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43話 聖剣なんて懲り懲りだぁ!
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聖剣なんて懲り懲りだ。
俺はラウリィの話を聞くと、頭を抱えたくなった。
否、普通に頭を抱えていた。
「なんでだよ。聖剣なんて、剣聖に繋がるだろ。どうしてそうなる? どうして、どうして?」
俺は《剣聖》と呼ばれて来た。
その上で広告塔に嫌々使われてきた。
そんな折、ようやく《剣聖》なんて二つ名から解放されたと思ったら、ここに来て聖剣に関した面倒事なんて、それ以上でもそれ以下でもない。
俺は断固として拒否する姿勢に入った。
「聖剣絡みならやらない」
「ど、どうしたんですか、ヒジリさん!? 急にそっぽを向かないでください」
「嫌だね。へそを曲げるよ」
「どうしてですか!? お願いを聞いて貰えるはずですよね?」
「それはそれ、これはこれ。俺は聖剣にはかかわりたくないんだよ」
またあんな風に茶化されるのはごめんだ。
ここは子供のようになってでも、俺は首を縦に振らない。
そんな中、クーリエは真面目に話を読み解こうとしていた。
俺が聖剣に対して嫌悪感を示す中、クーリエの言葉はラウリィに訊ねられる。
「ラウリィ様。聖剣が突き刺さっていることに、なにか問題が生じているのでしょうか?」
「は、はい。それはさっき説明した通り……」
「把握しております。畑が不作に陥っているのですね。恐らくは大地の魔力が吸われているのでしょうが、その原因が聖剣である根拠は何処にございますか?」
「ストチュール家の領地に当たる当の村、そこには古くから伝承があるんです」
「伝承、ですか?」
「はい、伝承です」
なんだろう、よくあるゲームの導入の流れが始まった。
ここから主人公が聖剣を引き抜きに行くためのものだ。
けれどそれが原因で、散々な事件が幕を開けるのは、ストーリー的にもお馴染み。
わざわざそんな見え透いた導入に俺は付き合う気は無かった。
「村の名前はオロムチと言います。そこでは今から千年以上も前に活躍したとされる聖剣士伝説が遺されているんです」
「な、なに、それ?」
「聖剣士の名前は不明ですけど、まるで天使のような羽を生やしていたって伝えられています」
「その聖剣士が一体なにをされたのですか?」
「実はよく分かっていないんです。でもこんな伝承だけは残っています。巨大な山を引き裂き現れた三つ首の大蛇。村の命を奪い取り、凶暴になる最中、空より舞い降りた一人の剣士によってこの地を去る。聖なる輝きを秘めた剣煌めかせ、大蛇を討ち取るや、その姿地上に残される。それ以来、村は平和が訪れ、豊作へと至るのだった。って話です」
「「ありきたり」ですね」
ラウリィの話した伝承は、今も昔も、何処にでもあるような安っぽいものだった。
神様を振興する何らかの神話。その類だと俺は思う。
けれど物的なものが残っているってことは、それを起点にした作り話の可能性もある。
なにかの偶然。それが起因した結果、村が不作になっているとしか思えないのだ。
「そ、そんなこと言わないでください。でも実際、巨大な山を引き裂いた跡も、ここ千年間豊作だったのも事実なんですよ!」
「それを上手い具合に使った物語かもしれないでしょ」
「ううっ、それは……つまらないです!」
「ラウリィ様。今は事実を述べてください。貴女が山の様に固まってしまったヒジリ様を動かすことができるのか。試されているのですよ」
「それは……その」
ラウリィは神妙な表情を浮かべた。
如何やら切羽詰まっているようで、本気で困っているのが窺える。
とは言え、俺だって暇じゃない。いや、暇は暇だけど、聖剣に絡むのはな……と思った瞬間、頭がズキンとした。
「えっ?」
「ヒジリ様、どうかなされましたか?」
「……なんでもないよ。気にしないで」
今のは一体何だったのか。
急に痛みでもない疼きが頭の奥底に響いた。
まるでこの時を待っていた。みたいな感触で、俺は鳥肌を働かせる。
けれどそれで何か変わるでもなく、俺はラウリィの顔を見た。
「ヒジリさん、お願いできませんか?」
「……ちょっと考える」
「!? 分かりました。あの、なにか作りますね」
そう言うと、ラウリィは一度立ち上がる。
今日獲って来た豚を使ってなにか作ってくれるみたいだ。
背中を見せた瞬間、“お願いします”オーラを漂わせている。
俺は変な圧に気圧されそうになりながらも、頭の奥で感じ取った感触に悩まされることとなった。
俺はラウリィの話を聞くと、頭を抱えたくなった。
否、普通に頭を抱えていた。
「なんでだよ。聖剣なんて、剣聖に繋がるだろ。どうしてそうなる? どうして、どうして?」
俺は《剣聖》と呼ばれて来た。
その上で広告塔に嫌々使われてきた。
そんな折、ようやく《剣聖》なんて二つ名から解放されたと思ったら、ここに来て聖剣に関した面倒事なんて、それ以上でもそれ以下でもない。
俺は断固として拒否する姿勢に入った。
「聖剣絡みならやらない」
「ど、どうしたんですか、ヒジリさん!? 急にそっぽを向かないでください」
「嫌だね。へそを曲げるよ」
「どうしてですか!? お願いを聞いて貰えるはずですよね?」
「それはそれ、これはこれ。俺は聖剣にはかかわりたくないんだよ」
またあんな風に茶化されるのはごめんだ。
ここは子供のようになってでも、俺は首を縦に振らない。
そんな中、クーリエは真面目に話を読み解こうとしていた。
俺が聖剣に対して嫌悪感を示す中、クーリエの言葉はラウリィに訊ねられる。
「ラウリィ様。聖剣が突き刺さっていることに、なにか問題が生じているのでしょうか?」
「は、はい。それはさっき説明した通り……」
「把握しております。畑が不作に陥っているのですね。恐らくは大地の魔力が吸われているのでしょうが、その原因が聖剣である根拠は何処にございますか?」
「ストチュール家の領地に当たる当の村、そこには古くから伝承があるんです」
「伝承、ですか?」
「はい、伝承です」
なんだろう、よくあるゲームの導入の流れが始まった。
ここから主人公が聖剣を引き抜きに行くためのものだ。
けれどそれが原因で、散々な事件が幕を開けるのは、ストーリー的にもお馴染み。
わざわざそんな見え透いた導入に俺は付き合う気は無かった。
「村の名前はオロムチと言います。そこでは今から千年以上も前に活躍したとされる聖剣士伝説が遺されているんです」
「な、なに、それ?」
「聖剣士の名前は不明ですけど、まるで天使のような羽を生やしていたって伝えられています」
「その聖剣士が一体なにをされたのですか?」
「実はよく分かっていないんです。でもこんな伝承だけは残っています。巨大な山を引き裂き現れた三つ首の大蛇。村の命を奪い取り、凶暴になる最中、空より舞い降りた一人の剣士によってこの地を去る。聖なる輝きを秘めた剣煌めかせ、大蛇を討ち取るや、その姿地上に残される。それ以来、村は平和が訪れ、豊作へと至るのだった。って話です」
「「ありきたり」ですね」
ラウリィの話した伝承は、今も昔も、何処にでもあるような安っぽいものだった。
神様を振興する何らかの神話。その類だと俺は思う。
けれど物的なものが残っているってことは、それを起点にした作り話の可能性もある。
なにかの偶然。それが起因した結果、村が不作になっているとしか思えないのだ。
「そ、そんなこと言わないでください。でも実際、巨大な山を引き裂いた跡も、ここ千年間豊作だったのも事実なんですよ!」
「それを上手い具合に使った物語かもしれないでしょ」
「ううっ、それは……つまらないです!」
「ラウリィ様。今は事実を述べてください。貴女が山の様に固まってしまったヒジリ様を動かすことができるのか。試されているのですよ」
「それは……その」
ラウリィは神妙な表情を浮かべた。
如何やら切羽詰まっているようで、本気で困っているのが窺える。
とは言え、俺だって暇じゃない。いや、暇は暇だけど、聖剣に絡むのはな……と思った瞬間、頭がズキンとした。
「えっ?」
「ヒジリ様、どうかなされましたか?」
「……なんでもないよ。気にしないで」
今のは一体何だったのか。
急に痛みでもない疼きが頭の奥底に響いた。
まるでこの時を待っていた。みたいな感触で、俺は鳥肌を働かせる。
けれどそれで何か変わるでもなく、俺はラウリィの顔を見た。
「ヒジリさん、お願いできませんか?」
「……ちょっと考える」
「!? 分かりました。あの、なにか作りますね」
そう言うと、ラウリィは一度立ち上がる。
今日獲って来た豚を使ってなにか作ってくれるみたいだ。
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俺は変な圧に気圧されそうになりながらも、頭の奥で感じ取った感触に悩まされることとなった。
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