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プロローグ

3.カラスの話を聞いてみよう

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 次の日。
 綺麗になった部屋でくつろいでいたルカは外で動物の声が聞こえたので外に出てみることにした。

「あれはカラス?」

 ルカの目に映り込んだのは二羽のカラスの姿だった。
 この森に普通のカラスが来るなんて、珍しいこともある。そう思っていると、如何やら違うらしい。脚が三本あった。

「なんだヤタガラスか。えっ、ヤタガラス!?」

 ルカは目を丸くした。
 何故ならここは西の大国。もとい誰も近寄らない森の中。そんなところに東の島国に伝わる伝説の怪鳥が姿を現すなんておかしなこともある。
 せっかくだ。ルカはそう思い、得意の魔法を使ってみることにした。

「《アニマルチャーム》」

 ルカは魔法を使った。
 この魔法は動物と話ができるかなり初歩的だが、便利な魔法だ。これを使うと動物の言葉を理解して、お話ができるようになるのだ。大事なことだから二回言いました。

『なぁなぁ聞いたか。今年の魔術学校、かなり質がいいらしいぜ』
『マジか! そりゃいいな』
『でも人数は少ないらしいんだよな』
『そっかー。じゃあ俺たち天敵も増えるかもな』

 何の話をしているんだ。
 ルカは茫然と立ち尽くして聞いていた。

『あいつらが狩ってくれないとな』
『また減るんだな、魔術師』
『まぁ魔力の質も落ちてるからな』
『昔はあんなの良かったのにな』
『なー』

 何だこの会話。
 全く話に入れない。だけどここは意を決して聞いてみることにした。

「ねえ、魔術学校ってなに?」
『『人間が喋った!』』

 ヤタガラスは二羽とも驚いて、翼を広げて威嚇した。
 しかしルカは変わらない。ヤタガラスが逃げないように話を引き戻す。

「待って逃げないで!」
『人間が俺たちの声が聞こえるなんて。お前なんだ!』
『魔術師か!』

 だからそれは何だ。
 ルカは聞き返す。

「魔術師ってなに?」
『魔術師も知らないのか!』
『嘘だ。だったら何で会話が聞こえている!』
「そんなの私が魔法使いの魔女だからだ」

 はっきり言ってやった。
 するとカラスたちは立ち止まって困惑して笑い出す。

『ぷはは! 魔法使い。しかも魔女だとよ』
『今時そんな奴いるかよ』
『いやいや待て。魔術学校の校長は魔女らしいぞ』
『マジかよ!』
「だから魔術学校ってなに!」

 ルカは尋ねた。
 するとカラスたちはルカの力強い眼力と放った魔力圧のよっておとなしくなった。

『本当に知らないのか』
「本当に知らない」
『だったら教えてやる。魔術学校ってのはな、この世界にいくつか存在する魔術師を育成する学校なんだ!』
「そんなのがあるんだ。ん? 魔術ってなに?」

 ルカの疑問の種は増えた。
 しかしヤタガラスたちはそこまでは詳しくないらしい。そこで周辺の魔力を感知してみることにした。
 魔力は集中さえすれば簡単に把握できる。すると驚くことに質が下がっているではないか。

「これはどういうこと!?」
『おいおい、本当に知らないのかよ!』
『じゃあ魔術も知らないのか!』
「知らない」

 そう答えた。するとヤタガラスたちは仕方ないとばかりに溜息を吐いた。
 ちょっとだけ教えてくれた。魔術ってなにか。
 分かったことをまとめてみよう。

 要するに魔術とは魔法の劣化品。
 長い年月をかけて魔力の質が下がったことで、魔法に対する渇望が失せ始めた。そこで代替え品として魔術が普及したそうだ。
 しかしその力は魔法には遠く及ばず、残念ながら今世紀に入っても魔力に頼らざるおえないそうだ。

「まさかそんなことになっていたなんて……」
『魔術学校は面白いかもな』
『かもな』

 確かに面白そう。
 ルカはにやりと笑う。この時代では魔法使いは通用しない。そこで正規として認められるには、魔術学校を卒業するのが手っ取り早そうだ。そこでルカは決めた。

「よし、魔術学校に行こう!」

 少し楽しみ。
 だけど試験とかどうなるのかな。今の時期は四月も終わり頃。とりあえず行ってみるだけ行ってみようと心に決めた。
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