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聖夜編
345.優秀な魔術師さん
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「それじゃあ自己紹介ぃ。私はぁ、ライザー・パンサードぉ。よろしくねぇ。見ての通りぃ、亜人なんだけどぉ。まあ、人よりぃ? 力は強いからぁ? 困ったことがあったらぁ、言っても良いよぉ」
何だか怠そうに喋る人だった。
ルカはライラックに似ているなと思いつつも、何処か雰囲気が違った。
ライラックが表面に本性を曝け出さないのとは裏腹に、ライザーは本性を外側に纏わり付かせているように感じた。
「ライザーさん、お疲れ様でした。こちらに居るのはアルカード魔術学校の生徒さん達です」
「アルカード魔術学校ぉ? へぇ、アルカードの生徒なんだぁ」
あまり驚いていなかった。ルカ達は不思議に思うものの、ライザーは一級魔術師だった。
しかもライザーの口からは面白い事実が告げられる。
「そっかぁー。それじゃあみんなも学校で習っているんだねぇ。懐かしいなぁ」
「な、懐かしい?」
「失礼ですがライザーさんはどちらの魔術学校に通われていたんですか?」
「私ぃ? 私はぁ、北のブリザード魔術学校だよぉ。あの学校は厳しかったけどぉ、面白かったなぁ」
「「「えっ!?」」」
何故かライラック達は驚いていた。
ダリアとブルースターまでなら何となく分かるが、ライラックまでこの反応は意外。
ルカはキョロキョロ視線を配ると、一人だけ取り残される。
「ブリザード魔術学校?」
「知らないのー、ルカ? 私でも知ってるのにー?」
「うん、知らないけど」
「ルカさん。流石に四大魔術学校くらいは抑えておいた方が良いと思いますよ」
「四大魔術学校? そう言えばそんな要素が有った気がする」
の、レベルだった。
ルカは遠い空を見つめるように天井を見上げ、記憶の奥底に呼びかける。
すると昔ナタリーに言われたこと。図書館で調べた知識がポツポツ気泡の様に浮かぶ。
「あっ、北の魔術学校!?」
「そうですよルカさん。特に北の魔術学校は規律に厳しく、環境も極寒。毎年優秀な魔術師を輩出している半面、生き残るのは至難の業。死亡例も限りなく聞きますね」
「そんなに……怖いね」
ルカは「怖い」の一言で蹴り飛ばした。
流石に達観しすぎてしまったのか、ライザーから「ほぉ」と感心した声が吐露する。
「ルカさん、流石に怖いの一言で片づけてしまうのは良くありませんよ」
「何で?」
「何でって……ルカさんは今の話を聞いて、厳しい、死の臭いが立ち込めているとは思わなかったんですか?」
「思ったよ。だけどダリア自身が、その言葉を紡げるほどに理解しているじゃない?
「はっ!?」
ダリアはハッとさせられた。自分で言っていて言葉の違和感に気が付いたのは良し。
だけどそれを認めているのは暁光。ルカはダリアの精神が強いことを再確認し、その話を聞いた旨、ライラックとブルースターは全てではないがある程度理解する。
ここに居るメンバーがナタリーに見初められるほど普通ではないことを。
「ねぇねぇ、君凄いねぇ。如何してそんなに達観しているのかなぁ? かなぁ?」
「ライザーさん?」
「ライザーで良いよぉー。見たところ、私とほとんど歳変わらないでしょぉ? 実は私、飛び級生でさぁ、まだ十八なんだよねぇ」
「「「えっ!?」」」
流石にルカも驚いた。確かに優秀なら飛び級もあるかもだが、ここで出会うとは思わない。
おまけにルカも興味が生まれた。一体どんな魔術を使うのか。ルカは魔力を通してみようとするが、裏表が無さ過ぎて判断に困る。
「それじゃあライザー。改めて私たちも自己紹介をするよ。私はルカ。トキワ・ルカ。アルカード魔術学校三年生」
「ルカかぁ。それじゃあ君達はぁ?」
ライザーの視線がライラック達に向けられる。
全員軽い自己紹介を交わした。
「私はライラックだよぉー。ライラック・ホーネット。まあよろしくねぇ」
「おお、似た空気を感じるねぇ」
「初めましてライザーさん。私はダリア。ダリア・デュランダールと言います。以後、お見知りおきを」
「おっ、今度は礼儀正しいお嬢さんだぁ。貴族かなぁ? 仲良くしようねぇ。私もフラットに相手するからぁ」
「ブルースター・プラネットと申します。私も教会に従事する身として、感服いたしました」
「そんなの良いよぉ。って、プラネットぉ? へぇ、凄いねぇ」
ライザーはどんな相手にも態度を変えなかった。
本当に表も裏もない。ここに居るのはライザー・パンサードと言う感性だった。
「それでさぁ、君達は何をしているのかなぁ? かなぁ?」
ライザーはずっと気になっていたことを口にする。
止めどなく溢れ出るダムのようで、放流にあったルカ達が現状を説明する。
するとライザーはマジかと思うことを淡々と呟いた。
「そっかぁ。そっかそっかぁ。確かにそろそろヤバそうだよねぇ。それじゃあ、私も手伝ってあげるよぉ。ホッと!」
ライザーは軽やかにジャンプをすると、爪を使い空気を切る。
魔術を使った訳ではない。亜人ならではの身体能力で、コテ板に置かれていたコンクリートを道具無しで塗ってしまった。
何だか怠そうに喋る人だった。
ルカはライラックに似ているなと思いつつも、何処か雰囲気が違った。
ライラックが表面に本性を曝け出さないのとは裏腹に、ライザーは本性を外側に纏わり付かせているように感じた。
「ライザーさん、お疲れ様でした。こちらに居るのはアルカード魔術学校の生徒さん達です」
「アルカード魔術学校ぉ? へぇ、アルカードの生徒なんだぁ」
あまり驚いていなかった。ルカ達は不思議に思うものの、ライザーは一級魔術師だった。
しかもライザーの口からは面白い事実が告げられる。
「そっかぁー。それじゃあみんなも学校で習っているんだねぇ。懐かしいなぁ」
「な、懐かしい?」
「失礼ですがライザーさんはどちらの魔術学校に通われていたんですか?」
「私ぃ? 私はぁ、北のブリザード魔術学校だよぉ。あの学校は厳しかったけどぉ、面白かったなぁ」
「「「えっ!?」」」
何故かライラック達は驚いていた。
ダリアとブルースターまでなら何となく分かるが、ライラックまでこの反応は意外。
ルカはキョロキョロ視線を配ると、一人だけ取り残される。
「ブリザード魔術学校?」
「知らないのー、ルカ? 私でも知ってるのにー?」
「うん、知らないけど」
「ルカさん。流石に四大魔術学校くらいは抑えておいた方が良いと思いますよ」
「四大魔術学校? そう言えばそんな要素が有った気がする」
の、レベルだった。
ルカは遠い空を見つめるように天井を見上げ、記憶の奥底に呼びかける。
すると昔ナタリーに言われたこと。図書館で調べた知識がポツポツ気泡の様に浮かぶ。
「あっ、北の魔術学校!?」
「そうですよルカさん。特に北の魔術学校は規律に厳しく、環境も極寒。毎年優秀な魔術師を輩出している半面、生き残るのは至難の業。死亡例も限りなく聞きますね」
「そんなに……怖いね」
ルカは「怖い」の一言で蹴り飛ばした。
流石に達観しすぎてしまったのか、ライザーから「ほぉ」と感心した声が吐露する。
「ルカさん、流石に怖いの一言で片づけてしまうのは良くありませんよ」
「何で?」
「何でって……ルカさんは今の話を聞いて、厳しい、死の臭いが立ち込めているとは思わなかったんですか?」
「思ったよ。だけどダリア自身が、その言葉を紡げるほどに理解しているじゃない?
「はっ!?」
ダリアはハッとさせられた。自分で言っていて言葉の違和感に気が付いたのは良し。
だけどそれを認めているのは暁光。ルカはダリアの精神が強いことを再確認し、その話を聞いた旨、ライラックとブルースターは全てではないがある程度理解する。
ここに居るメンバーがナタリーに見初められるほど普通ではないことを。
「ねぇねぇ、君凄いねぇ。如何してそんなに達観しているのかなぁ? かなぁ?」
「ライザーさん?」
「ライザーで良いよぉー。見たところ、私とほとんど歳変わらないでしょぉ? 実は私、飛び級生でさぁ、まだ十八なんだよねぇ」
「「「えっ!?」」」
流石にルカも驚いた。確かに優秀なら飛び級もあるかもだが、ここで出会うとは思わない。
おまけにルカも興味が生まれた。一体どんな魔術を使うのか。ルカは魔力を通してみようとするが、裏表が無さ過ぎて判断に困る。
「それじゃあライザー。改めて私たちも自己紹介をするよ。私はルカ。トキワ・ルカ。アルカード魔術学校三年生」
「ルカかぁ。それじゃあ君達はぁ?」
ライザーの視線がライラック達に向けられる。
全員軽い自己紹介を交わした。
「私はライラックだよぉー。ライラック・ホーネット。まあよろしくねぇ」
「おお、似た空気を感じるねぇ」
「初めましてライザーさん。私はダリア。ダリア・デュランダールと言います。以後、お見知りおきを」
「おっ、今度は礼儀正しいお嬢さんだぁ。貴族かなぁ? 仲良くしようねぇ。私もフラットに相手するからぁ」
「ブルースター・プラネットと申します。私も教会に従事する身として、感服いたしました」
「そんなの良いよぉ。って、プラネットぉ? へぇ、凄いねぇ」
ライザーはどんな相手にも態度を変えなかった。
本当に表も裏もない。ここに居るのはライザー・パンサードと言う感性だった。
「それでさぁ、君達は何をしているのかなぁ? かなぁ?」
ライザーはずっと気になっていたことを口にする。
止めどなく溢れ出るダムのようで、放流にあったルカ達が現状を説明する。
するとライザーはマジかと思うことを淡々と呟いた。
「そっかぁ。そっかそっかぁ。確かにそろそろヤバそうだよねぇ。それじゃあ、私も手伝ってあげるよぉ。ホッと!」
ライザーは軽やかにジャンプをすると、爪を使い空気を切る。
魔術を使った訳ではない。亜人ならではの身体能力で、コテ板に置かれていたコンクリートを道具無しで塗ってしまった。
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