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聖夜編
286.寒い季節の聖なる噂
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十二月になるととっても寒くなった。
空は夏に見せた濃い青とは違い、薄い青へと変わっていた。
雲の量も少なく、空が高く感じた。
それもこれも空気が澄んでいたからだ。
冬になると夏に比べて空気が澄んで景色が一段とはっきりした。
「ううっ、寒い」
ルカは家の外に出てみると、肌寒くて体を震わせた。
とは言え本気で寒がっているわけではなかった。
この間雪山の一つ雷山を登ったので、それと比べると何でもなかった。
「これは寒いと言っても良いのかな?」
独り言が続いた。
バルトラも空気を読んで合いの手を入れて欲しかった。
しかし空気を読む気は一切ないようで、ルカだけが変な人になった。
「まあいいんだけどさ。そう言えばもう少しで冬休み?」
アルカード魔術学校は毎年十二月の終わりから長期の休みに入った。
夏に有ったものと同じで、体が夏休みから冬休みになっただけだった。
「とは言え何もする予定が無い……暇だ」
「サミシイナ」
バルトラがこんな時だけ合いの手を入れた。
ムカッと一瞬したものの、ルカは何も言わなかった。
代わりに眉根を寄せていた。唇も噛んでいた。
全身からは何とも言えない魔力を流したのでバルトラは黙ってしまった。
「嘘でしょ? これでビビっちゃうの?」
バルトラは完全に黙ってしまった。
魔力の波動からは恐怖の気配を感じ取れた。
しかしそれも仕方なかった。
バルトラはルカに大敗を喫していたので従わざるを得なかった。
「さてとご飯食べようかな」
ルカは一旦家の中に戻った。
朝食の支度を簡単に済ませると、美味しそうに頬張った。
やっぱりご飯を食べている時が一番幸せだと、ルカは人間らしいことを思うのだった。
ルカはいつもの広場にやって来た。
丁度のタイミングでいつものメンバーに出会った。
「あっ、ルカさん!」
ダリアが駆け寄ってきた。
ぶつかりそうな勢いだったが直前で止まり、綺麗な礼をした。
「おはようございます、ルカさん!」
「おはようダリア。シルヴィたちも」
「おはよう」
「おはよー。ふはぁー」
ライラックが大きな欠伸を掻いた。
シルヴィアは開口一発目がそれはおかしいと思い、ギロッと視線を向けた。
「何で睨むのさー」
「ライはいつも通りね。それが知らない人の前だと失礼よ?」
「そうだねー。ふはぁー」
「直す気はないのね」
「無い無い有り得ないんだよー」
ライラックは悪びれることもしなかった。
本当にいつも通りだと思いつつ、ブルースターが遠くから「おはようございます」と言っていた。
「ライラックさんはいつも通りですね」
「いつも通りが一番だよー」
「それもそうですね。ところで皆さん、この季節ですね」
「ん?」
ルカは唐突に話を振るブルースターに首を捻った。
するとシルヴィアが「ああ、アレね」と口走った。
一体何の話をしているのか、ルカには分からなかった。
もしかしたら忘れているだけかもしれないが、何に付いてなのか気になった。
「何かあるの?」
ルカは恥じることなく知らないことを伝えた。
するとシルヴィアとブルースターが驚愕の表情を浮かべた。
目を見開いて顔を近づけた。
「ちょっと待ってよ。如何してそんな顔されるの?」
「有名なお祭りがあるんですよ」
「お祭り? この街で?」
ダリアが教えてくれた。しかしこの街ではないようだ。
そうなるとルカにも分からなかった。
この千年間でお祭り何て幾らでも増えているはずだ。
「とは言えそのお祭りは有名なのよ」
「有名? 何かこの季節にあったっけ?」
「本当に知らないのね。初見のライと同じ反応だわ」
シルヴィアがルカとライラックを同類に見なした。
それは少し不愉快だった。
良くないこととは思いつつ、年代のベクトルが違ったので許してもらった。もちろん本当のことなど言えるわけが無いので、ルカは「そ、そっかー。あはは」と乾いた笑みを浮かべた。
「それで何があるの?」
「聖夜祭ですよ。クリスマスって言われているイベントです」
「イベント? 聖夜祭? 宗教的なニオイがするけど……」
正直宗教は無限にあった。
だから何の流派で何の派閥かは知る由もなかった。
それこそ人間通しが有難迷惑に神様を慕い続けて暴走している事例も過去にはあった。結局、人間通しが束になると何でもできてしまうので怖かった。
「クリスマスはこの世界の神様でサンタ・ク・ロースと言う方を慕っているお祭りですよ。この辺りにはその文化の一部が取り込まれているだけで、そこまで本格的ではありません。とは言え、一部の間ではサンタ・ク・ロースを慕う人達の集団もあるらしいですよ。何でも毎年子供たちにプレゼントを配っているとか何とか……」
ダリアは説明してくれた。
かなり根強いお祭りごとだと分かったが、ルカは妙に引っかかった。
ダリアが話した神様の名前だ。
サンタ・ク・ロースの名前を過去に聞いたことがあった。
おそらく気のせいだとは思ったが、同姓同名の名前とは信じたくなかった。
だからルカは黙ってしまった。
考えている間にダリアが心配してしまい、それから宥めるのに苦労した。
空は夏に見せた濃い青とは違い、薄い青へと変わっていた。
雲の量も少なく、空が高く感じた。
それもこれも空気が澄んでいたからだ。
冬になると夏に比べて空気が澄んで景色が一段とはっきりした。
「ううっ、寒い」
ルカは家の外に出てみると、肌寒くて体を震わせた。
とは言え本気で寒がっているわけではなかった。
この間雪山の一つ雷山を登ったので、それと比べると何でもなかった。
「これは寒いと言っても良いのかな?」
独り言が続いた。
バルトラも空気を読んで合いの手を入れて欲しかった。
しかし空気を読む気は一切ないようで、ルカだけが変な人になった。
「まあいいんだけどさ。そう言えばもう少しで冬休み?」
アルカード魔術学校は毎年十二月の終わりから長期の休みに入った。
夏に有ったものと同じで、体が夏休みから冬休みになっただけだった。
「とは言え何もする予定が無い……暇だ」
「サミシイナ」
バルトラがこんな時だけ合いの手を入れた。
ムカッと一瞬したものの、ルカは何も言わなかった。
代わりに眉根を寄せていた。唇も噛んでいた。
全身からは何とも言えない魔力を流したのでバルトラは黙ってしまった。
「嘘でしょ? これでビビっちゃうの?」
バルトラは完全に黙ってしまった。
魔力の波動からは恐怖の気配を感じ取れた。
しかしそれも仕方なかった。
バルトラはルカに大敗を喫していたので従わざるを得なかった。
「さてとご飯食べようかな」
ルカは一旦家の中に戻った。
朝食の支度を簡単に済ませると、美味しそうに頬張った。
やっぱりご飯を食べている時が一番幸せだと、ルカは人間らしいことを思うのだった。
ルカはいつもの広場にやって来た。
丁度のタイミングでいつものメンバーに出会った。
「あっ、ルカさん!」
ダリアが駆け寄ってきた。
ぶつかりそうな勢いだったが直前で止まり、綺麗な礼をした。
「おはようございます、ルカさん!」
「おはようダリア。シルヴィたちも」
「おはよう」
「おはよー。ふはぁー」
ライラックが大きな欠伸を掻いた。
シルヴィアは開口一発目がそれはおかしいと思い、ギロッと視線を向けた。
「何で睨むのさー」
「ライはいつも通りね。それが知らない人の前だと失礼よ?」
「そうだねー。ふはぁー」
「直す気はないのね」
「無い無い有り得ないんだよー」
ライラックは悪びれることもしなかった。
本当にいつも通りだと思いつつ、ブルースターが遠くから「おはようございます」と言っていた。
「ライラックさんはいつも通りですね」
「いつも通りが一番だよー」
「それもそうですね。ところで皆さん、この季節ですね」
「ん?」
ルカは唐突に話を振るブルースターに首を捻った。
するとシルヴィアが「ああ、アレね」と口走った。
一体何の話をしているのか、ルカには分からなかった。
もしかしたら忘れているだけかもしれないが、何に付いてなのか気になった。
「何かあるの?」
ルカは恥じることなく知らないことを伝えた。
するとシルヴィアとブルースターが驚愕の表情を浮かべた。
目を見開いて顔を近づけた。
「ちょっと待ってよ。如何してそんな顔されるの?」
「有名なお祭りがあるんですよ」
「お祭り? この街で?」
ダリアが教えてくれた。しかしこの街ではないようだ。
そうなるとルカにも分からなかった。
この千年間でお祭り何て幾らでも増えているはずだ。
「とは言えそのお祭りは有名なのよ」
「有名? 何かこの季節にあったっけ?」
「本当に知らないのね。初見のライと同じ反応だわ」
シルヴィアがルカとライラックを同類に見なした。
それは少し不愉快だった。
良くないこととは思いつつ、年代のベクトルが違ったので許してもらった。もちろん本当のことなど言えるわけが無いので、ルカは「そ、そっかー。あはは」と乾いた笑みを浮かべた。
「それで何があるの?」
「聖夜祭ですよ。クリスマスって言われているイベントです」
「イベント? 聖夜祭? 宗教的なニオイがするけど……」
正直宗教は無限にあった。
だから何の流派で何の派閥かは知る由もなかった。
それこそ人間通しが有難迷惑に神様を慕い続けて暴走している事例も過去にはあった。結局、人間通しが束になると何でもできてしまうので怖かった。
「クリスマスはこの世界の神様でサンタ・ク・ロースと言う方を慕っているお祭りですよ。この辺りにはその文化の一部が取り込まれているだけで、そこまで本格的ではありません。とは言え、一部の間ではサンタ・ク・ロースを慕う人達の集団もあるらしいですよ。何でも毎年子供たちにプレゼントを配っているとか何とか……」
ダリアは説明してくれた。
かなり根強いお祭りごとだと分かったが、ルカは妙に引っかかった。
ダリアが話した神様の名前だ。
サンタ・ク・ロースの名前を過去に聞いたことがあった。
おそらく気のせいだとは思ったが、同姓同名の名前とは信じたくなかった。
だからルカは黙ってしまった。
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