしょうか? 是非、教えていただけませんか?」
「えっ? まあ、朝の散歩?」
「わざわざ空中散歩ですか?」
「あはは、そうだね」
ブルースターはいちいち反論してくる。
ルカもウザったらしく思うことはなく、そのままの流れ流れで上手く躱してしまう。
「まあそれは良いとして、そうだね。昨日行った森、覚えている? サンタ・ク・ロースじゃない方ね」
「はい、名前の無い森でしたよね」
「そうだよ。ゲイン、彼がねあの森の中で黒い怪しい影を見たって話をしてたんだよ」
「そうだったんですか? そう言えば城壁で、警備兵に何か話していたそうですね。一蹴されてしまったらしいですけど」
「うん」
だけどルカには何か引っかかった。
ルカの魔術で探知できなかった。否、三次元的なやり方を使っていたからだと、ルカは感じ取った。
「でもね、私は何かあると思っているんだ」
「何かとは?」
「それは分からない。でも私の単純な探知を無視する何かかもしれないからね」
「そんな相手が居るんですか!?」
ブルースターは驚いていた。
まるで信じられないようで、ルカは軽く一蹴する。
「当たり前だよ。人じゃなくて、モンスターや魔獣はそんな特殊技能を持っている相手も居るからね」
「そんな……ですが、有り得ますね」
「だからね。信じてみる価値はあると思うんだよ。その証拠に、今から時空系魔術を併用して探知してみるね」
ルカはそこから少し黙る。意識を集中して魔力の波動を飛ばす。
魔力を頭の中で形作り、イメージを湧かせた。
それからゆっくりと発生する。
「《スペース》+《サーチ》!」
二つの単純な魔術を混ぜ込む。するとルカの魔力に反応して、巨大な力に変換された。 気が付けばあっという間に例の森のイメージが湧く。
「さあ、何処に何が……おっ!」
「何か見つかったんですか!?」
ブルースターがルカに声を掛けた。
ルカも意味深な表情を浮かべてから少し様子がおかしい。
(この魔力、人間が四つ。一つはちょっと強めで、もう一つはかなりヤバいかも……それに探知が困難なモンスターの影……なるほど、これは面倒だ)
ルカの予想は概ね当たってしまった。
とは言え今は残留的な魔力しか残っていないらしい。
不審に感じたルカだったが、とりあえず魔術を切り、一旦休憩する。
「ここまでかな」
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