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雷鳥編
235.雷鳥の雛
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ルカが受け止めたのは落石ではなく生き物だった。
白い羽には黒も混ざっていて、少し白みがかった黄色い嘴。
如何見ても鳥なのだが、ルカ達は驚いてしまった。
「ねえ、この子って……」
「ライトニングバードの雛だね」
初めて見たシルヴィアたちは目を丸くしていた。
ルカの腕の中で震えているライトニングバードの雛は何かに怯えているようだ。
「随分と怯えていますね。何かあったのでしょうか?」
「まあ何かあったとは思うよ。そもそも上から落ちてくることなんてほとんどないでしょ?」
ライトニングバードの雛は成長するまでほとんど巣から出て来ることはない。
しかも巣があるであろう生息域はもう少し登らないと現れない。
つまりこの雛はそこから落ちてきたことになる。
けれどルカは引っかかる要素を見つけた。
大きく二つある。
「ライトニングバードは子育ての時期は警戒心がとても強いんだ。ほとんどの生き物に言えるけど、ライトニングバードの親は絶対に雛を残したりはしない。餌を手に入れたらすぐに戻ってくる。まともに飛べない雛が一羽で巣から出て来ることはないんだよ」
「それじゃあ何? 誰かが意図的に巣から出したってこと?」
「だろうね。ブルズさんが言っていたでしょ。密猟者が多いって」
しかも雷山に許可なく立ち入る怪しい人影を見たという報告もある。
つまりそういうことで、ルカ達は腹が立ってきた。
「酷い。それじゃあこの子は……」
「多分落ちてきたんだよ。抵抗したと思うし、その痕跡もある」
ルカはライトニングバードの雛の脚を睨んだ。
怪我をしているようで、かなり痛そうに残っている。
血痕も付いているから爪で引っ掻いてらしい。
「治してあげたいです」
「当然治すよ。《ヒール》」
ルカは魔術を使って雛の脚を治した。
みるみるうちに血痕が剥がれ落ち、皮膚が再生していく。
時間も10秒もかからずに雛の治療を終えてしまった。
「はい、お終い」
「相変わらず速いわね。しかも正確」
「そうかな? 練習次第だと思うけど」
「完璧に治療するためのイメージと魔力の調整ができている証拠ですよ。ルカさんは誰よりも魔力に精通していますからね」
「流石です、ルカさん!」
そこまで褒められることはしてないつもりだった。
けれど全員からの眼差しを浴び、ルカは困惑するのだが、それ以上に表情金を緩めた。
喜んでおいた方が丸いと思ったらしい。
「あ、ありがとう」
ぎこちない笑みを浮かべると、雛がキュピー! と鳴いた。
腕の中で震えていたはずの雛はキョロキョロと周りを見回す。
普段見ない景色に怯えているのか、震えは収まったものの心細い気分だった。
「ルカさん、この子返してあげたいです」
「普通は自然のものに関与しすぎるのは生態系的によろしくないんだけど、今回は人間が関与しているからね。わかってる」
「それじゃあ早速登ろっか。それとも私は糸を使って上まで登っちゃう?」
「それは止めておいた方がいいよ」
ライラックの提案をきっぱり却下した。
ごつごつとした岩肌だが、落石の危険性も極めて高い。
そんなところを仮にライラックの糸を使って先行してもらっても、途中で危険が待っている。
「だから却下。というわけで、この子には一旦亜空間に入っていてもらうよ」
ルカは得意の時空魔法で空間に裂け目を生み出す。
雛には悪いが両手が使えないのは不便なので仕方なく入っていてもらった。
興味が出たのか、雛は転がるように亜空間の中に入っていき、私は亜空間を仕舞った。
「これで一安心」
「大丈夫でしょうか?」
「問題ないよ。私の亜空間に誰も手を出すことはできないから」
ダリアの不安を一蹴した。
果たして一蹴できたかど如何か知らないが、ごり押しで突き進む。
「さて、まずはこの危険地帯を抜けよう。そうしないと密猟者と遭遇でもしたら……」
「ちょっとフラグ立てないでよね」
「まあ倒すんだから早い方がいいけどさ」
ルカは久々に本音を吐き出した。
殺したりはしないが、それ相応のことはしておくつもりだ。
シルヴィアたちは邪悪な正義を突きつけられて動揺した。
「たまにルカって本当に怖い時あるわよね」
「そうだねー。近づいちゃ絶対やられる的な空気。本当に誰が勝てるんだろう?」
いや、勝てるような魔術師が現れて欲しい。
ルカはナタリー達からの期待を全部壊してくれるような子が出て来ることを楽しみにしていた。
今のところそんな子はいないが、きっといつか現れると信じている。
「勝てる勝てない問題は置いておくとして、進んでもいいかな? 流石にもう少し広いところで当たりたいから」
「当たりたい? 何にぶつかるの」
「シルヴィ。ブルズさんが言っていたよね。自然保護道を立ち入ってもいい許可が出ているのは……」
「私たちだけよ。許可証にもそう書いてあるし、そう言っていたわ!」
ブルズさん達が言っていたことが本当ならこの先に人はいないはず。
しかしルカの高度な気配察知能力はそれを見逃さない。
ライラックとダリアも一際勘が鋭いので気が付いたらしく、「あっ!」と声を上げた。
「如何したのよ、2人とも?」
「ルカさん、もしかしてこの先に……一つあります」
「そういうことで問題ないよ。さぁ、まずは軽くひねってしまおうか」
ルカはにやりと口角を上げる。
問題ない。そう時間はかからないから。
白い羽には黒も混ざっていて、少し白みがかった黄色い嘴。
如何見ても鳥なのだが、ルカ達は驚いてしまった。
「ねえ、この子って……」
「ライトニングバードの雛だね」
初めて見たシルヴィアたちは目を丸くしていた。
ルカの腕の中で震えているライトニングバードの雛は何かに怯えているようだ。
「随分と怯えていますね。何かあったのでしょうか?」
「まあ何かあったとは思うよ。そもそも上から落ちてくることなんてほとんどないでしょ?」
ライトニングバードの雛は成長するまでほとんど巣から出て来ることはない。
しかも巣があるであろう生息域はもう少し登らないと現れない。
つまりこの雛はそこから落ちてきたことになる。
けれどルカは引っかかる要素を見つけた。
大きく二つある。
「ライトニングバードは子育ての時期は警戒心がとても強いんだ。ほとんどの生き物に言えるけど、ライトニングバードの親は絶対に雛を残したりはしない。餌を手に入れたらすぐに戻ってくる。まともに飛べない雛が一羽で巣から出て来ることはないんだよ」
「それじゃあ何? 誰かが意図的に巣から出したってこと?」
「だろうね。ブルズさんが言っていたでしょ。密猟者が多いって」
しかも雷山に許可なく立ち入る怪しい人影を見たという報告もある。
つまりそういうことで、ルカ達は腹が立ってきた。
「酷い。それじゃあこの子は……」
「多分落ちてきたんだよ。抵抗したと思うし、その痕跡もある」
ルカはライトニングバードの雛の脚を睨んだ。
怪我をしているようで、かなり痛そうに残っている。
血痕も付いているから爪で引っ掻いてらしい。
「治してあげたいです」
「当然治すよ。《ヒール》」
ルカは魔術を使って雛の脚を治した。
みるみるうちに血痕が剥がれ落ち、皮膚が再生していく。
時間も10秒もかからずに雛の治療を終えてしまった。
「はい、お終い」
「相変わらず速いわね。しかも正確」
「そうかな? 練習次第だと思うけど」
「完璧に治療するためのイメージと魔力の調整ができている証拠ですよ。ルカさんは誰よりも魔力に精通していますからね」
「流石です、ルカさん!」
そこまで褒められることはしてないつもりだった。
けれど全員からの眼差しを浴び、ルカは困惑するのだが、それ以上に表情金を緩めた。
喜んでおいた方が丸いと思ったらしい。
「あ、ありがとう」
ぎこちない笑みを浮かべると、雛がキュピー! と鳴いた。
腕の中で震えていたはずの雛はキョロキョロと周りを見回す。
普段見ない景色に怯えているのか、震えは収まったものの心細い気分だった。
「ルカさん、この子返してあげたいです」
「普通は自然のものに関与しすぎるのは生態系的によろしくないんだけど、今回は人間が関与しているからね。わかってる」
「それじゃあ早速登ろっか。それとも私は糸を使って上まで登っちゃう?」
「それは止めておいた方がいいよ」
ライラックの提案をきっぱり却下した。
ごつごつとした岩肌だが、落石の危険性も極めて高い。
そんなところを仮にライラックの糸を使って先行してもらっても、途中で危険が待っている。
「だから却下。というわけで、この子には一旦亜空間に入っていてもらうよ」
ルカは得意の時空魔法で空間に裂け目を生み出す。
雛には悪いが両手が使えないのは不便なので仕方なく入っていてもらった。
興味が出たのか、雛は転がるように亜空間の中に入っていき、私は亜空間を仕舞った。
「これで一安心」
「大丈夫でしょうか?」
「問題ないよ。私の亜空間に誰も手を出すことはできないから」
ダリアの不安を一蹴した。
果たして一蹴できたかど如何か知らないが、ごり押しで突き進む。
「さて、まずはこの危険地帯を抜けよう。そうしないと密猟者と遭遇でもしたら……」
「ちょっとフラグ立てないでよね」
「まあ倒すんだから早い方がいいけどさ」
ルカは久々に本音を吐き出した。
殺したりはしないが、それ相応のことはしておくつもりだ。
シルヴィアたちは邪悪な正義を突きつけられて動揺した。
「たまにルカって本当に怖い時あるわよね」
「そうだねー。近づいちゃ絶対やられる的な空気。本当に誰が勝てるんだろう?」
いや、勝てるような魔術師が現れて欲しい。
ルカはナタリー達からの期待を全部壊してくれるような子が出て来ることを楽しみにしていた。
今のところそんな子はいないが、きっといつか現れると信じている。
「勝てる勝てない問題は置いておくとして、進んでもいいかな? 流石にもう少し広いところで当たりたいから」
「当たりたい? 何にぶつかるの」
「シルヴィ。ブルズさんが言っていたよね。自然保護道を立ち入ってもいい許可が出ているのは……」
「私たちだけよ。許可証にもそう書いてあるし、そう言っていたわ!」
ブルズさん達が言っていたことが本当ならこの先に人はいないはず。
しかしルカの高度な気配察知能力はそれを見逃さない。
ライラックとダリアも一際勘が鋭いので気が付いたらしく、「あっ!」と声を上げた。
「如何したのよ、2人とも?」
「ルカさん、もしかしてこの先に……一つあります」
「そういうことで問題ないよ。さぁ、まずは軽くひねってしまおうか」
ルカはにやりと口角を上げる。
問題ない。そう時間はかからないから。
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