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秩序編

25.怪しい火の玉

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  青白い炎の中。蠢いていたのは明らかに人影。
 しかしその動きは奇怪で規則性はない。だけど苦しそうに見えたのは、動きの規則性がやはりないから。でももっと違和感を醸し出していたのは……

「な、何ですかあれ!」
「ちょっとヤバそうだね」
「うん。正直びっくりした」

 ルカは気が付いていた。
 二人は多分気づいていないだろう。あの人影は幽霊とか、そう言った類じゃない。むしろお飾りだった。

「二人はあれが何に見える?」
「なにって。そんな呑気なこと言ってられないわよ! 出た。歩き回るマリオネットよ!」
「いや、そう言うことじゃなくて……」
「そうだよ、シルヴィ。あれはマリオネットじゃなくて、人間だよー。生きてはないと思うけど」
「「えっ!?」」

 二人は驚いた。
 しかし理由は全く違うものであった。

 シルヴィアは単に幽霊じゃないことに驚き、顔が青ざめる。
 ルカはルカで、ライラックが気付いていたことに驚いたのだ。
 しかもあまりに詳しい。あれが人間で、生きていないことを悟ったらしい。

「ライは何処まで気づいてるの」
「うーん。あれが何かに操られてるとか? 多分、墓荒らしじゃない」

 確かにその線は捨てきれない。
 魔術師の中には死体を駆使するものもいる。魔法使いの間でもいた。基本的には禁止されている行為のはずだが、それを実行するやつがいるのか。
 しかし一体誰が……

「ライ。いくつか気配の流れはする?」
「うーん。一つかな」
「違う。正解は二つだよ」

 ライラックはそこまではできなかった。
 でも何故かシルヴィアは気づいていた。魔力を感知して見つけ出した模様で、ライラックは暗がりの中、目を凝らす。

「うーん、いるのかな?」
「いるわ。でも誰かは分からないけれど」

 シルヴィアには見えていない。
 けれどルカの目には微かに映っていた。微弱に魔力を瞳孔に集め、夜の間も鮮明に見えていた。

「男が一人と女が一人……しかもこの魔力は……あっ!」
「如何したのよ!」
「マズい。気づかれたっぽい。走るよ!」
「ちょっと、待って。うわぁ!」

 炎が飛んできた。
 青白い発光体となった火の玉は、ルカたち目掛けて飛んでくる。しかしルカはその場から何事もなく避け、シルヴィアは転びそうになりながらもライラックに支えられてその場から走り出した。

「もう、なんでこんなことになるのよ!」
「さぁねー」

 パニックに陥るシルヴィと楽しそうなライラック。
 しかし息も乱れないルカは二人に忠告した。

「マズいのは明日からだよ。早く何とかしないと、証拠隠滅も兼ねて消されかねない」
「「えっ!?」」

 二人は声を上げる。
 炎は追いかけてこないけど、焦りの色は見える。

「当然だよ。向こうはシルヴィたちより上手だから、すぐに魔力を感知して狙ってくるかもね」
「そんなー」
「何か釈然としないね」
「そう言うんだったら、早いこと如何にかするしかないよ」

 ルカはそれから考え込んだ。
 これから忙しくなるとともに、面倒ごとの臭いがプンプンしていたからだった。それにしてもあの魔力……まさかねと思考を巡らせた。
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