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鉱石編
106.七月の転入生
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季節は七月になった。
そこそこ暑い。そんなじんわりとする季節になったのだが、そろそろだろう。
おろしたての夏服を着こむと、家の外に出た。
「ふふーん、ふふふーん」
「如何したの、シルヴィ」
「だって今日からダリアが学校に通うのよ。嬉しいでしょ」
「とか言って言ってるけどー、肝心の本人は如何かなー?」
「はい、とっても楽しみです!」
ダリアはにこやかな笑みを浮かべた。
ダリアは無事に転入の手続きが済んだ。単位もなんやかんやで如何にかした。
それもこれもナタリーの力にある。
「ってかさー、なんか暑いよねー」
「夏だもん。仕方ないわよ」
「夏だもんって、そんな冷静じゃないこと言わないでよねー」
「いいじゃない。私だって暑いのよ。って、ダリアは汗を掻いてないけど、何かしているの?」
「あっ、いえ。私は火系統の魔術師ですから、炎には耐性があるんです」
「あはは。それじゃあまるで、寒いのは駄目みたいじゃんかー」
「えーっと、冬もそれなりには」
噴水前で、三人仲良く話し込んでいた。
ダリアは転入が決まってから、およそ二週間前のことだった。シルヴィアの家に住むことになったんだ。
その間、最初はどぎまぎだったけどすぐに打ち解けた。ルカの時とは、大違いのテンポ感だった。
「それにしても遅いわね、ルカ」
「なにかあったのでしょうか?」
「うーん、ルカに限ってそれはないと思うけどなー。って、来たみたいだよ」
「「ほえっ?」」
二人には見えていなかった。
かなり遠いところにいる。ルカは平然と歩いているのが、目のいいライラックには見えていた。
その格好は揃って同じ、ブレザーも着ておらずネクタイも着用していないで、短い白のシャツにベストだった。
「おはよう、皆んな」
「ルカさん!」
ダリアが目をキラキラさせた。
ダリアはルカに懐いているらしい。
そのことを二人は知っていた。
「全く遅いわよ、ルカ」
「ごめん。でも時間通りだよ?」
「それはそうだけどさー、やっぱり暑いんだよねー」
「それは言えてる。それじゃあ行こうか」
四人は揃って学校に向かった。
学校は高台の上にある。つまり坂道があるのだが、緑の葉っぱたちの影に隠れ、熱くなっていない道を進んだ。
それから学校に到着すると、タイミングよくナタリーに出会った。
「おや? 皆さん、おはようございます」
「「「おはようございます、校長先生」」」
「はい。皆さん、かなり表情が締まっていますね。シルヴィアさん、その頬のガーゼは、勲章ですね」
「ううっ。は、はい。素直に受け取っておきます」
シルヴィアは苦い顔をして、唇を尖らせる。
するとライラックが「ぷぷっ」と笑った。
それに素早く反応し、シルヴィアは声を荒げた。
「ライ、人が怪我しておいて、その反応はなに!」
「だって、あれ三週間前だよ。ルカが治療してくれるって言ったのに、自分でやるっていたから、まだ治ってないんだよ」
「もう、そんなこと言わないでよ。私だって傷口は塞いだのよ!」
「なんなら、今治そうか?」
ルカは尋ねた。
しかしシルヴィアは負けず嫌いで、「必要ないもん!」と子供みたいだった。
その姿を横目に、ライラックとダリアは笑うのを我慢した。
「皆さん、大変でしたね」
「それもこれも、校長先生からの指示のせいですけどね」
「それもそうでしたね。ですが皆さんはますます強くなっています。これからも精進してくださいね」
「はい!」
馬鹿正直に、シルヴィアだけが返事した。
何も言わないルカとライラックにきょろきょろと目を配る。
そんな中、一人取り残され気味な、ダリアに向けてナタリーは微笑んだ。
「ダリアさんも、魔術師を志す以上、頑張ってくださいね」
「はい。でも私は魔術師ではなく、魔剣士を目指します!」
「それもそうでしたね」
ナタリーは口元を抑えた。
ダリアはすっかり元気になっている。
それはナタリーの想像以上で、ルカの凄さを見た気がした。
そこそこ暑い。そんなじんわりとする季節になったのだが、そろそろだろう。
おろしたての夏服を着こむと、家の外に出た。
「ふふーん、ふふふーん」
「如何したの、シルヴィ」
「だって今日からダリアが学校に通うのよ。嬉しいでしょ」
「とか言って言ってるけどー、肝心の本人は如何かなー?」
「はい、とっても楽しみです!」
ダリアはにこやかな笑みを浮かべた。
ダリアは無事に転入の手続きが済んだ。単位もなんやかんやで如何にかした。
それもこれもナタリーの力にある。
「ってかさー、なんか暑いよねー」
「夏だもん。仕方ないわよ」
「夏だもんって、そんな冷静じゃないこと言わないでよねー」
「いいじゃない。私だって暑いのよ。って、ダリアは汗を掻いてないけど、何かしているの?」
「あっ、いえ。私は火系統の魔術師ですから、炎には耐性があるんです」
「あはは。それじゃあまるで、寒いのは駄目みたいじゃんかー」
「えーっと、冬もそれなりには」
噴水前で、三人仲良く話し込んでいた。
ダリアは転入が決まってから、およそ二週間前のことだった。シルヴィアの家に住むことになったんだ。
その間、最初はどぎまぎだったけどすぐに打ち解けた。ルカの時とは、大違いのテンポ感だった。
「それにしても遅いわね、ルカ」
「なにかあったのでしょうか?」
「うーん、ルカに限ってそれはないと思うけどなー。って、来たみたいだよ」
「「ほえっ?」」
二人には見えていなかった。
かなり遠いところにいる。ルカは平然と歩いているのが、目のいいライラックには見えていた。
その格好は揃って同じ、ブレザーも着ておらずネクタイも着用していないで、短い白のシャツにベストだった。
「おはよう、皆んな」
「ルカさん!」
ダリアが目をキラキラさせた。
ダリアはルカに懐いているらしい。
そのことを二人は知っていた。
「全く遅いわよ、ルカ」
「ごめん。でも時間通りだよ?」
「それはそうだけどさー、やっぱり暑いんだよねー」
「それは言えてる。それじゃあ行こうか」
四人は揃って学校に向かった。
学校は高台の上にある。つまり坂道があるのだが、緑の葉っぱたちの影に隠れ、熱くなっていない道を進んだ。
それから学校に到着すると、タイミングよくナタリーに出会った。
「おや? 皆さん、おはようございます」
「「「おはようございます、校長先生」」」
「はい。皆さん、かなり表情が締まっていますね。シルヴィアさん、その頬のガーゼは、勲章ですね」
「ううっ。は、はい。素直に受け取っておきます」
シルヴィアは苦い顔をして、唇を尖らせる。
するとライラックが「ぷぷっ」と笑った。
それに素早く反応し、シルヴィアは声を荒げた。
「ライ、人が怪我しておいて、その反応はなに!」
「だって、あれ三週間前だよ。ルカが治療してくれるって言ったのに、自分でやるっていたから、まだ治ってないんだよ」
「もう、そんなこと言わないでよ。私だって傷口は塞いだのよ!」
「なんなら、今治そうか?」
ルカは尋ねた。
しかしシルヴィアは負けず嫌いで、「必要ないもん!」と子供みたいだった。
その姿を横目に、ライラックとダリアは笑うのを我慢した。
「皆さん、大変でしたね」
「それもこれも、校長先生からの指示のせいですけどね」
「それもそうでしたね。ですが皆さんはますます強くなっています。これからも精進してくださいね」
「はい!」
馬鹿正直に、シルヴィアだけが返事した。
何も言わないルカとライラックにきょろきょろと目を配る。
そんな中、一人取り残され気味な、ダリアに向けてナタリーは微笑んだ。
「ダリアさんも、魔術師を志す以上、頑張ってくださいね」
「はい。でも私は魔術師ではなく、魔剣士を目指します!」
「それもそうでしたね」
ナタリーは口元を抑えた。
ダリアはすっかり元気になっている。
それはナタリーの想像以上で、ルカの凄さを見た気がした。
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