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聖夜編
328.孤児院に寄ろう
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ルカ達は周囲を警戒しながら進んだ。
モンスターは出てこないとしても、人やそれ以外が潜んでいる可能性は否定できない。
「結局何も出てきませんでしたね」
「そうだね。だけど安全は何よりも代えがたい報酬だよ」
ルカの魔力察知と、ダリアの魔眼を駆使しつつ安全を確保する。
結局使い損だった気がしたダリアだったが、ルカの一言を受けて「そうですね!」と意見を切り替える。凄まじい転換の速度だったが、いつものことだった。ダリアはルカの言うことを間違っていると思わないみたいで、少しばかりルカは眉根を寄せてしまった。
「それはそうと、そろそろ何か見えてきてもおかしくないわよね?」
「そうですね。ジルアさん、教会までは……見えてきましたね」
ブルースターは視線を少しだけ上に持ち上げる。
木々の合間、枝と葉っぱの丁度間に建物の屋根が見えた。
青系統、もっと言えば深いコバルトブルーの屋根が太陽光を直接浴びて、若干白っぽく瞳に映った。
「うわぁ、立派な教会ですね!」
「ありがとうございます。この町唯一の教会ということもあって、定期的に色を塗り替えているんですよ」
「そう何ですね。外観は……あっ、少しだけ」
「とは言っても、支援金がたくさん出てくれるわけじゃないんです。それにほとんどは孤児院の方に回していて、目立つ屋根だけど二、三年に一回程度塗り替えるのが精々です」
ジルアはそっと瞳を閉じた。
教会の外観が近くなることで、コバルトブルーの屋根から外観全体に目線が移るからだ。
しかしながら最低限の装いは保っていて、色は剥げているが、教会を形成している柱までは見えていなかった。
「何だかアレね……」
「そうだねー。言っちゃっていいよねー?」
「言いたいことは分かりますよ。私が代理で管理しているプラネット教会の方が古いので、ボロボロです」
「「本人が言うの!?」」
ブルースターは教会を前にして、自分が代理で管理する教会を比べた。
それと比べればこの教会はだいぶマシな様子で、錆びている部分もなければ、腐臭もしない。あの時の作戦の影響もあって、未だに変な臭いが付いてしまっている。だからこそ改めてそれと比べれば、何倍もマシだとブルースターは見立てていた。
「ブルースター、悲しくなることを言わないでよ」
「そ、そうですよ。どちらの教会も素敵です。人のために最善を尽くす教会は神様も私たち人の想いもきっと、きっと同じですから」
「ありがとうございます。ですがボロボロなのは変わりませんから」
ブルースターは諦めの一言で押し切った。
胸に楔が打ち付けられたように感じ、ダリアの口からは「少しでも支援金を出してもらえるように私が手を回した方が……」と口走っていた。
「あっ、皆さん少し時間はありますか?」
「全然大丈夫です。何かあるんですか?」
ジルアは何か思い出したような様子だ。
太陽を一瞬チラッと見ていたので時間でも気にしている様子だ。
ルカは視線を一瞬配ると、大体十四時を過ぎた辺りだと気が付く。
もしかしたら孤児院の様子が気になるのかもしれない。
先に教会に入るのをやめ、ジルアの意思を尊重する。
「実は孤児院の様子が少し気になるんです。皆さんちゃんと過ごせているでしょうか?」
「まあ心配になるわよね」
「そうだねー。大人の目を盗んじゃうもんねー」
「シルヴィ、ライ、二人とも正論は言わない」
「それが一番傷付くと思うけど?」
空気を完全に読めていなかった。
シルヴィアはまだセーフラインだったが、ライラックは完全に地雷を踏んでいた。
けれど最後の一押しになったのはルカだったので、自分で言ってから「あっ」となる。とは言え悲しむ要素はルカにはない。
「大丈夫ですよ。あっ、そうです。皆さんも是非孤児院に来てください。できれば遊び相手になっていただければ子供達も喜ぶと思うのですが……」
ジルアは上目遣いで頼み込む。そこまでしなくてもここまで来た以上は立ち寄ってみたかった。
真っ先にシルヴィアが全員の意見を汲み取る。
「全然構いませんよ。私達に任せてください」
「おっ、頼もしいねー。さっすが、シルヴィ」
「何言ってるのよライ。貴女もよ」
ライラックはシルヴィアを茶化した。
しかしシルヴィアに引っ張られてしまい、そのまま引き寄せられてしまう。
釣り上げた魚に引っ張られて自分が釣り上げられてしまった。
「私もなんだー。でも遊び相手って何をしたらいいのー?」
「そう言いながらあやとりしないでよ」
ライラックは得意の魔糸を出した。
柔らかい糸を生み出すと、簡単にあやとりで橋を作ったりして遊んでいた。
本当に便利な魔術だと感心しつつ、魔術を使った遊びをルカは思いつかなかった。
「難しいな」
「はい。私の魔術も危ないので、草むしりでもしてお手伝いします」
ルカはダリアの意見に賛成。
時空魔術を使って子供達を楽しませる方法が思い浮かばないので、ジルアに相談してからとりあえず教会の裏にある孤児院に立ち寄らせてもらうことになった。
モンスターは出てこないとしても、人やそれ以外が潜んでいる可能性は否定できない。
「結局何も出てきませんでしたね」
「そうだね。だけど安全は何よりも代えがたい報酬だよ」
ルカの魔力察知と、ダリアの魔眼を駆使しつつ安全を確保する。
結局使い損だった気がしたダリアだったが、ルカの一言を受けて「そうですね!」と意見を切り替える。凄まじい転換の速度だったが、いつものことだった。ダリアはルカの言うことを間違っていると思わないみたいで、少しばかりルカは眉根を寄せてしまった。
「それはそうと、そろそろ何か見えてきてもおかしくないわよね?」
「そうですね。ジルアさん、教会までは……見えてきましたね」
ブルースターは視線を少しだけ上に持ち上げる。
木々の合間、枝と葉っぱの丁度間に建物の屋根が見えた。
青系統、もっと言えば深いコバルトブルーの屋根が太陽光を直接浴びて、若干白っぽく瞳に映った。
「うわぁ、立派な教会ですね!」
「ありがとうございます。この町唯一の教会ということもあって、定期的に色を塗り替えているんですよ」
「そう何ですね。外観は……あっ、少しだけ」
「とは言っても、支援金がたくさん出てくれるわけじゃないんです。それにほとんどは孤児院の方に回していて、目立つ屋根だけど二、三年に一回程度塗り替えるのが精々です」
ジルアはそっと瞳を閉じた。
教会の外観が近くなることで、コバルトブルーの屋根から外観全体に目線が移るからだ。
しかしながら最低限の装いは保っていて、色は剥げているが、教会を形成している柱までは見えていなかった。
「何だかアレね……」
「そうだねー。言っちゃっていいよねー?」
「言いたいことは分かりますよ。私が代理で管理しているプラネット教会の方が古いので、ボロボロです」
「「本人が言うの!?」」
ブルースターは教会を前にして、自分が代理で管理する教会を比べた。
それと比べればこの教会はだいぶマシな様子で、錆びている部分もなければ、腐臭もしない。あの時の作戦の影響もあって、未だに変な臭いが付いてしまっている。だからこそ改めてそれと比べれば、何倍もマシだとブルースターは見立てていた。
「ブルースター、悲しくなることを言わないでよ」
「そ、そうですよ。どちらの教会も素敵です。人のために最善を尽くす教会は神様も私たち人の想いもきっと、きっと同じですから」
「ありがとうございます。ですがボロボロなのは変わりませんから」
ブルースターは諦めの一言で押し切った。
胸に楔が打ち付けられたように感じ、ダリアの口からは「少しでも支援金を出してもらえるように私が手を回した方が……」と口走っていた。
「あっ、皆さん少し時間はありますか?」
「全然大丈夫です。何かあるんですか?」
ジルアは何か思い出したような様子だ。
太陽を一瞬チラッと見ていたので時間でも気にしている様子だ。
ルカは視線を一瞬配ると、大体十四時を過ぎた辺りだと気が付く。
もしかしたら孤児院の様子が気になるのかもしれない。
先に教会に入るのをやめ、ジルアの意思を尊重する。
「実は孤児院の様子が少し気になるんです。皆さんちゃんと過ごせているでしょうか?」
「まあ心配になるわよね」
「そうだねー。大人の目を盗んじゃうもんねー」
「シルヴィ、ライ、二人とも正論は言わない」
「それが一番傷付くと思うけど?」
空気を完全に読めていなかった。
シルヴィアはまだセーフラインだったが、ライラックは完全に地雷を踏んでいた。
けれど最後の一押しになったのはルカだったので、自分で言ってから「あっ」となる。とは言え悲しむ要素はルカにはない。
「大丈夫ですよ。あっ、そうです。皆さんも是非孤児院に来てください。できれば遊び相手になっていただければ子供達も喜ぶと思うのですが……」
ジルアは上目遣いで頼み込む。そこまでしなくてもここまで来た以上は立ち寄ってみたかった。
真っ先にシルヴィアが全員の意見を汲み取る。
「全然構いませんよ。私達に任せてください」
「おっ、頼もしいねー。さっすが、シルヴィ」
「何言ってるのよライ。貴女もよ」
ライラックはシルヴィアを茶化した。
しかしシルヴィアに引っ張られてしまい、そのまま引き寄せられてしまう。
釣り上げた魚に引っ張られて自分が釣り上げられてしまった。
「私もなんだー。でも遊び相手って何をしたらいいのー?」
「そう言いながらあやとりしないでよ」
ライラックは得意の魔糸を出した。
柔らかい糸を生み出すと、簡単にあやとりで橋を作ったりして遊んでいた。
本当に便利な魔術だと感心しつつ、魔術を使った遊びをルカは思いつかなかった。
「難しいな」
「はい。私の魔術も危ないので、草むしりでもしてお手伝いします」
ルカはダリアの意見に賛成。
時空魔術を使って子供達を楽しませる方法が思い浮かばないので、ジルアに相談してからとりあえず教会の裏にある孤児院に立ち寄らせてもらうことになった。
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