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悪魔教会編
172.教会の謎
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ルカはみんなを連れて古い教会にやって来た。
シルヴィアは教会を見るや否や、普通にしかめっ面をした。
「何ここ、凄く古い教会ね」
「ここに首席がいるんだよ」
「こんなところにいるんだー。もしかして聖職者の人なのー?」
「うーん、ちょっと違うかな。敵組織は宗教の体で人を集めているんだよ。だから教会を拠点にした方が、情報は集めやすいんだよ」
「流石は首席さんだねー。よく考えているよー」
ライラックは納得していたが、やけに乾いている。
興味がないのか、それとも称賛しているのか。
とにかくライラックも楽しんでいるようで安心した。けれどその目がやけに怖いのが、変に気になった。
古い教会の中を珍しく同年代の少女たちが4人で歩いている。
ボロボロと床のセメントが剥がれていた。シルヴィアは老朽化に目をやる。
「酷いわね、ここ。しかもかなり古いわ」
「今から千年以上前にできたらしいよ。初めて知ったときは、私も驚いたよ」
この話はナタリーに相談した時初めて教えてもらった。
プラネット家が千年前の大戦の後、多くの人達に魔法を伝授するために建てたものらしく、古い教会はその名残だ。
幸い支柱や床下の基礎は千年前のものをそのまま使えている。それもそのはず、特注品で魔法によって加工されていた。
けれどその中には、千年前の悪魔召喚の儀式で亡くなった方々の返り血が飛んだものや、悪魔召喚が二度と行われないように刻み込んだものもあるらしい。
それだけ後世に伝えようとしているのは、昔起きた大きな過ちを今後起きないようにするためだった。
「何だか悲しい場所ね」
「そうだね。ここに来ると感傷的になっちゃうよ」
あんな過ち二度と起こさせない。
ルカはステライトの代わりにそう誓った。改めて誓った。それが約束だからだ。
「それにしても変わっていますね。この教会は魔力の流れが一定ですね」
ダリアは教会の壁や梁を待回して持ったことをポツリと呟いた。
たしかにダリアの眼ならこの教会内に流れる一定の刻みの魔力にも勘づけるだろう。だがあまりに核心を突いていて、ルカも考えていた。
どうしてあの白い修道服で身を隠した連中は、こんな古い教会を狙っていたのか。
わざわざプラネット家の保有するこの教会を得ようとするのか。そこに意味がある。そんな気がしていた。
ルカ達は大きな扉の前にやって来た。ここは作業部屋になっている。
中ではブルースターが作業をしているはずで、ひしひしと伝わる圧にシルヴィアは息を飲んだ。
「凄い熱量ね。圧迫感にも感じるわ」
「これが首席さんかー。楽しみだなー」
ライラックは何か思いついたのか、ニヤニヤ笑みを浮かべていた。
ルカはライラックの考えが読めなかったが、目がギラギラとしていて普段見せるものではなかった。
「ブルースター、いる? って頑張っているね」
「あれが首席? それにしても何しているのかしら」
「地図を描いているのでしょうか? 集中していますね」
扉を押し開けると、ブルースターが椅子に座り前傾姿勢で鉛筆を素早く動かしていた。無駄を削ぎ落している。
シルヴィアとダリアはぼーっとブルースターの作業に目を奪われていた。
ブルースターに頼んで今は地図を作って貰っている。しかしここまで集中してしまうのは、プラネット家の遺伝は怖い。
ステライトも昔からこうだった。ブルースターよりもう少しだけ視野が広かったが、やはり一度集中すると周りが見えなくなる性格らしい。それが時に窮地を招き脱することもあるのだが、1人だと不利なのは変わらない。
何せステライトに目は二つしかない。ここにはその網を掻い潜る人間がいる。
「凄いね、こんなに正確な地図を描けるなんてさー」
「えっ!?」
「しかもこの×マークって意味があるんでしょ?」
「は、はい。それにしても貴女はいつからそこに……それにルカさん? 後ろにいらっしゃるのは……えっ、はい?」
ブルースターは完全に戸惑っていた。
隠れる。潜める。隠密性に関して、ライラックの右に出る者はいなかった。
シルヴィアは教会を見るや否や、普通にしかめっ面をした。
「何ここ、凄く古い教会ね」
「ここに首席がいるんだよ」
「こんなところにいるんだー。もしかして聖職者の人なのー?」
「うーん、ちょっと違うかな。敵組織は宗教の体で人を集めているんだよ。だから教会を拠点にした方が、情報は集めやすいんだよ」
「流石は首席さんだねー。よく考えているよー」
ライラックは納得していたが、やけに乾いている。
興味がないのか、それとも称賛しているのか。
とにかくライラックも楽しんでいるようで安心した。けれどその目がやけに怖いのが、変に気になった。
古い教会の中を珍しく同年代の少女たちが4人で歩いている。
ボロボロと床のセメントが剥がれていた。シルヴィアは老朽化に目をやる。
「酷いわね、ここ。しかもかなり古いわ」
「今から千年以上前にできたらしいよ。初めて知ったときは、私も驚いたよ」
この話はナタリーに相談した時初めて教えてもらった。
プラネット家が千年前の大戦の後、多くの人達に魔法を伝授するために建てたものらしく、古い教会はその名残だ。
幸い支柱や床下の基礎は千年前のものをそのまま使えている。それもそのはず、特注品で魔法によって加工されていた。
けれどその中には、千年前の悪魔召喚の儀式で亡くなった方々の返り血が飛んだものや、悪魔召喚が二度と行われないように刻み込んだものもあるらしい。
それだけ後世に伝えようとしているのは、昔起きた大きな過ちを今後起きないようにするためだった。
「何だか悲しい場所ね」
「そうだね。ここに来ると感傷的になっちゃうよ」
あんな過ち二度と起こさせない。
ルカはステライトの代わりにそう誓った。改めて誓った。それが約束だからだ。
「それにしても変わっていますね。この教会は魔力の流れが一定ですね」
ダリアは教会の壁や梁を待回して持ったことをポツリと呟いた。
たしかにダリアの眼ならこの教会内に流れる一定の刻みの魔力にも勘づけるだろう。だがあまりに核心を突いていて、ルカも考えていた。
どうしてあの白い修道服で身を隠した連中は、こんな古い教会を狙っていたのか。
わざわざプラネット家の保有するこの教会を得ようとするのか。そこに意味がある。そんな気がしていた。
ルカ達は大きな扉の前にやって来た。ここは作業部屋になっている。
中ではブルースターが作業をしているはずで、ひしひしと伝わる圧にシルヴィアは息を飲んだ。
「凄い熱量ね。圧迫感にも感じるわ」
「これが首席さんかー。楽しみだなー」
ライラックは何か思いついたのか、ニヤニヤ笑みを浮かべていた。
ルカはライラックの考えが読めなかったが、目がギラギラとしていて普段見せるものではなかった。
「ブルースター、いる? って頑張っているね」
「あれが首席? それにしても何しているのかしら」
「地図を描いているのでしょうか? 集中していますね」
扉を押し開けると、ブルースターが椅子に座り前傾姿勢で鉛筆を素早く動かしていた。無駄を削ぎ落している。
シルヴィアとダリアはぼーっとブルースターの作業に目を奪われていた。
ブルースターに頼んで今は地図を作って貰っている。しかしここまで集中してしまうのは、プラネット家の遺伝は怖い。
ステライトも昔からこうだった。ブルースターよりもう少しだけ視野が広かったが、やはり一度集中すると周りが見えなくなる性格らしい。それが時に窮地を招き脱することもあるのだが、1人だと不利なのは変わらない。
何せステライトに目は二つしかない。ここにはその網を掻い潜る人間がいる。
「凄いね、こんなに正確な地図を描けるなんてさー」
「えっ!?」
「しかもこの×マークって意味があるんでしょ?」
「は、はい。それにしても貴女はいつからそこに……それにルカさん? 後ろにいらっしゃるのは……えっ、はい?」
ブルースターは完全に戸惑っていた。
隠れる。潜める。隠密性に関して、ライラックの右に出る者はいなかった。
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