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36話 なんで戻ろうとてんの!?

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 ラウリィとクーリエが覚悟を決めた。
 森の中に再び入ると、その姿を俺は目で追い掛ける。

「えっ、嘘でしょ、なーんで、もう一回森に入るかな?」

 俺は困惑してしまった。
 というのも、俺はせっかくラウリィとクーリエを遠ざけたのだ。危険な目に遭わせないよう、自分一人が残った。
 にもかかわらず、何故かラウリィとクーリエは二人して覚悟を決めると、森の中に戻ってしまう。
 マジで必要のない事をされてしまい、俺は目を見開く。

「って、ヤバくね? 今から行っても俺いなくね?」

 俺はラウリィとクーリエを呼び止めようと思った。
 今から森の奥に行っても、そこには何も無い。
 可能性があるとすれば、俺が放置したミッシング・タイガー。その遺体と、血飛沫だけだ。

「待った待った待った待った! それが一番ヤバいんだ」

 俺は忘れていない。如何して俺が、急いであの場を慣れたのか。
 あの場には死の臭いが渦巻いている。
 急ぎあの場を離れなかったら、他のモンスター達が集まってくる。そうなれば悲惨な目に遭うのは確実。
 血の臭いが消えるまでの間、近付かないのが吉だった。

「ってなると、ヤバくね? 今、絶対群がってるよな!?」

 俺は急いで応援に向かう。
 このまま向かわせるわけには行かない。
 ここは先回りをしよう。俺は少し乱暴だが、全身に魔法を掛ける。

「【固有魔法:付与強化(体)+(速)】!」

 俺は全身に魔法を掛け、近くの木の幹を蹴り飛ばす。
 轟音と共に木の幹が折れると、そのまま直線距離で移動。
 ミッシング・タイガーと男性の遺体が転がる場所までも戻ってきた。

「全く、なんで俺がこんな面倒な後始末を……」

 トホホな気分で戻ると、そこには何も無かった。
 いや、何も無い事はない。
 痛いはちゃんと転がっていて、血痕の跡が大量に残されている。ここで戦った証を残す程度で、モンスターの気配なんて、微塵も感じなかった。

「なんにも無い? えっ、取り越し苦労って奴!? なんだよ、それ!!」

 俺は嘆いてしまった。
 せっかく体中を傷だらけにしたにもかかわらざ、この結果。
 膝を折り、俺は頭を悩まされた。

「って、まあ、いいんだけどさ。いいんだけどな、うん、被害が出てなくて……いやいや、こんなに美味しそうな餌があるのに群がらないのは、ちょっと怖くね?」

 俺は恐ろしい想像をした。
 と言うのも、ここに餌がある。
 ハイエナなら楽に餌が貰えるので嬉しい筈だ。

 しかし如何見ても食べられた跡はない。
 もっとも、そう時間も空いていないのだから、当然と言えば当然だ。

 それをひっくるめても、まだ納得はできない。
 気配の欠片もなく、こんなに血の臭いでたっぷりだ。
 危険な肉食モンスターなら寄って来ないはずはない。

 だか、まだこの森の中に危険な肉食モンスターがいない可能性もある。
 それを検討したのだが、残念なことに、前例がある。目の前のミッシング・タイガーがそれで、俺は考えついてしまった。

(この森には危険なモンスターなんてわんさかいる。でもここにいないって事は、別のなにかがあるから? って、それなんだろ。まるで生き餌でもあるみたいな……ん?)

「あるじゃん!」

 俺の嫌な想像が直結した。
 それと同時にクーリエとラウリィの進行方向。
 予測した地点から遠く離れていない場所に悍ましい気配を感じ、体が強張る。

「マジかよ。そっちに行ったのかよ!」

 俺は嫌悪感を露わにした。
 まさかまさかの剥き出しにはノーチェック。
 完全にクーリエとラウリィ狙いだと気がつくと、俺は再び森を駆け、二人よりも先に処理することにした。
 しかし、そんな真似できないのは、言わずもがな、間に合うはずなかった。
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