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悪魔教会編

177.真っ白な窓

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 ルカはコーヒーとココアをカップに淹れ、ブルースターたちが待つ部屋に向かう。
 扉を開けると、2人が椅子に座って頬けている。
 先程まで緊迫感が何処へやら、ルカは唖然としていた。

「あっ、ルカ戻ってきたんだぁー」
「お疲れ様です、ルカさん。シルヴィアさんとダリアさんはまだ戻っておられないんですね」
「そうみたいだね。それより2人とも呑気にしているね」
「休める時に休むのは当然だよー」
「それは一理あるよ。というわけで、コレ」

 テーブルの上にルカはカップを置いた。
 白いマグカップはルカのもの。紫がライラック、青がブルースターだ。
 ただ色が塗っているだけではなく、それぞれマークがしてある。
 わかりやすいのは、ブルースターのマグカップには星のマークがしてあった。

「ふぅふぅ……美味しいですね」
「あちぃ!」
「淹れたてなんだから熱いに決まっているよ」

 ライラックのココアの中には、要望通り砂糖がたっぷり入っている。
 美味しいかどうかはわからないが、ライラックは平気そうに飲んでいる。
 ただでさえ甘ったるいココアに砂糖を入れたらどれだけ甘いのか。想像したくなかった。

「さてと、シルヴィアさんたちが戻るまでの間。少し現状を報告しておきましょうか」
「そうだね。ちなみに私の方は魔術陣が刻まれていたよ。マンホールの中、下水道のアスファルトの上にね」
「あっ、こっちは壁の外側だったよ。図書館の壁面にペンキみたいに塗られてた」
「それは大変そうですね。それにしても目立ってしまうのではないでしょうか?」
「それがさー、消せないみたいだったよ」
「消せないんですか。図書館の職員さんはさぞ大変でしょうね」
「本当だよねー。でもどうして消せないのかなー?」
「それはふりですか。魔術で描かれたものを消すには魔術を使って上書きする方法が手っ取り早いんですよ。劣化していないものとなると、壁を剥がすなどしなければ落とせません」
「げっ、本当にやなことしてるじゃんかー」

 ライラックは怪訝そうな顔をする。
 それを言えば赤い液体が垂れる麻袋を持ってこないで欲しかった。

「そう言えば窓ガラスが白くなっていましたが、どなたか知りませんか?」

 ブルースターはコーヒーを一口飲むと、窓が白いことを気にする。

「それは私がやったんだよ。窓が白い方が敵からも視認されにくいからね」
「なるほど。確かにこの教会は常に監視体制にありますからね」
「とは言え、その監視役も私が倒しちゃったけどねー」
「そうなんだ。……はい?」

 ルカは首を傾げた。ライラックのことだ。冗談ではないはずで、意識を飛ばすと確かに外の方に誰かが倒れているような怪しい気配を感じ取る。
 脈拍はあるみたいだが、動いてはいない。
 どうやらライラックによって拘束されたみたいだ。

「いやぁー、結構弱いね」
「強くないんだ。魔術は使ってこなかったの?」
「それがさー、変なんだよね。背中から羽が生えたんだよ」
「「背中から羽?」」
「そうそう、羽が生えていて飛ぼうとしていたんだよ! だから糸を使ってグルグル巻きにしたら地面に激突したんだー。そのまま放置は危ないから、人の目に付かない場所に隠してきたけどねー」
「なかなか怖いことをしますねライラックさん」
「そんなことないってー。私は自分のしたことを間違ってないと思っているんだよー」
「そうですか。ですが全てが終わったら事情を聴かないといけませんね」

 ブルースターは優しかった。
 ライラックの行動もルカの行為もまるで無碍にしない。
 少なくとも、修道女としてブルースターは真っ当に頑張っていたらしい。
 ルカはにこやかな笑みを浮かべると、自分もコーヒーを一口飲む。
 ブラックコーヒーが芳醇な香りを放っていた。

「美味しい」
「ルカさんのはブラックですか?」
「そうだよ。これに慣れちゃうとね」

 ブルースターはルカの飲む姿を見て黄昏る。
 そんなに面白いことだろうか? ルカはブルースターをチラチラ見ていた。
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