5 / 551
プロローグ
5.真樹の魔術師と再会
しおりを挟む ルカはとんでもない人物と再会した。思いがけないものだった。
まさかこんな場所で会えるなんて。偶然もある。
「こんなところでお目にかかれるなんて。千年ぶりですが、お変わりないようで」
「そっちも。流石エルフ族」
「ふふっ。ルカさんは人間ですもんね」
ナタリーは笑った。
千年ぶりの再会は互いにとっても嬉しく思うものだった。
「それよりこんなところで何を?」
「私の方が聞きたい。私はただ千年朴のせいで千年寝てたら魔法がなくなって代わりに魔術ができたって聞いて」
「あぁ、確かに驚きますよね。もしかしてそれで?」
「うん。そのつもりで魔術学校に通いたかったんだけど……」
「入学式も終わってしまいましたからね」
ナタリーはこのご時世に詳しいらしい。
顎に手を当てて考える。何を考えているのか、エルフ族の中でも昔から特に強い魔力を有するナタリーはルカもよく知っていた。そこで、ルカはナタリーの考えを待った。
すると、
「それでしたらルカさん。アルカード魔術学校に興味はございませんか?」
「アルカードって私が入ろうと思っていた?」
「そうですね。もっとも魔法の歴史のある通称魔法都市マギアラにある、世界でも有数の魔術学校の一つですね」
ナタリーの言う通り、アルカード魔術学校はこの国スカーレット王国を始め世界でもっとも有名な魔法都市で間違いない。
私たちの活動していた時代にも存在していた。
そこが魔術の発端となったのは杞憂だけど、何故ナタリーがそんなことを提案できるのか。もしかして、この時代ではナタリーは貴族なのか。昔からそうだったけどさ。
「よければ転入届を書きますよ。もちろんルカさんがよければですが」
「それは助かるけども、如何してそんなことができるのさ?」
「それでしたら職権乱用ですね。私がアルカード魔術学校の初代から現代にかけての校長だからです」
「はい?」
ルカの思考が停止した。
しかしナタリーは本気らしい。一体何の得になるんだ。
「ルカさんの実力ならすぐにでも魔術が使えるようになるはずです。それに私にはルカさんに楽しい学生生活を送ってほしいんですよ」
「それだけ?」
「それだけで言えば嘘になりますね。でも本当ですよ。ルカさんはあの大戦で私たちを救ってくれた。いいえ、世界をです。そんな貴女には休息と言う名の日々を送る権利があると思うんです」
「そんな理由で……」
ルカには納得できなかった。
でもルカはもともと合理的に考えるたちじゃない。もっと非合理的に考えるタイプなんだ。
「まさかこんな日が来るなんて……」
「ナタリー」
ナタリーは涙を浮かべた。
天を仰いで遠い空を見送る。
「やっと恩返しができます。真樹の魔術師としてではなく、遠き日の私として」
「恩返しなんかいいよ。でもその提案はありがたく受け入れさせてもらうね」
「はい、喜んで」
ルカはナタリーの乗る竜車に飛び乗るのだった。
そして向かうは魔法都市マギアラなのであった。
まさかこんな場所で会えるなんて。偶然もある。
「こんなところでお目にかかれるなんて。千年ぶりですが、お変わりないようで」
「そっちも。流石エルフ族」
「ふふっ。ルカさんは人間ですもんね」
ナタリーは笑った。
千年ぶりの再会は互いにとっても嬉しく思うものだった。
「それよりこんなところで何を?」
「私の方が聞きたい。私はただ千年朴のせいで千年寝てたら魔法がなくなって代わりに魔術ができたって聞いて」
「あぁ、確かに驚きますよね。もしかしてそれで?」
「うん。そのつもりで魔術学校に通いたかったんだけど……」
「入学式も終わってしまいましたからね」
ナタリーはこのご時世に詳しいらしい。
顎に手を当てて考える。何を考えているのか、エルフ族の中でも昔から特に強い魔力を有するナタリーはルカもよく知っていた。そこで、ルカはナタリーの考えを待った。
すると、
「それでしたらルカさん。アルカード魔術学校に興味はございませんか?」
「アルカードって私が入ろうと思っていた?」
「そうですね。もっとも魔法の歴史のある通称魔法都市マギアラにある、世界でも有数の魔術学校の一つですね」
ナタリーの言う通り、アルカード魔術学校はこの国スカーレット王国を始め世界でもっとも有名な魔法都市で間違いない。
私たちの活動していた時代にも存在していた。
そこが魔術の発端となったのは杞憂だけど、何故ナタリーがそんなことを提案できるのか。もしかして、この時代ではナタリーは貴族なのか。昔からそうだったけどさ。
「よければ転入届を書きますよ。もちろんルカさんがよければですが」
「それは助かるけども、如何してそんなことができるのさ?」
「それでしたら職権乱用ですね。私がアルカード魔術学校の初代から現代にかけての校長だからです」
「はい?」
ルカの思考が停止した。
しかしナタリーは本気らしい。一体何の得になるんだ。
「ルカさんの実力ならすぐにでも魔術が使えるようになるはずです。それに私にはルカさんに楽しい学生生活を送ってほしいんですよ」
「それだけ?」
「それだけで言えば嘘になりますね。でも本当ですよ。ルカさんはあの大戦で私たちを救ってくれた。いいえ、世界をです。そんな貴女には休息と言う名の日々を送る権利があると思うんです」
「そんな理由で……」
ルカには納得できなかった。
でもルカはもともと合理的に考えるたちじゃない。もっと非合理的に考えるタイプなんだ。
「まさかこんな日が来るなんて……」
「ナタリー」
ナタリーは涙を浮かべた。
天を仰いで遠い空を見送る。
「やっと恩返しができます。真樹の魔術師としてではなく、遠き日の私として」
「恩返しなんかいいよ。でもその提案はありがたく受け入れさせてもらうね」
「はい、喜んで」
ルカはナタリーの乗る竜車に飛び乗るのだった。
そして向かうは魔法都市マギアラなのであった。
21
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
精霊に好かれた私は世界最強らしいのだが
天色茜
ファンタジー
普通の女子高校生、朝野明莉沙(あさのありさ)は、ある日突然異世界召喚され、勇者として戦ってくれといわれる。
だが、同じく異世界召喚された他の二人との差別的な扱いに怒りを覚える。その上冤罪にされ、魔物に襲われた際にも誰も手を差し伸べてくれず、崖から転落してしまう。
その後、自分の異常な体質に気づき...!?
令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜
三月べに
ファンタジー
令嬢に転生してよかった〜!!!
素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。
少女漫画や小説大好き人間だった前世。
転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。
そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが?
【連載再開しました! 二章 冒険編。】
ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~
碓氷唯
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
婚約者と義妹に裏切られたので、ざまぁして逃げてみた
せいめ
恋愛
伯爵令嬢のフローラは、夜会で婚約者のレイモンドと義妹のリリアンが抱き合う姿を見てしまった。
大好きだったレイモンドの裏切りを知りショックを受けるフローラ。
三ヶ月後には結婚式なのに、このままあの方と結婚していいの?
深く傷付いたフローラは散々悩んだ挙句、その場に偶然居合わせた公爵令息や親友の力を借り、ざまぁして逃げ出すことにしたのであった。
ご都合主義です。
誤字脱字、申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる