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秩序編

30.謎の祭壇場

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  ルカたちは一番下にまで降りてきた。
 すると先に薄っすらとした発光する光に包まれ、白くなる。
 目を奪われる。比喩的なことではなく、単純に見難かった。

「な、何よこれ!」
「光だね。上手く隠そうとしてるけど、光源は……」
「あの蝋燭?」

 ライラックが指を差す。
 その先には長い蝋燭が緩やかに蝋を垂らしながら、揺らめいていた。
 如何やら、拡散光。《ディフゥージョン・ライト》の魔術を使っているんだ。
 まさかこんなに発光力が強いなんて。陽炎のようになっている。

「ただの光よね? これ」
「ただの光。こんなのでカモフラージュしようなんて。はぁー、フッ!」

 ルカはたくさんの空気を肺に取り込み、蝋燭の火を消した。
 すると魔術が解ける。なるほど、これは蝋燭自体に魔術を掛けたのではなく、蝋燭の点火した火に魔術を掛けていたんだ。面白い。
 だけど明らかに爪が甘い。
 まさかここに掛けるだけの魔力がない? まさか、そんな大規模な魔術をしようとしているなんて。難しい。流石に目的意識がないと、そんな命削りな真似はできないぞ。
 いや、待て! 確かあの人の魔力には負の感情。それからあの癇癪がただの寝不足からくるものだとしたら、

「まさかね」

 ルカはここまでの情報をほんの一瞬の間で、処理しきった。
 すると核心に近づく。ここまでの違和感が点と点で結ばれた。

「いや、でもそれしかないよね」
「なにか分かったの?」
「うん。今回の犯人。それは教師たちの中にいる。そしてこの先にあるのは……」

 ルカにはもう見えていた。
 この先に何があるのか。
 ふつふつと煮えたぎるみたいに、地表を流れる魔力の痕跡。
 負のエネルギーが充満し、ルカは訝しい顔をした。

「この先に何がって!」
「そうだよね。やっぱりそれしかないか」

 そこにあったのは赤い色で描かれた陣だった。
 禍々しい。
 六芒星を描き、その周りを三十の円。そして六芒星の頂点にもそれぞれ丸い円。
 一体幾つあるのか分からなくなる。そんな複雑めいた円の応酬に、頭を抱えるライラックだったが、ルカとシルヴィアは気が付いていた。

「ルカ。これって」
「多分魔術を練り込んだ儀式用の魔術陣だよ」
「魔術陣?」

 ライラックはさらにややこしくなる専門用語にうんざりしていた。
 そこでルカは軽く説明をした。

「これは魔術陣。あらかじめ、魔術を練り込んだ固定型の魔術を用意しておくことで、魔力を消費せずにあらかじめ用意していた魔力だけを駆使し、刻まれた魔術を行使する。つまりストックしていた魔力を消費して魔術を使うためのものだよ」
「えーっと、つまり……?」
「お得ってこと」

 まるで商店街で値引きに値引きを重ね、見切り品を買うことができたような優しい気持ちに包まれた。
 それを真に受け、ポン! と手を叩いたライラック。
 まさかと思った。
 これで納得してくれるなら安いものだとルカは考える。
 それに同調したのは当然のシルヴィアで、こくこくと首を縦に振る。
 それにライラックは不満を抱いた。

「もう! いいじゃんかー、私が知らなくてもさー」
「まぁテストには出ないから。無駄知識ってことで覚えておけばいいんだよ」
「いやぁ、無駄なら覚えなくてもさー」

 ライラックとルカは互いに合いの手を入れ合う。
 それからシルヴィアはふと疑問に思ったのだろう。

「それにしてもよね。この魔術陣にはどんな魔術が刻まれているのかしら?」
「それは判らないけど。これだけ巨大な陣なんだ。それなりのものには違いないよね」

 ルカは誤魔化すように話をはぐらかす。
 まるで自分はあたかも知らないふりをした。
 しかしルカはあの魔導書が読めるから気が付いているんだ。
 だけどわざわざ教えて不快な思いをさせるよりも、このまま黙っておいた方がいいと思ったんだ。しかし、

「とりあえず、これは消しておこう」

 ルカが魔術陣に足を踏み入れた矢先、不意に嫌な気配が感じた。
 誰かが来たんだ。
 多分さっき感じた、先に降りた二人。その中でも後からの方だ。

(ここで見つかると怪しまれる)

 ルカはシルヴィアとライラックを連れて急いで柱の陰に隠れた。
 二人は何が起こったのか、このタイミングでは理解が追い付かない。
 しかしすぐに自分たちの状況を察し、何か考えがあるんだと思いルカに身を預けたのだった。
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