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魔術運動会編1
75.女王陛下の観覧
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いよいよ、三日目の開会式になった。
ルカは普段の制服を着ていて、参加していた。
一体何が始まるのか、ルカは首を捻る。
「さて皆さん。今日はいよいよ最終日です。気持ちのいいくらい晴れ渡っていますね。昨日の予選に勝ち上がったクラスも、惜しくも敗退してしまったクラスも、最後まで楽しんでくださいね。選手の皆さんは、切磋琢磨し、しのぎを削り、魔術の脈動をその手に刻めるよう、頑張っていきましょう。私も応援しています。それでは、いよいよ本選の開幕……の前に皆さん、あちらの席を御覧ください」
司会進行の挨拶を奪い去った生徒会長、ニイジマ・ナナミ。
彼女が右手を高らかに、上げた先には観客席があった。
その席には数分前までは教頭先生が二人が座っていただけで、すぐに魔術を掛けられ見えなくなった。
しかし、生徒会長の合図とともに、魔術が解かれると、観衆から様々な声音の声が上がる。
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」
耳が痛くなる。
そこにいたのは、赤いドレスを着たブロンドヘアーの女性。
聡明な黄色い眼で、会場を見下ろしている。
その口元は作り笑顔ではなく、手を振っていた。
「マジで?」
「嘘でしょ。こんなことがあるの!」
「凄いね、まさかただの貴族じゃないなんてさー」
三人はポカンとしていた。
そこにいたのは、ただ者ではない。観衆が上がるのも無理はない人で、この国にいる人で知らない人はいない。
何故ならその人は、この国きっての天才。
国を動かす統治者であり、多くの人から信頼されている、支持されている女王陛下。
キダチ・E・スカーレット。元は、ただの平民だったが、その恵まれた才能を開花させ、いつしかこの国総出の信頼を集めた。
結果王族となり、いつしか国王自らが、その実権を明け渡してからは、天才的な知略を使い、この国をより豊かにした。
何よりも貧困や格差にメスを入れ、貴族の取り巻きもいない。
まさに誰もがうらやむ存在だった。
「まさかこんなとこに、あんな人がいるなんて。これは見えてきたかな」
「何が?」
「ううん。そんなことより、席が一つ多い気がするけど、座っていないね」
「「えっ?」」
如何やら二人は気づいていない。
後ろの方に一つだけ、ポツンと寂しそうな席がある。
あの席に本来座る人がいるはずだ。しかし今はいない。
「それにしても、女王陛下は如何してここにいるのかしらね?」
「どういうこと? ただの観客じゃないの?」
「だとしたら、例年来ているはずじゃないかしら。私は去年も見ていたけど、こんな観衆はなかったわよ」
「気づいてなかっただけとか?」
「それは絶対にないわ。ねー、ライ」
「うん。でもさー、例えば誰かを見に来たとか?」
「誰かをって?」
「うーん。例えば、自分の子供とか?」
「それはないわよ。だって噂になっているじゃない」
「まあねー」
なるほど、その可能性は非常に高い。
ルカの思考にはその文字が浮かび上がるが、しかしシルヴィアとライラックは顔色を歪める。
「はいはい。二人とも、そんなとこで話は終わり。いい加減、私達も行こ」
「えっ? 話を振ったのは、ルカじゃない」
「そうだよー。そもそもこの展開に進んだのはルカのせいでさー、話の収拾を付ける義務があると思うんだけどー?」
「はいはい。じゃあお終い。と言うことで、私はそろそろ行くよ」
そう言って、ルカは会場を後にする。
シルヴィアとライラックはその背中をじっと見ていた。
暗闇の中に消えていく、ルカの背中。そんなルカのことを二人は口にした。
「本当、ルカはそういう生活をしたら、あんな風になるのかしらね」
「うーん」
「ライ?」
「ん!? な、何でもないよ」
ライラックは話を濁した。
そんな彼女の横顔を、寂しそうに見ているシルヴィアだった。
ルカは普段の制服を着ていて、参加していた。
一体何が始まるのか、ルカは首を捻る。
「さて皆さん。今日はいよいよ最終日です。気持ちのいいくらい晴れ渡っていますね。昨日の予選に勝ち上がったクラスも、惜しくも敗退してしまったクラスも、最後まで楽しんでくださいね。選手の皆さんは、切磋琢磨し、しのぎを削り、魔術の脈動をその手に刻めるよう、頑張っていきましょう。私も応援しています。それでは、いよいよ本選の開幕……の前に皆さん、あちらの席を御覧ください」
司会進行の挨拶を奪い去った生徒会長、ニイジマ・ナナミ。
彼女が右手を高らかに、上げた先には観客席があった。
その席には数分前までは教頭先生が二人が座っていただけで、すぐに魔術を掛けられ見えなくなった。
しかし、生徒会長の合図とともに、魔術が解かれると、観衆から様々な声音の声が上がる。
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」
耳が痛くなる。
そこにいたのは、赤いドレスを着たブロンドヘアーの女性。
聡明な黄色い眼で、会場を見下ろしている。
その口元は作り笑顔ではなく、手を振っていた。
「マジで?」
「嘘でしょ。こんなことがあるの!」
「凄いね、まさかただの貴族じゃないなんてさー」
三人はポカンとしていた。
そこにいたのは、ただ者ではない。観衆が上がるのも無理はない人で、この国にいる人で知らない人はいない。
何故ならその人は、この国きっての天才。
国を動かす統治者であり、多くの人から信頼されている、支持されている女王陛下。
キダチ・E・スカーレット。元は、ただの平民だったが、その恵まれた才能を開花させ、いつしかこの国総出の信頼を集めた。
結果王族となり、いつしか国王自らが、その実権を明け渡してからは、天才的な知略を使い、この国をより豊かにした。
何よりも貧困や格差にメスを入れ、貴族の取り巻きもいない。
まさに誰もがうらやむ存在だった。
「まさかこんなとこに、あんな人がいるなんて。これは見えてきたかな」
「何が?」
「ううん。そんなことより、席が一つ多い気がするけど、座っていないね」
「「えっ?」」
如何やら二人は気づいていない。
後ろの方に一つだけ、ポツンと寂しそうな席がある。
あの席に本来座る人がいるはずだ。しかし今はいない。
「それにしても、女王陛下は如何してここにいるのかしらね?」
「どういうこと? ただの観客じゃないの?」
「だとしたら、例年来ているはずじゃないかしら。私は去年も見ていたけど、こんな観衆はなかったわよ」
「気づいてなかっただけとか?」
「それは絶対にないわ。ねー、ライ」
「うん。でもさー、例えば誰かを見に来たとか?」
「誰かをって?」
「うーん。例えば、自分の子供とか?」
「それはないわよ。だって噂になっているじゃない」
「まあねー」
なるほど、その可能性は非常に高い。
ルカの思考にはその文字が浮かび上がるが、しかしシルヴィアとライラックは顔色を歪める。
「はいはい。二人とも、そんなとこで話は終わり。いい加減、私達も行こ」
「えっ? 話を振ったのは、ルカじゃない」
「そうだよー。そもそもこの展開に進んだのはルカのせいでさー、話の収拾を付ける義務があると思うんだけどー?」
「はいはい。じゃあお終い。と言うことで、私はそろそろ行くよ」
そう言って、ルカは会場を後にする。
シルヴィアとライラックはその背中をじっと見ていた。
暗闇の中に消えていく、ルカの背中。そんなルカのことを二人は口にした。
「本当、ルカはそういう生活をしたら、あんな風になるのかしらね」
「うーん」
「ライ?」
「ん!? な、何でもないよ」
ライラックは話を濁した。
そんな彼女の横顔を、寂しそうに見ているシルヴィアだった。
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