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聖夜編
317.精霊ドリアード
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ルカはサンタ・ク・ロースの正体を掴もうとしていた。
ここに居るサンタ・ク・ロースは偽物で、本物に成りすましているだけだった。
その証拠に肌は余計にボロボロと崩れていき、瞳が虚ろになりかけていた。
「ふおっふぉっ……そんなはずが……」
「それじゃあ私に見せてよ。【聖灰】をさ」
「……それは」
完全に押し黙ってしまった。
これはもう完全に偽物である証だ。
どれだけ頑張ったとしても、固有魔法と固有魔術だけは真似することも奪うこともできない。それが魔法使いと魔術師の欠点だった。
「そうだよね。個性だもんね」
「あはは……流石ですね、トキワ・ルカさん。主から聞いていた通りです」
突然口調が変わった。如何やら偽物であることを開き直って掲示したようだ。
ルカはその口ぶりから女性身を感じた。
けれど姿形は変わらず、表情だけが笑みを浮かべていた。
「それで貴女は誰?」
「聡明な貴女なら私の正体ぐらい簡単に見破れてしまうでしょ?」
サンタ・ク・ロースの皮を被った偽物は、自分の瞳を見るようにトントン合図をしていた。
ルカは瞳を注視して目を凝らすと、その奥に女性の姿を見つけた。
「その髪、その顔、ドリアードか?」
「御名答です」
そう言うと、サンタ・ク・ロースの右目の奥から何かが現れた。
小さな女性の姿をしていて、あまりにも特徴が多かった。
魔力が多いことで変色した緑色の長い髪には花飾りがしてあり、手首にはピンク色の花の腕輪をしていた。
着ている衣類は白を基調としたレース素材のようだがかなり薄く、際どいところが視えそうだった。
持っている武器は杖のようで、グルグルと蔦が巻き付いていた。
「如何しましたか?」
「いいや、可愛いなって思ってね」
薄緑色をした瞳をしていた。唇は薄く、綺麗なピンク色だ。
肌も白くて美しいことこの上なかった。ついついルカの視線も惹かれてしまったが、すぐさま意識を切り替えた。
「まあそれはさておき、如何してドリアードがサンタ・ク・ロースの中から? いいや、サンタ・ク・ロースに化けていたのか教えて貰えるかな?」
「私が主と呼んだ以上、理由に関しても気が付かれていると思うのですが?」
「例えば、サンタ・ク・ロースと契約した精霊とかかな?」
「……流石は聞いていた以上です。全てお見通しのようですね」
ドリアードはルカのことを讃えた。
しかしルカからしてみれば大したことをした覚えはなく、サンタ・ク・ロースがどんな風にルカのことを風潮したのか気になった。
「ちなみに他に何か聞いているの?」
「貴女が最強の魔法使いであり、三人の魔女の中でも群を抜いていることでしょうか?」
「セレナとグロリアが可哀そうだよ」
そんな言い方をされると【勇気】と【螺旋】が可哀そうに聞こえた。
だからルカの表情はムッとしてしまったが、ドリアードに悪気は無かった。
「現に精霊である私には、貴女の内に秘めたる人ならざる魔力の波動を感じます」
「やっぱり精霊は気付けるんだね。ところでその体は苦しくないの?」
勝手な想像ではあるが、苦しいと思った。
もちろん痛みという概念の話ではなく、魔力の消費と演じきる精神力は尋常ではないはずだ。常に体力と精神力と魔力を貪り食らわれていて、感情を喪失してもおかしくなかった。
「大丈夫ですよ。私は大丈夫ですよ……」
「大丈夫じゃないよね。特にだけど……」
ルカの視線はサンタ・ク・ロースの痩せ細った体に釘付けとなった。
左腕の一部、特に回復魔術を掛けた辺りの皮膚が完全に土に還り、ボロボロと剥がれ落ちて崩れ去っていた。
「体が崩れているけど、本当に大丈夫?」
「……大丈夫ではありませんが、それでも命を果たすためにはこの姿を維持し続けるしかないんです」
ルカは眉根を寄せた。
精霊と契約しそれだけの制約を付けているのは一体どんな願いのためなのか、無性に気になってしまった。
だからだろうか、本来聞くべきではないはずなのに、ルカの口からはサラッと質問が飛び出していた。
「ちなみにサンタは何を願ったの?」
教えてくれるとは思っていなかった。
本来主との契約は秘密にするのが常識だった。
けれど教えてもいいような漠然とした願いなのか、対価を何も払わずにドリアードは教えてくれた。手を合わせて、神様を崇めるかのような振舞いだった。
「私が主であるサンタ・ク・ロースから承った命は一つです。この町の平和と子供の明るいみたいのために見守り続けて欲しい。ただそれだけです」
「それだけって……重いね」
ルカはドリアードが簡単に言った言葉を重く受け止めた。
それは呪いだ。言葉が自らの魂をこの地に引き留めるための呪い。
ルカにはそう聴こえてしまい、ドリアードを憐れむとともにもう少し詳しく事情を聞くのだった。
ここに居るサンタ・ク・ロースは偽物で、本物に成りすましているだけだった。
その証拠に肌は余計にボロボロと崩れていき、瞳が虚ろになりかけていた。
「ふおっふぉっ……そんなはずが……」
「それじゃあ私に見せてよ。【聖灰】をさ」
「……それは」
完全に押し黙ってしまった。
これはもう完全に偽物である証だ。
どれだけ頑張ったとしても、固有魔法と固有魔術だけは真似することも奪うこともできない。それが魔法使いと魔術師の欠点だった。
「そうだよね。個性だもんね」
「あはは……流石ですね、トキワ・ルカさん。主から聞いていた通りです」
突然口調が変わった。如何やら偽物であることを開き直って掲示したようだ。
ルカはその口ぶりから女性身を感じた。
けれど姿形は変わらず、表情だけが笑みを浮かべていた。
「それで貴女は誰?」
「聡明な貴女なら私の正体ぐらい簡単に見破れてしまうでしょ?」
サンタ・ク・ロースの皮を被った偽物は、自分の瞳を見るようにトントン合図をしていた。
ルカは瞳を注視して目を凝らすと、その奥に女性の姿を見つけた。
「その髪、その顔、ドリアードか?」
「御名答です」
そう言うと、サンタ・ク・ロースの右目の奥から何かが現れた。
小さな女性の姿をしていて、あまりにも特徴が多かった。
魔力が多いことで変色した緑色の長い髪には花飾りがしてあり、手首にはピンク色の花の腕輪をしていた。
着ている衣類は白を基調としたレース素材のようだがかなり薄く、際どいところが視えそうだった。
持っている武器は杖のようで、グルグルと蔦が巻き付いていた。
「如何しましたか?」
「いいや、可愛いなって思ってね」
薄緑色をした瞳をしていた。唇は薄く、綺麗なピンク色だ。
肌も白くて美しいことこの上なかった。ついついルカの視線も惹かれてしまったが、すぐさま意識を切り替えた。
「まあそれはさておき、如何してドリアードがサンタ・ク・ロースの中から? いいや、サンタ・ク・ロースに化けていたのか教えて貰えるかな?」
「私が主と呼んだ以上、理由に関しても気が付かれていると思うのですが?」
「例えば、サンタ・ク・ロースと契約した精霊とかかな?」
「……流石は聞いていた以上です。全てお見通しのようですね」
ドリアードはルカのことを讃えた。
しかしルカからしてみれば大したことをした覚えはなく、サンタ・ク・ロースがどんな風にルカのことを風潮したのか気になった。
「ちなみに他に何か聞いているの?」
「貴女が最強の魔法使いであり、三人の魔女の中でも群を抜いていることでしょうか?」
「セレナとグロリアが可哀そうだよ」
そんな言い方をされると【勇気】と【螺旋】が可哀そうに聞こえた。
だからルカの表情はムッとしてしまったが、ドリアードに悪気は無かった。
「現に精霊である私には、貴女の内に秘めたる人ならざる魔力の波動を感じます」
「やっぱり精霊は気付けるんだね。ところでその体は苦しくないの?」
勝手な想像ではあるが、苦しいと思った。
もちろん痛みという概念の話ではなく、魔力の消費と演じきる精神力は尋常ではないはずだ。常に体力と精神力と魔力を貪り食らわれていて、感情を喪失してもおかしくなかった。
「大丈夫ですよ。私は大丈夫ですよ……」
「大丈夫じゃないよね。特にだけど……」
ルカの視線はサンタ・ク・ロースの痩せ細った体に釘付けとなった。
左腕の一部、特に回復魔術を掛けた辺りの皮膚が完全に土に還り、ボロボロと剥がれ落ちて崩れ去っていた。
「体が崩れているけど、本当に大丈夫?」
「……大丈夫ではありませんが、それでも命を果たすためにはこの姿を維持し続けるしかないんです」
ルカは眉根を寄せた。
精霊と契約しそれだけの制約を付けているのは一体どんな願いのためなのか、無性に気になってしまった。
だからだろうか、本来聞くべきではないはずなのに、ルカの口からはサラッと質問が飛び出していた。
「ちなみにサンタは何を願ったの?」
教えてくれるとは思っていなかった。
本来主との契約は秘密にするのが常識だった。
けれど教えてもいいような漠然とした願いなのか、対価を何も払わずにドリアードは教えてくれた。手を合わせて、神様を崇めるかのような振舞いだった。
「私が主であるサンタ・ク・ロースから承った命は一つです。この町の平和と子供の明るいみたいのために見守り続けて欲しい。ただそれだけです」
「それだけって……重いね」
ルカはドリアードが簡単に言った言葉を重く受け止めた。
それは呪いだ。言葉が自らの魂をこの地に引き留めるための呪い。
ルカにはそう聴こえてしまい、ドリアードを憐れむとともにもう少し詳しく事情を聞くのだった。
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