かつて《剣聖》と呼ばれた社畜、異世界で付与魔法を手に再び《剣聖》へと至る。

水定ユウ

文字の大きさ
上 下
43 / 45

43話 聖剣なんて懲り懲りだぁ!

しおりを挟む
 聖剣なんて懲り懲りだ。
 俺はラウリィの話を聞くと、頭を抱えたくなった。
 否、普通に頭を抱えていた。

「なんでだよ。聖剣なんて、剣聖に繋がるだろ。どうしてそうなる? どうして、どうして?」

 俺は《剣聖》と呼ばれて来た。
 その上で広告塔に嫌々使われてきた。
 そんな折、ようやく《剣聖》なんて二つ名から解放されたと思ったら、ここに来て聖剣に関した面倒事なんて、それ以上でもそれ以下でもない。
 俺は断固として拒否する姿勢に入った。

「聖剣絡みならやらない」
「ど、どうしたんですか、ヒジリさん!? 急にそっぽを向かないでください」
「嫌だね。へそを曲げるよ」
「どうしてですか!? お願いを聞いて貰えるはずですよね?」
「それはそれ、これはこれ。俺は聖剣にはかかわりたくないんだよ」

 またあんな風に茶化されるのはごめんだ。
 ここは子供のようになってでも、俺は首を縦に振らない。

 そんな中、クーリエは真面目に話を読み解こうとしていた。
 俺が聖剣に対して嫌悪感を示す中、クーリエの言葉はラウリィに訊ねられる。

「ラウリィ様。聖剣が突き刺さっていることに、なにか問題が生じているのでしょうか?」
「は、はい。それはさっき説明した通り……」
「把握しております。畑が不作に陥っているのですね。恐らくは大地の魔力が吸われているのでしょうが、その原因が聖剣である根拠は何処にございますか?」
「ストチュール家の領地に当たる当の村、そこには古くから伝承があるんです」
「伝承、ですか?」
「はい、伝承です」

 なんだろう、よくあるゲームの導入の流れが始まった。
 ここから主人公が聖剣を引き抜きに行くためのものだ。
 けれどそれが原因で、散々な事件が幕を開けるのは、ストーリー的にもお馴染み。
 わざわざそんな見え透いた導入に俺は付き合う気は無かった。

「村の名前はオロムチと言います。そこでは今から千年以上も前に活躍したとされる聖剣士伝説が遺されているんです」
「な、なに、それ?」
「聖剣士の名前は不明ですけど、まるで天使のような羽を生やしていたって伝えられています」
「その聖剣士が一体なにをされたのですか?」
「実はよく分かっていないんです。でもこんな伝承だけは残っています。巨大な山を引き裂き現れた三つ首の大蛇。村の命を奪い取り、凶暴になる最中、空より舞い降りた一人の剣士によってこの地を去る。聖なる輝きを秘めた剣煌めかせ、大蛇を討ち取るや、その姿地上に残される。それ以来、村は平和が訪れ、豊作へと至るのだった。って話です」
「「ありきたり」ですね」

 ラウリィの話した伝承は、今も昔も、何処にでもあるような安っぽいものだった。
 神様を振興する何らかの神話。その類だと俺は思う。
 けれど物的なものが残っているってことは、それを起点にした作り話の可能性もある。
 なにかの偶然。それが起因した結果、村が不作になっているとしか思えないのだ。

「そ、そんなこと言わないでください。でも実際、巨大な山を引き裂いた跡も、ここ千年間豊作だったのも事実なんですよ!」
「それを上手い具合に使った物語かもしれないでしょ」
「ううっ、それは……つまらないです!」
「ラウリィ様。今は事実を述べてください。貴女が山の様に固まってしまったヒジリ様を動かすことができるのか。試されているのですよ」
「それは……その」

 ラウリィは神妙な表情を浮かべた。
 如何やら切羽詰まっているようで、本気で困っているのが窺える。
 とは言え、俺だって暇じゃない。いや、暇は暇だけど、聖剣に絡むのはな……と思った瞬間、頭がズキンとした。

「えっ?」
「ヒジリ様、どうかなされましたか?」
「……なんでもないよ。気にしないで」

 今のは一体何だったのか。
 急に痛みでもない疼きが頭の奥底に響いた。
 まるでこの時を待っていた・・・・・・・・・。みたいな感触で、俺は鳥肌を働かせる。
 けれどそれで何か変わるでもなく、俺はラウリィの顔を見た。

「ヒジリさん、お願いできませんか?」
「……ちょっと考える」
「!? 分かりました。あの、なにか作りますね」

 そう言うと、ラウリィは一度立ち上がる。
 今日獲って来た豚を使ってなにか作ってくれるみたいだ。
 背中を見せた瞬間、“お願いします”オーラを漂わせている。
 俺は変な圧に気圧されそうになりながらも、頭の奥で感じ取った感触に悩まされることとなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...