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第一章:異能力者、異世界に降り立つ
第18話 閃光の騎士
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フェリシアを仲間に加えた私達は今日も依頼をこなしている。今日引き受けた依頼は「フレイムバードの羽の採取」と言う依頼だった。
そのために今私達はとある山を登っているのだが、未だに何故かわからないので聞いてみる。
「ねえクレパス。何で私達山登りなんてしてるの?」
「フレイムバードは標高の高い山の上に巣を作る習性を持っているんです。フレイムバードの羽を採取するには生息域に近づくしかない。それだけです」
「なるほどね。ところでフレイムバードって?」
「フレイムバードは体内に魔力機関を有しており、熱を放出することで全身を赤々と輝かせる炎の鳥です」
「炎の鳥かー。何かそれっぽい」
「あとね、すっごく美味しいんだよ!」
話に割り込んできたのはミアだった。ミアはウキウキとしていて私に教えてくれた。
「フレイムバードはねお肉は柔らかい皮も焼くとパリパリでとっても美味しんだ!」
「また食べ物の話なんだ。ちなみに如何やって食べるの?」
「丸焼き!」
北京ダックか!と盛大なツッコミを入れようとしたが多分通じないので放置する。
でも聞いてると口の中で唾が溢れる。結構登ってきたがまだまだ先が見えないので、お腹が空いているのだろう。クレパスに至っては魔法用の杖を本当に杖として使って登っている次第だ。
対してミアは元気いっぱい。軽快に登っていく。流石は獣人か、体力は人一倍だ。
「ほーら、皆んな早くしないと日が暮れちゃうよ!」
「貴女のように体力があるわけじゃないんです」
「それもそっか。うーん、じゃあこうしよう!」
「えっ、ちょっと!?」
ミアに抗議を入れたクレパス。そんな彼女の言葉を聞いてミアが取った手段はクレパスを背負うことだった。急に背中に背負われたクレパスは動揺の色を隠せないでいる。
「こうしたら早く着くでしょ!」
「そうですが、これではまるで私が子供……」
「いいからいいから。さっ、早く行こ!司とフェリシアは……」
「私達もすぐ行くから心配しないで先に行ってて」
「はーい。じゃあ行くよクレパス」
「ちょっと待ってください。話はまだ……」
クレパスの話を聞かずに山を登っていくミア。本当に真っ直ぐな子だと言うことが改めてわかった。そんな活発な行動をまじまじと見つめたフェリシアは呆然として惚けている。
「フェリシア?」
「いえ、楽しげなパーティーだと思いまして」
「そうだね。うちは結構自由だから。ミアみたいにただひたすらに突っ走る元気の塊みたいな子とか、クレパスみたいに周りをよく見て的確に動ける参謀とか。それぞれが個性を全開に引き出して必死にパーティーのために尽くしている」
「司は」
「私?私はー、なんだろ?とりあえず遊撃かな」
「遊撃ですか?」
「うん。私さ、元々団体行動とかで動くのとか苦手でよく周りの人に助けてももらってたんだよ。でも改めてそれが甘えだってわかった。だから自分のできることを最大限にやることを重視する立ち回りを目指してみることにしたんだよね」
「最善の行動ですね」
「まあね。フェリシアは何がしたい?」
「私ですか?私は……そうですね、タンクでも引き受けましょうか」
「タンク役かー。いいと思うよ、私は」
フェリシアの白き鎧が光を浴びて乱反射する。
重苦しい見た目に反して動きやすいように改造されていた。腰には長い長剣。手には滑り止め用の黒い手袋をはめている。かっこいい騎士様って感じだ。
「如何なさいました?」
「いや何でもないよ。私達も行こっか」
「はい」
そう答えるとフェリシアと共に私達も山登りを開始した。
徐々にペース配分を上げながら登っていく。結構疲れる。どうせなら飛びだい。『神速』を使って駆け抜けてもいいが、そうすればフェリシアが付いてこられない。ここは少しずつでも山を駆け登る。
そうこうしているうちに私達は先に登りきっていたミアとクレパスチームに追いついた。
「遅いよ二人共」
「ごめん。それでフレイムバードは?」
「あそこです」
「あそこ?って、崖の下じゃん!」
私が叫んだのはフレイムバードの巣が影の下にあったからだ。ウミツバメとかカワセミとかと同じ習性なのだろう。よくみると、そこには卵がいくつかあってさらには羽が何枚か転がっていた。
「あれを取ってくれば依頼達成だね」
「はい。ですが、あの位置では……」
「じゃあ私が言ってくるよ。私猫の獣人だし、こう言う作業得意なんだ!」
そう言って息巻くのはミアだ。しかしやはりと言うか心配の種でしかない。
ミア自身はとてもやる気に満ちているのだが、絶対危ない目に遭うのが目にに見えている。しかしそんな彼女を止めることができず、彼女は影を降りて行った。
「気をつけてよ」
「うん。でも平気だって!」
そう言って崖を降りていくミア。安全のために命綱はしているが如何にも頼りない。いつでも引き上げられるようにはしているが、ミアの動きに合わせて急に揺れる。
「おっと!」
「ミアゆっくり降りて!」
「ごめんね。でももう少しだから!」
そう叫ぶミア。確かに巣まではもう少しで手が届きそうだった。これなら何事もなく羽が手に入ると慢心しているとそれがフラグに聞こえてしまう。
ミアが巣に手を伸ばし、一枚の羽を掴んだ時それは姿を現した。フレイムバードの襲来である。
「グギャア!」
「げっ!?」
ミアがヤバそうな声を上げた。
そこに現れたのは大きな赤い鳥。火の鳥と呼称するのが明確か、それはミアの姿を捉えると問答無用で襲いかかって来た。
「うわあっ!」
驚いた拍子にミアがガード。フレイムバードの放った火球がガントレットすれすれを通り過ぎていく。放たれた火球は崖にぶつかるとゴロゴロと音を立てて崖の表面が多少崩れた。
「まずいですね」
「多分卵を盗もうとしたと勘違いされたんだよ」
「ですね」
「そんなことより早く引き上げて!」
冷静に状況整理をしていた私達を怒鳴りつけるミア。本当に危険な状態で涙目だった。
私達は私とフェリシアを中心に綱を引き上げる。クレパスはその間ずっと魔法で牽制し続ける。杖の先端から一瞬の隙も与えずに放たれ続けるファイアボールの連打。絶え間なく降り続ける火球の雨を嫌がりながら、フレイムバードは一時的にその場を離れ、上空に舞い上がった。
その間にミアを無事回収し、態勢を立て直す。
「如何するクレパス」
「私が魔法で撃ち落とします。ミアは撹乱して注意をひいてください」
「オッケー!」
「私は」
「好きにどうぞ。フェリシアも同じです」
「「了解」」
クレパスはそう言うと、杖を構えた。
短縮詠唱で詠唱の行程を全て省き、ファイアボールを連射する。
「ファイアボール!」
ガンガン撃ちまくるクレパス。その動きに無駄はない。顔色一つ変えず火球を放ち続けるがそれらを軽く躱してしまうフレイムバード。
「当たらないね」
「ええ」
苦虫を噛むように唇を噛むクレパス。そんな彼女の様子を見ていると、私も本気を出しに行く。
疾風の異能『疾風』なら、空中戦が出来る。いざ飛ぼうとした瞬間、急に動きを見せたのはフレイムバードの方だった。
「うわっ、なんか飛んできた!」
「気をつけてください。フレイムバードもファイアボールを使えます」
「そう言うのは先に言ってよ!」
ミアが驚いて走って逃げる。クレパスもバックステップでギリギリ躱し、私も刀凱で斬り伏せる。だけどこのまま攻撃され続けたら埒があかない。どうにかしないとと模索する中、一人前に出たのはフェリシアだった。
「フェリシア何してるの。危ないよ!」
「ご心配にはいりません。これぐらい跳ね返してみせます」
そう言うと放たれたファイアボールに合わせてフェリシアは剣を抜いた。
その瞬間、眩い閃光が辺り一面を照らし出し刀身に触れた直後フレイムバードが自ら放ったファイアボールが同じ軌道を描いて跳ね返ったのだ。
「な、何これ!」
「これが反撃の加護の力です。そしてこれがーー」
フェリシアその姿が消える。
ただし気配だけは微かに感じた。目をキョロキョロと動かしてみるといつの間にかフェリシアはフレイムバードの上を取っていた。そうか、これがあの時のーー
フェリシアと初めて会った時の光景がフラッシュバックされる。鮮明には覚えていないが、少なくともあの時の出来事がこうして起きたことだと認知した。
「終わりです」
そう言ってフェリシアはフレイムバードを斬った。
フレイムバードは痛みにもがくと、そのまま巣の方に戻って行く。幸いにも命までは奪っていないらしい。
「凄いよフェリシア」
「今の動き見事でした」
「最高!」
激励の言葉を贈る。
すると微笑み返し私達を見つめる。
「羽は採取できました。帰りましょうか」
「うん」
彼女の手にはフレイムバードの羽が握られていた。如何やらあの一瞬で羽一枚だけを斬り落としたのだ。凄まじい技巧。やっぱりフェリシアは頼りになる存在だ。
そのために今私達はとある山を登っているのだが、未だに何故かわからないので聞いてみる。
「ねえクレパス。何で私達山登りなんてしてるの?」
「フレイムバードは標高の高い山の上に巣を作る習性を持っているんです。フレイムバードの羽を採取するには生息域に近づくしかない。それだけです」
「なるほどね。ところでフレイムバードって?」
「フレイムバードは体内に魔力機関を有しており、熱を放出することで全身を赤々と輝かせる炎の鳥です」
「炎の鳥かー。何かそれっぽい」
「あとね、すっごく美味しいんだよ!」
話に割り込んできたのはミアだった。ミアはウキウキとしていて私に教えてくれた。
「フレイムバードはねお肉は柔らかい皮も焼くとパリパリでとっても美味しんだ!」
「また食べ物の話なんだ。ちなみに如何やって食べるの?」
「丸焼き!」
北京ダックか!と盛大なツッコミを入れようとしたが多分通じないので放置する。
でも聞いてると口の中で唾が溢れる。結構登ってきたがまだまだ先が見えないので、お腹が空いているのだろう。クレパスに至っては魔法用の杖を本当に杖として使って登っている次第だ。
対してミアは元気いっぱい。軽快に登っていく。流石は獣人か、体力は人一倍だ。
「ほーら、皆んな早くしないと日が暮れちゃうよ!」
「貴女のように体力があるわけじゃないんです」
「それもそっか。うーん、じゃあこうしよう!」
「えっ、ちょっと!?」
ミアに抗議を入れたクレパス。そんな彼女の言葉を聞いてミアが取った手段はクレパスを背負うことだった。急に背中に背負われたクレパスは動揺の色を隠せないでいる。
「こうしたら早く着くでしょ!」
「そうですが、これではまるで私が子供……」
「いいからいいから。さっ、早く行こ!司とフェリシアは……」
「私達もすぐ行くから心配しないで先に行ってて」
「はーい。じゃあ行くよクレパス」
「ちょっと待ってください。話はまだ……」
クレパスの話を聞かずに山を登っていくミア。本当に真っ直ぐな子だと言うことが改めてわかった。そんな活発な行動をまじまじと見つめたフェリシアは呆然として惚けている。
「フェリシア?」
「いえ、楽しげなパーティーだと思いまして」
「そうだね。うちは結構自由だから。ミアみたいにただひたすらに突っ走る元気の塊みたいな子とか、クレパスみたいに周りをよく見て的確に動ける参謀とか。それぞれが個性を全開に引き出して必死にパーティーのために尽くしている」
「司は」
「私?私はー、なんだろ?とりあえず遊撃かな」
「遊撃ですか?」
「うん。私さ、元々団体行動とかで動くのとか苦手でよく周りの人に助けてももらってたんだよ。でも改めてそれが甘えだってわかった。だから自分のできることを最大限にやることを重視する立ち回りを目指してみることにしたんだよね」
「最善の行動ですね」
「まあね。フェリシアは何がしたい?」
「私ですか?私は……そうですね、タンクでも引き受けましょうか」
「タンク役かー。いいと思うよ、私は」
フェリシアの白き鎧が光を浴びて乱反射する。
重苦しい見た目に反して動きやすいように改造されていた。腰には長い長剣。手には滑り止め用の黒い手袋をはめている。かっこいい騎士様って感じだ。
「如何なさいました?」
「いや何でもないよ。私達も行こっか」
「はい」
そう答えるとフェリシアと共に私達も山登りを開始した。
徐々にペース配分を上げながら登っていく。結構疲れる。どうせなら飛びだい。『神速』を使って駆け抜けてもいいが、そうすればフェリシアが付いてこられない。ここは少しずつでも山を駆け登る。
そうこうしているうちに私達は先に登りきっていたミアとクレパスチームに追いついた。
「遅いよ二人共」
「ごめん。それでフレイムバードは?」
「あそこです」
「あそこ?って、崖の下じゃん!」
私が叫んだのはフレイムバードの巣が影の下にあったからだ。ウミツバメとかカワセミとかと同じ習性なのだろう。よくみると、そこには卵がいくつかあってさらには羽が何枚か転がっていた。
「あれを取ってくれば依頼達成だね」
「はい。ですが、あの位置では……」
「じゃあ私が言ってくるよ。私猫の獣人だし、こう言う作業得意なんだ!」
そう言って息巻くのはミアだ。しかしやはりと言うか心配の種でしかない。
ミア自身はとてもやる気に満ちているのだが、絶対危ない目に遭うのが目にに見えている。しかしそんな彼女を止めることができず、彼女は影を降りて行った。
「気をつけてよ」
「うん。でも平気だって!」
そう言って崖を降りていくミア。安全のために命綱はしているが如何にも頼りない。いつでも引き上げられるようにはしているが、ミアの動きに合わせて急に揺れる。
「おっと!」
「ミアゆっくり降りて!」
「ごめんね。でももう少しだから!」
そう叫ぶミア。確かに巣まではもう少しで手が届きそうだった。これなら何事もなく羽が手に入ると慢心しているとそれがフラグに聞こえてしまう。
ミアが巣に手を伸ばし、一枚の羽を掴んだ時それは姿を現した。フレイムバードの襲来である。
「グギャア!」
「げっ!?」
ミアがヤバそうな声を上げた。
そこに現れたのは大きな赤い鳥。火の鳥と呼称するのが明確か、それはミアの姿を捉えると問答無用で襲いかかって来た。
「うわあっ!」
驚いた拍子にミアがガード。フレイムバードの放った火球がガントレットすれすれを通り過ぎていく。放たれた火球は崖にぶつかるとゴロゴロと音を立てて崖の表面が多少崩れた。
「まずいですね」
「多分卵を盗もうとしたと勘違いされたんだよ」
「ですね」
「そんなことより早く引き上げて!」
冷静に状況整理をしていた私達を怒鳴りつけるミア。本当に危険な状態で涙目だった。
私達は私とフェリシアを中心に綱を引き上げる。クレパスはその間ずっと魔法で牽制し続ける。杖の先端から一瞬の隙も与えずに放たれ続けるファイアボールの連打。絶え間なく降り続ける火球の雨を嫌がりながら、フレイムバードは一時的にその場を離れ、上空に舞い上がった。
その間にミアを無事回収し、態勢を立て直す。
「如何するクレパス」
「私が魔法で撃ち落とします。ミアは撹乱して注意をひいてください」
「オッケー!」
「私は」
「好きにどうぞ。フェリシアも同じです」
「「了解」」
クレパスはそう言うと、杖を構えた。
短縮詠唱で詠唱の行程を全て省き、ファイアボールを連射する。
「ファイアボール!」
ガンガン撃ちまくるクレパス。その動きに無駄はない。顔色一つ変えず火球を放ち続けるがそれらを軽く躱してしまうフレイムバード。
「当たらないね」
「ええ」
苦虫を噛むように唇を噛むクレパス。そんな彼女の様子を見ていると、私も本気を出しに行く。
疾風の異能『疾風』なら、空中戦が出来る。いざ飛ぼうとした瞬間、急に動きを見せたのはフレイムバードの方だった。
「うわっ、なんか飛んできた!」
「気をつけてください。フレイムバードもファイアボールを使えます」
「そう言うのは先に言ってよ!」
ミアが驚いて走って逃げる。クレパスもバックステップでギリギリ躱し、私も刀凱で斬り伏せる。だけどこのまま攻撃され続けたら埒があかない。どうにかしないとと模索する中、一人前に出たのはフェリシアだった。
「フェリシア何してるの。危ないよ!」
「ご心配にはいりません。これぐらい跳ね返してみせます」
そう言うと放たれたファイアボールに合わせてフェリシアは剣を抜いた。
その瞬間、眩い閃光が辺り一面を照らし出し刀身に触れた直後フレイムバードが自ら放ったファイアボールが同じ軌道を描いて跳ね返ったのだ。
「な、何これ!」
「これが反撃の加護の力です。そしてこれがーー」
フェリシアその姿が消える。
ただし気配だけは微かに感じた。目をキョロキョロと動かしてみるといつの間にかフェリシアはフレイムバードの上を取っていた。そうか、これがあの時のーー
フェリシアと初めて会った時の光景がフラッシュバックされる。鮮明には覚えていないが、少なくともあの時の出来事がこうして起きたことだと認知した。
「終わりです」
そう言ってフェリシアはフレイムバードを斬った。
フレイムバードは痛みにもがくと、そのまま巣の方に戻って行く。幸いにも命までは奪っていないらしい。
「凄いよフェリシア」
「今の動き見事でした」
「最高!」
激励の言葉を贈る。
すると微笑み返し私達を見つめる。
「羽は採取できました。帰りましょうか」
「うん」
彼女の手にはフレイムバードの羽が握られていた。如何やらあの一瞬で羽一枚だけを斬り落としたのだ。凄まじい技巧。やっぱりフェリシアは頼りになる存在だ。
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