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聖夜編

350.手分けして料理

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 ルカ達はジルア達に案内されて、孤児院の厨房にやって来た。
 厨房はかなり広く、道具も一通り揃っていた。
 とは言え最新の設備ではないのだが、ルカからしてみればこの方が馴染み合った。

「それでは皆さん、手分けして作りましょうか」
「分かりました。それじゃあ材料は……」

 ルカが呟くと、ジルアは床に設置された突起を引っ張る。
 すると床下が開き、中には食材が収められていた。

「なるほど。床下を利用して……」
「床下の方が冷えるからねぇ」

 ライザーは買って来た食材の内、使わない物は仕舞った。
 逆に必要そうな物は取り出し、中には赤ワインもある。
 かなり本格的なものを作るらしく、食材を全てジルアに渡した。

「はい、ジルア」
「あっ、ライザーは作らないんだ」
「うん。私ぃ、料理は苦手なんだぁ」

 さっきまであれだけ繊細で手際も良かったのに、料理に関してはダメらしい。
 とは言え似ているようで違うので、仕方ない。
 そうして食材を取り出すと、それぞれ役割分担をして早速手伝い始める。

「ダリア、食材を切っておいて」
「任せてください!」

 ダリアはよく切れる包丁を残った魔力を使って錬成。
 剣をイメージして包丁を作ったので、少し形は不格好。
 だけど切れ味は本物で、軽く刃先を触れさせただけでスパッと食材が切れた。

「ライ、私達は食材を軽く炒めておくわよ」
「オッケー」

 ライラックとジルアは鍋の中に食材を入れ、軽く火を通す。
 この方が煮込んだ時に柔らかくなる上に、肉類は殺菌に繋がった。

「ブルースター、私達は簡単な付け合わせでも作ろうか」
「付け合わせですね。それではサラダをまずは……」

 ブルースターはレタスを手に取る。
 水で洗ってから一枚一枚食べやすい大きさに千切っていく。
 土が付いていたので、新鮮な証拠。ついさっきまで生きていた証だ。

「あっ、そうだ。ジルアさん、アレルギー持ちの子供っていますか? 卵系の」
「卵系ですか? 確か居ないはずですよ。ライザーさん、居ましたか?」
「うーん、居ないと思うけどぉ? それで何するのぉ?」

 ルカは安心した。
 とりあえずここにある調味料だけじゃ足りないので、ルカは再度亜空間を展開。
 手を突っ込むと、醤油やみりんを取り出して、テーブルの上に置いた。
 見ての通り、ドレッシングを作るのだ。

「とりあえず合わないかもだけど和風とマヨネーズでも作ろうかな」

 ルカの口からはジルア達が効き馴染まない単語が飛び出した。
 首を捻ると、これから何をしようとしているのか尋ねる。

「ルカさん、コレから何をしようとしているんですか?」
「ドレッシングは分かるけどぉ、和風とかマヨネーズってぇ?」

 そう言われてしまった。こっちではなかなか見られない物なので仕方がないが、東の島国の一部地域では西の文化も取り入れて新しいものを作る土地がある。
 千年前に何度も立ち寄った際、そこで学んだものだ。
 もちろん外に情報を持ち出すのは大いに結構なのだが、あまりにも小さな規模間でしかなかったので、ナタリー達も知らない。だからいつも驚かれる。

(また行ってみようかな)

 《テレポート》を使えばいつでも飛べる。
 とは言え魔力の消費が激しいこともあり、多用したくなかった。
 あの魔術はいくら軽減しても人数と距離で無作為に魔力を持って行くので、今だと使えない。

 とは言え質問には答えておく。
 ここまで一人の世界に居たので、それまで黙々と手を動かし、ボウルの中である程度完成させていた。

「舐めてみてください」

 ルカは完成したドレッシングをジルアとライザーに味見して貰う。
 まずは和風から。これは東の島国の人に合わせた酸味の強い食材の風味を引き立てる味わいになっている。

「「す、酸っぱい!」」
「ですよね」

 酢が入っているので当然だ。とは言え健康には良く、大抵の場合アレルギーを発症しないように調整していた。
 サッパリしたものに掛けると最高なのだが、今回はマヨネーズの方が良さそうだ。

「それじゃあこっちは如何ですか?」

 マヨネーズも差し出す。
 恐る恐る指で掬い上げた二人は一舐めしてみる。
 するとさっきとは反応が異なっていた。

「酸味は少しありますが、マイルドになっていて美味しいですね」
「こっちなら食べられるよぉ」

 やっぱり二人にはマヨネーズの方が合うらしい。
 ルカはせっかく作った和風はまだ使っていない透明な瓶の中に戻す。
 家に帰ってから使おうと決め、サラダも完成させた。

「それじゃあ私達の出番は終わりですね」
「そうですね。後はジルアさんにお任せします」

 ブルースターも合の手を入れる。
 ビーフシチューを作るのはジルア一人。しかし後は煮込むだけなので、慣れたものだった。
 随分と早くできた気がするが、それもそのはず厨房には七人も居た。

「こんなに早くできる何てぇ、楽でいいよねぇ」
「ライザーは何もしてないよね?」
「あははぁ、私は味見をしたからさぁ」

 それも確かの大事だけどとは思う。
 笑っているライザーを尻目に、ふと視線を感じたルカだった。
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