かつて《剣聖》と呼ばれた社畜、異世界で付与魔法を手に再び《剣聖》へと至る。

水定ユウ

文字の大きさ
上 下
37 / 45

37話 なーんで戦ってるのさ!?

しおりを挟む
 俺は急いだ。木々を薙ぎ倒して進んだ。
 バッタバッタと倒して回ると、地響きが酷い。
 だけどそんなの構ってられない。
 俺はとにかく急ぐのだ。

「頼むぞ、間に合ってくれよ」

 正直、クーリエがいれば大丈夫だ。
 あれだけ覚悟が決まってるのなら尚更。
 しかし、まだ確認が取れていないので、俺は焦る気持ちで一杯だ。

 カキーン! カキーン!

 すると甲高い音が聞こえた。
 この音、間違いない。
 誰かが金属製の武器で戦っている証拠だ。

「いや、誰かってなんだよ」

 俺は自分で自分にツッコむ
 そんなバカみたいなこと考えなくても、金属製の武器じゃないとこんな音は出ない。
 しかし問題は誰が使っているかだ。
 もしかすると、いや、もしかしなくても、クーリエ達が接敵したに違いない。

「やっば、どうしよう」

 俺は地面を蹴り上げた。
 すると木々の隙間が現れる。
 この先に何かいる。目を凝らしてみると、そこには改造メイド服がヒラリと舞っていた。

「あれは、クーリエの……はいいっ!?」

 俺は奇声を上げる。
 その瞬間、クーリエがこちら向いた気がした。
 慌てて近くの木の裏に身を潜めると、息を殺してジッとする。

(ヤバいヤバいヤバいヤバい……なんだ、あれ。あの目、怖っ!)

 俺は震えてしまった。
 正直震えない方がおかしい程だ。
 ガチの殺気が迸りり、近付くもの全てを殺す、獰猛な獣のようだった。

「クーリエさん?」
「今、ヒジリ様が居た気がします」
「き、気のせいじゃないですか? それよりも、今はこの数のモンスターをなんとかしないとダメですよね」
「そうですね。では、お片付けを始めましょうか」

 何やら物騒な会話だ。
 俺は木の裏に隠れた体を少しだけ見せ、ラウリィとクーリエの姿を確認。
 確かにそこにはラウリィとクーリエの姿がある。
 しかも戦っているので、誰とと思った。

「一体誰と……げっ!」

 俺は苦悶の表情を浮かべる。
 ラウリィとクーリエが相手しているのは、当然人間じゃない。
 だけどそれは恐ろしいモンスター達で、群をなして囲んでいる。

「ブルルン!」
「ブルルン!」
「ブルルン!」

 如何見たって、その姿はイノシシ。
 だけど角がとんでもなく立派で、桁違いに強そう。
 もしも体当たりでも突進でもいい、まともに物理攻撃を喰らえば負傷は免れない。
 俺は面倒な相手と思いつつ、そのモンスター、ホーンド・ボアはラウリィとクーリエを標的にしていた。

「どうするんだろ。俺が間に入った方がいいのかな?」

 正直隠れていた方がいい。
 だけど二人を放っても置けない。
 感情の板挟みの中、そんな必要がないことを悟る。

「ラウリィ様!」
「はい、クーリエさん!」

 二人ともやる気満々だ。むしろ殺気でバチバチだ。
 ここで俺が颯爽と登場、してもしなくても空気を壊す。
 最悪の事態を想定はしつつも、ここは木の裏に隠れて見守る。そんな結論を出すと、俺はラウリィとクーリエの活躍に期待した。

「頑張れ、二人共」

 密かなエールを送るが誰にも気が付かれない。
 そんなのは当たり前で、声に出さない。
 拳を作ると、ラウリィとクーリエに伝わったのか、二人は攻め込むだけだった。



「クーリエさん、今なにか聞こえませんでしたか?」

 私はふと木の影から何か聞こえた気がしました。
 しかしクーリエさんはそんなこと気にしません。
 自分達が囲まれていることだけに目を向けると、剣を鞘から抜きます。

「ラウリィ様、今はそのようなことを考えている場合ではありませんよ」
「は、はい!」

 そう言われ、私も剣を抜きます。
 しかし足が竦んでしまいます。
 ついに実践。私は慣れていないので、怯えて動けませんでした。

「ブルルン!」
「ヒャァ!」

 そんな中、ホーンド・ボアは容赦なく突っ込んできます。
 牙を突き出し、私のことを襲いますが、その瞬間、クーリエさんが飛び出しました。

「はっ!」

 クーリエさんの一撃は的確でした。
 ホーンド・ボアの牙を折ります。
 しかもあまりにも容易く見えてしまい、私は拍手送ろうとしますが、クーリエさんは気にしません。

「ラウリィ様、ホーンド・ボアは大変危険なモンスターです。早急に片付けましょう」
「えっ、あっ、はい!」

 そう答え、クーリエさんは凄い速さで剣を叩き込みます。
 もはや神技。私なんて要らないくらいです。
 視線を釘付けにされてしまう私は、ついついよそ見をしてしまい、ホーンド・ボアから目を離してしまいました。
 それ程までに圧倒的で、私は高を括りました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...