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28話 俺だけ乗れてなくね?
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俺達はクーリエの先導で森の中を突っ切る。
正体がバレたことで、歪な空気が蔓延する中、この先に何が待っているのか。
俺は嫌な予感がしつつも歩を進め、次第に森の様子が変化する。
「あれ、この辺って俺が立ち入ってないはずだけど」
俺は森の木々達を見て一つ気になることができた。
立ち止まって枝に手を伸ばすと、やはり気になることがある。
その姿にラウリィは首を捻る。
「どうしたんです、ヒジリさん」
「俺、この辺に立ち入ってないんだよね」
「そうなんですか?」
「うん。でさ、ラウリィも見たら分かるよね?」
俺は気になった枝をラウリィに見せる。
凝視してジッと睨めっこを始めるラウリィ。
眉根を寄せ、額に皺を寄せる姿が可愛かったが、あまりピンとは来ていないらしい。
「すみません、ヒジリさん。私には、よく分かりません」
「そっか。えっとさ、この枝は……」
「人為的に切られた跡がありますね。しかも最近のものです」
クーリエが俺の言葉を繋いだ。
枝を摘むと、先端の部分にナイフのような短い刃物で切り付けた跡が残っている。
「えっ、それってつまり!」
「この森の中にまだ誰か潜んでいると言うことです。あまりにも危険、ヒジリ様に仇なすようであれば、問答無用でお帰り願いませんと」
クーリエの目付きがまた変わる。
今度はヒリ付いた空気になり、俺とラウリィは震えそうになる。
「まあまあ、そこは穏便に」
「ダメですよ、ヒジリさん!」
「なんで、なんでラウリィまで!?」
「ほほぉ、ラウリィ様も分かって来ましたか」
「そこはなんで意気投合してるの!」
俺だけこの空気に乗れなかった。
やって来た謎のビッグウェーブに流されると、俺はボードの上でプカプカ浮かぶ。
そんな気分になってしまうも、ラウリィは一つ気になった。
「それにしてもヒジリさん、どうしてクーリエさんはこの傷跡が、最近のものだと分かったんでしょうか?」
「ん? 簡単だよ。それは……」
「新芽だからです。古いものであれば、枯れるなどして自然にできた痕跡が残りますが、今回のものにはそれが無く、ナイフなど刃物で切り付けた時にできる、特有の断面があります。故に、この傷跡は最近つけられたもの、と推測ができるわけです」
「なるほど、凄いです、クーリエさん!」
「ありがとうございます、ラウリィ様」
完全に潰された。俺は喋る権利すら剥奪された。
言葉を途中で強引に奪われると、俺の出番が無くなる。
再びラウリィとクーリエの空気に塗り替えられると、俺は孤立してしまう。
「しかもこんな物騒な談義に女の子が……なんか、嫌になる」
俺はポツリと不満を吐いた。
もう少し可愛い話とかして欲しい。
それか俺が聞いちゃいけないような本性の話とかで盛り上がって欲しい。
だけどここまで殺伐とした会話になるとそれは無く、俺はショックを受けた。
(ぜーったい、ありえないじゃん)
元の世界だと、ほぼ間違い無くこんな会話にならない。
俺は頭が痛くなると胸が張り裂けそうになる。
社畜の俺には如何しようもできず、ただ黙って付いていく。
(俺、転生者なのに。ラノベなら、主人公ポジなのに、会話に入れないとか、回しもできないじゃん)
心の中でだけ不満がタラタラ漏れでした。
しかしそうこうしているうちに、また森の奥に向かっていた。
そこは開けた場所。こんな場所があったなんて、正直今の今まで知らなかった。
「うわぁ、開けてますよ!」
「本当だ。俺も知らなかった」
俺とラウリィが興奮する中、クーリエの目線だけは違うところを見ていた。
視線を追い、俺もクーリエと同じ目線に立つ。
すると嫌なものを見つけてしまった。
「ラウリィ、ちょっとショッキングかも」
「な、なにかあったんですか!?」
「なにかというか、目の前にある」
「ええっ!? な、な、なんですか、これ!?」
興奮で気が付かなかった。
否、見ないふりをしようとしていたらしい。
俺達の目の前、クーリエはこれを見せたかったんだ。
「ヒジリ様、ラウリィ様、これは危険です」
「そうだね、明らかに危険だ」
「この間のモンスターよりもですよね?」
「間違いなくね。正直、襲われてなければいいけど」
いや、そんな希望的感想もできやしなあ。
この森には数多のモンスターが居る。
その中、今俺達の目の前に残された痕跡は、巨大な三本爪で引き裂かれた、無惨な大木の姿だった。
正体がバレたことで、歪な空気が蔓延する中、この先に何が待っているのか。
俺は嫌な予感がしつつも歩を進め、次第に森の様子が変化する。
「あれ、この辺って俺が立ち入ってないはずだけど」
俺は森の木々達を見て一つ気になることができた。
立ち止まって枝に手を伸ばすと、やはり気になることがある。
その姿にラウリィは首を捻る。
「どうしたんです、ヒジリさん」
「俺、この辺に立ち入ってないんだよね」
「そうなんですか?」
「うん。でさ、ラウリィも見たら分かるよね?」
俺は気になった枝をラウリィに見せる。
凝視してジッと睨めっこを始めるラウリィ。
眉根を寄せ、額に皺を寄せる姿が可愛かったが、あまりピンとは来ていないらしい。
「すみません、ヒジリさん。私には、よく分かりません」
「そっか。えっとさ、この枝は……」
「人為的に切られた跡がありますね。しかも最近のものです」
クーリエが俺の言葉を繋いだ。
枝を摘むと、先端の部分にナイフのような短い刃物で切り付けた跡が残っている。
「えっ、それってつまり!」
「この森の中にまだ誰か潜んでいると言うことです。あまりにも危険、ヒジリ様に仇なすようであれば、問答無用でお帰り願いませんと」
クーリエの目付きがまた変わる。
今度はヒリ付いた空気になり、俺とラウリィは震えそうになる。
「まあまあ、そこは穏便に」
「ダメですよ、ヒジリさん!」
「なんで、なんでラウリィまで!?」
「ほほぉ、ラウリィ様も分かって来ましたか」
「そこはなんで意気投合してるの!」
俺だけこの空気に乗れなかった。
やって来た謎のビッグウェーブに流されると、俺はボードの上でプカプカ浮かぶ。
そんな気分になってしまうも、ラウリィは一つ気になった。
「それにしてもヒジリさん、どうしてクーリエさんはこの傷跡が、最近のものだと分かったんでしょうか?」
「ん? 簡単だよ。それは……」
「新芽だからです。古いものであれば、枯れるなどして自然にできた痕跡が残りますが、今回のものにはそれが無く、ナイフなど刃物で切り付けた時にできる、特有の断面があります。故に、この傷跡は最近つけられたもの、と推測ができるわけです」
「なるほど、凄いです、クーリエさん!」
「ありがとうございます、ラウリィ様」
完全に潰された。俺は喋る権利すら剥奪された。
言葉を途中で強引に奪われると、俺の出番が無くなる。
再びラウリィとクーリエの空気に塗り替えられると、俺は孤立してしまう。
「しかもこんな物騒な談義に女の子が……なんか、嫌になる」
俺はポツリと不満を吐いた。
もう少し可愛い話とかして欲しい。
それか俺が聞いちゃいけないような本性の話とかで盛り上がって欲しい。
だけどここまで殺伐とした会話になるとそれは無く、俺はショックを受けた。
(ぜーったい、ありえないじゃん)
元の世界だと、ほぼ間違い無くこんな会話にならない。
俺は頭が痛くなると胸が張り裂けそうになる。
社畜の俺には如何しようもできず、ただ黙って付いていく。
(俺、転生者なのに。ラノベなら、主人公ポジなのに、会話に入れないとか、回しもできないじゃん)
心の中でだけ不満がタラタラ漏れでした。
しかしそうこうしているうちに、また森の奥に向かっていた。
そこは開けた場所。こんな場所があったなんて、正直今の今まで知らなかった。
「うわぁ、開けてますよ!」
「本当だ。俺も知らなかった」
俺とラウリィが興奮する中、クーリエの目線だけは違うところを見ていた。
視線を追い、俺もクーリエと同じ目線に立つ。
すると嫌なものを見つけてしまった。
「ラウリィ、ちょっとショッキングかも」
「な、なにかあったんですか!?」
「なにかというか、目の前にある」
「ええっ!? な、な、なんですか、これ!?」
興奮で気が付かなかった。
否、見ないふりをしようとしていたらしい。
俺達の目の前、クーリエはこれを見せたかったんだ。
「ヒジリ様、ラウリィ様、これは危険です」
「そうだね、明らかに危険だ」
「この間のモンスターよりもですよね?」
「間違いなくね。正直、襲われてなければいいけど」
いや、そんな希望的感想もできやしなあ。
この森には数多のモンスターが居る。
その中、今俺達の目の前に残された痕跡は、巨大な三本爪で引き裂かれた、無惨な大木の姿だった。
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