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シルヴィアの休日
39.シルヴィアの休日②
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シルヴィアとライラックは馬車に乗っていた。
ガタゴトガタゴト——
ゆっくりと車輪は小刻みで、舗装された道を進む。
気持ちいい。
窓枠なんて当然ない。開きっぱなしだ。
いい雰囲気。いい風のね。
中に乗るのはたった二人で、たまたま乗せてもらえた。
「お嬢ちゃんたち、如何だい。気持ちいいだろ」
「はい。とっても気持ちいいです」
「ぐーぐー」
「あはは。ならよかったよ」
シルヴィアたちの乗る場所の持ち主の男は笑っていた。
まさか、自分の見たいなしがない御者の馬車に、こんなかわいい子たちが乗って来るなんて。
信じられない感じだった。
しかし下手な真似はできない。
ライラックは、シルヴィアに肩を預けていた。
しかしその手には細く縫った糸を持つ。
違えたもので、お互いの体を緩く縛り、何かあればすぐに気づけた。
これもライラックの心得だ。
「それでお嬢ちゃん達は隣町まで何をしに?」
「買い物です。ちょっと頼まれごとをしていて」
「そうかい。ところで、隣の子はさっきからずっと寝ているね」
流石に気になる。
何せ乗った時からだ。
だけどシルヴィアは頭を撫でつつ、
「この子はいつもなんですよ。でも、ずっと気にしているみたいで」
男にはわからなかった。
まるで親友を越えた。それこそ、姉妹のよう。
「でも、ちょっと寝すぎよ、ライ!」
怖い顔をした。
しかしまるで起きない。
変な二人組に捕まったと思い込むのも必然だった。きっと帰り道もと思うと、ぞっとするしかない。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
シルヴィアは大量の折り紙を木箱いっぱいに積み込んで、カウンターに運んだ。
さらにはハサミやノリなどもまとめて買っていく。
「すみません、これください」
「はい。って、こんなに!」
お店のお姉さんは、大量に買われるのを見て、驚いていた。
運び込んだ木箱の中には、大量の折り紙。
綺麗な色をした折り紙の束で、一体いくらになるのかわからない。
「折り紙ですか。でも、どうしてこんなに?」
「気になっちゃいますよね」
「シルヴィ。まだー?」
ライラックは、文房具屋さんの中をうろうろして回る。
まるで子供のように純粋。
だけど退屈そうで、さっきから糸のコーナーばかり見ていた。
「本当、ライって、糸大好きね」
「私が糸の魔術だからかな。リスペクト?」
意味が違う気がする。
だけどこれ以上付き合っているのも、面倒なので、
「すみません。これ、アルカード魔術学校まで送ってもらえますか? それと領収書貰えますか?」
「は、はい。かしこまりました」
「お願いします」
とりあえず、これでやることは終わった。
それにしても、雰囲気がある。
奥ゆかしい木の板に、陳列された懐かしい文具。
クスッと笑ってしまいたくなった。
「あー、シルヴィ笑ってる」
ライラックは馬鹿にしてきた。
しかしここは大人なシルヴィ。でもちょっとだけ、ぷくっと頬を膨らます。
「ライ。貴女も少しは雑務もしてよね」
「えー、私力仕事担当でしょ?」
ライラックは縫物用の細い糸をたくさん掴む。
それもそれで怖いが、シルヴィはさらに話を続ける。
「そんなの誰も決めてないでしょ。ほら早く、木箱はもう一つあるんだからね」
「はいはーい。もう、わかりましたよー」
「それでいいのよ」
シルヴィアはライラックを軽く叱った。
本当に姉妹のよう。
「あの、もう一つって?」
お店のお姉さんは、首を傾げる。
するとシルヴィアはライラックと一緒に木箱をもう一つ運び込むと、中には同じものが入っていた。
まさかとは思うが、お姉さんは呆気に取られる。
「こ、こんなに何に使うんですか!」
「こんど運動会があるんです。その飾りつけで」
正直面倒だった。
流石のシルヴィアも呆れる。
いつもは使いまわしているみたいだけど、今年は壊れてしまったらしい。
そこで急遽、新しく作り直すことになった。
運動会に参加しない生徒たちは、こんな雑務に追われる。
ルカを始め、シルヴィアやライラックもだ。
「ほんと、なんでしょうね?」
「まったくねー」
まったく、二人は呑気だった。
せめてもの救いは、他にお客さんがいないこと。
二人の小さな落胆の笑い声が、お姉さんの顔を歪めさせる。
でもさ、こんなに買ってもらえるのはいいことかもしれないね。
きっとルカならそう思う。
ガタゴトガタゴト——
ゆっくりと車輪は小刻みで、舗装された道を進む。
気持ちいい。
窓枠なんて当然ない。開きっぱなしだ。
いい雰囲気。いい風のね。
中に乗るのはたった二人で、たまたま乗せてもらえた。
「お嬢ちゃんたち、如何だい。気持ちいいだろ」
「はい。とっても気持ちいいです」
「ぐーぐー」
「あはは。ならよかったよ」
シルヴィアたちの乗る場所の持ち主の男は笑っていた。
まさか、自分の見たいなしがない御者の馬車に、こんなかわいい子たちが乗って来るなんて。
信じられない感じだった。
しかし下手な真似はできない。
ライラックは、シルヴィアに肩を預けていた。
しかしその手には細く縫った糸を持つ。
違えたもので、お互いの体を緩く縛り、何かあればすぐに気づけた。
これもライラックの心得だ。
「それでお嬢ちゃん達は隣町まで何をしに?」
「買い物です。ちょっと頼まれごとをしていて」
「そうかい。ところで、隣の子はさっきからずっと寝ているね」
流石に気になる。
何せ乗った時からだ。
だけどシルヴィアは頭を撫でつつ、
「この子はいつもなんですよ。でも、ずっと気にしているみたいで」
男にはわからなかった。
まるで親友を越えた。それこそ、姉妹のよう。
「でも、ちょっと寝すぎよ、ライ!」
怖い顔をした。
しかしまるで起きない。
変な二人組に捕まったと思い込むのも必然だった。きっと帰り道もと思うと、ぞっとするしかない。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
シルヴィアは大量の折り紙を木箱いっぱいに積み込んで、カウンターに運んだ。
さらにはハサミやノリなどもまとめて買っていく。
「すみません、これください」
「はい。って、こんなに!」
お店のお姉さんは、大量に買われるのを見て、驚いていた。
運び込んだ木箱の中には、大量の折り紙。
綺麗な色をした折り紙の束で、一体いくらになるのかわからない。
「折り紙ですか。でも、どうしてこんなに?」
「気になっちゃいますよね」
「シルヴィ。まだー?」
ライラックは、文房具屋さんの中をうろうろして回る。
まるで子供のように純粋。
だけど退屈そうで、さっきから糸のコーナーばかり見ていた。
「本当、ライって、糸大好きね」
「私が糸の魔術だからかな。リスペクト?」
意味が違う気がする。
だけどこれ以上付き合っているのも、面倒なので、
「すみません。これ、アルカード魔術学校まで送ってもらえますか? それと領収書貰えますか?」
「は、はい。かしこまりました」
「お願いします」
とりあえず、これでやることは終わった。
それにしても、雰囲気がある。
奥ゆかしい木の板に、陳列された懐かしい文具。
クスッと笑ってしまいたくなった。
「あー、シルヴィ笑ってる」
ライラックは馬鹿にしてきた。
しかしここは大人なシルヴィ。でもちょっとだけ、ぷくっと頬を膨らます。
「ライ。貴女も少しは雑務もしてよね」
「えー、私力仕事担当でしょ?」
ライラックは縫物用の細い糸をたくさん掴む。
それもそれで怖いが、シルヴィはさらに話を続ける。
「そんなの誰も決めてないでしょ。ほら早く、木箱はもう一つあるんだからね」
「はいはーい。もう、わかりましたよー」
「それでいいのよ」
シルヴィアはライラックを軽く叱った。
本当に姉妹のよう。
「あの、もう一つって?」
お店のお姉さんは、首を傾げる。
するとシルヴィアはライラックと一緒に木箱をもう一つ運び込むと、中には同じものが入っていた。
まさかとは思うが、お姉さんは呆気に取られる。
「こ、こんなに何に使うんですか!」
「こんど運動会があるんです。その飾りつけで」
正直面倒だった。
流石のシルヴィアも呆れる。
いつもは使いまわしているみたいだけど、今年は壊れてしまったらしい。
そこで急遽、新しく作り直すことになった。
運動会に参加しない生徒たちは、こんな雑務に追われる。
ルカを始め、シルヴィアやライラックもだ。
「ほんと、なんでしょうね?」
「まったくねー」
まったく、二人は呑気だった。
せめてもの救いは、他にお客さんがいないこと。
二人の小さな落胆の笑い声が、お姉さんの顔を歪めさせる。
でもさ、こんなに買ってもらえるのはいいことかもしれないね。
きっとルカならそう思う。
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